2007年8月29日(水)掲載

◎市内でも皆既月食6年ぶり観測
 月が地球の影にすっぽり入る皆既月食が28日夜、観測され、函館市内でも東の上空に赤黒い月が見えた。国内で皆既月食が観測されたのは2001年1月以来6年ぶり。

 月は通常、太陽の光を受けて輝くが、太陽と月の間に地球が入ると、地球が太陽を照らす光を遮り月食が起きる。皆既月食は、月全体が影に入る現象。ただ、地球の大気で屈折した太陽のわずかな赤い光が月を照らしたため、月は赤黒く見える。

 この日は満月で、函館市の西部地区にある豊川町からは、午後6時20分ごろから、汐首岬上に半月に欠けた月が浮かび、同52分すぎから皆既月食が始まり、赤銅色の姿に気付いた市民は“天文ショー”を楽しんでいた。 (山崎純一)


◎ドッククレーン撤去問題/プロポーザル再実施なら、請負能力把握が前提
 函館市土地開発公社(工藤寿樹理事長)が所有する旧函館ドック跡地の大型クレーン2基の撤去問題で、解体時期の見通しが不透明になっている。このほど開かれた同公社の理事会では「プロポーザル(公募)を再実施するのが望ましい」との意見で一致。安全撤去を前提に、工事の完遂能力を有する業者であることを、事前に把握する必要があるとした。1年以上交渉を進めてきた候補業者の撤退を受け、同じ轍(てつ)は踏めない状態で、対応も慎重だ。

 クレーンを同公社や市が自前で撤去する場合、最低4億5000万円が必要で、厳しい財政状況を考えれば、工面するのは難しいのが現状。維持補修するにも、応急措置だけで5億3000万円かかるため、市に保存の考えはない。

 同公社は昨年、解体撤去に向けてプロポーザルを実施。売却候補業者して本州の造船関連会社と1年以上にわたり、交渉を進めてきた。この間、同社は、工事方法を海上解体や陸上解体などと二転三転させ、工事計画書の提出が遅れるなどし、当初の解体スケジュールに大幅に影響を与え続けてきた。

 ことし6月までには事前準備に着手する予定だったが、7月に入り、海上からつり上げるためのクレーン船の手配ができず、着工が困難になったとして同公社に辞退を通知した。

 今月中旬に開かれた公社の理事会では、安全撤去を前提に、プロポーザル再実施による業者選定が最良の方法とした。しかし、工事請負辞退を受けて、海上解体方式で撤去する場合に必要なクレーン船の手配や、解体計画を実施する能力がある業者であるかを、プロポーザル実施前に確認する必要があるとした。

 同公社によると、クレーン船は、しけに弱いため、所有するサルベージ会社は秋から冬にかけて荒れる海域での作業を敬遠するという。仮に、来年夏場にクレーン船を使用して工事をするとした場合、計画立案や函館どつくなどとの調整にかかる時間を考えると、プロポーザルを年内に実施する必要も出てくる。

 同公社は「売却してほしいと打診してきた業者は何社かあるが、安全、確実に解体が可能かどうかを調査しなければ、プロポーザルの再実施もできない」とする。耐震性への危険性を把握しながら、クレーン倒壊となれば、責任問題に発展する。市が撤去の方針を固めて1年半以上。早急な対応が求められている。 (今井正一)


◎高3集団暴行死・2時間以上殴るける
 函館市内の昭和公園などで26日、同市富岡町2、函大付属有斗高3年佐藤智也君(18)が集団暴行されて死亡した事件で、傷害致死容疑で逮捕された同市内に住む15―18歳の少年7人による暴行は市内2カ所の公園で計2時間以上にわたり、7人のほかにも少年、少女ら数人が傍観していたことが、28日までに函館西署の調べで明らかになった。同署は少年らの“遊び”がいじめにエスカレートした可能性もあるとみて、動機の解明などを進めている。

 調べによると、7人は26日午後7時半ごろ、同市富岡町1の富岡中央公園で、佐藤君にサッカーのゴールキーパー役をさせ、次々にボールをけり込んだ。さらに「タイマン(一対一のけんか)をやろう」と、一部の少年が金属バットなどで暴行。佐藤君が「助けて、やめてくれ」と声を上げたため、少年らは近隣住民に「ばれる」と思い、西に約2キロ離れ、人けの少ない同市昭和町20の昭和公園に自転車で移動した。

 7人の暴行は昭和公園でも同8時半ごろから約1時間半続き、佐藤君を代わる代わる素手で殴ったり、飛びげりで同公園内の人工池に落としたり、足で踏み付けたりして死亡させた疑い。7人は佐藤君があおむけに倒れ、動かなくなったため、落ちていた菓子袋に入れた水を佐藤君にかけ、そのまま同公園を立ち去った。その際、現場には7人を含めて十数人の少女や中学生らもいたが、誰も止めに入らなかったという。

 同署は28日午前から、犯行現場の一つとなった昭和公園の現場検証を実施。遺体を札幌で司法解剖して詳しい死因を調べるとともに、少年らの交友関係を洗い出し、過去のいじめの有無や犯行に至る経緯を追及している。

 佐藤君が通っていた函大付属有斗高校(鈴木健校長、688人)では28日朝、全校集会を開き、全員で黙とうをささげた。鈴木校長は「命の尊さや生きることの大切さを、佐藤君の死を通じて学んでほしい」と述べた。集会後には、一部の生徒がパニックや体の異変を訴えたため、担任らがカウンセリングを行うなど対応した。逮捕された少年の中に、同校の生徒はいない。

 同校はこの日の授業を取りやめ、午前中に生徒を帰宅させた。また9月1、2両日に予定されていた学校祭を中止することも決めた。同級生の男子生徒(18)は「友だちが死んで本当にショックを受けている。それしかありません」とうつむきながら話した。


◎西尾市長「交付税減額深刻」/来年度、特定基金から借り入れ
 函館市の西尾正範市長は28日、定例記者会見を開いた。本年度の普通交付税が、当初予算の見込みと比較し約14億円不足したことについて「影響は大きく深刻に受け止めている。交付税がこれ以上カットされたら道内や東北で、厳しい自治体が出てくるのではないか。全道、全国市長会を通じて国に働きかけていく必要がある」と述べた。来年度以降は特定目的基金からの借り入れで対応し、数年以内に収支均衡を図るため、行財政改革を推進していくと述べた。

 函館市の6月補正後の本年度一般会計予算は1242億6500万円。当初予算では、普通交付税は約327億円と見通しを立てた。国は法人、市民税の増収や、生活保護費の減少などを見込み、決定額は約313億円としたため、14億円の不足が生じた。

 本年度は、12月に補正予算を組み、約17億円の残高がある、財政調整基金と減債基金を取り崩して対応。来年度以降は、特定目的基金から借り入れ、不足を補うとした。西尾市長は「数年後にプライマリーバランスが取れるよう、行財政改革を徹底して進めなくてはならない」と述べ、税収増を図るため、経済や地域振興のために、必要な施策を選択、集中して実施していく考えを示した。

 また、9月7日から4日間の日程で、ロシア・ユジノサハリンスク市を訪問する。同市とは、姉妹都市提携10周年で、訪問団は西尾市長、阿部善一市議会議長ら4人。海外派遣事業の中学生ら18人も現地を訪れる。記念事業として、同市の図書館へ函館市の写真集や、市史などを30冊を寄贈する。9日には、同市創建125周年記念式典に出席し、友好関係の強化を図る。

 西尾市長は「アンドレイ・ロプキン市長は、空港出身の人であり、航空路線の発展のため強くお願いしてきたい。サハリンプロジェクトの視察も考えたい」と述べた。

 また、函館商工会議所の高野洋蔵会頭の続投が濃厚となったことについて「別組織のことですが、新体制ができたら、お互い自立した組織として、街づくりの課題に連携してやっていきたい」と述べた。

 西尾市長は、北海道新幹線や新外環状道路の予算獲得や、国際航空路線の拡充、国内外からの観光客誘致や振興施策など取り組む課題は多いとし、「市民の利益、まちづくりでは(市と経済界は)一体。連携することに何ら変わりはない」と述べた。 (今井正一)


◎10月のオンパク新プログラム「恵山トレッキング」実証実験
 10月27日から16日間にわたって開催される予定の「第3回はこだて湯の川温泉泊覧会(はこだて湯の川オンパク)」(実行委主催)の新たなプログラムを模索しようと、実行委員会(刈田眞司委員長)のメンバーらが28日、恵山道立自然公園を散策して実証実験を行った。

 市観光課が、合併した旧4町村の観光資源を発掘しようと、6月中旬から4支所の観光振興担当課との間で、各地域の魅力を最大限に引き出す方策を協議。恵山地区では「(仮)活火山・恵山湯けむりトレッキング」と称したプログラムを実行委に提案した。

 実証実験には、実行委や市の本庁・4支所から約20人が参加。前恵山町史編さん・編集長の近堂俊行さん(71)が案内役を務め、恵山にまつわる歴史や群生する高山植物などを説明していった。参加者は、一面に広がる自然豊かな山や海の絶景に目を奪われ、オンパクでの企画と成功に手応えをつかんだ様子だった。

 実行委は、今回の実証実験の結果を踏まえ、散策コースや食事・温泉などの選定を進め、市民や観光客から人気を呼ぶプログラムとなるよう、内容を検討していく。 (浜田孝輔)