2007年6月29日(金)掲載

◎西尾市長が執行方針…市議会定例会開会
 函館市議会の第2回定例会が28日開会し、西尾正範市長が市政執行方針、多賀谷智教育長が教育行政執行方針を述べた。西尾市長は「市政のあり方や時代認識、政策や施策について、市民と一緒に考え、組み立て直すという気概を持って取り組む」と基本姿勢を強調し、人材育成や地域の活力向上など、将来を見据えた市民協働のまちづくりに取り組む決意を語った。

 西尾市長は、「開かれた明るい市役所づくり」「時代の危機感の共有」「殖産興業の心をはぐくむ」の3点を市政運営の基本姿勢に挙げ、「教育立市・人材育成都市」の実現を目標とした。効率的な行財政運営や、人口減少社会を見据えた地域づくり、子どもや若者を育て、産業や文化の充実を図る考えを示した。

 市役所を「市民の頼れるサービス拠点、地域の未来を切り開く先導的機関」と位置づけ、積極的な情報公開や、若い職員を育て、活発な議論が行われる環境の実現を目指す。行財政改革では、職員削減に取り組むとともに、地元企業や、市民活動団体などの育成と正規雇用の拡充を念頭に置いたアウトソーシング(業務の外部委託)の推進で市役所の機動力を高めるとした。

 少子高齢化や人口流出を「時代の危機感」とした上で「人口を上昇に転じさせていくことは容易ではない。企業や団体、市民が知恵と力を合わせ、子どもたちの笑顔があふれる函館の実現を目指す」と述べた。その方策として、函館固有の産業を育成し、人や技術力の向上が必要と訴えた。

 また、海の生態科学館(水族館)建設を断念することをあらためて明言し、研究施設の公開や体験学習により、海と触れ合う機会を設けるとした。このほか、市長選の公約に掲げたソフト施策中心路線を実現させ、市民自治の拡大を図る考えを示した。

 一方、多賀谷教育長は「ふるさとの未来を拓(ひら)く人材の育成を図る教育の推進」を掲げた。校長裁量の「知恵の予算」を活用して創意ある学校づくりを推進することや、義務教育基本計画を策定し、「活力ある教育活動の展開を目指し、小中学校の再編についての方向性を示す」と述べた。

 具体的には、学力向上を図るとともに、海外派遣事業や外国人英語指導助手の増員で、小中高連携の英語教育充実などを挙げた。

 引き続き、地域社会で子どもを見守り育てる観点から、家庭の教育力向上の必要性を強調。市民の文化・スポーツ振興については、各種団体と連携を強化し、縄文文化交流センターの建設促進や、地域に根差したスポーツクラブの育成・支援などに触れ、「地域の拠点となる施設の検討も含め、体育施設の充実に取り組む」と述べた。(今井正一)


◎拡幅と街並み整備急ピッチ…道道乙部港線
 【乙部】夕日の映える街並みに―。乙部町の市街地を貫く道道乙部港線の拡幅と街並みの整備が急ピッチで進んでいる。沿線では外壁の色調や建物のひさしの高さを統一した新たな街並みが姿を現しつつある。

 2005年度に整備が始まった乙部港線。道路幅を従来の6・0メートルから15・5メートルに拡幅。移転補償費を元手に沿道の住宅や商店は数メートルずつ後退。新たに道路の両側には歩道も備える。整備区間は延長720メートル。拡幅は09年度をめどに進められる。

 整備には「歴史と夕日が感じられるマチ」「優しさと思いやりを感じるマチ」などのコンセプトがある。町も整備に合わせて独自に「街並み環境整備事業」を展開。木調の外観や色彩を統一した建物には補助金を支出するほか、公園や案内板の整備などにも取り組む。

 日本海に沈む夕日が映えるよう木調の外観とともに、外壁の色調も茶色や山吹色など暖色系の色彩に統一。道路に面したひさしの高さを3メートルに統一して街区の一体感を高めている。

 また、国道229号から乙部漁港に至る「市街地中央通り線」の整備も進んでいる。切り立った岩壁が目をひく町のシンボル「館ノ岬」が国道からも見通せるようになった。(松浦 純)


◎1年ぶりに新規入居…産業支援センター
 函館市のインキュベーター施設「市産業支援センター」(桔梗町)内に、札幌市のシステム開発会社「プロメディアワークス」(高津譲次社長、資本金3億2100万円)が7月1日からオフィスを構える。同センターへの新規企業入居は昨年8月以来。同社独自の放送局向けシステムの開発研究を行う。

 同社は在京の民放キー局などを主要取り引き相手に、放送局向けに、テレビ画面上でニュース速報や選挙の開票速報などのテロップを描画するシステム「GOA」を開発。アナログ放送だけでなくデジタル放送にも対応し、テレビ画面上で鮮明なCG画像を簡単な操作で表示できる。

 これまで、同システムの開発責任者は七飯町内で研究を進めてきたが、同社が函館出身者を新規に2人採用したこともあり、市内に拠点を設置することにした。

 同オフィスは7月から3人体制で業務を始める。将来的には、人員の拡充や業務の拡大も視野に入れ、函館での新たな研究開発を進める。

 同センターのインキュベータールームは、1室50平方メートルで使用料は9万4500円。同社の使用期間は2010年6月末までの3年間で、最大で2年間の延長が可能。

 市事業開発課は「将来的に、テクノパーク内に根付いた企業となってほしい」と話している。(今井正一)


◎療養生活に潤いと安らぎを…五稜郭病院が移動図書サービス開始
 函館五稜郭病院(高田竹人院長、病床586)は、病棟を巡回して入院患者に本を貸し出す移動図書サービス「やさしさ図書館(ライブラリー)」を始めた。同病院が看護実習を受け入れている函館白百合高校の看護医療系進学コース1、2年生がボランティア協力する。同病院は「入院患者さまの療養生活に潤いと安らぎを与えられたら」と話している。

 同病院ボランティア「ひまわり」の活動の一環。移動図書サービスは毎週水曜か土曜の1回で、同校生徒33人がボランティア登録し、交代で2―5人が協力する。

 職員の寄付で集めた小説や漫画、患者向けの医療書など約800冊を外来待合スペースの本棚に配備。このうち200冊をボランティアがカートに積み、新棟4―6階のデイルーム(休憩室)3カ所を回る。各病棟では看護師に依頼し、院内放送で患者に案内する。

 デイルームには本の返却箱を設置し、次回の巡回日まで患者が各自で返却する仕組み。同病院によると、患者向けの図書室は全国の病院で設置されているが、巡回図書室の取り組みは珍しいという。

 初活動の27日は生徒5人が参加。生徒は病院ボランティア「ひまわり」のエプロンをそろって身に着け、力を合わせてカートを移動。各階のデイルームに10分程度とどまり、本を借りに訪れた患者に笑顔で利用法を説明していた。

 院内放送を聞いて駆け付けた村上美光さん(78)=同市日吉町=は「家から本を持ってこなくて済むので助かります」と数冊まとめて借りていた。松本良雄さん(53)=七飯町=は「退屈しのぎになる。もう少し本の種類を増やしてもらえたら」と今後の活動に期待を込めた。

 看護師を目指している2年生の渡邉利佳さん(16)は「本の貸し借りだけでなく、患者さんと会話しながら接することができてよかった」と充実した表情を浮かべていた。同校の秋葉芳樹教諭は「正しい言葉遣いや笑顔で患者さんと接することを学ぶいい機会」と話していた。(宮木佳奈美)


◎保護者ら不安の声…函高専 はしかの疑いで
 はしか(麻しん)の疑いのある生徒1人が出た函館高専(長谷川淳校長、生徒1045人)は、28日から学校閉鎖を始めた。このため29、30両日に同校で開催する予定だった高文連道南支部の新聞部総会と研修会は延期が決まった。また、市立函館保健所には28日、市民や同校の保護者から、不安を訴える声や問い合わせが相次いだ。

 函館市教委と同保健所によると、「市内の公立学校がはしかで閉鎖したのは前例がない」という。疑いのある生徒は27日に市内の病院で受診。罹患(りかん)しているかを調べる検査の結果は出ていないが、学校や学校医が協議し、大事を取って閉鎖を決めた。

 同保健所が、学校や診断した医師、生徒の家族らから詳しく話を聞いた結果、医師が診察した際、はしか特有の症状の大部分が確認できなかったという。さらにワクチンを接種していない1歳の家族が感染していないことも判明。同保健所は「はしかの可能性は低いが、症状が軽いこともあるので学校の措置は正しかった」とみる。

 感染者は通常、定点報告でカウントしているが、全国的な流行を受け、同保健所は5月9日からすべてのはしかを報告するよう同市内の病院に通知。同日以降の発症者は5人。このうち20歳以上は3人で、このうち2人ははしかが流行した時期に関東地方を訪れていた。同保健所は「市内で生活している限り、感染の危険はあまりないのでは」とする。

 延期された高文連の新聞部総会には、加盟する十数校のうち道南から8校が参加する予定だった。函館ラ・サール高校新聞部の顧問、川村和男教諭は「7月には学校祭などがあり、夏休みも近いので開催は難しいのでは」と話していた。(小泉まや)


◎駒ケ岳研修登山21日に 「勉強会」の参加者募集
 【森】函館市と森、七飯、鹿部の3町で構成する駒ケ岳火山防災会議協議会(会長=湊美喜夫森町長)と、駒ケ岳自然休養林保護管理協議会(同)は28日までに、同協議会メンバーらとともに登山規制中の駒ケ岳を登る「火山勉強会」の日時や内容を決めた。実施は7月21日で、4市町各50人とこれ以外の50人計250人を募集する。参加者は1市3町の各市町庁舎前に集合し、6合目駐車場から登山を開始する。

 駒ケ岳は1998年10月以来、入山を規制していて、本年度も規制は継続。ただ、2001年の火山性微動以降、目立った活動はなく、登山愛好家らから登山を待ちわびる声が後を絶たなかった。こうした声を踏まえ、火山活動に特徴のある同山について知ってもらおうと、両協議会は11日の合同会議で、年3回の登山を試験的に実施することにした。8、9月の開催日時は今後、決める。

 6合目駐車場を出発後、馬ノ背や各火口を見学し、専門家から解説を受ける。駒ケ岳火山防災会議協議会の事務局(森町防災消防対策室)は「実施決定以降すでに、多くの問い合わせがあり、関心の高さがうかがえる。実際に登り、さまざまな山の姿を知ってほしい」と多くの参加を期待している。

 問い合わせは同事務局TEL01374・2・2181。函館市は総務課防災係、七飯町は総務課、鹿部町は総務・防災課で、7月13日まで申し込みを受け付けている(先着順)。同市町以外の窓口は同事務局。(笠原郁実)