2008年10月2日(木)掲載

◎「ハコセン」新体制 財務体質改善図る
 民事再生手続き中の信販会社「ハコセン」(函館市五稜郭町、明道進社長)は1日、クレジットカード業道内大手の「ほくせん」(札幌)が出資して新設した子会社・ハコセンに全事業を譲渡し、新体制での営業を開始した。今後は事業向け融資を廃止するなど財務体質の改善を図り、2年目以降の黒字化を目指す。

 新ハコセンは、ほくせんが6月に5000万円を出資して設立。本社は同市千歳町9から五稜郭町32に移転し、新社長にはほくせんの明道進氏が就任した。金融機関の債務免除による益金処理のため、会社分割した旧ハコセンは2009年3月に清算する。

 明道社長や中村安雄専務ら新役員3人は同日、同本社で記者会見し、9月下旬に北洋銀行と北海道銀行を主幹事とするシンジケートローン契約を結んだことを発表。総額は短期・長期含め41億円で、今後の運転資金に充てるという。昨年11月の破たんの引き金となった事業向け融資は行わず、両社のカード管理システムを統合することで事務処理の効率化や人件費の削減を図る。

 新規航空会社エアトランセにハコセンが融資した約20億円の債権は放棄せず、引き続き回収を進めるという。一方、中村専務は「現段階で法的手続きは考えていない」とした上で、いまだ返済額が1割に満たないことも明らかにした。11年3月期までの中期経営計画によると、1年目の経常損益は1億5500万円の赤字だが、2年目は6100万円の黒字に転換する見込み。(森健太郎)


◎前町長から「天の声」…森町談合初公判
 森町発注の町消防防災センター建設工事の指名競争入札をめぐる官製談合事件で、競売入札妨害(談合)の罪に問われた業者側の被告4人の初公判が1日、函館地裁(岡田龍太郎裁判官)で開かれ、工事を落札した準大手ゼネコン東急建設(本社・東京)が町内最大手の星組渡辺土建(星組)と共同企業体(JV)を組んだ背景に、前町長の湊美喜夫被告(79)の「天の声」が働いたことが明らかになった。検察側は、湊被告が2005年9月中旬、東急建設から受注工作を請け負った函館市内の自営業登真人被告(60)に「東急建設を入れるべきではないか」と言われ、星組と東急建設を組ませるよう元建設課長に指示したと指摘、同町の「談合体質」の実態を示した。

 検察側は、湊被告の意向が働かなければ入札参加もままならないなど、談合が常態化していたことを明らかにし、起訴した湊被告ら7人の共謀が成立するとした。

 冒頭陳述などによると、森町では「公共工事は町内業者に落札させたい」とする湊被告の強い考えがあり、業者選定や入札実施も湊被告の内諾や決裁を経なければならなかったと指摘。町内業者も当時、星組の元社長渡辺英明被告(56)が会長を務めていた町建設協会を中心に談合を繰り返していた。

 同センター工事をめぐっては05年6月、町内大手の星組と工藤建設の2社間で話し合い、同センターは星組、町役場庁舎増改築工事(同8月執行)は工藤建設が落札することを取り決め、同7月中旬、渡辺被告が「地元で頑張りたい」と湊被告に申し入れた。湊被告は「あんたと工藤でそれぞれJV組んでやればいい」と話し、地元業者に落札させる意向を示した。

 一方、04年秋ごろから「町長の『天の声』があれば工事を落札できる」と考えた東急建設札幌支店の幹部らは、函館市の設備会社元社長の藪下宏一被告(60)から紹介された登被告を介して、同センター工事の受注工作を画策。登被告には同社が工作資金1000万円を用意し、同社が指名業者に入れるよう湊被告に働き掛けた。

 一度は、内々で星組に決まりかけていた同センター工事は入札直前になって、登被告や東急建設の活動が活発化。登被告は「5億円規模の工事で星組だけなのはおかしい」「東急建設がメーン(幹事社)にならないか」と湊被告に意向を伝えた。これを受けて、湊被告は元建設課長や渡辺被告らを動かし、JVを組み替えさせ、さらに「東急は大手だべ。したら東急が上だべよ」などと言い、東急建設をメーンにさせた。

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 初公判で東急建設札幌支店の元副支店長菅沢利昭(61)、同建築部長川本末男(58)、藪下、渡辺の4被告はいずれも起訴事実を認めた。検察側は「自由競争が阻害され、無駄に投入された税金は多額。町民の信頼を裏切ったという意味でも結果は重大」として、菅沢、川本、渡辺の3被告に懲役1年、藪下被告に懲役10月を求刑し、即日結審した。判決は川本被告が24日、残る3被告が23日に言い渡される。3日には登被告、14日には東急建設の桐井秀行被告(56)の初公判が同地裁で開かれる。


◎景況感3期ぶり悪化…日銀支店9月短観 
 日銀函館支店(市川信幸支店長)は1日、9月の企業短期経済観測調査(短観)を発表した。渡島・檜山管内の企業の景況感を示す業況判断指数DI(「良い」とする割合から「悪い」とする割合を引いた指数)は全産業でマイナス25で、前回調査(6月)から11ポイント悪化した。3期ぶりに前期を下回り、消費低迷や原油高に伴う収益悪化で企業心理の冷え込みが続いている。

 産業別では、製造業が前期から横ばいのプラス3。機械が造船など輸送用機械が好調だったため、前期比10ポイント改善のプラス10と唯一健闘した。一方、食料品は原材料、飼・肥料価格の上昇に伴う商品への価格転嫁が進まず、前期と変わらずゼロだった。

 非製造業は、前期比14ポイントと悪化のマイナス36と大幅に転落。建設が同17ポイント低下のマイナス27だったほか、燃油高や消費マインドの低迷から、運輸がマイナス30、小売がマイナス58、飲食・宿泊がマイナス67と軒並み前期割れとなり、2けた以上の落ち込みも目立った。

 次期(12月)の予測は、製造業でマイナス15、非製造業でマイナス39。全産業はマイナス32と、前期に続き全業態で悪化の見通し。同支店は「製造業を中心に販売不振が続き、足元の景況感も05年3月以来の低水準となっている。先行きの不透明感や景気減速の懸念から今後も経営者心理の冷え込みは続くだろう」としている。

 調査は8月27日から9月30日までに実施。110社(製造業33社、非製造業77社)から回答を得た。(森健太郎)


◎日本政策金融公庫が発足…政府系6金融機関再編
 政府系の6つの金融機関が1日再編され、新たな形でスタートを切った。国民生活金融公庫や中小企業金融公庫など4機関が統合し、日本政策金融公庫が発足。日本政策投資銀行と商工組合中央金庫(商工中金)が完全民営化に向けて株式会社化された。函館市内でも各出先の支店・事務所の名称が変更されたが、当面は現行の拠点での営業が維持される。

 政策公庫は国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行の国際金融部門が統合。函館には国民公庫と中小公庫の函館支店があり、11月中に国民公庫(豊川町20)内に中小公庫(若松町14)が営業拠点を移す。統合に伴い新支店内にテレビ電話を設置するなど顧客の利便性向上を図る。

 商工中金も同日、株式会社として新たな一歩を踏み出した。函館支店(若松町3)のオープニングセレモニーで、渡辺正支店長は「中小企業のための金融機関として、顧客ニーズを追求するお客様第一主義の経営を徹底したい」とあいさつ。来賓の経済団体の代表者らとテープカットして門出を祝った。

 政策投資銀も函館に非常勤の事務所があり、商工中金と同様に5―7年後の完全民営化を目指す。これまでの長期・固定融資に加え、企業への投資事業などにも力を入れる方針で、函館事務所(若松町14)については「当面は現在の拠点や業務を存続させる」(北海道支店企画調査課)という。 (森健太郎)


◎財政負担2500―5000万円増…極東大市立化で試算 懇話会で報告
 ロシア極東大函館校の支援のあり方検討懇話会(山崎文雄座長)の2回目の会合が1日、市役所会議室で開かれた。西尾正範市長が意欲を見せる同校の市立化について、事務局の市国際課が試算をまとめ、新たな財政負担が年間2500万円から5000万円生じることが報告された。委員からは同校の存在意義は認めながらも、大学の運営努力を求める意見が相次いだ。

 現在は年間3000万円の補助金支援と職員1人を派遣しており、平均的な人件費を加えると市は3790万円を負担している。試算は同校職員の給与体系変更や、教員の増配などを勘案して出した。

 市立化する場合の問題点も事務局が整理。▽市が管理責任者となることから、本学との協定見直しが必要▽ロシア人の校長を日本人にしなければならない▽授業料の引き下げの検討▽校舎の大規模改修など将来の負担―などが挙げられた。

 ロシア政府が極東重視の姿勢を打ち出し、ロシア経済が台頭している中で、極東大函館校の存在意義は大きいとの認識は一致。「世界の現状を考えると、西尾市長が極東大を大事にしたいという考えは間違ってはいない」との意見があった。

しかし、意見交換全般では「学校や法人から支援の要請がないのに、一方的に支援を検討するのはおかしい。ましてや市立化などは論外」「学校が学生を集める努力をしない限り、いくら支援をしても無駄」「試算は甘く、経済界では市立化に賛成していない」など、唐突に出た市立化議論に対する疑問や批判が相次いだ。(高柳 謙)


◎「いのちの教育」出版…道教大函館校・佐々木馨教授 生命軽視の現代問う
 道教育大函館校の佐々木馨教授(62)=日本中世宗教史=が、13冊目の単著となる「いのちの教育〜心育む北国からのメッセージ」を、北海道企画出版センターから出版した。いじめや自殺、殺人など「生命軽視の現代」(佐々木教授)に目を向け、日本人の生死観を多様な角度から見直し、教師や親、人間が命をどう考えていけばいいかを論考している。

 「医師や宗教者、哲学者、心理学者など、それぞれの専門家の論考を集めることで命の総合的な研究はできるが、1人の人間が多面的にどこまで命をとらえることができるか、一つの試論となった」と佐々木教授は語る。

 教育大や専門学校の学生のほか、小中学生、教師、保護者、高齢者大学の学生など、幅広い世代を対象に独自のアンケートを実施。男性より女性の方が「あの世」の存在を信じる傾向があるが、来世に対する救済を宗教に求めている人は少ないことを指摘。「『千の風になって』が大ヒットしたように、現代は民俗・宗教的な生死観より、文芸・哲学的な生死観を受け入れているようだ」と分析した。

 小中学校の保護者に「命の教育は必要か」と聞いたところ、96%が「必要」と答えた。教育現場で行われている「命の教育」の事例を紹介し、道徳の時間だけでなく、国語で「他を思いやる心」、社会で「地域への愛情」、理科で「生物を愛する心」などを横断的に教え、考える教育ができることを指摘した。

 佐々木教授は「自他の命を大切に思い、それを尊重する社会を構築するために重要なことは、一人一人が自らの『生きる命』と『消えゆく命』を心の中で自覚し、考えていくことだろう」と話している。

 A5判、225ページ。定価2420円。(高柳 謙)