2007年8月20日(月)掲載

◎企画・都市エリア研究のいま(4)鮮度保持の決め手は酸素
【研究テーマ4「生体機能保持メカニズムの解明と応用」】
 こりこりとした食感、新鮮さを証明する透明感―。函館の代名詞ともいえるスルメイカの品質保持技術の開発を目指し、取り組んできた一般型では、鮮度保持の決め手が酸素であることを突き止めた。「食品の品質保持=酸化防止」として、真空パックや窒素ガスで満たすなどの従来の方法と、180度転換した発想だ。他の魚介類や海藻類にも応用が進む。

 北大大学院水産科学研究院海洋応用生命科学部門の埜澤尚範准教授は、酸素呼吸によりエネルギーを生み出す、細胞組織中のアデノシン三リン酸(ATP)量の低下を防ぐことに着目。「活魚」と「鮮魚」と呼ばれる状態の境界は、死後硬直の前後にある。心臓停止後、血液を通じて酸素供給がなくなることで、組織細胞の活動が停止。その後、死後硬直が起こるが、酸素を供給し続けることで、細胞の呼吸を助け、活魚の状態を維持することが可能となった。

 幅2ミリに切ったそうめん状のイカの刺し身を使った実験では、窒素ガスパックや空気パック中に保存したものは、ATP量は、わずか半日で激減し、冷蔵や氷で冷やした場合の保存期間と大差はなかった。酸素パックではATPの減少を緩やかにすることが可能で、乳酸の発生も抑えることができた。同様に、ヒラメの刺し身でも鮮度保持効果を確認した。

 この酸素パックを利用した生存保蔵の技術は、開封時に活魚の状態の鮮度を保つことができ、沿岸で取れた魚介類をパック化することで、新鮮なまま輸送することが可能となる。埜澤准教授は「酸素に触れることは、食品業界では悪いことのイメージが強い。これまでの発想を変えたい」と話す。

 また、道立工業技術センター研究開発部水産食品加工科の吉岡武也科長は、これらの成果をウニとワカメの品質保持に応用。塩水と酸素を詰めたパックでそれぞれ、品質劣化を調べた。

 ミョウバンで固めた折り詰めのウニは、品質劣化を防ぐことができるが、風味が損なわれてしまう。逆に塩水パックのウニは、風味は良いが、異臭や水の濁りが発生するため、流通に不向きというデメリットがある。酸素を充てんした塩水パックを利用すると、におい、水の濁りとも酸素なしと比べ、鮮度を2倍の8日間保つことに成功。

 北斗市でも年数トンの水揚げがあるワカメは、近年サラダ用として、生鮮品が注目されている。品質が劣化したワカメは、ボイル加熱すると鮮やかな緑色に変化しなくなるが、酸素パックでは、その劣化を防ぎ、鮮度を維持することができた。

 イカや魚類だけではなく、棘皮(きょくひ)動物のウニや海藻類でも鮮度保持の長期化が可能となった。吉岡科長は「酸素を上手に使うと水産物の鮮度低下を広く防ぐことができる」と話す。今後は流通形態に応じた包材開発など、関連する商機は多い。

 鮮度保持技術は「理論的には同じはず」(埜澤准教授)という生殖医療の分野にも応用が期待される。水産物の高付加価値化の技術が、移植用臓器の運搬技術など、幅広く応用されるチャンスを秘めている。(今井正一)


◎植物園のサルに果物入りの氷をプレゼント
 「夏バテ気味のおサルさんに氷のデザートをプレゼント!」。函館市営熱帯植物園(湯川町3)で19日、園内で飼育されているサルにバナナやリンゴなど果物を封じ込めた氷を贈る「サル山アイス・フルーツショー」が開かれた。

 同園を管理・運営するNPO法人(特定非営利活動法人)函館エコロジークラブが夏バテ気味のサルを元気づけ、反応を観察して生態を学ぼうと企画。開園以来初の試みで全国でも珍しいという。氷はバケツに水を張り、3日間かけて冷凍。中にはサルの好物のバナナやリンゴ、ブドウ、ニンジンが入っていて、半透明の氷の中からうっすら姿が見える。

 サルたちは入れ替わり立ち代わり氷に近づき、いろいろな角度からのぞき込んで果物を掘り出そうと悪戦苦闘。高いところから落下させて氷を割り、取り出すことに成功し、温泉の湯で果物を温めて食べる姿も見られた。

 同NPOによると、同園では現在117頭を飼育。本来サルは冷たい水や氷が苦手という。この日は晴れ間が広がる汗ばむ陽気で、両親、祖父母と来園した函館北美原小2年の佐藤優梨奈さんは「暑いからおいしそうに食べているように見えた」と笑顔で話していた。

 26日、9月1、9日にも開催される。(宮木佳奈美)


◎函館市総合福祉センターまつり盛況
 第14回函館市総合福祉センターまつり(実行委員会主催)が19日、同市若松町の同センター(あいよる21)で開かれ、約4000人の来場者でにぎわった。福祉関係団体とボランティアがつくり上げる祭典で、バザーやミニコンサート、福祉相談、介護予防教室など多彩な催しが繰り広げられた。

 総合福祉センターの役割を理解してもらい、一般市民と障害者・福祉団体関係者が手を携え、地域福祉を推進、向上させていく目的で、毎年開催している。

 屋外の多目的広場には焼きそばやタコ焼き、ホタテ焼き、生ビールなどの露店がずらりと並び、盛況。特設ステージではバンド演奏や手話で歌詞を紹介するフラダンス、自転車のオークションなどが行われ、子供用の自転車が10円で落札されるなど、笑いに包まれた。

 館内では各種団体による農産物や衣料、雑貨、手芸品などのバザーが行われ、午前中で品切れの店もあった。食事コーナーは満席で、シルバー人材センターの会員による展示即売や総合福祉センターの活動を紹介するパネル展なども開かれた。

 毎年訪れているという市内千代台町の自営業の男性(79)は「全盲の男性の方が抹茶を振る舞ってくださり、感激した。さまざまな分野、団体の人が集まり、障害のある人を支えていくことが一番大事だと思う」と話していた。

 谷口利夫実行委員長も「晴天に恵まれ、来場者は昨年を500人上回った。関心を持って催しや展示を楽しんでもらい、あいよる21が市民福祉の拠点であることを理解していただけたと思う」と笑顔だった。(高柳 謙)


◎「蘇る北の縄文ロード展」閉幕、1万人の大台に
 市立函館博物館(長谷部一弘館長、青柳町17)で国宝「中空土偶」などを公開した特別企画展「蘇る北の縄文ロード展―発掘された縄文の世界―」が19日、閉幕した。45日間の期間中、来場者は、これまでの特別企画展の最高を大幅に上回る1万804人と、1万人の大台に達した。

 同企画展は南茅部地区の著保内野遺跡から出土した中空土偶が道内初の国宝に指定されたことを記念して開催。開幕日の7月1日には、高橋はるみ知事や中空土偶の発見者、小板アエさんらが出席し、開会セレモニーが開かれた。

 期間中の平均来場者は240人と、ほとんどの開館日で3けた台の来場を記録した。最終日の19日は期間中最高の808人が来場し、1万人を越えた。市内の家族連れや考古学ファンだけでなく、道内各地や道外からの観光客が比較的多かったのが今回の特徴で、国宝効果が表れた結果となった。

 長谷川館長は「記録と記憶に残る特別企画展で、1万人の方が来てくれたことは大変うれしい。今後も皆さんに喜ばれる企画展を開いていきたい」と話した。また、18日に開かれた中空土偶「国宝指定記念フォーラム」で講演した、文化庁文化財部美術学芸課の主任文化調査官、土肥孝さんは「国宝効果もあるだろうが、30万都市の博物館で1万人を越える来場はすごいこと。今後、地元のさらなる盛り上がりを期待しています」と話した。

 同企画展は、中空土偶のほか、北海道と青森、岩手などの北東北に形成された縄文文化を紹介。土器や刀形石器、装飾品など国や自治体の重要文化財に指定された埋蔵文化財を中心に約1000点を展示した。(鈴木 潤) 

 ○…特別企画展「蘇る北の縄文ロード展―発掘された縄文の世界」は19日、1万人の来場を達成した。記念すべき1万人目の来場者となったのは市内神山町の佐々木昭雄さん(66)で、同博物館から記念品が贈られた。

 佐々木さんは妻の多恵子さん(62)とともに午前9時半ごろ来館。職員から1万人目の来場者であることを告げられると「本当に」と驚いた。その場で記念品贈呈式が開かれ、多賀谷智教育長から中空土偶の写真パネルなど記念品が手渡された。

 佐々木さんは「前々から中空土偶を見たいと思っていた。最終日は混雑すると思って早めの時間に来たが、まさか自分が1万人目になるとは思っていなかった。夢のようです」と話していた。(鈴木 潤)


◎いさり火まつり最終日、感謝込め献湯行列
 函館の夏祭りの最後を飾る「第42回はこだて湯の川温泉いさり火まつり」(実行委主催)は最終日の19日、源泉をみこしで運び神社に奉納する「いさり火献湯行列」などが行われた。

 湯元ホテル入川(函館市湯川町3)で行われた温泉採湯式では神事を執り行ったあと、各旅館やホテルが持ち寄った源泉をみこしの中のタンクに注ぎ入れた。大桃泰行実行委員長は「今日は大変いい天候に恵まれた。温泉への感謝の気持ちを忘れずに、しっかりとみこしを運んでほしい」とあいさつした。

 みこしの担ぎ手には約70人が参加。2度の休憩を挟みながら、同ホテルから湯倉神社(同町2)まで約3キロを約1時間半かけ「えいやー」など威勢のよい掛け声とともに練り歩いた。沿道には観光客や地元住民などの見物客も姿を見せ、写真を撮ったり手拍子を送るなどしながらまつり気分を味わっていた。

 また、今年で2回目となる「仮装行列」も献湯みこしと同じコースをパレード。10組約60人が奇抜な衣装でまつりに花を添えていた。(小川俊之)



◎中空土偶 教育に活用を…フォーラム
 中空土偶「国宝指定記念フォーラム」(はこだてクロスロードミーティング実行委主催)が18日、函館市末広町の五島軒本店で開かれた。文化庁文化財部美術学芸課主任文化財調査官の土肥孝さんが「中空土偶と国宝を活(い)かしたまちづくり」と題して基調講演し、国宝指定を受けた中空土偶の特徴や価値について語った。

 「時空を超えたふれあいの道」をテーマに、この日、市地域まちづくりセンターで開かれた「はこだてクロスロードミーティング」の協賛事業。市民ら約300人が聴講し、縄文時代の生活文化に思いをはせた。

 土肥さんは土偶を直立させようとした方法が、胴の面積を大きくしたり、支え棒を用いるなど多岐に渡ることを説明。「土偶は一つの目的で作られたわけではなく、各時期にさまざまな目的があった」と推察。中空土偶についても男女双方を表しているとの説を示した。

 また、縄文時代の出土品で国宝に指定されている3点のうち、発掘場所が現存するのは中空土偶の発掘場所だけと紹介。「非常に貴重であり、国宝指定を契機に、郷土の教育に存分に活用してほしい」と提言した。

 この後、土肥さん、版画家の佐藤国男さん、市教委生涯学習部参事の阿部千春さんが「縄文土偶の謎に迫る」と題して語り合った。(原山知寿子)