2008年10月16日(木)掲載

◎古代米を収穫 初の自然乾燥…今年は豊作
 【福島】福島町の新特産品候補として期待される古代米(紫黒米)の収穫が15日、同町三岳の水田で始まった。青空の下、黄金色に輝く稲穂を刈り取り、「ぼうずがけ」と呼ばれる木のくいに束を重ねて自然乾燥する作業を初めて行った。

 自然乾燥は農家や町職員ら約20人が午前9時から午後4時ごろまで取り組み、「昔ながらの乾燥は体力勝負だ」「いい運動になる」などと話しながら汗を流した。日光と風を浴びさせるこの自然乾燥は東北地方で盛んに行われている手法で、機械乾燥よりもコメの味を引き立てるという。

 栄養価が高く健康食として注目される古代米は、地元農家と町、渡島農業改良普及センター渡島南部支所などが3年計画で試験栽培中。初年度の昨年は天候不良で、実が入らない不稔(ふねん)に見舞われ、120キロの収穫量にとどまった。今年は作付け面積を3倍の60アールに拡大。天候に恵まれ、三岳と千軒地区の水田からは1―1.5トンの収穫が見込まれる。農家の久野寿一さん(58)は「2年目にして豊作を迎えられたことがうれしい。これからも皆と協力して良いコメをつくっていきたい」と喜んでいる。

 15アール分が自然乾燥され、水分量が15%になるまで約1週間続けられる。古代米は、地域の朝市や家庭料理発表会で登場する予定だ。(田中陽介)


◎企画「ふわっと」DV子ども支援@…意思尊重 そっと見守る
 配偶者・内縁間での暴力、ドメスティックバイオレンス(DV)のある家庭で育った子どもを支援する「子どもサポート・ふわっと」(加茂章子代表)が函館市内で4月下旬に発足し、間もなく半年を迎える。母親とともにシェルター(一時保護施設)に避難する子どもの増加を受けて始まった試みで、18日にはシェルターを出た後の子どもたちが集い、安心できる環境で自由な時間を過ごせる「ふわっと広場」が開設される。こうした子どもに特化したサポートが必要な背景や支援の在り方を、関係者の思いや先進例を交えて2回にわたり伝える。

 「ふわっと」は市内でDV被害者の支援活動などに取り組むNPO法人ウィメンズネット函館(古川満寿子代表)のメンバーが中心となって設立。2006年11月に市内で開かれた全国シェルターシンポジウムで、子どものサポートグループを立ち上げたNPO法人ウィメンズネット・マサカーネ(室蘭市、藤本紀子代表)の先進的な取り組みを知ったのがきっかけだ。

 マサカーネはDVから逃れ、新しい生活を始めた子どもたちに安心できる居場所を提供しようと、05年7月から室蘭市内の幼稚園舎を借りて「子どもの居場所 ぽけっと」を開設。今年5月には空き家だった一軒家に移転し、新たに母親を対象にした生きがいづくりのプログラムもスタートさせるなど、シェルターを出た後の親子を見守っている。

 「ぽけっと」に来る子どもは幼児を中心に高校生ぐらいまで。「ぽけっとは、暴力があったおうちから逃げてきた子どもの集まり」とあえて子どもたちに知らせ、つらい体験を共有できる場にしている。楽器を使用できる「おんがくの部屋」、騒いでもいい「げんきの部屋」など目的別に部屋を設け、子どもたちは好きな遊びを選べる。運営スタッフの野原ひろみさんは「DV家庭で育った子どもは本人の意思が尊重される経験が少ない。自分の意思で選ぶことは自分を取り戻すために大切なこと」と話す。

 おやつは豊富に用意し、子どもたちが食べ切れないほどの量を1人で抱え込んでも注意はしない。「物を投げない」「ここで話したことは外で話さない」「話したくないときは“パス”と言う」など、安全と安心を確保する8つのルールがあるだけ。子どもの気持ちを尊重し、大人が寄り添う姿勢を重視する。

 「ぽけっと」の試みは、家族との死別体験をした子どもをケアする米国の施設「ダギーセンター」で行われているケアプログラムが基になっている。死別体験とDVは、大きな悲しみと喪失体験が共通しているからだ。

 「DVを見て育った子どもたちは母親と同様に傷ついている」(加茂代表)。そんな子どもたちの様子に心を痛めてきたウィメンズネット函館のメンバーは「同じようなサポートグループを作りたい」と思いを強め動き始めた。18日に開設する「ふわっと広場」は、「ぽけっと」をモデルにシェルターを出た後の子どもたちがほっとできる“心のよりどころ”を目指す。(宮木佳奈美)


◎森町長選・候補者に聞く…「情報公開・住民参加」松田兼宗氏(52)
 【森】町発注工事をめぐる官製談合事件から発展した森町長選が14日、舌戦の火ぶたを切った。10期37年務めた前町長の逮捕、辞職という事態に、3候補は「公正、透明な町政」を訴える。告示前は「誰が町長になっても同じ」と冷めた町民の声も多かったが、選挙戦に入ると「この機会にはっきり意志を示さなければ、町は変わらない」と、意識にも変化が出てきた。

 ――出馬の動機は。

 これまで2回(2003年、05年)出馬した流れと今回の事件を受け、「今、まちを変えなければ」と思った。知人や支援者からの「あんたしかいない」との声で「必要としているならば」と決意した。

 ――最も訴えたい政策は。

 情報公開・住民参加」がまちづくりの基本。談合事件が起こらない役場の改革をまず早急に取り組みたい。一次産業の活性化にも着手し、現在ばらばらに取り組む水産・農業・商業をどう一体化するか。市場価格を調査した上で、道の駅の活用や森町の特産を並べるアンテナショップ、無駄を出さずに商品価値を高める方法も考えたい。

 2015年の道新幹線新函館駅開業も見据え、観光のまちから定住したいまちへとするため、民間サイドの誘致や町有地の活用も考えたい。厳しい町財政では、無駄の部分をどうカットするかを考えた上で、三役や幹部職員らの人件費カット、民営化や指定管理者制度を見据えた政策に手を付けざるを得ない。

 ――有権者の反応は。

 期待の大きさを感じる。お茶懇でもこれまでの選挙より多くの人が訪れ、より具体的な質問があがる。財政面については初めて聞いたという反応が多く、これまでの選挙でも訴え続けた「情報開示、住民参加のまちづくり」の方針が間違っていなかったことが分かる。町政について町民と対話する場が必要。

 ――前町長や事件について。

 役場、議会、町民の責任を感じる。地道な手間と時間を掛け、広報や地域懇談会など、できるだけ町民が情報を知り得るチャンネルを作り、町民自らが考えるまちにしたい。

 ――松田町政の目指すものを一言で。

 事務所にも掲げる「みんなで創ろうあったか“心”でまちづくり」。みんなでまちを作るんだという当たり前のことだが、危機にひんする中、基本的なこと。一緒に頑張ろうと訴えたい。(聞き手・笠原郁実)


 まつだ・けんそう 1956年森町生まれ。81年中央大文学部を卒業後、83年松田商店に勤務。99年店主となり同年町議に初当選。2003年、旧森・砂原町合併後の05年に町長選に立候補したがいずれも敗れ、07年に町議に再選、今年9月、町長選出馬のため辞職。


◎鈴木さん「2級ボイラー」合格…函工高定時制卒業後も意欲衰えず
 函館工業高校定時制(昆野茂校長)を2006年に卒業した函館市内の鈴木和惠さん(65)がこのほど、国家資格「2級ボイラー技士」の試験に合格した。卒業後も同校に通って講習を受け続け、3度目の挑戦で“春”をつかんだ。学びへの意欲旺盛な鈴木さんをずっと応援していた同校教員らも大喜び。鈴木さんは「定時制で学んだ経験を社会に還元したい」と、今後もさまざまなことに挑戦するつもりだ。

 2級ボイラー技士は、ボイラー業務に必要な構造や取り扱いに関する知識を認定するもので、ボイラーの大きさで2級、1級、特級の区別がある。

 鈴木さんは宗谷管内豊富町の中学校を卒業後、札幌の簿記関連の専門学校に進学した。結婚後、市内でのボランティア活動を通じていろいろな人と知り合う中、「もっと自分の知識を高めたい」と同校定時制への入学を決意。家事や仕事と両立させて4年間、建築科生徒として通い続けた。ボイラー業務に関心が沸き、4年生の時に初めて同技師の試験に挑戦した。

 60代からの学校生活について、「先生は親身で一生懸命な人ばかり。同級生とは孫ほど年が離れていたけど、自分も20代の感覚で接して楽しかった」と振り返る。最初の受験は残念な結果だったが、卒業後も学ぶ意欲は衰えず、同校機械科の盛田典男教諭(47)らのサポートを受けながら試験を受け続けることにした。

 今年も5月から週3日、同校で夜間講習を受けて7月に受験。合格の知らせを聞いた時は「信じられなくて感激した」という。盛田教諭も「鈴木さんのように卒業後も熱心な人は初めて。合格はすごくうれしかった」と喜ぶ。

 鈴木さんは在学中、複雑な事情から通学を断念したり、健気に勉学に励む子どもたちの姿を目の当たりにしてきた。こうした経験から、今後は市内で来春の開設準備を進めている夜間中学の協力など、いろいろなことに意欲的に取り組むつもりだという。鈴木さんは「これからは体力との勝負。ボイラー技士の1級にも挑戦したい」と話している。(新目七恵)


◎「裁判員制度に尽力」…函館地家裁所長 滝沢氏が着任会見
 最高裁人事(9日付)で函館地家裁所長に着任した滝沢泉氏(56)が15日、同地裁で記者会見し、函館勤務の抱負を語った。滝沢所長は来年5月に始まる裁判員制度の周知や円滑な実施に尽力することを主要命題に掲げ、「候補者名簿の通知が間近に迫り、名簿に記載された市民の不安や疑問も現実的なものとなる。適切に対応していきたい」と述べた。

 滝沢所長は1974年に司法試験に合格し、「真実の追究や正義の実現を目指すことができる」との思いから、裁判官の道を選び、主に民事部を歩んできた。前任は東京地裁所長の補佐役となる同地裁判事兼東京簡裁司法行政事務掌理者。

 裁判員制度について滝沢所長は「国民の司法への信頼が強固なものになると期待している。司法の歴史上の節目の年」とした。裁判員となる市民の負担が少なくなるよう努めるとし、「辞退の理由も社会の実情に即した判断ができるようにしたい」と述べた。

 また、道内勤務は86―89年の札幌地裁岩見沢支部勤務以来、約20年ぶり2度目。函館にも旅行で3回訪れたことがあるという。滝沢所長は「函館は好きな街のひとつ。昨年夏に路面電車からこの庁舎を見た時には、勤務することになるとは思わなかった。歴史や文化など、落ち着いている印象。函館での仕事や生活を楽しみにしている」と語った。

 たきざわ・いずみ 1951年東京都生まれ。74年東京大法学部卒業後、77年東京地裁判事補を振り出しに、東京高裁判事、証券取引等監視委員会事務局次長、東京地裁判事部総括などを歴任。好きな言葉は調和の取れた落ち着きの良い解決や仲良くという意味から「和」。旅行や町歩きが趣味。妻と大学院生、大学生の息子が2人。(今井正一)


◎予約上回るプログラム相次ぐ 女性向けの教室・講座人気 …18日からオンパク
 函館・湯の川温泉街を拠点に18日―11月9日に開かれる体験型イベント「第4回函館湯の川温泉泊覧会(オンパク)」が開幕まで一週間を切り、予約が定員を上回るプログラムが相次いでいる。特に今回は女性向けの教室・講座が人気。実行委は一部定員や開催日を増やすなどして本番に向けた準備を進めている。

 実行委によると、今回は新たに20プログラムを加えた66種類、総定員3637人の企画を用意したが、4日の予約受け付け開始から定員を上回るプログラムが続出。キャンセル待ちも多く、定員枠や開催日を急きょ増やしたプログラムも約10種類に上る。

 15日現在で募集を締め切った企画は19種類。「美味しい珈琲の入れ方教室」「カラー診断&メイク教室」などの講座は女性に人気で早々に埋まった。最終日に周辺温泉旅館の料理長9人が特別メニューを提供する「湯の川温泉食の競演」は定員を50人増やしたほか、松倉川上流を散策する「松倉川白滝ハイク」は開催日を1日追加したが、それぞれ満員に達した。

 14日には「オトコの料理教室」のプレ体験会が湯の川プリンスホテル渚亭(湯川町1)で開かれ、同ホテルの石崎広暁料理長がオンパク会員ら男性4人を対象に料理2品を指導した。参加者は3枚におろしたサンマの身にめんたいこを巻き付けて揚げたり、焼いた牛ステーキに玉ネギを混ぜた和風みそソースを掛け、ぎこちない手付きで皿に盛りつけたりしていた。

 実行委は「まだ余裕があるプログラムもあり、早めに予約してほしい」と呼び掛けている。問い合わせは実行委事務局TEL0138・59・3789。(森健太郎)


◎自民・福島氏が事務所開き…総選挙道8区
 次期衆院選で道8区から出馬を表明している前参院議員で自民党道8区支部長、福島啓史郎氏(62)が15日、函館市東雲町14で事務所開きを行った。

 支援者約200人を前に福島氏は「道南各地を直接回ってみて、経済的にも社会的にも疲弊している様子を実感した。道南の農業や漁業が持っている大きな可能性を引き出し、安全、安心、おいしいを兼ね備えた道南ブランドを確立することが経済の活性化につながる」とし、「観光面では新幹線の早期開業への予算獲得に全力を尽くすとともに、ロシア地域への航路開設も探りたい」と訴えた。

 選対本部長の川尻秀之道議が「(与党の国会議員が不在だった)8年間の空白を埋めるためにも、皆さんの力を結集して支援の輪を広げよう」と協力を呼び掛けた。函館商工会議所の政治団体・日本商工連盟函館地区連盟が近く推薦を決定し、公明党も政権与党の枠組みで選挙協力する見通し。 (小川俊之)