2007年7月2日(月)掲載

◎市立函館博物館で「蘇る北の縄文ロード」開幕、中空土偶お披露目
 函館市内旧南茅部地区の著保内野遺跡で出土した「中空土偶」が道内初の国宝に指定されたことを記念し、特別企画展「蘇る北の縄文ロード―発掘された縄文の世界―」(市立函館博物館主催)が1日、同博物館(青柳町17)で開幕した。初日は開会式が開かれ、高橋はるみ知事や「中空土偶」を発見した小板アエさんらが出席したほか、市民ら約360人が訪れ土器などの展示品を鑑賞した。8月19日まで。

 同企画展では、国宝の中空土偶を公開するほか、道内や青森、岩手、秋田の3県に現存する縄文時代の埋蔵文化財を一堂に集め、北の大地に育まれた縄文文化の世界を紹介。大小さまざまな形をした土器や刀形石器や動物型土製品、装飾品など約1000点が展示されている。

 開会式には、関係者ら約100人が出席。西尾正範市長が「1人でも多くの市民、観光客にご覧になっていただき、地域の誇りである中空土偶を通じて約1万年にわたり栄えた壮大なロマン、北の縄文ルートに触れていただければ幸い」とあいさつ。高橋知事も「本道を代表する貴重な宝を未来に引き継ぐため、道教委、函館市と連携しながら適切な保全や国宝としての活用などについての支援に努めたい」と述べた。西尾市長や高橋知事、中空土偶の発見者の小板アエさんら6人がテープカットし、特別企画展が開幕した。

 館内に展示された遺物は国の特別史跡からの出土品や国・道・市町村の重要文化財に指定された重要な資料ばかり。来場者はお目当ての中空土偶や、数々の展示品をじっくり見てまわり、縄文時代に思いをはせていた。

 入館料は一般500円、高校生・大学生300円、小中学生100円。市内在住の65歳以上は250円。開館時間は午前9時から午後4時半まで。休館は月曜。ただし、2日、16日は開館する。

 問い合わせは同博物館TEL0138・23・5480。

 ○…特別企画展の開会式で、中空土偶の発見者、小板さんに高橋知事から感謝状が贈られた。高橋知事は「道民に縄文文化への無限の夢を与えた。故郷の誇りと愛着心を育む優れた宝を地域に与えた」と述べ、小板さんは「夢にも思わなかったこと。うれしいです」と感激していた。式後には、高橋知事は小板さんらとともに「中空土偶」を観覧。小板さんから発見当時の状況を聞き、「すばらしいものを発見されましたね」と声を掛けた。

 高橋知事はその後、森町の鷲ノ木遺跡にある環状列石(ストーンサークル)を視察した。(鈴木 潤)


◎板金職人の嶋崎正雄さん・手作りの大型スマートボール台完成
 函館市東川町の板金職人、嶋崎正雄さん(63)が、手作りの大型スマートボール台を完成させた。台の盤面には、アニメのキャラクターが描かれており、テレビゲームなどとは違う“アナログな”おもちゃとして、子どもだけでなく昔を懐かしむ大人からも人気を呼びそうだ。

 幼少期には、祭りの屋台でスマートボールを楽しみ、社会人となってからはパチンコを楽しんだという嶋崎さん。同市弁天町大黒通での町おこしにもかかわっていることから、子どもたちを楽しませる呼び物にしようと、スマートボール台の製作を思いついた。

 仕事の合間を縫っての作業となることから、完成までに要したのは約2カ月。近年ではめったに見かけなくなり、ひのきの板に打ち付ける飾りくぎとして使用されていた「真ちゅうくぎ」を仕入れ、ランバーコア合板や風車、玉をはじくキューなどの加工をコツコツとすすめてきた。

 出来上がった台は、奥行きが約1メートル80センチ、幅が約90センチで、約1000本のくぎを使用。昔の勘を頼りに、くぎの位置やキューの向きなどの微調整を加えながら、職人らしいこだわりが凝縮されている。打ち込まれた玉は、盤面を転がってくぎにはじかれる際に、真ちゅうならではの「コンコン」という小気味よい音を奏でるのが、何とも味わい深い。

 また、日ごろから親交の深い、同市内在住のペン画家志村功さん(67)に、イラスト描きを依頼。テレビや本で人気を博した、往年のキャラクターが華やかさを演出していて、手書きならではのぬくもりを感じさせる。

 台の初お披露目は、8月上旬に開催予定の「大黒通フェスティバル」となる見込み。また、老人施設やイベントなどへの貸し出しも検討しているという。

 嶋崎さんは「電気や電池を使ったゲームではなく、親子そろって楽しめるおもちゃとして、多くの人に遊んでもらえれば」と話している。(浜田孝輔)


◎どさんこフェスタ・全国やぶさめ競技函館大会開催
 「第3回どさんこフェスタin函館2007・第3回全国やぶさめ競技函館大会」(どさんこワールドをつくる会実行委主催)は1日、緑の島で開催された。やぶさめには全国から32人の選手が出場。道央流鏑馬(やぶさめ)会恵庭の渋谷敦子さん(36)が、同会輪厚の後藤麻衣(12)さんを小差で押さえて優勝した。3位は函館どさんこファームの池田賢治(25)さんだった。

 北海道の開拓に活躍したドサンコの歴史や文化を知ってもらおうと企画。会場には多数の市民が訪れ、ドサンコに荷物を背負わせる実演や居合道の真剣切りなどを観賞した。

 やぶさめは、全長180メートルのコースに設置された3つの的を馬上から狙う。制限時間は14秒。武具などを身にまとった選手はドサンコに乗って登場し、砂ぼこりを上げてコースを疾走。腰に付けた矢を素早くつがえては的を狙う動作を繰り返し、的中時には観客から大きな拍手が送られた。(小泉まや)


◎おしょろ丸が北極海へ
 北大水産学部の練習船おしょろ丸(1396?)は1日、1992年以来15年ぶりとなる北極海方面への調査航海に出航した。2007―08年が国際極年とされていることから、世界的に北・南極の調査を積極的に進める活動の一環。出港式が行われた函館港中央ふ頭では、同学部の応援団が激励の声援を送り、乗組員や調査員、その家族らが名残を惜しんだ。

 同船は例年、ベーリング海底の魚類やクジラの回遊などを調査しており、今回はこれ以外に北極海(チュクチ海)にも足を伸ばし同様の調査を行う。函館からは乗組員のほか、同部の学生や研究員ら合わせて70人が乗船。21日に米アラスカ州のダッチハーバーに到着後は調査場所に合わせて他国の研究者も乗り込む。すべての調査を終えて函館港に帰港するのは8月29日の予定。

 約2カ月間の長期航海とあり、中央ふ頭にはたくさんの家族や友人らが見送りに駆け付けた。応援団は校歌「永遠(とこしえ)の幸」を歌い、渋沢伸英団長は「海の生物が皆さんを待っている」と激励。学生代表は「しっかりと観測して研究に生かしたい」と答えた。

 出港時には甲板に出た学生らが陸にカラーテープを投げ、見送る側は「行ってらっしゃい」と大声を張り上げて手を振った。今回の調査のまとめ役となる、北大大学院水産科学研究院の齊籐誠一教授(海洋生物資源科学部門)は「温暖化の影響が考えられる魚類層の変化を調べたい」と話していた。(小泉まや)


◎企画 20年目の歴史絵巻き 函館野外劇の歩み(3)
 地元の人が誇りに思い、自慢するイベントでないと内外に広まらない―。地域の街づくりの気運を高め、函館らしい地域文化活動を目指す市民創作「函館野外劇」。夏の新たな観光資源として全国にアピールする取り組みは道内外から高い評価を得ている。一方で、地元での反応の低さに悩みもある。

 「あ、野外劇が紹介されている」。函館の人が道外各地を訪れた時、野外劇の宣伝を見て驚く機会が増えている。全日空は、機内誌「翼の王国」5月号で、函館野外劇を取り上げた。同誌では6年連続の紹介で、全国に野外劇をPRした。そのほか、JTB東北や、JR東日本の仙台、盛岡各支社作成の函館紹介パンフレットでも、題材として取り上げられた。

 旅行会社で野外劇観劇ツアーを企画するなど、知名度は全国的に高まっている。18日まではJR函館駅のイカすホールで、第1回からことしの第20回公演を宣伝するポスター展が開かれている。訪れた観光客は、「今度の函館旅行の参考にしよう」と見入っている。そのほか、「函館の歴史、文化を知る」という目的に合致するとして、修学旅行生の観劇も実現した。

 観光の目玉として成長した野外劇に対し、函館市からの協力支援も年々手厚くなっている。2002の第15回公演まで市の補助金は480万円だったが、リニューアルした第16回目以降は800万円に増額され、20周年を迎えることしは1000万円に上った。市の働きかけもあり、民間の協力体制も充実してきた。

 一方で、「一番の悩みは地元の反応がいまひとつな点」。NPO法人(特定非営利活動法人)市民創作「函館野外劇」の会(フィリップ・グロード理事長)の輪島幸雄理事長代行は頭を抱える。函館市民の関心度に温度差があるという。地域を上げて、野外劇を新たな観光資源として活用する流れに至っていないのが現状と話す。

 輪島さんは、「地元が函館の文化活動である野外劇によって、観光収入を得られるという認識が薄いのでは」と指摘する。公演日は観光客の観劇を想定して金、土曜に設定している。地域一丸となって、函館観光の目玉の一つとして売り込めば、宿泊施設にも貢献できると考えた。

 市内の宿泊施設ではチケットを取り扱っている。販売のほか、宿泊客へのサービスにチケットを積極的に活用する宿泊施設もあるという。だが一方で「野外劇の公演により、直接利益を受ける業界団体の中にも非協力的な面もある。理解や協力を得ているのは、まだ一部。協力のすそ野が広がっていない」と輪島さん。

 市民ボランティアとして毎年、スタッフ、キャストの両面で野外劇を支える同市内の女性は、「野外劇提唱者であるグロード理事長は以前、ボランティアは人のためでなく自分のためと話していた。そんな気持ちで元気で野外劇に奉仕できるのはうれしい限り」と話す。野外劇は地域で支えあい、街づくりをしているという理解があれば、協力のすそ野は広がるはずだ。

 市民の理解、協力で成長を遂げた野外劇。今後も地域全体で盛り上げていく気運が一層必要になっている。