2008年10月19日(日)掲載

◎アンテナ改修 最大8割補助…地デジ難視聴 旧4町村地域
 函館市は、地上デジタル放送の市内の難視聴地域に設置する共同受信アンテナ改修に対し最大8割を補助することを決めた。2004年に合併した戸井、恵山、椴法華、南茅部の旧4町村地域に難視聴地域が多いことから、市内で情報格差を生じさせないための措置だ。道内自治体で独自の補助は例がない。市の負担分は概算で約4300万円。一部に合併特例債の利用を見込んでいる。10月下旬から4地域で行う地域審議会で報告する。

 テレビを見続けるには、11年7月にアナログ放送が終わる前に、今後採用される方式のデジタル放送に対応するようアンテナを改修する必要がある。旧函館市内にある住宅ではテレビ局が函館山に設置したアンテナからの電波を受信できるため問題はないが、戸井の汐首岬から恵山、椴法華の全域、南茅部の古部には電波が届かず、難視聴地域となっている。

 現在これらの各地域では、NHK以外のテレビ番組を見られない場合は「自主共聴アンテナ」を、すべてのテレビ番組が視聴できない場合は「NHK共聴アンテナ」を標高の高い場所に設置し、ケーブルで各家庭につないでいる。毎年各共同受信組合に納められる利用料で、保守管理をまかなっている。

 これら難視聴地域の自主共聴には補修費に対して国の補助が最大5割受けられるが、残りは各組合が負担しなければならない。NHK共聴には補助金は適用されない。旧4町村地域のアンテナ数は、自主共聴が10施設、NHK共聴が6施設あり、約2500世帯分の受信をまかなっている。

 市は06年度、これらのアンテナ改修にかかる費用を調査。この調査に基づき、国の補助分を除いた住民負担の最大8割までを補助することを決定した。補助金が適用されるのは地デジ視聴に必要な最小限の設備のみで、改修は09―11年度の3カ年かけて行われる見込み。

 道総合通信局は「道内の自治体がこのような独自の補助をするのは初めて聞いたし、全国的にも珍しい」と話している。(小泉まや)


◎函館の未来像探る…オンパク開幕 旅館やNPO法人などパネル討論
 函館・湯の川温泉街などを舞台に多彩な体験型イベントが連日繰り広げられる「第4回はこだて湯の川温泉泊覧会(オンパク)」(実行委主催)が18日、開幕した。オープニングイベントとして、JTB北海道社長の高橋威男さんの基調講演や各地の旅館やNPO法人、行政のキーマンらが魅力ある地域づくりについて意見を交わすパネル討論があり、観光都市・函館の未来像を探った。

 テーマは「街を知り、人とふれあい、好きになる」。函館湯の川温泉旅館協同組合(金道太朗理事長)などでつくる実行委は11月9日までの期間中、66のプログラムを用意。恒例の温泉や食にちなんだ企画のほか、今回は函館近郊への日帰りツアーを拡充したのが特徴だ。

 オープニングイベントには市民ら約150人が参加。高橋さんは「地域力を考える」と題して広域観光エリアづくりの重要性を強調。「地域や産業間の『連携』が地域発展のキーワード。函館は歴史的な特異性を観光産業にどう取り入れていくか、見つめ直すことが必要」と述べた。

 「地域の魅力づくりとは」がテーマのパネル討論には高橋さんのほか、谷沢広函館副市長、同実行委員長の金道理事長、函館が手本にした大分県別府温泉のオンパクの仕掛け人・NPO法人ハットウ・オンパク代表理事の鶴田浩一郎さんら6人が登壇。

 谷沢副市長は「開港150周年を地域振興につなげ、長期滞在型の観光に力を入れたい」と強調、高橋さんは「地域の人が地域の魅力を再発見し、住民参加型のまちづくりを」と提案。鶴田さんは「顧客が情報発信のベース。感動を伝えるファンを増やし、多様な切り口でまちづくりを進めることが大切」などと語った。プログラムの予約に関する問い合わせはオンパク事務局TEL0138・59・3789。(森健太郎)


◎振り込め詐欺多発 チラシ配り注意促す
 高齢者を狙った振り込め詐欺の被害を未然に防ごうと、函館中央警察署などは18日、函館市美原1の長崎屋函館店前で、街頭啓発を行った。約40人の関係者が参加し、道行く市民にチラシなどを配りながら注意を促した。

 参加したのは同署のほか、市中央地区防犯協会、亀田地区の町会、北海道ハーレー警ら隊函館方面警ら隊など。住みよい町づくりを目指す「全国地域安全運動」(11―20日)の一環として、急増する振り込め詐欺の撲滅を重点課題に取り組んだ。

 同署の石田勇治生活安全課長は参加者に向けて「全国から多数の被害が報告される中、ATM(現金自動預払機)での発生に警戒を強めている。函館でも実際に被害にあっている人がおり、これ以上の被害を出さないよう注意を呼び掛けてほしい」とあいさつ。

 配布したチラシには、「おれおれ詐欺」や「架空請求詐欺」などの手口とその対処法を記載。電話の周辺などに貼り付けられるよう、注意を喚起するメッセージを書いたマグネットのグッズも添えられ、参加者は年配者に声を掛けながら、振り込む前の確認や相談の徹底を図っていた。(浜田孝輔)


◎いつなの?解散 選管やきもき…総選挙 道8区
 衆院解散・総選挙の日程が流動的で、各自治体の選挙管理委員会は気をもんでいる。道南最大の有権者を抱える函館市の選管事務局も、いつ解散があっても対応できるよう準備を進めているが、日程が決まらないとポスター掲示場の確保などの具体的な作業に入れない。開票を予定している市民体育館でも週末はスポーツ競技や大会の予約が入り、どの日になるかで競技の早期終了を関係者に依頼できない状態だ。

 函館市の有権者は、9月2日現在で24万1944人。市選管事務局によると、衆院を解散し選挙日程が決まった後は▽補正予算の措置▽ポスター掲示場の依頼や確保▽掲示板の発注、設置▽選挙時登録と入場券発送▽投開票所の開設依頼▽投票管理者と従事者、立会人の確保▽開票従事者の確保―など、予算、人、物の準備が必要。

 函館市の場合、ポスター掲示場だけで500カ所以上あり、私有地の場合は地権者に設置、使用の協力を求めなければならない。投票区によって有権者は最大で約6000人、最少は約60人で、投票所にはそれぞれ市職員や地区住民の担当者を配置しなければならない。

 開票を予定している市民体育館も、例えば11月の日曜日は卓球、ハンドボール、プロバスケットボール、タグラグビー、バドミントンの競技や大会があり、投票日が決まったら、大会関係者にできるだけ早く競技を終えてもらう依頼をする。

 衆院選は解散後、40日以内に実施する。9月の自民党総裁選時は最短で10月3日解散、同26日投票の観測が流れた。現在は年内実施の場合、10月末解散、11月下旬投票がささやかれるが、流動的。

 衆院道8区に立候補を予定している3人のうち2人は市内で事務所開きをした。ただスタートもゴールも見えない中、ある陣営の関係者は「年内か越年など、はっきりすれば人員体制の維持や縮小なども検討できるのだが…」と胸の内を語る。(高柳 謙)


◎中尾さん「五街道」完全制覇
 2005年から徒歩による五街道(東海道、中山道、日光街道、奥州街道、甲州街道)完全制覇にチャレンジしてきた函館市日吉町の中尾仁彦さん(66)が、最後の区間の中山道67次(東京都日本橋―滋賀県近江草津)約520キロを19日間かけて歩き、見事に目標を達成した。中尾さんは「どの街道も自然と歴史が数多く残されており、函館との意外なつながりを発見することもでき、とても収穫の多い挑戦だった」と振り返っている。

 市内の病院で事務局長を務めながら国内外の様々なウオーキング大会に参加してきた中尾さんは、05年の退職後に「ライフワークとして五街道を単独で歩きたい」と決意。同年10月に東海道53次(日本橋―京都市三条大橋)約500キロを15日かけて歩いた。07年には3月に日光街道(日本橋―栃木県鉢石)約150キロを5日間、同6月に奥州街道(栃木県宇都宮―福島県白河)約80キロを2日間、同11月に甲州街道(日本橋―長野県下諏訪)約210キロを7日間、と立て続けに踏破。最長距離の中山道が残っていた。

 当初は今年の春に挑戦する予定だったが、股関節とひざの調子を悪くしたため、バランスボールを使った治療に専念。万全の体調で9月17日に日本橋からスタートした。中山道は距離の長さはもちろん、峠越えが多いことでも知られる五街道中の最難関で、標高1530メートルの和田峠(長野県)をはじめ1000メートル以上の山道が続き、クマが出没する場所もある。そのため、東海道を1日平均40キロペースで歩いた中尾さんも、中山道は平均30キロ前後と歩度を緩め、危険が少ない明るいうちにその日の宿泊地に到着するようにスケジュールを組んだため、ゴールの近江草津には19日後の10月5日にようやく到着した。

 歴史研究にも取り組んでいる中尾さんにとって、五街道巡りにおいて函館の歴史と関連の深い史跡を巡るのも楽しみのひとつ。今回は、滋賀県の豊郷町で偶然立ち寄った資料館が、函館の豪商・高田屋嘉兵衛が幕府に没収された魚場を江戸時代後期に買取り、松前藩を拠点にばく大な富を築いた近江商人・藤野喜兵衛の屋敷跡である驚きの発見も。中尾さんは「今まで知らなかった函館と五街道との歴史的関係性が明らかになるのはとても興味深い。自らの足で現場に足を運ばなければ分からない事実がまだたくさん存在していることに驚かされた」と話す。

 五街道巡り全体を振り返って「地元の人たちが旧街道を大切に守っている姿に心打たれた。それに比較すれば函館の歴史は浅いが、古いものを大切に守る精神は見習っていきたい」と話していた。(小川俊之)