2007年9月29日(土)掲載

◎光成中生徒があす「CATS」でミュージカル初挑戦
 函館光成中学校(薮岸清校長)は30日に開催する本年度の総合文化発表会で、初めてのミュージカルに挑戦する。演目は、ブロードウェーや劇団四季の記録的なロングラン公演で名高い「CATS(キャッツ)」で、全校生徒112人が出演、演出に携わる壮大な舞台。28日には衣装を合わせたリハーサルも行い、あとは本番を待つだけの状態だ。

 同校は総合的な学習の時間を利用してオペラ「アイーダ」の上演に取り組んでいたが、6回目の昨年度で終了。本年度はアイーダに代わる演目を教員が協議し、歌や踊りなどで多様な表現ができる「キャッツ」を選んだ。

 準備は2学期から始まり、出演者のオーディションでは主役級の役に人気が集中、倍率が7倍にも達した。(1)キャスト(2)ダンス(3)演出(4)衣装(5)美術(6)舞台装置(7)記録―の7部門に全生徒を分け、各担当者がそれぞれの力を注いできた。

 9月からは集中準備期間として、毎日午後に総合学習の時間を1、2時間ずつ配分。土、日曜日も総出で取り組み、2度あった3連休も生徒と教員のほぼ全員が学校に集まった。公務補も道具作りに力を貸した。

 台本や大道具、小道具、ネコの衣装に至るまですべて手作りで、学校長の裁量で特色ある教育を進める「知恵の予算」で配分された60万円を活用した。

 28日は初めて衣装を着たリハーサルで、ネコの姿で一通り動き回った生徒たちは、汗まみれになっていた。長老ネコのオールド・デュトロノミーを演じる後藤勇人君(3年)は「本番では皆が練習の成果を発揮するので、楽しんで見てほしい」と来場を呼び掛ける。

 監督を務める橋本智也教諭は「生徒は自分たちで考えながら日ごとに演技を向上させている」と期待する。入場無料で、上演するのは30日午後1時からの約30分。29、30の両日はほかに合唱コンクールや吹奏楽演奏、PTAバザーなどもある。問い合わせは同校TEL0138・51・5131。 (小泉まや)


◎渡島、桧山の水稲 低温影響「不稔」多く 被害申告率70%超
 道農政事務所が28日に発表した水稲の作柄概況(15日現在)によると、作況指数(平年作100)は渡島74、桧山71で、両管内とも全道平均指数99を下回り、「著しい不良」と予測される。こうした状況の中、共済加入農家(1690戸)の本年産の水稲の被害申告率(加入農家戸数に占める被害申告戸数の割合)が70%に達し、2003年以降で最多となったことが、道南農業共済組合(道南NOSAI)のまとめで分かった。もみに実が入らない「不稔(ふねん)」が平年より多く発生し、7月中旬に続いた低温が影響したとみられる。

 農業共済は国の補助金と農家の掛け金で運営される互助制度。加入農家が自然災害などの被害を受けた場合、損害評価を経て被害に応じて共済金が支払われる。

 過去最悪の凶作となった1993年産は作況指数(同)が渡島3、桧山2で支払い額は約90億円、同年以降では2003年産が渡島44、桧山43という不作で、支払い額は約26億円だった。07年産の被害や支払い額は損害評価の結果次第となるため、現時点では未確定だ。

 ただ、被害申告率(戸数)は過去5年間で最多だった03年が99%(1945戸)、04年は0・3%(6戸)、05年は0・2%(3戸)、06年は1・5%(27戸)で、07年の申告戸数1195戸(速報値)は03年に次ぐ高い割合となった。

 同農済によると、今年は開花・受精時期に当たる7月中旬から8月にかけ、低温や降雨、日照不足が続き、平年よりも多く不稔が発生したという。収穫前の9月上旬から中旬にかけて被害申告が相次ぎ、同農済は申告農家の耕地の一部から一定量の稲を刈り取り、農作物実測調整センター(北斗市東前74)に搬入。脱穀、乾燥、調整、]ニ量による実測での損害評価を実施している。支払い額の確定は12月ごろになる見通し。

 損害評価のために同センターに持ち込まれる稲の量が例年より多く出たため、同農済では稲わらの処分に困っており、「取りに来てくれる方に無料で提供したい」と呼び掛けている。問い合わせは同農済TEL0138・77・2130。(宮木佳奈美)


◎7少年の審判開始決定…高3集団暴行死
 函館市内の私立高3年佐藤智也君(18)が集団暴行を受けて死亡した事件で、函館家裁は28日、傷害致死の非行事実で同家裁に送致された15―19歳の少年7人について、観護措置期間(17―30日)を10月14日まで延長することを決定した。この2週間の延長期間中に審判を行うことを決め、少年らの処遇を判断する。

 同家裁は事件の重大性などを考慮した上、少年らに関する調査を慎重に行う必要があると判断。28日午後、2人の裁判官で審判の開始や観護措置の延長を決めた。今後は、12日までに開かれる審判を経て、検察官送致(逆送)や保護処分などの決定が行われる。

 当初、検察側が求めていた少年審判での検察官の立ち会いは認めない方針。また、審判は合議ではなく、単独の裁判官で開かれる見通しだ。

 非行事実などによると、少年7人は8月26日夜、同市内の公園2カ所で、佐藤君に集団で殴るけるなどの暴行を加え、頭部打撲による外傷性脳浮腫で死亡させた。


◎縦割り解消 政策推進…函館市が1日に「子ども未来室」など3室新設
 函館市が10月1日に新設する福祉部の「子ども未来室」、商工観光部の「労働政策室」、市立函館保健所の「健康づくり推進室」は、少子化対策や産業振興など西尾正範市長が公約に掲げ、特に重視する政策を特化した形で進める部署。各部局や課にまたがる問題を縦割りではなく、課の垣根を越えて専門的に対応するのが狙いで、行政改革課は「市長の思いを具現化させる重要ポスト。室長を中心に連携を図り、役所が批判されている縦割り組織の弊害の解消につながれば」と行政効果に期待している。

 それぞれ次長職に相当する室長を配置。子ども未来室は瀬尾正白・福祉部参事3級、労働政策室は種田貴司・企画部計画調整課長、健康づくり推進室には市教委の辻喜久子・生涯学習部生涯学習課長が登用される。各室2、3人の専属職員を配置し、事業計画などを立案しながら諸問題に対処していく。

 子ども未来室は福祉部や教育委員会にまたがる子どもの問題全般に取り組み、事業の第1弾として「子ども何でも相談110番」を開設する。子育て支援をはじめ児童虐待、いじめなど幅広く受け付ける方針だ。

 労働政策室は市の産業振興策を効果的に進めるため、企業やハローワークなどと連携を取り、雇用機会の拡大や雇用環境の向上を図っていく。

 健康づくり推進室は、乳幼児から高齢者まで各年代に合わせたきめ細かな健康づくり運動を拡充。保健所のある総合保健センターを拠点に、医療機関や介護・福祉施設、学校などと連携していく。 (鈴木 潤)


◎日ロの戦略と協力重要 領土返還へ機運高める…外交シンポジウム
 外交シンポジウムin函館「国際情勢の展望と日ロ関係―北方領土返還実現に向けて」が28日、函館国際ホテルで開かれた。市民や元島民ら約280人が参加。近年の日ロ情勢から、領土返還には両国の戦略的な協力関係が鍵となり、安定した政権下での平和条約締結や政治判断が欠かせないことを学んだ。

 北方領土復帰期成同盟(堀達也会長)と同渡島地方支部(村上幸輝支部長)の主催で、領土の早期返還を求め、機運を盛り上げる目的。

 北大スラブ研究センターの荒井信雄教授が進行役となり、山梨学院大学大学院のコンスタンチン・サルキソフ教授、元駐ロシア大使の都甲岳洋さん、北海道新聞前ユジノサハリンスク駐在の山野辺亨さんがパネリストを務めた。

 近年のロシア情勢について都甲さんは、急速な経済成長を続けており、設備機器の更新や社会資本整備などで日本の技術力を必要とし、ロシア国内でも日本企業が投資する素地が整ってきたことを紹介した。

 サルキソフ教授は「ロシアにとって領土問題は、のどに刺さった小骨。日本は千島列島を放棄したが、国際法上、千島はロシアの領土と認められておらず、そのためにも平和条約の締結や領土問題の解決が求められている。ただ、返還には両国の妥協が必要」と、着地点を見いだす努力の必要性も説いた。

領土返還について山野辺さんは「両国首脳の政治決断となる。ロシアでは東アジアの存在感が高まっており、あらゆる分野で両国の政府や市民が重層的なパイプやチャンネル(窓口)を持つ必要がある」とした。

返還の時期について、都甲さんは「まだ機が熟しておらず、じっくりと構え、運動していくことが大事。日ロの戦略的や協力関係が一層重要になる」と述べた。

村上支部長は「内外に『日本固有の領土』の意思を示し、国民世論を高めながら地道に政府や外交に訴えていくことが大切」と話していた。 (高柳 謙)