2007年6月2日(土)掲載

◎「中空土偶」一般公開スタート
 道内初の国宝指定が決まっている、函館市尾札部町の著保内野(ちょぼないの)遺跡で出土した「中空土偶(茅空=かっくう)」が1日、南茅部公民館(同市川汲町)で公開された。第一発見者で尾札部町在住の主婦、小板アヱさん(74)も会場を訪れ、「茅空、元気で帰ってきてよかったね。出世したね」と話しかけ、「涙が出るくらいうれしい」と再会を喜んだ。

 中空土偶は1975年8月、小板さんが畑作業中に発見。79年に国指定の重要文化財となった。約3200―3300年前の縄文時代後期に作られたとみられ、高さは41・5センチ、幅20・1センチで国内最大級。頭部の一部と両腕は欠損しているが、ほぼ完全体で出土した。内部は空洞で、厚さは5―7ミリと薄く、全身に施された細かな文様など、精巧さや高い芸術性が国内外で評価されている。

 この日は、午前9時の公開とともに、待ちわびた多数の市民らが来場。“縄文のビーナス”と呼ばれる美しい姿に太古のロマンを思い描いていた。同市臼尻町の嘱託職員二本柳強さん(64)は「本物を見るのは今回が初めて。立派の一言。南茅部の活気になるように、地元も一丸となって協力していかないと」と話していた。

 市教委の阿部千春参事は「地域から国宝が誕生したことは誇り。南茅部は中空土偶だけではなく、縄文文化が栄えていた地域。あらためて、この豊かな海を縄文時代から引き継いでいることを知ってもらうよう、命の大切さを発信していきたい」と話していた。

 南茅部公民館での公開は3日まで。入場無料で、午前9時から午後5時まで。7月には市立函館博物館(青柳町)での特別企画展でも展示される予定。 (今井正一)


◎06年度観光入り込み、486万5000人で4年ぶり増
 函館市は1日、2006年度の観光入り込み客数(推計値)を発表した。総数は、前年度比約2万1000人(0・4%)増の約486万5000人で、4年ぶりに増加に転じた。上半期は同4万6000人(1・4%)増の330万5000人で回復の兆しが見えたが、下半期(10―3月)は、同2万4000人(1・5%)減の約156万人と伸び悩んだ。道内他都市を含め、地域間競争が激化しており、2年連続の500万人割れとなった。

 06年度の傾向として、引き続き道内では、旭川市の旭山動物園、世界遺産の知床人気に押されていると分析。市商工観光部は「目標の490万、500万人には届かなかったが、減少に歯止めがかかった」と話す。

 交通機関別では、バス、乗用車、客船を含むフェリーは、前年度より増加。航空路線は、国内便は前年度並みだったが、新千歳空港と台湾を結ぶ国際定期航空路線が開設されたことで、函館発着の国際チャーター便が減少。ソウルを結ぶ定期便の就航はあったが、海外航空路線に影響を与え、全体では、同5・6%減だった。鉄道は、首都圏から函館までの区間で使用できるJR東日本発売の周遊型チケットの利用が好調で、津軽海峡線の利用者数が同6・0%増と伸びた。

 月別では、9―12月が低迷し、特に10月は同4・2%の減少。クリスマスファンタジーを開催している12月も同1・8%減と伸び悩んだ。道内外別構成比では、道外客が同0・2%減の66・6%、道内客は33・4%。宿泊・日帰り別構成比では、宿泊客は1・3%減少し63・9%となったが、依然、夜景を目的に宿泊する客が多くいるため、道内他都市より高い数字だという。

 今後の函館観光の課題として、備前悟観光振興室長は観光客のニーズは▽おいしい食べ物▽健康▽癒し―にあるとし、「合併した地域の海産物と観光を結び付け、長期滞在につなげること」と述べた。また、「旅行エージェントの間では、恵山、大沼、江差の評価が高い」とし、他地域との連携による観光の広域化や、体験型観光の充実を図る必要があるとした。 (今井正一)


◎日銀4月の道南経済、依然「足踏み感」
 日本銀行函館支店(服部誠弘支店長)は1日、4月の道南地方における金融経済動向を発表した。個人消費の一部や住宅を含む民間建設需要など、全般的に緩やかな持ち直し基調にあるものの、原材料の値上がりによる収益悪化や観光客の減少などから、3カ月連続で「足踏み感がうかがわれる」とした。

 個人消費は、週末を中心に天候不順や低温から客足が鈍く、衣料品や身の回り品などが不振で、好調だった食料品がマイナスに転化。小売店(主要10社)の売上高は前年同月比3・7%減の59億1000万円と2カ月連続の前年割れとなった。大型テレビや携帯電話、ゲーム関連商品などの家電販売は、堅調な伸びを見せている。

 設備投資は、非住宅着工の床面積(函館市内のみ)が同20・3%減の8653平方?、棟数が同13・3%減の26棟。一方で、新設住宅着工(同)は、持ち家が前年同月を下回ったものの、貸し家や分譲が増加し、全体では同52・2%増の204戸と、2カ月ぶりのプラスとなった。

 生産は、セメントや段ボール、水産加工が前年割れだったものの、電子部品や造船、農漁業が、前年を上回った。公共投資は、渡島・檜山管内の公共工事請負額が同43・6%減の67億1100万円と、2カ月ぶりのマイナス。

 また、観光は、五稜郭タワーが同29・4%減の5万5800人と14カ月ぶりに減少。函館山ロープウェイが同1・2%減の8万8500人、ホテル(主要17社)の宿泊客数が同6・5%減の10万1900人、函館空港の乗降客数が同9・5%減の12万1100人と、全般的に低迷した。 (浜田孝輔)


◎改正道交法から1年、駐車違反検挙数大幅に増加
 放置車両の取り締まりを強化した改正道交法の施行から1日で1年を迎えた。この間の道警函館方面本部管内での取り締まり件数は、1万2557件で前年1年間(1418件)の8倍以上に達した。新設された車検拒否の適用もあり、迷惑駐車の通報も減少するなど「逃げ得」防止を図った改正の効果がうかがえる。しかし、検挙件数自体は減少傾向になく、道内の他方面と比較しても件数は突出しており、ドライバーのモラルが問われている。(原山知寿子)

 署別で見ると、函館中央署が1万31件と約8割を占め、函館西署が2450件などで函館市内・近郊での摘発がほとんどだった。迷惑駐車に関する110番通報は、昨年6月から4月末までで2581件を数え、前年同期を143件下回った。

 新たに設けた制度の適用も目立った。取り締まり車両の運転者らがその場におらず、「放置違反金」の納付を告知したのは9216件で約7割に達した。車検拒否の通告件数も4月末現在32件に上り、「逃げ得」を防ぐ効果が表れている。

 一方、月別で最も多かったのは11月の1572件で、最も少なかったのは5月の833件。800件台から1500件台で推移し、9月に894件だったのが10月に1253件に再び増加するなど、取り締まり強化が減少に結びついていない。

 さらに、昨年6月から12月までの半年間の件数を札幌を除く4方面で比較すると、函館は7701件で旭川の2348件、釧路の4468件、北見の783件と比べて突出している。「二度、三度と検挙されるドライバーも。函館の運転者の意識は低いと言わざるを得ない」(交通課)。

 取り締まりは当初繁華街が中心で、徐々に住宅街へとシフト。このため、改正直後は激減した繁華街での違法駐車が再び目立ち始めているという。同課は「予想を上回る検挙数。違法駐車の実態は根深い。引き続き放置車両は厳しく取り締まる」としている。


◎市スポーツ合宿誘致推進懇話会、提言書骨子まとまる
 競技団体や学校、宿泊施設の関係者、公募市民らで構成する「函館市スポーツ合宿誘致推進懇話会」(大桃泰行会長)が5月31日夜、市役所で開かれた。市教委がこれまでの議論を踏まえ、誘致推進の課題や方策をまとめた提言書の骨子を示し、委員に意見を求めた。同懇話会は10月をめどに提言書をまとめ、西尾正範市長に提出する。

 懇話会は学生や実業団などのスポーツ合宿誘致推進に向け、市民から意見を聞こうと市教委が昨年度設置した。骨子は「函館市におけるスポーツ合宿の現状と課題」「今後、展開すべき方策」が大きな柱。

 現状と課題では、合宿利用者へのアンケート結果から、滞在コストの安さ、スポーツ施設の整備状況、宿泊施設の充実度の優劣が選定条件となっている点に触れた。利用ニーズと地域状況が合致する競技種目を絞りつつ、きめ細かい合宿誘致を進めるのが効果的と提案。行政と各競技関係者、宿泊施設などが連携して検討を深め、実践する必要性を指摘した。

 今後の方策は、受け入れ体制や行政と民間の役割分担の明確化、地域住民の理解・協力、誘致活動の積極的な展開が柱。具体的には大規模大会が開催可能な体育館の整備や合宿費用の一部助成制度の創設、合宿誘致マネジメント機関の確立などを挙げた。

 委員からは「学校体育館の活用に当たって、各学校の管理責任者に認識を深めてもらう必要がある」「今後、誘致推進をどう進めていくかについても提言書に盛り込むべきだ」などの意見があった。(宮木佳奈美)