2007年8月23日(木)掲載

◎企画 緊急地震速報(3)…情報を有効なものに
 10月1日から気象庁が運用を始める緊急地震速報。最大震度5弱以上と推定した地震の際、震度4以上の揺れが予想される地域をテレビなどで知らせる。函館市内の病院、学校、老人福祉施設、観光地の集客施設に、緊急地震速報について尋ねたところ、ほとんどが名前や内容は知っていても、施設内での運用や対応については、具体的な話が進んでいない。「始まってみないとどうすればよいか分からない」、「警備会社と話をしなければならないと思っている」という声も聞かれた。

 気象庁や函館海洋気象台では、間近に迫った導入開始に向け、周知活動にけん命だ。情報に対し、正しく対応できない限り、情報は有効なものにならないからだ。

 同気象台では、道運輸局函館運輸支局を通じ、トラック、バス、タクシー協会へ周知を図るほか、道南各地の医師会などに対し、内容や心得を案内する印刷物を配布。気象庁では、人気漫画のキャラクターが登場するちらしを文部科学省を通じ各学校に配布する予定だ。

 これまでに作られた印刷物の種類は数多いが、いずれも徹底しているのは、情報を聞いたときどう動くかという心得だ。同気象台では「緊急地震速報を聞いたときにどう身を守るか普段から備えをしてほしい」と話す。

 車を運転中に情報が流れた場合であれば、周りの車に注意をうながし、緩やかに減速しなければならない。急ブレーキを踏むと追突の恐れがある。大勢の人が居る施設で情報を受け取ったら、周りの人に知らせたり、急いで出口に向かうことはせず、従業員の指示に従うことが大切。施設側は正しく指示を与えることが重要だ。

 家庭の場合、まず火を消すことを考えがちだが、揺れで鍋がひっくり返ったりするなど危険もある。火の元の近くに居ればすぐに消せるが、まずは頭を保護し、丈夫な机の下などに隠れ、慌てて外に飛び出さないようにすることが大切だ。

 同気象台によると、同市美原では、震度4以上の強い揺れは、戦後9回発生している。最近では、2003年9月26日の十勝沖地震で2回、震度4を観測(マグニチュード=M8・0、7・1)して以来、大きな地震は発生していない。だが緊急地震速報で揺れが発生することを知った時、被害を最小限にとどめるためにどうすべきか。万が一の場合の備えが求められている。(山崎純一)


◎組織、能力低下させず合併から22人減員…函館市消防本部
 函館市消防本部は、組織機構再編の中で、業務の効率化を図りながら職員の減員を進めている。合併前の2004年8月に策定した「消防組織機構再編計画」は、合併4地域を含め451人いる消防職員を05年度から10年間で80人減らす内容で、これまでに22人を減員した。同本部は「消防力を低下させずに組織の統廃合を進め、その結果として人員減を図っていく」と話している。

 同本部によると、同計画で示した451人は03年4月1日現在の職員数で、当時の市消防本部と渡島東部消防事務組合の職員を合わせた数。合併時に早期退職などで職員が一定程度減り、合併後の組織機構の再編でさらに減員が進んだ。

 消防組織再編計画は、合併時の3署1支署13出張所体制を2014年度までに2署3支署8出張所体制とする。すでに亀田署と西署を統合し北署とし、東署と湯川出張所を再編し高松町に新しい東署を整備。亀田本町出張所を改築し亀田本町支署に格上げ、旧東署を的場支署に再編するなどしている。

 今後、弥生と青柳の出張所を統合し、中間地点の元町に出張所を、鍛治と花園の出張所も統合し、同様に本通に出張所を建設する計画などがある。

 組織機構をスリム化することで人員配置の見直しができ、451人の職員を最終的には371人まで減らす計画。ただ、組織を再編しても住民サービスの低下を招かないよう、旧市町村の垣根を超えて消防・救急は最寄りの出張所などから出動するほか、各種届け出や証明の発行なども支署でできる。

 同本部は「統廃合によって適正な消防力の整備を図り、統合効果で縮減できた人件費を消防庁舎の整備費に充てることができる」と話す。住民の安全・安心を守る消防にも、行財政改革の「聖域」はない。ただ、延焼しづらい建物構造の変化や幹線道路の整備、消防車両の性能向上などで人員配置の見直しができる側面もあるという。(高柳 謙)


◎保育料滞納者11・5%…函館市 ワースト2位
 厚生労働省は22日、2006年度の認可保育園の保育料の徴収状況に関する初の全国調査結果を公表した。函館市の滞納者の割合は、全国の主要都市(政令市17市、中核市35市)の中で、旭川市に次いで2番目に高い11・5%に上ることが分かった。市によると、06年度の滞納額は約6400万円で、支払い能力があるのに払わないといった悪質なケースは少なく、低所得者層に未納の事例が多い傾向にあるとしている。

 調査は全国1827市区町村を対象に、6月から7月にかけて実施。そのうち1808市区町村から回答を得た。全国では保護者の3・7%が滞納し、総額89億7000万円に上る。

 調査結果によると函館市の06年度の保護者数は4219人で、11・5%に当たる485人が滞納している。滞納者の割合は、旭川市の13・4%に次いで2番目の高さで、東大阪市10・4%、鹿児島市8・8%と続く。また、保護者が負担すべき保育料の総額は7億3000万円で、滞納額の割合は函館市8・8%、旭川市5・7%、大阪市5・2%などとなっている。

 市福祉部社会課は、1994年度から、専任の徴収員2人を配置し、夜間を含めた家庭訪問の実施や分納の適用、保育園を通じての督促など、保育料徴収体制を強化。収入率も86%台から、徐々に改善し、03年度からは90%を超えるようになった。

 しかし、累積の未済額は06年度末で約3億7000万円に上る。同課では「地元の若い世代の給与水準は決して高くはない。保護者のモラルの問題より、保育料が負担となる低所得者層に未払いケースが多い。今後も粘り強く対応していきたい」と話している。(今井正一)


◎自動車税長期滞納者には車止め…渡島支庁
 渡島支庁は本年度から、自動車税の長期滞納者に対して、自動車自体を差し押さえインターネット(IN)公売する徴収対策を進めている。同支庁職員が滞納者方を訪れ、納税の見込みがない場合は、車止めで自動車そのものを差し押さえる。現在のところ、実際に自動車を差し押さえてはいないが、滞納者から納税誓約を取り付けるなどの効果を得られたといい「納税の公平性を保つため、今後も続けていく」(納税課)としている。

 同支庁が預金や給与などを差し押さえた、管内の自動車税滞納者は、昨年度315件に達し、本年度も21日現在で134件にのぼる。しかし、勤務先が不明な場合も多いため、悪質な滞納者への徴収対策の一環として、全道で一斉に、自動車そのものの差し押さえに乗り出した。

 対象は、2年分以上の自動車税滞納者で、本人名義で換価価値のある自動車の所有者。管内では27個人・法人だった。7月23日に、支庁長名で同30日までを指定期日とする差押予告を送達。文書には車止めの写真も載せ、郵送ではなく職員が直接配るなど徹底した。

 今月20日からは、それでも納税に応じなかった函館、北斗両市内の12人に、同課職員が車止めを持参して自宅などを訪問。所在不明と外出などで未折衝の2人を除く10人と文書の「納税誓約」を交わした。まだ車止めは使っていないが、今後も警察官らの立ち会いによる強制的な捜索なども辞さないという。

 “実力行使”に対する滞納者の反応はさまざまという。同課は「滞納対策の方策の1つであり、ちゃんと納付してほしい」と呼び掛けている。(原山知寿子)


◎新駅舎の機能を検討…道新幹線
 北海道新幹線の開業を活かした地域作り懇談会の新函館(仮称)駅舎機能検討部会の初会合が22日、渡島合同庁舎の会議室で開かれた。部会長には韮澤憲吉函館工業高等専門学校環境都市工学科教授を選出。求められる駅舎像について「高齢者や身障者にやさしいユニバーサルデザインを」などの意見が出された。今後はアンケート調査なども通じて、駅舎の機能や役割を検討、まとめる。

 委員は函館、北斗などの自治体、商工会関係者、一般市民ら15人で構成。検討会は北斗市内の駅舎建設予定地の視察も含め4回開き、2008年3月までに駅舎の位置や期待する役割などを結果報告書としてまとめ、同懇談会を通じて北斗市に提示する。

 この日は委員12人が出席。同懇談会座長の畑秀叔渡島支庁長が「新函館駅は多くの観光、ビジネス客が乗降する道南の玄関口、広域的アクセスの要所として期待されている」とあいさつ。韮澤部会長は「新しい時代の夢を語れる駅舎を目指したい」と述べた。

 意見交換では、「バス、JRなどアクセス機能の充実」のほか、「道南の拠点駅であり、駅から離れた道南の地域の情報発信力の強化」を求める声もあった。道民へのアンケートは同支庁のHPを通じて広域的に実施、駅舎へのニーズを探る。また、事務局が東北新幹線などの主要駅を視察し議論の参考とする。(原山知寿子)


◎無許可でアンテナ設置…NTTドコモ北海道
 NTTドコモ北海道(札幌)が、法で定められた申請手続きをせずに、函館市入舟町の急斜面の頂上付近に携帯電話のアンテナ用の鉄柱を設置していたことが22日、分かった。現場は、工事などをする場合事前に道の許可が必要な急傾斜地崩壊危険区域に当たり、7月下旬の大雨で土砂崩れが起きた地域。同社は鉄柱の撤去を含め、地域住民や関係機関と協議しながら対応を決める方針だが、土砂崩れの被害を受けた住民らは「鉄柱の設置が土砂崩れの一因では」と早急の鉄柱撤去を求めている。

 現場の急斜面は斜度約45度で、斜面の下側には民家が連なっている。同社は7月20日、頂上部の私有地に鉄柱を設置。鉄柱を深さ3メートルまで地中に埋設するなどの工事をした。鉄柱の地上の高さは13メートルとなっている。

 7月28日、記録的な大雨の影響で土砂が斜面下の民家1棟の壁を破って流入し、住人の女性が左足を骨折する事故が発生。被害を受けた住民を含め民家6戸が「土砂崩れは鉄柱の設置が起因したのでは。再発が不安」と同社に鉄柱撤去を要望していた。ただ、土砂崩れの原因は今のところ不明となっている。

 急傾斜地法によると、急傾斜崩壊危険区域内に施設設置をする場合、都道府県に申請し、工事方法などの許可を受けなければならない。しかし、同社は設置場所を同区域内と認識せずに設置し、道に申請しなかった。設置後同区域を管理する函館土現に申請をしたが、「設置前に許可申請をしなかったのは当社のミス」と同社広報部は説明する。

 地域住民の1人は「法令を守らなかったのは、重大な過失があったか、故意の設置しか考えられない。危険区域に設置するのは考えられない」と不信感を募らす。

 同社からの申請を受けた函館土現は「今後の協議の中で同社へ最善の対応を求めていきたい」としている。(鈴木 潤)