2008年10月4日(土)掲載

◎小麦高で「米めん」注目、米粉でパンや洋菓子も
 政府が製粉業者に売り渡す輸入小麦の価格が1日から10%引き上げられ、今春に次ぐ値上げでラーメン店やパン・洋菓子店などが対応に苦慮する中、小麦高騰を“追い風”に函館市内の食品会社では「米粉」を使っためんの売れ行きが好調だ。米粉を原料にした商品を出すパン・洋菓子店も「小麦アレルギーの人に好評」と今後の普及に期待している。(宮木佳奈美、鈴木 潤)

 自家製の米粉を原料に2005年7月に「米めん」を商品化した米粉製造・加工品販売「OSK(オーエスケー)食品」(旭町2、加藤博志社長)は3月ごろから受注が増え、10月現在で昨年の1・5倍になった。米粉そのものは市内外の一部業者だけの取り引きで、米めんほど受注は伸びていないが、問い合わせは増えているという。

 加藤社長は「小麦高騰の影響と食物アレルギーの人からの需要の増加が要因では」と分析。「特にパンの製造に向いているパウダー状の米粉を売り込みたい」と意欲を見せる。

 今春の小麦急騰で店頭価格の値上げに踏み切ったパン・洋菓子店も「これ以上は値上げできない」と踏ん張る。小麦が値上がりする前から米粉製品を展開するトロイカ洋菓子店(港町1、坂上東樹店主)は「安心できる地元産食材を使い、付加価値を付けて魅力ある商品で勝負するしかない」ときっぱり。

 地元産の米粉を使ったロールケーキやパン、クッキーなど5種類を販売しており、「米粉は生クリームなど素材との相性が抜群。一番人気のロールケーキはしっとり感とふんわり感を合わせ持ち、口溶けがいい。クッキーはパリッとした歯ざわりが出る」と普及を進める。

 パン店「ドゥアンジュ」(美原3、小室恵司店長)も3種類の米粉パンを製造。「米粉パンだけを買う固定客はいるが、他の商品と比べると売れているという実感はまだない」とするが、「アレルギー体質の人には持ってこいのパン」とPRする。

 ラーメン店も自助努力で値上げをせずに奮闘。「らーめん麺七」(市内昭和3、森利口静店主)では昨秋と今春の小麦価格の上昇で、めんの仕入れ価格が1玉(150グラム)11円値上がりした。今回の引き上げでさらに4、5円は上がる見通しだが、「光熱費などの経費を節約し、メニューの値は上げず、味も落とさずに頑張りたい」と話している。


◎日乃出清掃工場、事故米840キロを焼却
 全国の農政事務所で確認しているカビ発生の事故米240トンの焼却処分が3日、函館市の日乃出清掃工場など3道県5カ所で始まった。委託された同工場には同日、午前と午後に分け計840キロが廃棄された。同工場では6日に残り390キロを焼却する予定で、道農政事務所の南宏明消費流通課長は「消費者に不安をかけて申し訳ない。市場に流通しないよう速やかに処分したい」と語った。

 全国で処分される240トンは、最低限の輸入が義務付けられたミニマムアクセス米と国産米。函館で処理される計1230キロはいずれも2007年度に米国から輸入され、倉庫に保管中に何らかの原因でカビが発生したという。

 同工場には午前11時と午後3時に、420キロ(30キロ詰め14袋)ずつ搬入。袋を開けると青っぽいカビや黄色、褐色に変色した精米が確認された。農政事務所の職員2人が車両から降ろし投入口に廃棄。ベルトコンベヤーでごみピットに運ばれ、他の事業系廃棄物と一緒に焼却炉へ回された。

 道内では同日、小樽で270キロ、釧路でも60キロが焼却された。南課長によると、函館と苫小牧で残り480キロがあり、6日までに全量を処分する。道内で確認している事故品1650キロは全量がミニマムアクセス米で、04―06年度に契約し、05―07年度に輸入されたという。南課長は「カビの原因は特定できなかったが、これまで以上に(政府米の)管理に細心の注意を払いたい」と述べた。

 同日は茨城で120キロ、山口でも3624キロが焼却処分され、農水省は各自治体に委託するなどして全量の処分を急ぐ。(高柳 謙)


◎森町官製談合、登被告に懲役1年を求刑
 森町発注の町消防防災センター建設工事をめぐる官製談合事件で、競売入札妨害(談合)の罪に問われた、函館市内の自営業、登真人(まこんど)被告(60)の初公判が3日、函館地裁(岡田龍太郎裁判官)で開かれ、同被告は起訴事実を認めた。検察側は「町長に顔が利くことを利用し、1000万円の工作資金を得て、町長の影響力を盾に都合の良い談合を実現させた」とし、同被告に懲役1年を求刑した。判決は29日。

 検察側は冒頭陳述で、同被告はかねてから面識があった前町長の湊美喜夫被告(79)から、経営していたスナックの営業資金200万円を借り入れていたと指摘。さらに湊被告は1989年ごろから、登被告が紹介した男に「竹島問題の賛助金」名目で、年数回20―30万円ずつ支払っていたとした。

 同センターの工事受注工作では、登被告が2004年12月、東急建設側から藪下宏一被告(62)を介し、工作資金1000万円の供与を受け、湊被告に対し、東急建設が指名業者に入れるよう働き掛けた。入札直前の05年9月には、東急建設側の条件を有利にしようと、星組渡辺土建との共同企業体(JV)の組み替えや、出資比率の変更を湊被告に応じさせた。

 被告人質問で登被告は、湊被告を要求通りにさせるための手法について、森町の談合体質を背景に「町長を応援している星組渡辺土建の談合について公表すると迫ることで認めさせた」とした。工作資金1000万円の使途は「借金の返済や息子の進学資金に使った」と供述。湊被告には見舞金として計260万円を渡したことも明らかになったが、談合とのかかわりについては言及しなかった。

 一方、弁護側は「東急建設が強く望んだ結果で、被告は同社の手足に過ぎない。談合が慣例化していた森町の責任の方が重い」とし、登被告は「森町民には心からおわびしたい」とした。


◎07年度の函館児童相談所、虐待「通告」169件で過去最多
 函館児童相談所(土渕美知子所長)の2007年度の相談状況(渡島、桧山管内)がまとまり、家族や親類、付近住民らが疑いも含め虐待の情報を提供した「通告」件数が、前年度よりも46件多い169件を数え、過去最多に上ったことが3日までに分った。土渕所長は「細かな分析はしていないが、児童虐待が社会問題化し、市民や子供の関係機関、団体などの関心も高まってきたからでは」としている。

 同相談所によると、通告件数は2000年度から60―80件台で推移し、04年度に初めて3けたとなる105件を記録。05年度に97件とわずかに減少したが、06年度は123件で過去最高となり、07年度はそれを上回る激増となった。

 同相談所が通告された情報を調査し、虐待と判断した「受理」件数は80件に達し、過去最高だった前年よりも20件減ったものの、2番目に多い数となった。

 07年度の受理のうち、虐待を加えた者の内訳は「実母」が39件と一番多く、次いで「実父」の22件、「継父」の10件、「継母」の6件となっている。虐待内容をみると、「身体的虐待」が30件と最多で、「ネグレクト(育児放棄)」29件、「心理的虐待」15件、「性的虐待」6件と続いた。

 同相談所が対策を講じた「処理」件数の総数は66件(うち14件は前年度受理)で、「面接指導」が54件と圧倒的に多く、「施設入所」が8件、「里親などへの委託」2件となっている。

 本年度は8月末現在、通告が前年同期比より10件多い66件、受理が同1件多い48件、「処理」が39件と、引き続き増加傾向にある。(鈴木 潤)


◎精神障害抱える寿崎さんが介護員2級を取得
 七飯町の寿崎(すざき)剛志さん(47)が精神障害を抱えながら、4カ月掛けて介護員(ホームヘルパー)2級を取得し、研修を受けた函館社会福祉介護学院(函館市美原1、吉田正樹学院長)で3日、修了証書を受け取った。寿崎さんは「これから資格取得を目指す精神障害者のためにも、自分がやり遂げて懸け橋になりたかった。サポートしてくれた皆さんへの感謝を忘れず頑張りたい」と話している。(宮木佳奈美)

 寿崎さんは会社員だった37歳の時、躁(そう)病を発症し、現在は同町の「障がい者グループホーム有夢」で生活している。道央に住む母親が介護を受けていると知って介護職に興味を持ち、生活保護の中からわずかな資金をため受講費をねん出した。

 講座は通常1カ月間で取得できるコースだったが、薬の副作用による眠気やコミュニケーションの問題、添削課題の点数が合格点に達しないなどで時間が掛かった。同学院ではこれまでも障害のある受講者を受け入れ、寿崎さんには個別指導などできめ細かく対応。同グループホーム管理者の吉田輝明さんら支援者も協力した。一緒に学ぶ受講者にも病気について理解してもらった。同日ともに修了証書を受け取った仲間を寿崎さんは「最高の宝物」と感謝する。

 途中であきらめかけた時期もあったが、同じグループホームの入居者で介護事務を目指していた女性が亡くなり、「彼女のためにも頑張ってやり通すと決めた」と奮起。近く墓前に修了証書を見せに行くつもりだ。今後について「すぐに答えは出ないが自分にも資格を生かして何かできることはないか考えている」と話す。

 吉田学院長は「障害を抱えながら資格を取って頑張っている人を知ってもらい、同じ立場の人の励みになれば」とし、今後は障害者向けの講座開設も検討。同学院の修了生で、自らも当事者でありながらNPO法人全国精神障がい者地域生活支援センターの理事長を務める能登正勝さんは「いろいろな意味で障害者の受け皿は少ないので、サポート体制を整えてくれることに期待している」と話している。


◎「地域振興条例」に関する意見交換会
 【江差】道が制定を検討中の「地域振興条例(仮称)」に関する意見交換会が3日、桧山支庁で開かれた。同条例には支庁廃止地域に対する支援策が盛り込まれるが、支庁廃止の打撃を懸念する地元関係者は「地域振興を掲げながら、地域衰退につながる支庁廃止を迫る道のやり方は全く信用できない」と猛反発。議論は終始かみ合わず平行線をたどった。(松浦 純)

 桧山7町の住民と町職員、町議ら約100人が出席。道地域づくり支援局の内山正二参事が条例の骨子などを説明。来年2月の定例道議会に条例案を提案、新年度の施行を目指す方針を示した。

 同条例は当初、支庁廃止地域への支援策を中心とする方向だったが、道は全道を対象に地域振興の理念や枠組みを定める方針に転換。支庁廃止地域は過疎化や産業衰退で「特に配慮を要する地域」として支援策を講じるという。内山参事は「条例化で財源確保の重みが増す。知事は数年間で数億円規模の予算を講じる方針」と理解を求めた。

 地元側は「数億円の予算では全道の市町村を支援できない」(江差町の大門利雄氏)、「地域振興は道の責務。あらためて条例化する意味は無い。条例は支庁廃止地域に限定すべき」(田畑明江差町総務政策課主幹)、「産業を支援する支庁の存在が最大の振興策」(若狭大四郎上ノ国町議会議長)、「支庁廃止は過疎化を進める。道の施策はでたらめ」(打越東亜夫江差町議会議長)と猛反発。支庁再編を地域の死活問題とする地元側と道側の温度差が際だつ場面も目立った。

 公選法改正問題から、来年4月の支庁再編の実施が危ぶまれており、江差町の工藤篤総務政策課長は「支庁再編が遅れても地域振興条例は制定するのか」とただした。内山参事は「支庁再編とは切り離して来年4月の施行を目指す」と答えた。


◎渡島支庁区選出の川村正道議が死去
 自民党の川村正道議(渡島支庁区選出、松前町在住)が3日午前1時10分、特発性間質性肺炎のため札幌市内の病院で死去した。68歳。通夜は13日午後6時から、告別式は14日午前10時から、それぞれ松前町民体育館(松前町神明30)で行われる。喪主は妻明子さん。

 1940年松前町生まれ。91年、道議に初当選し、道議会総務委員長、同新幹線・総合交通体系対策特別委員長、北海道さくらの会議員連盟会長などを歴任。2007年4月の選挙で5期連続当選を果たした。川村道議は9月21日に体調不良を訴え入院加療中だった。

 前田一男松前町長は「道南のために長い間頑張ってくださり、人間味にあふれて愛される存在だった。ご冥福を祈りたい」と話した。松前町議会の斉藤勝議長は「町のために非常に精力的な活動をしてくれていただけに損失は大きい」と悼んだ。

 なお同選挙区は定員3人で、欠員が2人以上ではないため、川村道議の死去による補欠選挙は行われない。