2007年8月19日(日)掲載

◎湯の川温泉いさり火まつり開幕
 函館の夏まつりのラストを飾る「第42回はこだて湯の川温泉いさり火まつり」(実行委主催)が18日、函館市内の湯の川温泉街を会場に開幕した。初日はメーンイベントの花火大会が華やかに夜空を彩ったほか、松倉川での幻想的な灯篭(とうろう)流しが来場者を楽しませた。

 午後6時45分から始まった灯篭流しでは、約500個の灯篭のろうそくに火がともされ、次々と川面に浮かべられた。ゆらゆらと水面を照らしながら河口に向って流れ、川岸に集まった観客を魅了した。

 続いて行われた花火大会では、イカや猫をかたどった愛らしい創作花火や、海面からダイナミックに広がる水中花火など、カラフルな光のアートが次々と披露された。ナイアガラの滝の上をイカの姿の花火が色を変えながら移動する大胆な仕掛けが登場すると、観客からはどよめくような歓声がわき起こった。

 最終日19日は、午前10時から湯浜公園(湯川町3)を会場に、いさり火味覚・陶器市、うまいもの市、旬市、縁日などの多彩なイベントを開催。同3時半からは湯の川温泉の源泉を湯倉神社(同町2)に奉納する「いさり火献湯行列」、同4時からは「いさり火仮装行列」。同5時からは同神社境内で2組のゲストによるライブステージが行われ、まつりを締めくくる。(小川俊之)


◎企画・都市エリア研究のいま(3)水分種把握し乾燥効率化
 研究テーマ3「機能性と感質に基づいたフードデザインシステム」

 食品中の水分種の分布状態を把握し、温度や湿度、風速をコントロールすることで、効率良く高品質の乾燥製品を製造することが可能となった。第3テーマでは、乾燥工程中に食品の機能性や品質を向上させるフードデザインシステムの技術開発を目指している。産学官連携促進事業の一般型で得られたイカの高品質乾燥のノウハウを生かし、他の水産物や、道内2番目の都市エリア事業、帯広市の十勝エリアとの連携で農畜産物への応用が図られている。

 道立工業技術センター研究開発部装置技術科の小西靖之主任は「例えば、スルメなら、保存性や色を白くしたいといった目的に応じた製品化ができる」と話す。食品中の水分には、束縛の度合い(水の抜けやすさ)が異なる水分種が存在する。イカの場合、乾燥工程の前半は、弱束縛水分種が関与し、後半では強束縛水分種がかかわる。細菌数や色の変化も乾燥中の水分種の違いと対応していることが分かった。

 化学工学の分野で使用される解析方法を用いて、乾燥工程中の水分状態を把握することで、適切な温度や湿度、風速を装置で制御する。サケトバの乾燥工程では、乾重量含水率が高い領域では弱束縛水分種、含水率52%を境に、強束縛水分種に分布が変化することが判明し、品質を維持したまま、乾燥時間の短縮を図った。

 また、中華料理の食材となる乾燥アワビは、天日乾燥で2カ月から2カ月半程度の時間がかかるが、湿度をうまく制御し、2分の1程度に工程時間を短縮。品質テストも良好な結果が得られ、味や外観の均一化を図ることに成功した。熟練の技術が必要な天日乾燥と違い、カビの発生などのリスクを抑えることも可能だ。

 農畜産物への応用では、加工方法やニーズ、品質評価など、帯広畜産大を中核研究機関に財団法人十勝圏振興機構(帯広市)が進めている十勝エリアに協力を求めた。ポークジャーキーなど畜肉加工や、ジャガイモやカボチャなど農産物の乾燥にも取り組む。農畜産物の分野でも、水産物と同様に、水分種の分布を把握することで、最適な乾燥条件を見いだすことができるという。

 小西主任は「農、水、畜産物の代表的な食品の傾向をつかみ、最適な条件を見つけ、最終的には汎用的な条件としていきたい」と語る。今後、食品ごとのデータベース化に取り組むという。水分種を把握することは、乾燥だけではなく、加熱や冷却、冷凍技術にも応用できる。

 事業で開発した乾燥装置には、調味成分を加味する機能もあり、乾燥工程中に製品の高付加価値を図ることも可能。食品製造技術向上への波及が期待され、「食の宝庫」北海道の1次産業産品全体の魅力向上につながっていく。(今井正一)


◎依然平年より早く推移…農作物生育状況
 渡島・桧山両支庁は、15日現在の管内の農作物の生育状況を発表した。気圧の谷の影響で降水量が平年よりかなり多く、日照時間は平年を下回ったが、主要作物の生育は依然平年より早く推移。しかし、ジャガイモや牧草の収穫作業など、一部作物に長雨による作業の遅れが出ている。

 渡島の水稲は出穂期で、平年より3日早く、草丈、葉の数とも平年並み。ジャガイモは生育が平年より3日早いが、収穫作業の進ちょく率は1割ほどで、長雨で作業が進まず、平年より2日遅れている。

 牧草(オーチャードグラス)は2番草の収穫が平年より3日早いが、降雨で作業がやや停滞傾向にある。リンゴ(つがる)は平年より6日早く、果実の体積も平年より2割ほど大きく、生育は順調。

 桧山は水稲が出穂期に入り、生育は平年より2日早いが、一部で降雨と日照不足で開花の不ぞろいなどの影響が出ている。マルチ栽培のジャガイモは長雨のため平年より12日収穫が遅れている。牧草の収穫作業は平年より1日早いが、雨で進ちょく状況は緩慢という。(原山知寿子)


◎芋焼酎「喜多里」 町内限定1升瓶を発売…札幌酒精工業厚沢部工場
 【厚沢部】札幌酒精工業厚沢部工場(岩崎弘芳工場長)はこのほど、厚沢部産の焼酎用サツマイモ・黄金千貫(コガネセンガン)を原料とする本格芋焼酎「喜多里(きたさと)」の1升瓶(1・8リットル)を町内限定商品として新発売した。

 同工場は5月に主力商品の720ミリリットル瓶(1000円)を初出荷。口当たりの良いまろやかな味覚が全道で好評を呼んでいる。町内でも焼酎を愛飲する住民を中心に「喜多里」を支援する動きが広がっている。

 地域住民への感謝を込め、同工場は1升瓶6000本を町内限定商品として製造。価格も地元還元の一環として720ミリリットル瓶より格安に設定した。

 新たにデザインした1升瓶のラベルは、サツマイモの葉と広大な厚沢部の農地をデザインした趣あるものに。町内の焼酎愛好家からは「本格焼酎の風格があるラベルになった。一升瓶を片手に焼酎を酌み交わせばピッチも上がりそう」との声も上がっている。

 小売り希望価格は1980円。町内の酒店や道の駅などで販売している。(松浦 純)


◎企画・この道を選んで(5)…海上保安官 西原友里さん(22)大好きな海 私が守る
 「女性も男性も『海上保安官』に変わりはない」―。函館海上保安部の巡視船「つがる」(3221トン、松本宗船長ら39人乗り組み)の航海士補、西原友里さん(22)は人懐っこい笑顔でそう語る。船橋での操舵(そうだ)や見張りが主な担当。158センチの小柄な体で、全長100メートル以上ある大きな船内を縦横無尽に駆け回る。

 生まれ育った長野県小布施町は周囲を山に囲まれている。それだけに海へのあこがれは人一倍大きかった。入庁のきっかけは「兄が消防士だったこともあり、人を助ける仕事がしたかった。泳ぎや体力には自信があった」。小学校時代から始めた水泳は全国大会への出場歴もある。

 地元の高校を卒業後、京都府舞鶴市にある海上保安学校へ。1年間、船の運航に必要な基礎知識や武道を学んだ。遠泳や逮捕術など厳しい訓練も多く「学校では男も女も関係ない。しゃしゃり出るタイプの性格だったから、その方がよかった」と事もなげに言う。

 つがるが活躍する舞台は、貨物船や漁船の往来が多い津軽海峡がメーン。航海は長期間に及ぶこともあり、停泊中も緊急出動に備えて当直が船内に待機する。西原さんは1カ月の約3分の2を船上で過ごす。厳しい任務だが「現場にいられる船が好き。やっぱり海にいたいと思う」と言い切る。

 それでも、自分が女性であることを恨む時も。同期の男性保安官はすでに小型の巡視船艇に乗り組み、第一線の現場で取り締まりや取り調べに当たっているからだ。「任される仕事も少なく、男の方が周りも使いやすいのかも…」と悩むこともある。大型の巡視船は女性用の設備が整う半面、小回りが利かず、海難や事件現場ではヘリや小型船のサポート役に回ることが多い。

 全国に約1万2000人いる海上保安官のうち、女性はわずか250人足らず。「まだまだ男性社会と言わざるを得ない」(函館海保幹部)。西原さんは「今はできることをやるしかない」と、持ち前の負けん気で率先して仕事を増やしていった。「上司や同僚から変に気を遣われることが嫌。『女性だから』とは考えないことにしている」

 腕立て伏せ、腹筋、ランニング…。船務の合間を縫ってのトレーニングは欠かせない。「鍛えておかないと訓練で困るのは自分だから」。“性差”という荒波を乗り超えようと心身を鍛える日々。「いつかは船長に」という夢に向かって西原さんはかじを取る。(森 健太郎)


◎中空土偶 教育に活用を…フォーラム
 中空土偶「国宝指定記念フォーラム」(はこだてクロスロードミーティング実行委主催)が18日、函館市末広町の五島軒本店で開かれた。文化庁文化財部美術学芸課主任文化財調査官の土肥孝さんが「中空土偶と国宝を活(い)かしたまちづくり」と題して基調講演し、国宝指定を受けた中空土偶の特徴や価値について語った。

 「時空を超えたふれあいの道」をテーマに、この日、市地域まちづくりセンターで開かれた「はこだてクロスロードミーティング」の協賛事業。市民ら約300人が聴講し、縄文時代の生活文化に思いをはせた。

 土肥さんは土偶を直立させようとした方法が、胴の面積を大きくしたり、支え棒を用いるなど多岐に渡ることを説明。「土偶は一つの目的で作られたわけではなく、各時期にさまざまな目的があった」と推察。中空土偶についても男女双方を表しているとの説を示した。

 また、縄文時代の出土品で国宝に指定されている3点のうち、発掘場所が現存するのは中空土偶の発掘場所だけと紹介。「非常に貴重であり、国宝指定を契機に、郷土の教育に存分に活用してほしい」と提言した。

 この後、土肥さん、版画家の佐藤国男さん、市教委生涯学習部参事の阿部千春さんが「縄文土偶の謎に迫る」と題して語り合った。(原山知寿子)