2007年8月10日(金)掲載

◎姥神大神宮渡御祭が開幕
 【江差】北前船時代の栄華を現代に伝える姥神大神宮渡御祭が9日、開幕した。初日は時折激しい雨が降るあいにくの空模様だったが、優雅な祭ばやしと山車を引く人たちの威勢の良い掛け声が、雨雲を吹き飛ばすような勢いで町中に響いた。

 午前中には桧山管内南部に大雨洪水警報が発令され、雨脚は道路に水煙が立つほどの勢いに。激しい雨の中、ビニールシートで貴重な人形や水引などの装飾を覆った3基の山車が、笛と太鼓による祭ばやしを奏でながら同神宮に赴き「魂入れ」を行った。

 儀式を終えた山車は、各地域に戻り家々を巡行。南部の五勝手地区(南浜町・柏町)に伝わる「義公山(ぎこうざん)」は、水戸黄門の人形に旅姿の「助さん・格さん」にふんした子供がお供を務める。徳川家の家紋・三葉葵(みつばあおい)をあしらった、そろいのはんてんに身を固めた人たちが「エンヤ!エンヤ!」の掛け声に合わせて山車の綱を引いた。

 10・11日の2日間は、猿田彦命を先頭とする同神宮のみこし行列に、町内13基の山車が付き従い町内を巡行する。10日午後10時からは、1日の巡行を終えた同神宮のみこしを、たいまつの炎が先導して拝殿に納める「宿入之儀(しゅくいれのぎ)」も執り行われる。(松浦 純)


◎企画まなびや(1) 木造…往時の輝き今も
 ガラガラ―。サッシの引き戸を開けると、黒い板に明朝体できっぱりと「受付」と案内する木枠の小窓が出迎える。モルタル仕上げの前面からは見えなかった、松前館浜小学校(松前館浜、1952年建設)の木造校舎の入り口。一歩踏み出せば、長年児童が歩き回り磨き抜かれたように光る床が伸びていた。

 木造校舎のルーツは、旧文部省が明治時代から昭和初期にかけて学校設備や設計について定めた要項などに由来する。現在も一般的な、南側教室の北側に廊下が位置する「片廊下」方式や、教室の面積、高さなどが規定され学校施設の様式は画一化された一方、安全性や設備の水準維持に貢献した。

 鉄筋コンクリートの普及とともに木造校舎は減少したが、道南の小規模校ではまだまだ現役で存在する。松前館浜小は、道南でも数少ない校舎全体が木造の学校だ。

 正面からでは、十数年前まで函館市内にもあった、見事な木組みが露出した木造大規模校のイメージはない。しかし内部には、閉めてもすき間ができる木枠の2重窓や、踏み出すたびにミシミシと音を上げる体育館など、時の流れが止まったような空間が広がる。

 裏側から眺めると構造の詳細を知ることができる。森赤井川小学校(森町赤井川、65年建設)は、コの字形に建てられた中庭に木の板が張り付けられた壁が露出。隣接する森駒ケ岳小学校(森町駒ケ岳、34―71年建設)は、体育館や時代とともに建て増しされた棟内部の構造の違いを観察できる。約95メートルの廊下が内部を一直線につなぎ、傍らにはしゃれた出窓が並ぶ。

 木造校舎は、施設の腐食に加え少子化など使う側の課題も抱えている。しかし地元住民が運営する山荘として生まれ変わった旧知内矢越小学校(知内町小谷石)のように新たな命を吹き込まれた施設もあり、活用の可能性を残している。

 子どもが生活時間の多くを過ごす学校の施設や設備は、どのように変化してきたか。時代の要請や技術の進歩、教育形態の変化、地理的要因など、さまざまな理由で姿を変えてきた教育施設の移り変わりをみる。(小泉まや)



◎整備着手記念し植樹…文教通
 本年度から一部整備着手が決まった都市計画道路「文教通」(函館市日吉町―戸倉町、2・4キロ)の記念植樹式が9日、同市滝沢町2の滝沢児童公園で行われた。地元13町会と市で組織する文教通周辺地域まちづくり懇談会(会長・小川昭夫日吉第六団地自治会会長)の主催で、小川会長や渡島支庁の畑秀叔支庁長、西尾正範市長ら8人がヤマボウシ4本を植樹し、整備着手を祝った。

 事業認可されたのは日吉中央通から榎本町の見晴公園通までの420メートルで、長年の懸案。榎本・滝沢・高丘・上野・見晴町などから道道函館上磯線(産業道路)へ抜けやすくなるほか、湯倉神社下の交差点の渋滞緩和などが期待できる。

 地元選出道議や市議、行政と地域住民代表ら約100人が出席。小川会長と西尾市長が「地域の生活環境改善や交通安全に大きな役割を果たし、尽力いただいた皆さまに深く感謝します」と述べた。事業主体は道で、畑支庁長と中田敬人函館土木現業所長も、地元住民らの熱意をたたえ「1日も早い完成を目指したい」と述べた。

 文教通の整備は1994年度までに一部区間が完了したまま中断。函館ラ・サール高校グラウンド横までの一部に高架橋を渡す予定だったが、騒音など周辺環境への影響が懸念されることから、2001年に箱型のコンクリート構造物を埋め込んで中を車が往来できる「堀割ボックスカルバート」方式に変更した。本年度は用地測量や地質調査などを行い、10年度の工事着手、13年度の整備完了を目指す。(高柳 謙)


◎農作物への影響懸念…道南の長雨
 函館・道南地方では今月に入り、雨の日が続いている。函館海洋気象台によると、9日現在、函館で降水を観測しなかったのは1、2日のみで、3日から9日まで7日間連続で雨が降っている。先月まで好天だったため農業被害は深刻化していないが、今月中旬ごろまではぐずついた天候が予想され、農作物の病気発生や畑の冠水などが心配されている。

 同気象台によると、8月初旬の函館の日降水量は平均で4ミリ程度。しかし、ことしは、5日に28・5ミリに達したのをはじめ、9日午後7時現在で27・5ミリ、4日16・5ミリ、7日15ミリなど、連日まとまった雨が降り続いている。

 日本海北部に前線が停滞しているのが原因。今後も大気が不安定な状態が続き、この先1週間程度は曇りがちで雨が降りやすい天候が予想される。場所によっては1時間に25ミリ以上の強い雨が降る恐れがあり、同気象台は浸水や土砂災害などに注意を呼び掛けている。

 渡島管内では7月28日の大雨で、函館、北斗、七飯、森、八雲の2市3町で畑が冠水したり農業用ハウスが浸水。ばれいしょ、カーネーションなどの一部作物に被害が出た。渡島支庁は「生育状況は平年より早めに推移していたため、被害はないが、今後も日照時間が少なく降水量が多ければ問題」と雲行きを気にする。

 渡島中部農業改良普及センター(北斗市)では、農家への営農対策情報の提供や指導を徹底。「生育は足踏み状態。多雨で湿度が高まると病気発生の可能性も高まる」とし、各戸に排水対策や観察、病気防除を促している。(原山知寿子)


◎社保事務局装い不審電話 函館でも多発、注意喚起
 「道社会保険事務局」を名乗ってATM(現金自動預払機)を操作させようとする電話が、函館でも相次いでいる。函館社会保険事務所(千代台町)に寄せられた相談は、9日だけで60件にのぼった。同事務所は「社会保険事務所がATMを操作させるようなことは絶対にない」とし、注意を呼び掛けている。

 同事務所によると、電話は自動音声のようで、最初は女の声で「特別医療補助金が支給される」、その後、男の声で「銀行窓口は混んでいるので、近くの大型スーパーのキャッシュコーナーへ行ってください」などと言い、ATMを操作させようとするという。

 8日、道社会保険事務所が報道機関などを通じて注意を呼びかけたところ、9日、同事務所にも不審電話を受けたという相談電話が寄せられ始めた。これまでのところ、実際に金を振り込んだなどの被害報告はないという。同事務所は10日にも、渡島・桧山管内の全市町役場に対して、注意喚起と情報提供を促す。

 同事務所は「不審電話の相談はあるが、これほど集中するのは初めて」とし、「『特別医療補助金』自体の存在もないので注意を」と話している。