2007年9月21日(金)掲載

◎優れた乙部産ブロッコリー産地作りを
 【乙部】食の安全に対する消費者の意識が高まる中、乙部町では高品質を誇るブロッコリーの産地づくりに向けて、農業者と流通に携わる企業が絆(きずな)を深めようと、社員による産地訪問、農業者の流通現場研修といった双方向のユニークな取り組みを進めている。20日には農産物卸売業者の社員が畑で収穫作業を体験した。生産者と流通サイドの信頼関係が構築され、それぞれが自信を持って出荷、販売できるとあって、取り組みに対する関係者の評価も高い。

 20日早朝。農産物卸売商社のベジテック(東京・加納晃社長)の社員4人が、町の小石裕之企画室長と、薄暗い中でブロッコリーの収穫が行われている畑を訪れた。広大な畑で大きな葉をかき分けながら、出荷に適した株を1個ずつ手作業で切り取る根気の要る作業だ。町内で氷詰めにしたブロッコリーは、同社を通じて首都圏のスーパーに出荷される。

 同社で乙部産ブロッコリーを担当する坂本智史さんは「生産者が作物に愛情を持っていることを実感した。自分たちも産地との連携を大切にしたい」と話す。作業を指導する「おとべファーム」の佐藤光男専務は「産地で実際に見て、感じることでお互いの信頼感が高まる。安心して乙部の農産物を売って欲しい」と笑顔を見せた。

 同町でブロッコリーの栽培が始まったのは2005年。町内の農家が契約野菜生産出荷組合(林義秀組合長)を結成し、同社と出荷契約を結んだ。町も農業再生プランの中心プロジェクトに位置付け、財政面や職員派遣などの支援を行っている。

 生産者と社員の交流は、栽培2年目の昨年7月にスタート。乙部の農業者も首都圏にある同社の施設を訪れ、農産物流通の現場を目の当たりにするなど、相互交流が進んでいる。

 同社の矢島訓夫取締役多摩事業部長は「交流を通じて生産者の意気込みや品質確保への努力を実感した。乙部産ブロッコリーは自信を持って消費者に提供できる」と言い切る。

 輸入農産物への不信感が高まる中で、矢島部長は「国産農産物の『安全・安心』は当たり前の時代。今は『おいしさ』も欠かせない。農産物を安く買い叩く時代は終わりだ。生産者と連動して優れた産地づくりを進めていくことが重要」と、同町での取り組みを評価している。(松浦 純)


◎市議会/連結実質赤字約0・4%
 第3回函館市議会定例市議会は20日、一般質問を継続し、6氏が登壇した。市は、2006年度の決算見込みで試算した全会計の連結実質赤字が約2億6000万円、比率は約0・4%となることを示した。中林重雄財務部長は「現行制度で財政再建団体になる赤字比率は25%以上であり、大きな数値ではない。しかし、黒字であることが当然であり、全会計の健全化に向け努力する」と述べた。

 09年4月に施行される財政健全化法に関連して、板倉一幸氏(民主・市民ネット)が市の財政対策をただした。

 同法では、連結実質赤字比率や実質公債費比率など4つの指標で地方自治体の財政状況を表す。国から各指標の基準値や算定方法が施行1年前までに示される予定になっている。

 法施行初年度は、08年度決算が数値の指標となるため、来年度の予算編成にも影響を与える。市は、地方交付税の大幅削減など、来年度以降の見通しも大変厳しい状況にあるとし、国の動向を見ながら予算編成方法の見直しも進めるとした。

 また、病院事業会計など、各企業会計の赤字も市全体の財政指標となるため、井上芳郎病院局長は「法施行にかかわらず、病院事業の赤字は市の財政に大きな影響を与える。経営健全化に全力を注ぐ」とし、収支計画に基づく施策を進めると述べた。板倉氏は、診療科目の廃止などが収支計画に与える影響は大きいとし、病院の存続を含め、抜本的な計画見直しを求めた。

 西尾正範市長は「病院事業を取り巻く状況は大変厳しい。経営健全化は喫緊の課題であり、副市長とも、全庁の問題として取り組む」と答えた。

 そのほか、見付宗弥氏(民主・市民ネット)、能登谷公氏(市民クラブ)、松宮健治氏(公明党)、市戸ゆたか氏(共産党)、小谷野千代子氏(公明党)が質問した。主な質疑は次の通り。

 見付氏 本市の自主防災組織の組織率は全国平均、全道平均と比較してどうなのか。

 小柏忠久総務部長 2007年4月現在の本市の自主防災組織の設立状況は46団体で、市域世帯数に対する設立組織数の組織率は39%。06年4月の全道の組織率は45%、全国の組織率は67%になっていることから市として組織の設立、支援に向け鋭意取り組みたい。

 見付氏 拠点避難所の耐震化について、すでに17施設を実施しているが、残り33施設が耐震化されるのはいつごろか。整備計画の目途は立っているのか

 西尾市長 厳しい財政状況ではあるが、今後も2001年に策定した耐震診断計画などに基づき、計画的な整備に努めたい。

 能登谷氏 市長の国旗・国歌に対する認識は 

 西尾市長 国旗、国家が国民生活や学校教育などさまざまな場面で国民の間に定着していくことが望ましいと考える。

 能登谷氏 旧函館北高跡地の利用をどう考えているのか

 西尾市長 この地区周辺には今後、新外環状道路の日吉インターチェンジが設置され、アクセスする放射4号線、日吉中央通など都市計画道路も計画されている。交通の利便性向上が見込まれる貴重な市有地と考えているので、一体的な土地利用について慎重に検討したい。

 松宮氏 小中学校、高校へのAED(自動体外式除細動器)の設置についてどう考えているか。

 多賀谷智教育長 現在、高校1、小学校2校に設置されている。今後各学校への設置について検討を進めたい。

 松宮氏 縄文文化、自然環境をキーワードとした「滞在型観光」「体験・学習型観光」など観光考古学の視点に立った観光行政について市長の見解は。

 西尾市長 今後、建設整備される「函館市縄文文化交流センター」の活用と合わせ、発掘作業などの体験観光について検討を進める。また、遺跡周辺の自然環境や地元の水産資源を活用した、新たな観光商品の創出について研究したい。

 市戸氏 集中豪雨や台風で浸水被害を受けた昭和地区への対応策は。

 秋田孝土木部長 現在進めている、小田島川河川改修事業で解消を図りたい。浸水対策として、排水路確保の検討作業を進めている。

 市戸氏 (高校生の暴行死事件を受けて)空知管内奈井江町のように、子どもの権利条例を制定し、子どもたちの権利を保障し、最善の利益を考えていくべき。

 西尾市長 次世代育成支援行動計画の中に、児童の権利に関する条約の理念を盛り込んでいる。各種施策を推進し、必要性を含め調査研究を進める。

 板倉氏 包括外部監査で指摘された病院の未収金対策は。

 井上病院局長 4月から外来救急患者の即日徴収を実施しているほか、9月から退院時の納付書の即日発行を実施し、未収金発生防止に取り組んでいる。債権回収には、簡易裁判所への支払い督促の申し立てなど、法的措置の準備も進めている。

 小谷野氏 幼児の発達障害は集団生活で発覚する場合が多い。5歳児健診を実施する考えは。

 田中俊弘保健所参事1級 3歳児健診以降は、特別支援教育サポート委員会が保育園、幼稚園の訪問などで、発達障害の早期発見に努めている。現在の取り組みを強化しながら、引き続き検討したい。(今井正一)


◎福祉施設建設問題で市議会/特別委設置固まる
 函館市議会は20日、民間福祉施設建設をめぐる一連の問題について、真相を解明する特別委員会を設置する方向で各会派がほぼ合意した。21日の議会運営委員会で最終判断をする。

 特別委設置はこれまで議運で2回協議され、市民クラブ、公明党、共産党が賛成、最大会派の民主・市民ネットと新生クラブが否定的な見解を示していた。同問題は、市街化調整区域内への民間有料老人ホームの建設をめぐり、前市長や前議長に疑惑があったと、当時助役を辞職した西尾正範市長が告発し、市長選にも影響を与えた。

 19日の市議会一般質問で、前議長の福島恭二氏(民主・市民ネット)が同問題のほか、別の特別養護老人ホーム建設に関する件、市立函館病院の給食業務に関する件で疑惑があると指摘し、それぞれの特別委設置を求めたが、残る2件の設置は見送られる見通し。(高柳 謙)


◎漁業練習船「耕洋丸」を一般公開
 函館港西ふ頭に停泊中の独立行政法人水産大学校(山口県下関市)の漁業練習船「耕洋丸」(田渕清春船長、2352トン)が20日、一般公開された。同船はことし6月に完成したばかりの新造船で、函館には航海実習の途中に寄港。乗組員らが船内の装備や、トロール漁システムなど最新機器の概要を説明した。

 同船は、海洋生産管理学科3年生の洋上実習で、5日に下関を出港し、18日に函館に寄港した。水産資源、海洋生態系の調査研究を行っている。三菱重工下関造船所が新造した漁業練習船で、トロール漁やマグロはえ縄漁に対応している。

 ブリッジで公開された最新のトロール漁システムは、360度探知できるソナーで発見した魚群を標的として設定すると、魚群、船、網の位置を把握し、船が自動航行する。トロール網にはセンサーが付けられ、網の深さや開き具合など、船内ですべて確認することができる。

 そのほか、実習室の操舵(そうだ)シミュレーターやエンジン室などを公開。訪れた市民らは興味深そうに船内を見学していた。

 一般公開はこの日のみで、同船は22日に函館を離れ、下関に帰港する。(今井正一)


◎不当要求は断固拒否/東日本高速道路函館事務所が連絡会設立
 反社会的団体による高速道路事業への不当な介入を排除しようと、東日本高速道路(NEXCO東日本)道支社函館工事事務所(函館市桔梗3、山嵜勝志所長)は20日、「函館地方不当要求防止連絡会」を設立した。構成機関・団体の道警函館方面本部、道暴力追放センター函館支局、工事などの請負業者と連携、組織的に対抗することを確認した。

 不当要求として契約参入要求や工事妨害、土地買収に絡む法外な補償要求などが想定され、NEXCO東日本は警察などと連携して支社単位で対抗組織を設立。道支社は全道的な組織のほか、4地域で連絡会を設置する。

 この日、同事務所で開かれた設立総会で、会長に就いた山嵜所長は「職員の安全、事業の円滑な進行に向け、組織的な体制づくりを図りたい」とあいさつ。道暴力追放センター函館支局の菊地俊道局長が「不当要求は正体不明の団体によるものが多い。皆さんと一緒に創意工夫して『シャットアウト企業対象暴力』を広げたい」と呼び掛けた。

 総会には同事務所職員や工事請負企業3社の関係者ら20人が出席し、不当要求排除宣言を行った。 (宮木佳奈美)


◎24日にNPOまつり、イベント多彩
 函館の市民活動団体が一堂に会する「第3回NPOまつり」(実行委員会主催)が24日午前10時から午後3時まで、市地域交流まちづくりセンター(末広町4)で開かれる。63のNPO法人(特定非営利活動法人)や市民団体が参加し、それぞれの団体の活動を市民にPRし、相互の連携や活動の強化に結び付ける。

 2005年度から始まった恒例のイベントで、参加団体は05年度が32、06年度は48で順調に増えている。NPOの法人格の有無を問わず、環境問題や福祉関連、青少年の健全育成、国際交流、歴史・文化などで広く公益的なまちづくり活動をしている団体が集う。

 市民パワーパビリオンでは、約15団体が活動内容を市民に伝え、ビデオ上映などで運動をアピールする。環境問題や福祉関連の団体が多く、水をきれいにするブロックなど扱っている物品の販売も行う予定。

 駐車場には約15団体が屋台を出し、焼きそばや焼き鳥などの定番メニューのほか、国際交流団体などがエスニック料理やアフリカ料理などを提供・販売する。皿にさまざまな料理を盛ってのラリー形式で楽しむことができる。

 海藻を使ったアートや模型作りなど、各種体験コーナーの開設や、参加した全団体の活動を紹介するパネル展も開催。各団体がどのような活動をしているか、体験や展示を通して理解できる。市民パワーライブや、子供たちの遊び場の開設、景品がもらえるスタンプラリーなども実施する。

 実行委員会事務局の丸藤競さんは「市民活動というと敷居が高いと感じている人も多いかと思うが、実際は非常に身近で気軽に参加できることを知ってもらいたい。イベントを通して興味や関心のある団体を見つけ、活動に参加していく市民が出てくれればうれしい」と話している。

 駐車場で屋台を開くため、公共交通機関を利用して来場するよう呼び掛けている。(高柳 謙)