2007年9月6日(木)掲載

◎函館の魅力再発見…子ども町並み観察隊
 子どもたちが身近な環境を調査し、都市の景観形成を考える「子ども町並み観察隊」が5日、活動を開始した。総合学習の一環で、函館中部小学校(市谷憲治校長)の5年生27人が参加。6つのグループに分かれ、公共施設や西部地区の坂道、商店街、温泉街などテーマを設定し、元気よく調査に出発した。

 同事業は、未来の街づくりを担う子どもたちの視点で、函館の魅力や問題点を自由に発見してもらおうと、市が1997年度から進めている。本年度から事業の見直しを図り、学校単位での参加を呼びかけ、グループリーダーとして、公立函館未来大の学生の協力を得た。

 「駅と町並み」をテーマに設定した1班の5人はこの日、JR函館駅と五稜郭駅周辺を調査。移動は電車やバスなど公共交通機関を利用した。函館駅前では、駅舎内から見渡せる景色や観光ほろ馬車、人力車などに興味を示し、写真に収めていた。

 グループリーダーの横窪安奈さん(20)は「子どもたちと一緒に函館の再発見をしたい」と話していた。また、秋田谷亜衣香さん(11)は「これから五稜郭駅で、周りの風景を見てくる。時間があれば、桔梗駅にも行きたい」と大張り切りでバスに乗り込んだ。

 同事業は20日に2回目の観察活動を行い、月内にリポートとしてまとめ、10月12日に報告会を開く。(今井正一)


◎市、第1期整備めざす…海洋研究センター基本案
 函館市は、旧函館ドック跡地に計画している「国際水産・海洋総合研究センター」の第1期整備に向けた基本的な考えをまとめた。市が主体となり、水産・海洋に関する研究機関の共同利用施設や共同実験施設を先行整備する。建物の述べ床面積は約6200平方メートル、事業費は約31億7300万円で、市の負担が約3分の1で済む合併特例債の活用を見込んでいる。2012年度の一部供用開始を目指す。

 水産・海洋に関する研究機関の集積や新たな産業の創出を目指す「国際水産・海洋都市構想」の研究拠点となる施設で、将来的には国や道、大学、民間などの研究機関の施設誘致を目指す。

 第1期整備となる共同利用施設は、各機関が利用できる貸し研究室や、100人から200人程度の学会を開くことができる会議室、共同研究スペース、宿泊施設、レストランや売店などを整備する。共同実験施設は、海水の取排水ができる設備を設け、各研究機関が利用できる水槽などの実験施設(飼育棟)を整備する。

 このほか、実習船や調査・研究船などが入港する公共岸壁を国が整備していることから、実習生や乗組員が休憩できる施設などを計画した。

 ドック跡地への研究機関の集積は、誘致に時間がかかることもあり、まず市が共同利用施設を整備する。北大の北方生物圏フィールド科学センター(水圏部門)が同地への研究施設整備に意欲を見せていることから、最初は市が整備した貸し研究室などへ入居してもらう考え。

 年間の施設維持費は約4700万円だが、入居する研究機関の賃貸収入や光熱費負担などを引けば、市の負担は約2600万円になるという。

 総額約31億7300万円の第1期整備で合併特例債を活用できれば、元利償還を含めた市の負担は約12億2000万円で済む。起債の15年償還の場合、年間平均で8100万円の償還額となる。

 市企画部は「市の調査報告書の形で、シミュレーションをまとめた。貸し研究室や賃貸料など細部については北大などと協議していく。本年度から着手する国際水産・海洋総合研究センターの基本計画策定への指針となる」と話している。

 5日の市議会総務常任委員会の委員協議会に、同部が説明した。(高柳 謙)


◎最終案の提案先送り…支庁制度改革
 【江差】道は5日、第3回定例道議会(11日開会)までに予定していた支庁制度改革の最終案提案を断念し、12月の第4回定例会以降に先送りする方針を決めた。この結果、道が目指す本年度の支庁設置条例改正や2009年度の新支庁体制発足といった改革のスケジュールが大幅に遅れる可能性も出てきた。

 道は再編後の支庁数や所管区域を示す「新しい支庁の姿」の最終案を、定例会前日(10日)の委員会に提示する方針だった。だが、改革に慎重な道政与党・自民党道民会議との調整は難航。道が06年に示した当初案では現行の14支庁を6支庁に再編し、廃止対象の8支庁を地域行政センターに格下げする方針だったが、4日までに行われた自民党側との調整は不調に終わった。

 提案先送りについて、濱谷一治江差町長は「本道の地方振興を最優先に考えた道議会の判断は大きい」と評価。桧山支庁の存続を求める住民組織代表の辻正勝氏は「現時点では先送りに過ぎず、支庁廃止撤回が示されるまで予断を許さない。地方を見捨てない改革実現を求める粘り強い運動を継続したい」と話している。

 道は今後、第4回定例会以降の提案を模索することになるが、「現在の案では自民党の賛同を得られず、12月の提案も困難だ」(江差町)との見方もある。12月に最終案を提示した場合でも、議会議論や市町村・道民の意見聴取などに要する時間的制約もあり、年度内の支庁設置条例改正は困難な情勢だ。

 道は条例改正から1年程度の周知期間を経て、09年度の新支庁体制発足を目指す方針を示しているが、条例改正の遅れで改革スケジュールがずれ込むと、次の統一地方選を念頭に道議会サイドの慎重論が一層強まることも予想される。(松浦 純)


◎「函館の産業遺産」第12号発刊…刃物かじの調査論文など掲載
 函館産業遺産研究会(富岡由夫会長)は、研究成果や収集物の記録をまとめた「函館の産業遺産」の第12号をこのほど発刊した。今号は同会が収集、ことし4月に旧恵山町立恵山小学校(函館市柏野町)に収蔵した工作機械の報告を中心に、明治から昭和にかけて活躍した函館の刃物かじについての調査論文などを掲載している。

 工作機械は、昭和初期に函館市や近郊の鉄工所が製作した、金属などを削ったりする旋盤機など。同会が1997年から収集を始め、市内などから14点を譲り受け、うち12点を市立博物館に寄贈。約5?もの大型機械のため、現在は廃校となった同小に収蔵された。

 これらの機械は北洋漁業が盛んだったころ、魚の缶詰を作る機械の部品を製造していたものが中心。同会が製造技術の伝承、函館の時代背景の教育に生かそうと収集、保存活動を展開してきた。今号では機械の仕様書や、活動の経緯を報告。富岡会長は「会として力を入れてきた事業の総まとめができた」と話す。

 刃物かじは、富岡会長の調査論文を掲載。料理などに使う包丁など、薄い刃物を作った向井浅次郎を中心に展開している。函館では、造船などに使う大型の刃物を作るかじ人は多かったが、薄く、小型の刃物を作る人は少なかったという。函館には1970年代ごろまで約50軒近くものかじ工場があったが、現在は1軒のみという。かじ工場が製作していた刃物の分類や、かじ職人の家計も紹介している。

 さらに、市交通局の広瀬弘司さんの調査論文「創設期の函館市電について」などを掲載している。B5判85ページ。250部を発行。会員、関係者に配られたほか、市中央図書館で閲覧可能。また、函館市駒場7の浪月堂書店でも取り扱う。問い合わせは同書店TEL0138・32・3479。(山崎純一)


◎上ノ国町山間部 一般ごみの不法投棄後絶たず…江差署など監視を強化 捜査進める
 【上ノ国】上ノ国町の山間部では町内外から持ち込まれた一般ごみの不法投棄が後を絶たず、町が対策に頭を悩ませている。江差署などは5日、現場検証を行い、現場から投棄者の氏名や住所を特定できる証拠物を回収、廃棄物処理法違反などの疑いで捜査を始めた。町は林道の監視を強化、同署とも連携して不法投棄の根絶を図る考えだ。

 町内の国有林で町職員が林道脇の斜面に捨てられた大量の家庭ごみを発見したのは今週初め。ごみは木材、布団、空き缶、雑誌、バケツなどのプラスチック製品とさまざま。現場には子供の氏名が記されたままの教科書なども散乱していた。ごみは全体で2トントラック数台分に及ぶとみられ、人目につきにくい深夜や早朝に持ち込まれたらしい。

 現場を訪れた町職員は「家庭ごみなら処分場に持ち込んでも数千円で処理できる量。摘発されれば数10万円の罰金が科せられるのだが…」と嘆く。

 現場は住宅地に比較的近く、人目につきにくい。町住民課は「ごみがごみを呼ぶ状態だ。1カ所にわずかなごみがあると、次々に新しい不法投棄が出る」と話す。中には悪臭を放つ生ごみが含まれるものもあり、「悪臭でヒグマを呼び寄せる恐れもある。入山者が多い地域や住宅地に近い場合は人身被害も懸念される」という。

 このため町は、山間部や海岸部のパトロールを強化。不法投棄を発見した場合には警察に通報して投棄者を特定。処分費用を請求するなど対策を強化している。(松浦 純)


◎伝統と新しさ融合…「アイヌからのメッセージ」展 工芸品や資料並ぶ
 アイヌ民族の多様な工芸品を集めた特別企画展「アイヌからのメッセージ2007―現在(いま)から未来(あす)へ―」が、函館市青柳町17の市立函館博物館で開かれている。伝統を受け継ぎながら、独創性や感性も加味した工芸品が、アイヌ文化の魅力を伝えている。同博物館と財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構の主催で、10月21日まで。

 同特別展は未来に向けて新たな視点でアイヌ文化を発信しようと企画され、「様々なかたち」「卓越した技」「新しい風」の3部構成。同博物館の収蔵資料も合せて約150点を展示した。

 アイヌ紋様をあしらった民族衣装をはじめ、タペストリー、飾り物などが並び、紋様の美しさや精巧な技を見ることができる。同博物館は「アイヌ文化の心と、伝統に根差しながらも新たなものを取り入れた文化表現を感じてほしい」としている。

 入館料は一般300円、高校生200円、小中学生100円。開館時間は午前9時から午後4時半(観覧は午後5時まで)。月曜休館(ただし、17日、10月8日は開館)。問い合わせは同博物館TEL0138・23・5480。

 8日午後4時半から同博物館で、ナイトミュージアムinはこだて「OKIが奏でるトンコリの調べ」が開かれるほか、22、23の両日午後1時から展示解説セミナーが開かれる。どちらも入場無料だが、定員はナイトミュージアムが30人、セミナーが20人。申し込み、問い合わせは同博物館。(鈴木 潤)