2007年8月22日(水)掲載

◎函館昭和小でプール開き
 函館昭和小学校(児童509人)のプール開きセレモニーが21日、校舎前に新築した同校プールで開かれた。亀谷幸夫校長と函館市教委の小山みゆき教育指導課長、佐々木或太児童会長がテープカット。児童たちは元気に泳ぎ、落成を祝った。

 老朽化した同校の建て替えとともに、プールも1億1600万円かけて設置した。ことし4月に建設工事に着手し、8月10日に完成。25メートルプールで、幅は4コース取れる8・2メートル。冬期に取り外し可能な屋根付きで、来年度から市内の学校プールの拠点校として活用される予定だ。

 セレモニーには、教員や来賓のほか6年生児童87人が出席。亀谷校長は「函館は海のまちで、水に親しむ機会も多い。安全第一を念頭に、このプールで一生懸命遊んだり泳いだりしてほしい」とあいさつ。小山課長の祝辞に続き、佐々木児童会長は「予想以上に立派なプールでとてもうれしい」と喜んでいた。

 テープカット後には、児童代表が平泳ぎやクロールなどを披露。早速授業も行われた。同校の本年度のプール学習は9月上旬まで続く。(小泉まや)


◎企画・都市エリア研究のいま(6)ガゴメ偽装防止へ技術確立
 【研究テーマ6「生態成分情報による生物種・産地鑑定とトレーサビリティー」】

 函館近海だけが生育に適した環境のガゴメ(トロロコンブの仲間)は、イカに次ぐ地域ブランドとして大きな可能性を秘める。ところで、市場に出回るガゴメは果たして本物なのか。他の水産物も同様だが、商品の信頼性とは何か。安全、安心を求める消費者や生産者を守るため、DNAや成分の分析により産地や真贋(しんがん)を明らかにする取り組みも進められている。

 海藻類も近年、原産地表示が一部乾燥製品や塩蔵製品に義務づけられるようになった。しかし、昆布巻きなどの加工品は主成分だけの表示で、コンブの産地表示はない。乾燥製品でも中国産を国産と偽ることもあり得る。研究を進める道立工業技術センター研究開発部プロジェクト推進科の高村巧科長は「分析技術の確立が偽装品に対する抑止力になる」と意義を語る。

 センターでは、細胞中のミトコンドリアDNAをコンブから抽出し、解析を進めている。ガゴメの場合、他の研究テーマで機能性の解析が進む粘性多糖類が、DNAデータベースを作る上で最大の障壁となった。独特の粘りが、抽出のための試薬の混ざり具合を悪くしていたためだ。しかし、北大の研究で粘性多糖を分解する酵素を発見し、解析が進んだ。これまでにガゴメは約2万塩基の解析に成功。今後、チヂミコンブやトロロコンブなど、他のコンブ類のデータの蓄積も図り、比較検討を進める。

 また、マコンブ中の元素を分析する手法では、国産と外国産の大まかな判別への道筋が立った。主成分のうち、ナトリウムやマグネシウムなどのミネラル成分と、微量に含まれる金属成分などを分析し、散布図を作成すると、国産と中国産、韓国産では分布にばらつきが生まれた。特に金属成分の解析で精度の良い結果が得られる可能性を示した。生育した海水中の成分の違いが原因と考えられる。

 高村科長は「地域からは南茅部や恵山など浜ごとの違いを分析できないかという要望がある。豊漁、不漁の年の違いなど、サンプルを増やし精度を上げていきたい」と意欲を見せる。

 公立はこだて未来大の三上貞芳教授らのグループは、水産物トレーサビリティー(生産履歴)システムの事業化を進めている。生産者情報を入力したQRコード(2次元バーコード)をラベルとして付け、消費者が携帯などで情報を得られるシステムだ。産学官連携促進事業発展型では、ラベル偽造防止のため、隠しコードを埋め込んだ新しいQRコードも開発。今後、国との連携を図り、システムの確立や信頼性向上を目指していく。

 食の安全性や安心にかかわる問題に対する消費者の関心は高い。「一番地味な研究」と高村科長。しかし「函館産のコンブなら安心」と、消費者の信頼を得るには欠かせない。地域の特産を地域の力で守る取り組みは、生産者をはじめ、製品の付加価値を向上させる上で大きな役割を担っている。(今井正一)


◎「認定農業者」渡島管内でも増える
 各種資金や税制上の特例が受けられる「認定農業者」が、渡島管内でも増え続けている。渡島支庁によると、2006年度末現在870(経営体)で、前年度末より199増えた。認定農業者を対象にした国の「品目横断的経営安定対策」事業が、本年度産農作物から始まるなど、国の各種農業者支援施策が認定農業者向けにシフトしているのが要因。担い手の営農力向上を促す国側の施策の流れで、今後も増加が予想されるが、小規模農家が多い渡島管内ではそのペースは未知数だ。

 「認定農業者制度」は、1993年度からスタート。農業者は、各自治体が定めた「農業経営基盤強化促進基本構想」に基づき、5年後の所得や労働時間などの経営目標を定めた「農業経営改善計画」を提出。市町村から「認定」を受ける。

 渡島管内では全11市町で基本構想を策定済み。認定農業者数は95年から2000年までの間に83から391に増え、02年に500を突破して520となり、その後も順調に伸びている。ことし6月末現在でも、前年度末より34多い904に達している。

 前年度末の数を市町別で見ると、七飯町が197で最も多く、次いで八雲町の190、北斗市の157、知内町の96、函館市の95など。道が5年に1回実施している「農林業センサス」でみると、管内の販売農家数は2350経営体。この数字を基にした認定農業者数の割合は、05年度末が28・6%、前年度末で37・0%に上る。

 国の「品目横断的―」は、外国との生産コスト差がある作物に対してや、収入が減少した場合に交付金を支給。対象はこれまでの品目・価格別から、認定農業者かつ経営規模10ヘクタール以上などに変わり、「まんべんなく公平にから努力する農業者に絞った施策」(渡島支庁農務課)。

 認定農業者は5年間の計画期間を終えると、再度認定を受けられる。今後、国、道、市町村は計画の中間年の見直しなど、認定以降の評価、支援体制を進め、担い手側にも意識と経営能力を求める考えだ。

 こうした背景を受け、同支庁は今後も管内の認定農業者は増え続けると予想。ただ「品目横断的―」の対象農産物は、麦やてん菜など管内では生産量が多くなく、農家側の自助努力がより求められる内容だけに、小規模経営が多い管内では、今後も増加の一途をたどるかは不透明だ。(原山知寿子)


◎函館市戦没者追悼式
 函館市戦没者追悼式(市主催)が21日、市総合福祉センター(若松町)で開かれた。遺族ら約400人が参列し、戦争で亡くなった市民5374人の霊を慰めた。

 西尾正範市長は「世界の恒久平和の確立を目指し、戦争の惨禍が二度と繰り返されることのないよう全力を尽くしていくことを誓います」と式辞。

 黙とうをささげた後、遺族を代表して金沢紀子さんが「幾多の困難を乗り越え今日の繁栄を築き、等しく平和で豊かな生活を享受しています。これもひとえに皆さまの尊い犠牲の上にあることを忘れるものではない。大戦が残した教訓を胸に刻み、戦争のない平和な社会を実現するため、たゆまぬ努力をいたしますことを誓います」と追悼の言葉を述べた。

 吟亮流函館吟風会の松岡吟●会長による献吟の後、遺族らが献花台にそっと花を置いて戦没者の冥福を祈った。(鈴木 潤)

●は王へんに秀


◎渡島支庁などが全国ワーストワン浮上に伴う交通事故抑止緊急対策会議
 渡島管内を含め全道各地で死亡交通事故が多発しているのを受け、渡島支庁と道警函館方面本部は21日、函館市美原の渡島合同庁舎会議室で「全国ワーストワン浮上に伴う交通事故抑止緊急対策会議」を開いた。警察、自治体の関係者約20人が出席。事故傾向などを振り返り、各種啓発などの事故抑止策を考えた。

 道内の交通事故死者は14日時点で160人に達し、956日ぶりに全国ワーストになった。これを受け、高橋はるみ知事は15日、「交通死亡事故多発非常事態宣言」を発表。道内自治体に緊急メッセージを伝えるなどし、この日の会議も宣言を受けて急きょ開いた。

 渡島支庁の植松敏夫環境生活課長が「一人一人が交通ルールを順守するよう働きかけ、事故抑止を図ろう」とあいさつし、同本部の伊藤一司交通課長が「極めて深刻な状態。指導、取り締まりを徹底したい」と述べた。

 同本部交通課の湯澤毅統括官が、交通事故死者は20日現在で前年同期より10人多い22人などと報告。国道5号での死者が9人を占め、幹線道路での速度違反の取り締まりや警戒強化を説明した。シートベルト着用やデイライト運動の強化などを進めることなども確認した。(原山知寿子)


◎交通事故多発非常事態宣言で江差で緊急集会
 【江差】高橋はるみ知事が「交通死亡事故多発非常事態宣言」を発表したことを受け、桧山支庁と江差署などは21日、江差町茂尻町の町文化会館駐車場で緊急集会を開いた。地域住民ら約60人が参加し、死亡交通事故の根絶を誓い合った。

 集会には濱谷一治江差町長、工藤昇上ノ国町長、渋田正己厚沢部町長、萬木英雄乙部町副町長と住民、桧山支庁や町役場の職員、江差署員、交通安全団体のメンバーらが集まった。

 交通事故で不慮の死を遂げた人たちに黙とうをささげた後、亀谷敏則・同支庁長は、高橋知事と樋口建史道警本部長が発表した、死亡事故根絶を訴えるメッセージを朗読。「それぞれの職場で事故抑止に取り組み、事故の犠牲者を減らしてほしい」と呼び掛けた。

 芳賀政男江差署長は「死亡事故に直結するスピード違反、飲酒運転、信号無視など交差点違反の取り締まりをさらに強化する。管内の自治体や交通安全団体の連携による街頭啓発活動を強化し、ドライバーや歩行者に幅広く事故防止をPRしてほしい」と訴えた。

 続いて管内の住民を代表し、建設会社、前田組(江差町、前田憲男社長)の山田秀次工事部長が「社会人の一人としてゆとりを持った運転を心掛け、事故のない郷土桧山を目指します」と宣言。全員で悲惨な交通事故の撲滅を誓った。

 会場には同署のパトカーや町役場の啓発車両など約20台も集結。参加者に見送られ、街頭での取り締まりや啓発活動に向けて出発した。(松浦 純)


◎企画 緊急地震速報(2)…「すぐ避難」心構え大切
 ことし7月16日に発生した新潟県中越沖地震(マグニチュード=M6・8)では、同県のほか長野県や関東地方などでも震度3―4を観測。気象庁が10月1日から運用を開始する緊急地震速報を先行利用していた機関では、速報を受信後、揺れに備えた行動や機器の制御が行われた。

 関東地方では、地震で被害をもたらす主要動が到達する約40―50秒前に速報を受信。体育館でスポーツ大会が行われていた東京都足立区のある小学校では、館内に緊急地震速報が流れると同時に、全員が身を低くして転倒しないよう備えた。

 このほか、東京や長野に拠点がある建設会社では、クレーンや重機の作業停止を指示。安全を確認後、作業を再開した。東京のホテルではエレベーターを近くの階に停止させ、乗っていた人を降ろした。いずれも速報に対する心得があったことが次の行動につながった。

 ことし3月25日、石川県輪島市を中心に発生した能登半島地震(M6・9)。同市の震度が6強など、北陸地方で強い揺れを観測。この地震では、気象庁が観測、計算した緊急地震速報の震度や地域は、実際に大きな揺れが発生した地域や震度とほぼ同じだった。

 地震発生当時、県境にある富山県氷見市では、自宅玄関前で掃除をしていた男性の脇でブロック塀が崩れた。急な揺れにどう対処すればよいか戸惑っているうちに塀が崩落したという。塀のすぐそばにいたら惨事を招いた可能性がある。

 だが、緊急地震速報があったとしても、この地域は発表から大きな揺れが来るまでの猶予は10秒以内。家の中から玄関前にいる男性に速やかに情報を知らせ、男性がすぐに避難できるかどうかは、心構えが欠かせない。

 緊急地震速報に対する周知や対応策が徹底されない限り、災害を減らす目的の情報が生かされないばかりか、混乱をきたす可能性も否定できない。

 病院や交通機関の待合室にあるテレビから速報が流れたり、ラジオから伝わってきたりすることもある。秋からは函館でも地上デジタル放送が始まる。受信可能な携帯電話でテレビを見て、速報に触れ、動揺することも考えられる。

 気象庁ではあらゆる場面を想定し、対応策を検討するよう呼びかけ、周知に努めている。緊急地震速報に対してばかりではなく、日ごろの地震、防災対策に意識を高めることが必要だ。