2007年9月30日(日)掲載

◎ウタリ協会胆振地区支部が大船遺跡で伝統儀式
 函館市大船町の国指定史跡・大船遺跡前で29日、道ウタリ協会胆振地区支部連合会(会長・加藤忠同協会理事長)がアイヌ民族の伝統儀式「カムイノミ・イチャルパ」を行い、神々や祖先に祈りをささげた。

 胆振管内の同協会11支部でつくる連合会で、文化交流研修会として7支部から会員58人が来函した。昨年の研修会で同遺跡を訪れた際、縄文人が祖先とされるアイヌ民族との共通点を改めて認識し、縄文時代の集落跡である同遺跡での先祖供養を企画した。

 会員らはアイヌ文様を施した民族衣装を身に着けて祭壇の前に座り、祭司の沢田一憲副会長(苫小牧支部長)が儀式を進行。男性によるカムイノミはアペフチカムイ(火の姥神)への祈りの後、狩猟の神や水の神など13の神々に祈りをささげ、コメ粉などが原料のシト(団子)、カボチャや豆などを煮て混ぜた「ラタシケプ」などの伝統料理を供えた。続いて女性たちが先祖供養するイチャルパを行い、イヨマンテリムセ(熊の霊送りの踊り)を披露した。

 加藤理事長は「渡島の大地で皆さんと先祖供養ができるのは大変素晴らしいこと。大地すべての先祖に感謝し、先住民認知のため、祖先の力を借りたい」と喜びを語った。

 出席した函館市教委の阿部千春参事は「人間と自然の共生や、命の再生を考えて暮らしていた縄文人の考えがアイヌ民族に受け継がれている。縄文とアイヌから自然の大切さを学ぶ時代が来ると信じている」と話した。(宮木佳奈美)


◎相次ぐ官公庁の撤退に危機感
 【江差】江差町では30日に気象庁の江差測候所(姥神町)が廃止されるなど、官公庁や教育機関の撤退が相次いでいる。町は道が検討している支庁制度改革に伴い、国や道の出先機関の撤退に拍車が掛かる可能性もあるとして、危機感を強めている。町内の経済関係者からも「町の中心街は既にシャッター通り。官公庁の撤退が懸念される中では投資意欲も冷え込み、新たな商業振興策を打ち出すことも難しい」との声が聞かれる。

 同測候所は30日に廃止され、1日には無人観測所に移行する。職員7人は全員町外に転出するほか、職員住宅も解体する予定だ。国の公務員削減に伴い、全国の測候所を廃止する方針が打ち出された昨年、町は気象庁に測候所存続を強く要望したが「政府レベルでの意思決定であり交渉の余地は無かった」(総務政策課)という。

 町内では国の行財政改革に伴い、2004年に林野庁の道森林管理局森林技術第5センター、06年3月に農林水産省の江差統計情報センターが廃止。教育機関も1996年に道立江差高等技術専門学院、06年には道立江差南高校も閉校した。

 桧山支庁など道の出先機関だけでなく、開発局、公共職業安定所、法務局、江差海保署でも職員削減や業務の統廃合が急速に進んでいる。

 さらに、道が検討中の支庁制度改革に伴い、桧山支庁では半数を超える職員の削減も予想されている。

 これまでの国勢調査によると、町内の公務員人口は、90年612人、95年665人、00年644人と横ばいだったが、05年には529人と急減。町や一部事務組合の職員は160人前後で維持しており、出先機関の廃止・縮小による影響が色濃く現れた形だ。

 人口減少に伴う経済的な打撃に加えて、「行政の中心地だった江差の地盤沈下が進むことは明らかだ。支庁廃止を契機に、警察署、裁判所、検察庁、税務署といった官公庁も雪崩を打って撤退や縮小を始める恐れがある」(町幹部)とし、町は支庁存続運動を進める一方、国や道の出先機関の存続にも神経を尖らせている。

 また、国や道の職員削減で、税収や地方交付税の削減、購買力の低下や飲食店などサービス業への打撃が危ぐされるほか、官公庁が地元に発注する公共事業、物品・役務の減少も懸念されている。

 これまで、職員数が300人を超える同支庁を頂点とする「支庁城下町」として、官公庁を中心に成り立ってきた江差町の経済構造は今、官公庁の廃止、撤退の流れの中で変革を迫られている。(松浦 純)


◎函館市移住者交流会、魅力や短所、自由に発言
 函館市に移り住んだ人たちと市民らが語り合う「移住者交流会」(市、北海道コンシェルジュ主催)が29日、同市末広町4の市地域交流まちづくりセンターで開かれた。約50人が参加。「ゴルフやスキー、釣りなどのレジャーに恵まれた地」「排他的だが、時間がたてば理解できる」など函館の長所や短所、市民には見えづらい魅力などについて自由に意見を交わし、今後の移住促進に向けた課題を探った。

 昨年度は移住者だけの交流会を開いたが、移住者を受け入れる市民の温かいもてなしが欠かせないことから、市民や市民団体も参加しての初めての企画となった。

 参加者が5つのテーブルに分かれ、函館の生活で感じたことなどを語った。東北から移り住み、4月から飲食店を経営している夫婦は「何で(こんな)函館に来たの?」と質問する客が多いことに驚いたという。別の女性も普段の生活から感じたこととして「先例や慣例を重んじ、角を立てずにやっていくのが難しかった」と述べた。

 これに対し、自身も20年前にUターンし起業した50代の男性は「自分の生活スタイルを持てば満足できる街。人のつながりを持ち、仕事が軌道に乗るまで時間がかかるが、いずれ良さを実感できるはず」、地元の公務員の男性も「保守的な面は否めないが、進取の気性に富んでおり、その点を理解してアプローチしてみては」と助言した。

 一方、魅力や発見を指摘する声も多かった。「団塊世代は遊びが上手で、函館には市内や近郊にレジャー施設や自然が豊富にあることをもっとPRすべき」「テニススクールに通っているが、料金が非常に安い」「友人・知人は一定程度つくることができる。そしてある時点で、個々の友人との“距離”の取り方を考える日が来ることが分かった」などの声があった。

 市と北海道コンシェルジュは「自由な雰囲気で遠慮のない意見をいただき、今後の定住促進事業の充実、拡大の大きな参考になった。交流会も好評で、継続して開催することも検討したい」と話していた。(高柳 謙)


◎日ハム優勝、函館のファンも沸く
 「やったぜ道民球団V2」。函館市内でも熱烈なファンが北海道日本ハムファイターズのレギュラーシーズン制覇の喜びに沸いた。函館市西桔梗町の主婦鎌田悦子さん(25)は「今年は冷や冷やと、やきもきの試合ばかりで、長く感じた。クライマックスシリーズは29日のように大勝を続けて日本シリーズに進出してほしい」とエールを送った。

 同市元町の会社員内村隆さん(34)は「新庄、小笠原選手が抜け、打線が奮わなかったのによく優勝した。弱点があっても頑張って一番になり、道民に勇気を与え、まさに道民球団といえる。ヒルマン監督が有終の美を飾るため日本一になってほしい」と話していた。

 函館市本町の丸井今井函館店では30日から10月4日までの5日間、「パ・リーグ優勝決定セール」を開催。各フロアでは目玉商品を用意するほか、同球団の広告物でファイターズ色に染め、クライマックスシリーズ制覇に向け盛り上げる。

 北海道日本ハムのクライマックスシリーズは第2ステージから出場。13日から札幌ドームで、第1ステージ(2位―3位の戦い)の勝者と5試合行い、3勝すれば日本シリーズ(10月27日開幕)に進出する。



◎育樹祭、200人が間伐作業体験
 【七飯】美しい森林づくりに向け、道森林管理局と道が主催する「森林(もり)つどい2007育樹祭」が29日、七飯町内の城岱スカイライン沿いにあるトドマツ造林地で行われ、約200人が森林内の不必要な木々を切り落とす間伐作業などを体験した。

 森づくりの大切さを作業を通して知ってもらおうと、2004年から道内各地で毎年開かれている事業。道南での開催は今回が初めて。

 参加者は20ほどのグループに分かれて、間伐作業を開始。木々がうっそうと茂る中、同管理局職員や森林インストラクターの指導を受けながら、比較的幹の細い木をノコギリで切り落とした。

 作業終了後、七飯町の町木、アカマツの苗木を記念植樹した。函館市鍛治から参加した渡辺幹子さん(58)は「手入れの大切さが分かった。良い体験でした」と話していた。(鈴木 潤)