2007年8月17日(金)掲載

◎企画・都市エリア研究のいま(1)ウガノモクに抗肥満作用
 【研究テーマ1・特殊成分の組成・ゲノム解析・連鎖型マリンガーデンシステムの構築】

 2003年度にスタートした都市エリア産学官連携促進事業の一般型では、ガゴメ(トロロコンブの仲間)の粘り成分で抗免疫作用があるとされる粘性多糖類「フコイダン」の大量生産に向け、そのライフサイクルの解明や陸上栽培技術の確立を図った。その成果を基に、他の機能性成分の抽出方法や、循環型の栽培技術確立を目指す第1テーマでは、近海の未利用海藻ウガノモクが、抗肥満効果が高い「フコキサンチン」を多量に含む海藻であることを突き止めた。

 近海には、チガイソやマツモなど、未利用海藻が多く生息している。長く雑海藻として扱われていたが、ガゴメはフコイダンにより脚光を浴び、さまざまな形で商品化もされた。発展型では、次なる機能性成分として、茶色の海藻「褐藻類」に含まれている色素、フコキサンチンに着目した。 これまでの研究でフコキサンチンには、抗肥満活性や抗糖尿病活性があることを確認。近海の海藻の乾物重量に対するフコキサンチンの割合を分析すると、ワカメやヒジキが0・3%ほどであるのに対し、ウガノモクには0・8―1・0%ほど含まれていることが分かった。

 また、ウガノモクの名は、宇賀浦に由来し、まさに「函館生まれ」。今後の研究で、生理機能へ与える影響の解明が進むと、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)などの生活習慣病対策に効果の高い「函館発信の機能性食品」としての将来性も有望だ。

 一方、道立工業技術センターでは、豊かな海洋資源を維持しながら有効利用していくための研究も進む。陸上栽培技術の成果について、吉野博之研究開発部主任研究員は「水温や光の強さ、栄養成分などを調整し、最適な栽培条件の設定が可能な水槽内では、ガゴメ中の粘性多糖類の含有量をコントロールすることもできる」と話す。

 水槽では、ガゴメを、アワビやナマコなどの生物と共生させている。アワビの排せつ物に含まれるアンモニアは、水中の微生物により硝酸に分解され、その硝酸を吸収してガゴメは成長を続ける。食物連鎖型のサイクルを利用した循環栽培システムを造り上げた。今後は、コストダウンを図るため、地下水による水温維持方法の検討など、実用化に向けた研究も進められる。

 これらの研究は「マリン・ガーデン」の構築に向かっている。ブドウ園からより良いブドウを収穫し、ワインを作るように、より良質なガゴメ種苗を生産し、海中に豊かな藻場を形成することや、フコキサンチンやフコイダンを一番効率的な時期に海藻から抽出することも可能になる。

 北大水産科学研究院の安井肇・准教授は「道南地域の海は非常に能力が高い。豊富な海洋資源と、他の地域がまねできない自立できる手法を持っている」と話す。優秀な生産者、それらを加工する製造業者、より品質の高い技術を目指し基礎研究を進める学術機関がある。豊かな海と同じように、産学官の連携が着実に実を結び始めている。

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 「マリン・イノベーションによる地域産業網の形成」をメーンテーマに、2006年度から研究が進められている都市エリア産学官連携促進事業発展型。参画企業も70社を超え、函館ならではの産業網が構築されつつある。中核機関である道立工業技術センターと北大大学院水産科学研究院から、発展型1年目で得られた最新の技術成果を紹介する。(今井正一)



◎渡島広域市町村圏振興協議会、第5次長期計画策定へ
 渡島管内11市町で組織する渡島広域市町村圏振興協議会(会長・西尾正範函館市長)は本年度、第5次長期計画となる広域行政圏計画を策定する。計画期間は来年度から10年間。各市町の長期計画や総合計画を基に、産業や交通などの分野ごとに主要施策を盛り込み、渡島圏域の振興・発展の指針を示す。同協議会事務局の函館市企画部が、各市町と連絡調整をしながら策定作業を進める。

 道内には20の広域行政圏があり、道はすべての圏域で、同様の長期計画を策定するよう求めている。道南では渡島のほか、檜山広域行政組合が振興計画を策定する。

 函館市地域振興室によると、道が示した指針では、長期計画は序論、基本構想、基本計画の大きく3部で構成する。序論は圏域を取り巻く諸情勢や計画策定の目的、意義を記す。基本構想は圏域全体の将来像や目指す姿、今後の方向性を示し、目標を掲げる。基本計画では産業や交通・情報、保健・医療・福祉、教育・文化などの分野ごとに主要施策を記す。

 渡島では2015年度の北海道新幹線開業を見据えた圏域の発展、道縦貫自動車道や函館新外環状道路などの道路網整備、農業や漁業、商工業など各種産業の振興など、地域が連帯して取り組む懸案が少なくない。

 同協議会は1971年に発足し、これまでに第1次から第4次までの長期計画を策定。98年に策定した第4次計画は本年度で終了する。圏域を活力に満ちた地域とし、次世代に引き継いでいくための振興・発展の施策を示してきた。

 同協議会事務局は「行政が連携して地域の懸案に対応し、発展を図っていけるよう、各市町の総合計画の中から施策を網羅していきたい」と話している。(高柳 謙)


◎市環境部、燃やせないごみの指導強化始まる
 燃やせないごみの分別を徹底させようと、函館市環境部は16日、アパートやマンションなど市内の集合住宅で分別指導をスタートさせた。全市的な指導は今回が初めてで、約7300棟が対象。分別が不十分な袋は回収せず、警告シールを張って住民に出し直しを促す。10月10日まで行う。

 市は2005年4月から、繊維類や50センチ未満のプラスチック製品、皮革、ゴム類を「燃やせないごみ」から「燃やせるごみ」に変更。2年以上が経過し、おおむね定着してきた。しかし、空き缶やペットボトル、衣類などが燃やせないごみに混入するなど、誤った分別も根強く存在するため指導強化に踏み切った。

 同部はこれまでにちらしを配布して事前周知を図ったほか、集合住宅の管理責任者や仲介業を行っている不動産業者にも協力を求めた。

 この日は収集日となっている石川町や亀田港町、昭和町など約680世帯の集合住宅を対象に清掃指導員が分別状況を点検。別種類のごみが混入している袋には警告シールを張り、集合住宅の全世帯に「指導ちらし」を配った。同部リサイクル推進課は「燃やせないごみの正しい分別方法を理解してもらい100%定着するよう指導していく」と話している。(鈴木 潤)


◎企画・この道を選んで(3) 鮮魚店 松岡厚子さん
 「いらっしゃい。まいどー」。松岡厚子さん(56)は、函館市の中島廉売にある鮮魚店「佐藤今朝治郎商店」(中島町22)を30年間経営してきた。圧倒的に男性が多い業界だが、従業員も全員女性。自家製のみそ漬けや松前漬けなどが人気で、地元だけでなく、遠方からも多くの人が買いに来る。「お客さんに『おいしかったよ』と言われたときは本当にうれしい。やりがいを感じる」と目を細める。

 1947年に父佐藤今朝次郎さんが創業。30年前に今朝次郎さんが亡くなると、一人娘の松岡さんが跡を継いだ。「もともと店を継ぐ気はなかったが、父が頑張って続けてきた店を守るのは自分しかいないと決意した」と当時を振り返る。

 店を継いだ直後は、父の味を再現することに苦労した。常連客から「味が少し違うね」と言われ、悔し涙を流した。「父の味にたどり着くまで2年かかりました。しょうゆを入れ過ぎて味が濃くなったり、反対に薄味になり過ぎたり、味にむらが出て苦労した」

 函館水産物商業協同組合によると、市内にある鮮魚店は約250店。女性が経営する店は1割にも満たないという。松岡さんは「夫には理解してもらっている。一緒に仕事すると逆にやりにくいので…」と苦笑い。

 魚の入った約20キロの箱を1人で運ぶ時など、男手の必要を感じることは少なくない。しかし女性だけの力で30年間仕事をこなしてきた。「力作業は男性にかなわないけれど、女性ならではの細かい気配りでカバーしてきた」。一番の武器は持ち前の明るく気さくな性格。客とのコミニュケーションを何よりも大切にしている。「周りの人に支えられてここまでやって来られた。人にはいつも笑顔で接するようにしている」

 ここ数年、不況の影響で客足は減少気味で、創業当時の活気が失われつつある。それでも「他の店も条件は同じ。買いに来てくれる人がいる限り今まで通り一生懸命いい物を作って、多くの人が喜ぶ顔を見たい」と店に立ち続ける。(小林省悟)


◎森町教育長に長崎収入役
 【森】森町の教育長に16日、前収入役の長崎一英氏(59)=清澄町24=が就任した。長崎氏は15日付で収入役を辞職。16日の町議会第3回臨時会で教育委員に任命され、続く教育委員会で教育長に互選された。

 臨時会は、長崎氏の教育委員任命に同意。あいさつした長崎氏は「着任の重さを痛感し、身の引き締まる思い。限りない教育の発展を目指し、誠心誠意取り組みたい」と述べた。

 任期は2009年5月9日までの約2年。地方自治法の一部改正を受け、各自治体は収入役を廃止しており、長崎氏は道南ただ一人の収入役だった。長崎氏の辞職により町は収入役を廃止した。

 長崎氏は1947年森町生まれ。70年国士舘大体育学部を卒業後、同年から町教委社会教育係として21年間勤務した後、農林課長、企画課長、総務課長を経て2005年5月、収入役に就任した。


◎加藤組土建・中国の会社と新会社
 建設土木業の加藤組土建(加藤健太郎社長)は16日、中国・天津の持ち株会社「中国天津市炳輝工貿有限責任公司」(王東風総経理)と、合作方式による新会社「加藤環保科技(天津)有限公司」を設立しと、発表した。加藤組土建が、濁水処理やエマルジョン燃料(水と油の混合燃料)などの環境事業に関する技術を提供し、将来的には専用の機器や薬剤の製造を中国で展開することを目指す。

 急速な経済成長を遂げる中国で環境保護対策が問題視される中、加藤組土建は函館市と友好都市協定を結ぶ天津市の企業との事業展開を模索。新会社の設立にあたっては、加藤組土建が環境事業の技術を提供し、中国天津市炳輝工貿社が設備を含めた資金を提供することで、今月3日に両者間で合意書の調印を交わした。

 新会社の主な事業内容は、(1)濁水処理設備プロジェクト(2)エマルジョン燃料システムプロジェクト(3)環境全般にかかわる新規事業の追加―の3本柱。

 (1)では、加藤組土建の関連会社「カドック」が独自に開発した汚水処理凝集剤「カドクリーン」と、その専用処理機「ABCシステム」を使用。「カドクリーン」は国内産の鉱物を主原料とした無機性で、水の酸性度を示すpH(ペーハー)値の変動が少なく、脱水性に優れているなどの特徴があり、従来より処理に要する時間や費用の低減が期待できる。

 (2)は加藤組土建が販売代理契約を結ぶ市内の業者から添加剤と機材を仕入れ、中国に輸出。すでに、道内の農家などで実用化されていて、NOx(窒素酸化物)やPM(粒子状汚染物質)の低減、通常燃料とほとんど変わらない燃焼効率が実証されている。

 新会社での本格稼働に向け、各プロジェクトの関連薬剤・機器6セットずつを受注し、販売価格は約5000万円。また、11月ごろから中国への技術者派遣と、逆に中国からの研修受け入れを定期的に繰り返しながら技術力の向上を図り、2年後をめどに中国での現地生産につなげる方針だ。

 加藤社長は「北京五輪後のさらなる発展を見据えると、せっかくのチャンスを逃すまいとチャレンジを決めた。互いの良いものを持ち寄る合作という形態であればリスクも少なく、事業の成功にとどまらず、新たな分野への進展も視野に入れていきたい」と話している。(浜田孝輔)