2008年10月11日(土)掲載

◎「赤い靴の少女」お出迎え…函館空港に小像設置
 童謡「赤い靴」(作詞・野口雨情)のモデルとされる少女・岩崎きみちゃん(1902―11年)のブロンズ小像が10日、函館空港ターミナルビル(函館市高松町)内に設置された。来年6月に同市末広町の函館港付近で等身大像の建立を目指す「はこだて赤い靴の会」(宮崎衛会長)の活動周知の一環で、来年5月末までの期間限定で展示される。

 小像は台座を含めて高さ47センチで、等身大(125センチ)の約3分の1の大きさ。来年設置予定の像と同じデザインで、ローマ在住の彫刻家小寺真知子さん(函館出身)が制作した。函館空港ビルデングの協力を得て、人通りの多い国内線1階通路の一角に設けられた。

 同会はきみちゃんが函館で母親と別離し、米国人宣教師に預けられたという悲話を伝えようと発足。函館開港150周年に合わせて設置準備を進め、事業費を確保するための募金活動も行っている。この小像は計10体(1体60万円)制作され、販売した収益も事業費に充てる。

 大橋良平副会長は「全国から人が訪れる空港で小像を見てもらい、函館ゆかりの話を知ってもらいたい。活動が全国に広まり、募金に結びつけば」と期待している。募金の申し出、問い合わせは同会事務局TEL0138・54・3755。(宮木佳奈美)


◎五稜郭跡を世界遺産に…市内で活動じわり
 国の特別史跡「五稜郭跡」(函館市五稜郭町)を世界遺産に登録しようという動きが出てきた。五稜郭設計の手本と言われるフランスのヴォーバン建築群が、今年7月に世界遺産に登録されたことがきっかけで、活動の先頭に立つ総合施設「旭ケ岡の家」(市内旭岡町78)のフィリッポ・グロード理事長は「五稜郭が様式的にも歴史的にも世界的価値を持っていることを、多くの人たちの協力を得ながら訴えていきたい」と話している。

 世界遺産に登録されたヴォーバン建築群は、ルイ14世時代に活躍した天才建築家ヴォーバン(1633―1707年)が設計し、フランス国内に建築した城や要塞など合わせて12カ所。この設計様式は世界各国に波及し、五稜郭を設計した武田斐三郎(1827―1880年)はオランダ語で書かれた書物を通じて学んだとされている。登録された建築物の中には六角形や八角形の星型城郭が含まれており、五稜郭がヴォーバン様式の伝統を受け継いでいることを示している。

 フランス出身で、五稜郭を舞台にした野外劇の生みの親でもあるグロード理事長は、ヴォーバン建築群の世界遺産登録を知り、すぐに現地のヴォーバン協会に五稜郭の写真や資料などを送付。アラン・モンフェラン会長からは「ヴォーバンの様式を受け継いだ素晴らしい城郭が地球の裏側に残っていることに感激した。五稜郭の世界遺産登録に協力したいので、近いうちに必ず函館を訪れたい」と返答がきた。

 これを受け、グロード理事長は本格的な活動を開始。文部科学省や文化庁、フランス大使館などに資料を送付するとともに、元パリ市長の旧友を通じて、世界遺産登録を審査するパリのユネスコ本部にもアプローチしている。

 地元での活動の盛り上がりも重要な課題だが、すでに五稜郭タワーや道教育大と連携して、ヴォーバン建築群と五稜郭との関係を紹介したカラーパネルを製作しており、近日中に同タワー内での展示を予定している。

 グロード理事長は「築城から約150年余と歴史の浅い五稜郭だが、ヴォーバン様式としてほぼ完全な形が残っている世界的にも極めて珍しい例」とし、「江戸から明治への歴史の転換点となった重要地点として、文化的価値が高いことも評価のポイントにつながる。函館とフランスで協調にながら、登録へ向けた努力を積み重ねていきたい」と話している。(小川俊之)


◎頂狼飯店料理長の花田さん「中国料理世界大会」へ
 中国料理店「頂狼(ちょうろう)飯店」(函館市山の手2)の料理長花田勝彦さん(34)が、17日から中国・北京市で開かれる「第6回中国料理世界大会」に日本代表の一員として出場する。海外での中華料理の国際大会出場は道内初で、相手は世界で腕を振るう一流シェフばかり。花田さんは「これまで培ってきた中国料理への思いを最高の料理で表現したい」と意気込んでいる。 大会は世界各国の中華料理関係団体で組織する連合会(本部・北京)の主催。4年に一度の開催から「中華料理のオリンピック」と呼ばれている。前回大会は本場中国はもちろん、アメリカやシンガポール、ドイツなど世界16の国と地域から86チーム、507人が参加した。

 花田さんは5月に東京で行われた「第7回青年調理士のための全日本中国料理コンクール」の熱菜・畜禽(ちくきん)部門で優勝し、世界大会出場に白羽の矢が立った。今回は日本から3人一組で2チームが臨み、花田さんは魚介類や肉類を使い、1時間半の制限時間内に2皿を仕上げる熱菜の部を担当する。

 ただ、「正直、辞退しようかと思った」と花田さん。今大会から主材料を大会前日に抽選で決める“ブラックボックス方式”が採用されたためだ。事前準備もままならず、料理人の真の技術力や現場での応用力が試される。「あらゆる調理器具や調味料を持参する。まるで厨房(ちゅうぼう)ごと移動するようなもの」と笑う。

 日本代表は4年前に広州で開かれた世界大会でも、団体・個人とも金賞を勝ち取る好成績を挙げている。最高賞の特金賞(プラチナメダル)を獲得すれば日本人初の快挙となり、関係者の期待もプレッシャーとなって重くのしかかる。花田さんは「最初で最後のチャンスかもしれない。燃え尽きて灰になってもいいくらいの気持ちで挑みたい」と健闘を誓う。(森健太郎)


◎1億円の「重み」体感…カルチャーナイト 
 函館市内の官民の施設などを夜間に無料開放する「はこだてカルチャーナイト2008」(実行委主催)が10日夜、西部地区やJR函館駅前周辺など市内17カ所で開かれ、多くの親子連れらが会場を渡り歩きながら、日中とはひと味違った施設の雰囲気を楽しんだ。

 カルチャーナイトはデンマークのコペンハーゲンが発祥で、公的な文化・教育施設などを夜間に開放し、地域の文化に触れてもらうのが狙い。今年は例年より約2カ月早めて開催し、市内の22企業・団体が協力した。

 このうち、日銀函館支店(東雲町14)の体験コーナーには家族連れら約450人が参加。同支店の職員が日銀の役割や金融システムについてかみ砕いて説明した後、参加者は印刷前の本物と同質の1億円の重さを体感したり、紙幣の裁断くずでフォトフレームをつくったりした。

 2人がかりで10キロ相当の“1億円”を持ち上げた函館東山小1年の岡田亜珠(あず)さん(6)と函館金堀小1年の綾楓華さん(7)は「重かったけど楽しかった」と笑顔。それぞれ同伴した保護者も「子どもが大きくなってこの(1億円の)重みを分かるように育てたい」と話していた。(森健太郎)


◎座長に渋田町長選出…南桧山地域地域医療対策協・初会合
 【乙部】桧山管内南部5町の自治体病院や道立江差病院(江差町)の広域連携、運営改善などを話し合う「南桧山地域医療対策協議会」の初会合が10日、乙部町民会館で開かれた。座長には渋田正己厚沢部町長が選出された。

 同協議会は江差、上ノ国、厚沢部、乙部、奥尻の5町長のほか、桧山支庁長、道保健福祉部道立病院管理局長、道立江差病院長、桧山医師会長らで組織。多額の累積赤字を抱える道立江差病院の運営改善問題をはじめ、厚沢部、乙部、奥尻の3町が抱える国保病院、上ノ国町にある2カ所の町立診療所を含めた地域医療の広域化や、国が年度内の策定を求めている「公立病院改革プラン」をめぐる対応について意見調整する。

 この日、工藤昇上ノ国町長は道が検討している道立江差病院の指定管理者制度への移行について、産婦人科の出産取り扱いの休止、麻酔科などの医師不足から夜間・休日の緊急手術が困難となっている現状を挙げ、「医師不足などの問題解消が先決」と指摘。道の荒谷俊尚道立病院管理局長は「病院の機能回復が先と考えている。現状の課題をきちんと整理した上で移行を検討する」と明言した。

 寺島光一郎乙部町長も同病院の運営改善について「道として医師確保の責任を果たすべき。最低限の医療水準を確保するのは国や道の責務」とした。濱谷一治江差町長は道の支庁再編と関連して「道の医療計画は大都市に偏重した考え方だ。採算性だけを追求して地方から行政や医療の機能をはぎ取ることは問題」と批判した。

 協議会は(1)自治体病院の広域化・連携構想の検討(2)道立江差病院の運営改善―を事務レベルで議論する2つの部会を設置。協議会と2つの部会で議論を深め、病院間での医師の適正配置、医療・福祉・介護分野での機能分担などの課題を洗い出し、国や道に対策を働きかけていく方針という。(松浦 純)


◎ガゴメ製品ずらり…棒二森屋「不二屋本店」にコーナー
 函館市若松町17の棒二森屋本館地下1階にある「不二屋本店中合棒二森屋店」の売り場の一角に10日、函館特産のガゴメ(トロロコンブの仲間)の加工品を販売するコーナーが設けられた。

 函館地区で文部科学省に採択された「都市エリア産学官連携促進事業」への参画企業でつくる都市エリア成果品販売促進連合(須田新輔代表)は、同町20のテナントビル「和光」1階に入居していた即売店「函館がごめランド」を9月末に閉店。移転先を模索していたが、単独での出店が難しく、地場の特産品を取り扱いたいとする不二屋本店と思惑が一致し、コーナーの設置が実現した。

 売り場には幅約2メートルにわたって、コンブの粉末や一枚もの、調味料など、同連合の成果品を含めたガゴメ製品約50種類がずらり。ガゴメの特性を説明したパネルを掲示し、レシピ集やパンフレットを無料で配布しているほか、試食も行っている。

 同事業の中核機関、函館地域産業振興財団(高野洋蔵理事長)は「これだけ多くのガゴメ製品を取り扱っている店はないので、さらなる周知に期待したい」とし、不二屋本店業務部の小梨信一次長は「客の声が直接届く直営店として柔軟な対応ができるので、卸会社という立場からも得意先に売り込みやすくなるはず」と話している。(浜田孝輔)


◎開港5都市景観まちづくり会議 函館大会開幕
 市民団体交流イベント「開港5都市景観まちづくり会議函館大会」(実行委主催)が10日、函館国際ホテル(函館市大手町5)で開幕した。新潟、横浜、神戸、長崎で美しい町並みの形成に向けた活動に取り組む団体関係者ら約70人が来函。12日までの3日間にわたって相互の親ぼくを深めながら、情報交換や魅力発信に努める。

 6年ぶりの函館開催となる今大会のテーマは「新・函館探訪―呼吸(いき)づくまちを未来へ繋(つな)げ―」。同ホテルで開かれた1回目の全体会議で、落合治彦委員長は「参加者全員のきずなの輪がさらに広がり、よりよい町づくりに向けて有意義な3日間となるよう祈りたい」とあいさつした。

 会議の中で、各地の市民団体が活動内容や記念すべき来年の開港150周年に向けた準備の進ちょく状況について報告した後、函館西部地区バル街実行委の深谷宏治委員長が講演。バル街の楽しみ方や魅力を教わった参加者は、夕暮れを待って歴史的な町並みに出向き、参加店14店舗によるミニバル街を体験し、飲み歩きを堪能した。

 同大会は2日目に分科会として西部地区の散策や旧4町村へのバスツアー、同ホテルで道南の食材を取り入れた豪華な料理を味わえる「ウエルカムパーティー」を企画。最終日は同ホテルで2回目の全体会議が開かれ、大会宣言の採択などを行って締めくくり、次回開催地の横浜に引き継ぐ。(浜田孝輔)