2008年10月30日(木)掲載

◎晩秋から初冬へ
 【七飯】29日の本道付近は冬型の気圧配置となり、上空に12月中旬並みの寒気が入ったため、道南でも気温が下がった。函館海洋気象台によると、最低気温は長万部1・3度、森3・0度、松前7・0度、奥尻6・7度、熊石5・0度、江差7・7度とそれぞれ今季最低を記録した。函館は2番目に低い5・1度だった。

 七飯町の大沼国定公園では、頂上付近がうっすらと雪化粧し、ふもとが紅葉のオレンジや赤で染まった駒ケ岳(1131メートル)が見られた。大沼湖畔には冬を越すために飛来したカモ類の姿も多くなり、晩秋から初冬の気配を感じさせている。(山崎純一)


◎北斗が道内初のライオン飼育地/浅利さんが当時の新聞から記述発見
 【北斗】七飯町緑町在住の元小学校教諭、浅利政俊さん(77)がこのほど、レポート「戦時下、猛獣処分で犠牲になった動物たち」をまとめた。過去の新聞記事に分析を加えたもので、函館市でハム・ソーセージ製造に尽力したカール・レイモンさん(1894―1987年)が函館市に寄贈したライオン2頭について、寄贈前に当時の大野村(現北斗市)で育てられていたことが分かった。それまで道内にライオンはいなかったため、北斗市は道内で初めてライオンを飼育した地となる。浅利さんは当時のレイモンさんや飼育の様子など、広く情報を求めている。(笠原郁実)

 浅利さんは函館青柳小学校に勤務していた当時、函館公園内に設置された動物慰霊碑に注目。園内の施設で亡くなった動物の霊を慰めるため建立された碑に、戦争中に餌不足などで亡くなった動物の霊もまつられていると考え、「戦争は人間だけではなく、動物も犠牲になったことを考えてもらいたい」と、古い記録などを調べてきた。

 レイモンさんは1924年、函館市内に店舗を開業。27年に大野村に移り住み、大規模な畜舎や加工場を備えた工場を開設した。現在は渡島大野駅前に跡地が残る同工場の披露に関する新聞記事で、ライオンやクマ、ワシなどを飼育する檻(おり)の存在を知った浅利さんは、北斗市教委が保存する開設セレモニーの写真を確認。レイモンさんや丹野助七大野村長らが並ぶ集合写真奥に動物の檻を発見し、さらに古い記事をひもといた。

 記事には上野動物園から送られた雄と雌のライオンが大野村で出産後、函館市に寄贈された経緯がまとめられていたほか、道内で初めてのライオンを一目見ようと、函館公園に大勢の人が訪れたことが記されていた。ライオン夫婦を「猛夫」「レイ子」とする命名には1万2000通余の応募あったことなども分かった。大野村で生まれたライオンは、その後も同村で過ごしていたという。

 ただ、レイ子は42年、戦中の餌不足で死んだ。浅利さんは「小学生の平和教育としても使用される国語の教材で、戦中の餌不足で死亡する『かわいそうなぞう』の話は、函館でも同じようなことがあった身近な出来事であることを伝えたい」と話す。来年春には猛夫とレイ子が愛きょうを振りまいた檻も撤去される予定で、「ライオンが飼育された工場跡も新幹線新駅開業で確認できなくなってしまう。ぜひ、小さなことでもいいので、レイモンさんの大野時代について情報を寄せてほしい」と呼び掛けている。

 情報提供は市郷土資料館TEL0138・77・6681。


◎函館市09年度、4支所を3課体制に
 函館市は2009年度、旧4町村の支所や環境部の組織機構を再編し、市長部局と教育委員会で職員158人を削減する。支所は5課1事務所体制を3課1事務所体制とするほか、各部局で業務の効率化や外部委託を進める。行財政改革新5カ年計画に基づく削減で、効果額は約7億円。28、29の両日、市役所職員労働組合に提案済みを除く127人の削減計画を説明し、11月下旬までに回答を求めた。

 04年12月に合併した戸井、恵山、椴法華、南茅部の各支所は5課1教育事務所体制をとっている。今回の提案分で、来年度からは住民サービスと保健福祉の2課を「市民福祉課」に、産業と建設の2課を「産業建設課」に再編し、建築関係業務の本庁集約化も図る。今回の提案分では最も削減数が多い28人で、教育事務所分の削減を含めると4支所合計で31人となる。

 環境部は、廃棄物対策と環境保全の2課を再編し「環境保全対策室」を設置。清掃施設課と日乃出清掃工場を統合し「日乃出クリーンセンター」とする。同センターの業務やごみ収集業務の委託も進め、合わせて25人減らす。

 教育委員会では4支所分を含め23人を削減する。学校給食調理業務の委託化継続で14人、恵山高校廃止に伴い1人などを予定。一方、農林水産部では市場管理業務体制見直しに伴う課の新設で4人増員となる。

 4支所の規模縮小について市総務部は「課は集約するが6部門は引き続き維持する。業務量に見合った人数とし、住民サービスの低下は招かない」と説明。「厳しい財政状況の中、行政改革を確実に進めたい」とする。

 市職労は今後、職場ごとに提案内容を検討する考え。藤盛敏弘執行委員長は「税収が落ち込む中、できるものについては受け入れたい。逆提案もあり得る」とする。

 08年4月現在の企業局を除く職員数は2610人。本年度末の定年退職者が約140人いることから、新規採用者を抑えることで実現する。水道・交通・病院局分は今後提案する。(小泉まや) 


◎長谷川さん昔のおもちゃ収集続ける
 函館市美原に住む元小学校教諭の長谷川堅美さん(68)は、30年以上前から古い遊び道具などを集め続けている。竹細工やけん玉、お手玉、メンコ…。今失われつつある遊びを伝えようと、収集品を持って子どもやお年寄りの催しに出向き、実演などの伝承活動にも精を出している。長谷川さんは「昔の良き文化を残したい」と話している。(新目七恵)

 小樽市出身。父は模型飛行機やアイスキャンデー屋などを営み、長谷川さんは幼少時から、身の回りにある割りばしを使い、鉄砲を作るなどしてさまざまな遊びを楽しんでいた。

 おもちゃ収集は、桧山管内のへき地校教員として働く1960年代、生活科の時間などで児童に遊びを教えることになったのがきっかけ。道具を集めて子どもたちと遊ぶ中、昔の遊びの良さを残したいと考えるようになった。39年間の教員生活を終えた後もその情熱は変わらず、フリーマーケットなどで買い集めている。

 現在、自宅横の倉庫内に並ぶさまざまながん具は1500点を超える。中でも特に思い入れがあるのは「竹がえし」だ。4本の竹棒を歌に合わせて飛ばしたり、持ち手を変えたりする遊びで、函館では「竹尺(せんじゃく)」、小樽方面では「ガッキ」と呼ぶという。長谷川さん自身も幼いころ楽しんだ遊びで、記憶をたどって種類や手順などを文章にもまとめた。「手を使って集中でき、大人数で遊べるのが特徴」と話す。

 長谷川さんは道南の各種イベントで、こうしたおもちゃの遊び方や作り方を披露。お年寄りの参加者は昔を懐かしみ、初めての子どもや大人も夢中になるという。

 「病気に強いイメージがあり、元気な色」との理由から、長谷川さんは「赤」をラッキカラーとし、普段は全身赤い服を着て歩く。自宅に遊びに来る近所の子どもらからは「レッドマン」と呼ばれるほどの人気者だ。

 長谷川さんは「昔の遊びは頭や体を使い集団で行うので、生きる力や人間性の醸成にもつながる」と話している。


◎殿様街道、歴史案内「フラッグ」好評
 【福島】福島町千軒の山道「殿様街道」は松前藩主や幕末の志士、土方歳三らが歩いたとされる福島の観光名所の一つで、豊かな自然とその歴史の舞台に触れようと、人気を集めている。特に町民有志が制作した案内道具が随所で活躍し、柔軟な発想と風情ある演出が多くの人を魅了している。

 「歴史を感じながら森林浴を楽しみ、古里を盛り上げよう」と地域住民が整備するこの道は全長約7キロ、標高差200メートルほどで、子どもから年配者まで誰もが気軽に歩ける。急斜面には安全ロープがあり、松前藩主の休憩所跡は「茶屋峠」、箱館戦争で置かれた大砲の跡地は「砲台跡」などと手づくりの看板が置かれている。

 今年はさらに大名行列の旗をイメージした案内道具「殿様フラッグ」が登場し、好評を博している。「コンブ新幹線」「コンブ神社」など特産品の模型づくりで古里をPRする町日向460の鉄工所社長鳴海健児さん(68)と町三岳73、中塚徹朗・中塚建設社長(50)が考案した。

 写真や歴史年表をプリントした布(縦2・5メートル、横1メートル)を釣りざおで張る仕組みで、伸縮可能なさおは「刀」、たためる布は絵巻風という“サムライ”をほうふつさせる趣向だ。

 25日に行われた「ブナの森、観察会」でも登場。「学校の黒板のようで分かりやすい」と人気だった。中塚さんは「まちづくりを思う発想から生まれた作品。皆さんに喜んでもらえることがうれしい。用途の可能性は無限なので、さらなる活用策を見出したい」としている。(田中陽介)


◎9月の道南求人倍率0・47倍
 函館公共職業安定所は29日、9月の渡島・桧山管内の雇用失業情勢を発表した。仕事を求めている人1人に対する求人数を示す有効求人倍率は前年同月より0・08ポイントダウンの0・47倍と、15カ月連続で前年割れとなった。情勢について同職安は6月から「弱めの動き」としていたが、下げ幅の拡大を踏まえ、当月から「厳しい状況」と4カ月ぶりに下方修正した。

 有効求職者が前年同月比1・5%増の9615人と9カ月ぶりにプラスに転じた一方、有効求人は同13・9%減の4525人と15カ月連続の前年割れとなり、全体の倍率を押し下げた。同職安は「離職者が増える半面、企業の求人に対する慎重さは増している」と指摘する。

 雇用の先行指標となる新規求人倍率は前年同月を大幅に下回る0・22ポイント減の0・78倍と、6カ月連続で前年を下回った。漸減傾向にあった新規求職者が同14・6%増の2554人に増えたものの、新規求人は同10・5%減の1986人と9月連続でマイナスとなっている。

 新規求人を産業別でみると、長引く消費の低迷から卸売・小売業(前年同月194人減)や、飲食店・宿泊業(同29人減)の落ち込みが目立つ。函館市内では家電量販店や食品スーパーの出店が相次いでいるが、正社員採用は本社所在地や札幌などで一括しているケースが多く、地元の求人に反映されにくいという。同職安は「冬場はもともと企業活動が停滞するため求人が減る時期。円高・株安の影響など先行きの不透明さが雇用環境を悪化させている」としている。(森健太郎)


◎大阪の老舗コンブ店夫妻が磨光小訪問
 「南茅部のコンブは日本一」―。函館磨光小学校(加藤正男校長、児童138人)に29日、大阪の老舗コンブ店「こんぶ土居」の土居成吉店主(64)と妻京子さん(62)が訪れた。函館市南茅部地区産コンブの質の良さを伝えようと、同校児童と交流を続けて今年で10年目となる。昨年からは同校卒業生もいる南茅部高の生徒が修学旅行で同店を訪問するなど、コンブにほれ込んだ大阪の店主の地道な取り組みは着実に広がりを見せている。(新目七恵)

 大阪は全国有数のコンブ消費地で、中でも南茅部の「白口浜真昆布」は最高級品として知られる。1903年創業の同店でも取り扱うコンブの多くが南茅部産だ。土居店主は「漁師の人たちに誇りを持ってほしい」と、1982年ごろから同地区の漁師と交流し、99年からは同校にも来校している。今月には同店の4代目社長で、土居店主の息子の純一さんも初めて南茅部高校を訪れている。

 この日、土居店主は5年生22人に「南茅部のコンブのおいしさを一緒に確かめよう」と呼び掛け、コンブだしを取って試飲。その後、そのだしを使って作ったお好み焼きを味わった。土居店主は「コンブ採りは大変だと思うが、皆の家族の心がコンブのおいしさの基礎になってる」などと語った。

 幼いころから実家のコンブ採りを手伝う佐藤大吾君(10)は「自分たちが頑張ったコンブが大阪の人に食べてもらえてうれしい」とし、長谷川彩香さん(11)も「こんなにコクがあっておいしいとは知らなかった」と喜んでいた。

 土居店主の活動を機に、南茅部高校の生徒らは昨年度から修学旅行の一環として同店を訪問。今年も22日、実家のコンブ漁を継ぐ予定の同校2年生5人が訪れ、消費の現場などを見学した。参加した高谷恵太君(17)は「南茅部コンブの質の高さを実感。自分も環境問題に負けない革命的なコンブを作りたい」と決意を新たにしていた。

 土居店主は「地元のコンブの素晴らしさを知り、将来漁師を継ぐ時には誇りを持って取り組んでほしい」とエールを送っている。