2008年10月7日(火)掲載

◎【企画・シネマアイリスと私】うなぎ・川魚料理店「鯉之助」の中里拓二社長(58)、政子さん(54)
「数時間の間、仕事を忘れて映画の世界に没頭する。伸びたゴムが引き締まるように、エネルギーが沸くよ」。1996年の開館当初から客として通い続けている。最低でも月1度は足を運び、観た作品は150本を超える。

 以前は、松風町の彩華デパート地下にあった映画館「名画座」で往年の名作を観るのが楽しみだったが、閉館してしまった。がっかりしていたが、その後アイリスが開館し、喜んだのを覚えている。

 子どものころ、父の故・鉄之助さんと一緒に本町行啓通りにあった「東邦映画劇場(東劇)」で時代劇などを観たが、あまり好きではなかったという。映画の面白さに気付いたのは高校生の時。何気なく耳にしたメロディーが気になり、調べると映画の曲だった。「禁じられた遊び」―。音楽以上に内容も良く、次第に映画に魅せられていった。

 初代の父から継いだ店(本町32)は今年で55年目。長い日は午前9時から午後11時まで調理場に立つ。店が休みの日には妻の政子さんを連れて映画館へ。

 鑑賞作品で最も強烈だったのは、06年に上映されたアイリス809本目の邦画「浮雲」(55年、成瀬巳喜男監督)。落ちぶれる自堕落な男と、それを知りつつ男に付いていってしまう女の宿命を描いた愛と悲劇の物語。「ストーリーが面白く、驚くほど感動して泣いた。高嶺秀子さんもはまり役だった」と振り返る。

 「普段はあまり話さないでしょ。同じ映画を一緒に観るから会話も弾むの」と政子さん。アイリスからの帰り道★は、2人が夫婦の絆(きずな)を感じられる大切な場所でもある。(新目七恵)

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 函館市本町22の市民映画館「シネマアイリス」の上映作品数が、もうすぐ1000本を迎える。市内で次々と映画館が消えていく中、1996年の開館時から幅広いジャンルの作品を上映し続けてきた。アイリスに通う映画ファンやスタッフらに映画館、そして映画への思いを聞いた。

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 アイリスでは15日まで、1000本目の上映日を予想するクイズを実施中。正解者の中から抽選で招待券などが当たる。問い合わせはアイリスTEL0138・31・6761。


◎O157で70代男性が死亡
 函館市内の高齢者向け下宿施設で9月下旬から腸管出血性大腸菌O157の集団感染があり、70代の男性が5日、死亡した。市立函館保健所が6日発表した。市内で同大腸菌感染症による死者が出たのは初めて。道保健福祉部によると、全道では2005年6月に浦河保健所管内の介護保険施設で起きた集団感染で4人が亡くなって以来。

 函館保健所によると、亡くなった男性は9月20日に下痢や発熱などを発症し、入院した医療機関から10月1日、O157の届け出があった。同じ施設に入居する80代の女性も9月25日に発症し、そのほか80代から100歳までの女性入居者3人が無症状の感染者と確認された。

 同保健所の山田隆良所長は「持病もあり、徐々に悪化していった。発症の間隔が開いていることから食事が原因とは考えにくいが、感染経路は不明。別の80代女性の症状は安定している」と述べた。

 高齢者向け下宿は許認可が必要な福祉施設とは違う。高齢者の生活の場を3食付きで提供し、入居者は身体状況によって介護保険サービスを受けている。市内で増加傾向にあり、同保健所で15施設程度を把握しているという。集団感染した施設には12人の入居者がいた。

 同保健所は下宿を運営する法人に消毒や手洗いの励行などを指導。山田所長と田中俊弘参事は「感染症を防ぐ保健所として、同じような施設にどのような指導をしていくかを検討したい」と述べた。 (高柳 謙)


◎森町長選、告示まで1週間
 【森】競売入札妨害(談合)罪で逮捕、起訴された前町長、湊美喜夫被告(79)の辞職に伴う出直し町長選が14日、告示される。告示まで1週間に迫り、立候補を表明している元副町長の阿部真次氏(66)、会社経営佐藤克男氏(58)、元町議松田兼宗氏(52)サ五十音順、いずれも新人サの各陣営では支持獲得に奔走している。投票は19日で即日開票される。(笠原郁実)

 他に出馬の動きはなく、同町長選は3氏による三つどもえの構図となる公算が強い。1971年から10期37年務めた現職町長の逮捕、辞職を受け、町民の「新しいまちづくり」への期待は大きい。同町で3人以上の候補者による町長選は1983年以来25年ぶりとなる。

 収入役や助役などを歴任し、長年にわたる行政経験をアピールする阿部氏は、知名度や組織力を生かして町内各地区で浸透を図る。「はつらつとした活力あるまちづくりをめざして」を掲げ、国保病院の早期健全化や子どもを中心とした教育施策、長年の検討課題だった砂原地区簡易水道など生活環境整備を訴える。

 佐藤氏は立候補表明後、横浜市から同町に移住した。会社経営のノウハウやこれまでの経験、人脈を生かして、古里・森町の魅力を全国に発信する「森町のセールスマン」となることを約束し、町内各地を駈け回っている。「森町には宝物がたくさんある」とし、農業や漁業といった地域産業を生かした町活性化を強調する。

 前回(2005年)、前々回(03年)の町長選で湊被告との一騎打ちを繰り広げた松田氏は、当時から一貫して「ガラス張りの役場、公平公正な行政」を訴えている。町議を辞職後、いち早く町内各地を巡るなど若さや行動力をアピールし、町民に信頼され、誇りを持てる町政、町民参加型のまちづくりなど町政刷新を掲げ、支持を求める。

 有権者数(9月2日現在)は男性7244人、女性8306人の計1万5550人。選挙戦を前に、町選管は5日からポスター掲示板を町内83カ所に設置、14日以降に各町民に発送される投票入場券の手配も終えた。

 8日午後6時半からは3氏が参加する森青年会議所(阿部剛士理事長)主催の町長選立候補予定者による公開討論会が町公民館で行われる。NPO法人リンカーンフォーラム北海道の山下浩代表理事がコーディネーターを務め、各候補予定者の主張を聞く。


◎振り込め詐欺の被害急増
 振り込め詐欺の被害が全国的に急増している。道警函館方面方面本部管内では今年、9月末までに45件、約6600万円の被害を認知しているが、昨年の18件、2040万円を上回る最悪のペースだ。警察庁では10月を振り込め詐欺撲滅のための強化推進期間として、全国的に取り締まりや被害防止活動を強化。管内でも私服警察官による金融機関の警戒や、各種啓発活動で被害に遭わないよう市民に注意を呼び掛けている。(今井正一)

 道内では9月末までに446件、5億782万円の被害が発生。親族をかたり、窮状を助けてほしいとだます「おれおれ詐欺」が137件と依然として多いほか、「融資保証金詐欺」が131件、「還付金詐欺」が122件、「架空請求詐欺」が56件と急増。いずれも巧妙に市民の不安をあおったり、甘い言葉で金融機関などに誘い込む卑劣な手口だ。

 函館中央署管内では25件、約3600万円の被害を認知。函館西署管内でも11件、約1665万円の届け出があった。実際には警察に届け出ていないケースや、被害に気付いていない場合もあり、被害は氷山の一角とみられる。

 道警函本生活安全課では管内の金融機関に呼び掛け、現金自動預払機(ATM)周辺での携帯電話の使用自粛を求めたり、水際で被害を食い止めるため、金融機関職員に対する意識啓発に取り組んでいる。既に私服警察官などを各機関に派遣するなど警戒を強めているが、15日には全国一斉の警戒集中日として、被害撲滅に努める方針だ。

 同課は、被害に遭わないために「電話の相手が誰なのかを必ず身内に確認すること。相手が『急いでいる』と言っても、一人で考え、その日のうちに決して振り込まないことが大切」とし、「疑わしい電話があったら、まずは警察に連絡を」としている。


◎道警函本が「緊急遊撃隊」発足
 重大事件など緊急事態発生時に迅速な初動体制を確立するため、道警函館方面本部は6日、「緊急遊撃隊」を発足させた。同本部の内勤警察官から選ばれた45人で構成。事件などの発生時にいち早く現場に向かい、負傷者の救出や住民の避難誘導などに当たる。発足式で隊長の岡豊彦専任参事官は「迅速、的確な初動措置を全力で行い、管内住民の安全と安心の確保に努めます」と大江宜信本部長に決意表明した。

 遊撃隊は、北海道洞爺湖サミット開催時に内勤警察官で組織した「遊撃捜査隊」が効果的に機能したことを受け、道警函本独自の取り組みとして立ち上げた。普段は同本部各課で内勤業務に就く警察官が殺人、強盗事件や社会的反響の大きい事件、大規模災害の発生時などに現場に駆けつけ、被害者の救出や救助、二次被害の防止に努める。

 発足式で大江本部長は「秋葉原の無差別殺傷事件や大阪の放火殺人事件など、こうした事件が管内で発生しないとは言い切れない。われわれの使命は住民の目線に立った活動を展開し、地域住民の安全、安心をしっかり確保することだ」と訓示。隊員らは早速、振り込め詐欺被害の防止のため、管内の金融機関や現金自動預払機(ATM)設置の大型店などに出動した。(今井正一)


◎「函館女流書作家十人展」始まる
 全国、全道で活躍する函館市内の女性書家の作品を集めた「第12回函館女流書作家十人展」(函館新聞社、同展実行委主催)が6日、本社(函館市港町1)1階ギャラリーで始まった。女性書家10人の力作10点が展示されている。11月16日まで。

 本紙創刊の1997年から毎年開催している書道展。出展者は北海道創玄書道会代表を務める市内東山の書家千葉軒岳さん(70)の協力を得て選ばれた。

 作品は漢字や近代詩文、かな文字などさまざまで、それぞれの筆使いや感性がぶつかり合い、見ごたえある展示となっている。1回目から出展している創玄展二科審査員の天満篤子さん(53)は「毎回、何を出すか頭を悩ませる。思いを込めた作品を完成させることができた」と話している。

 千葉さんは「皆、高度な技術を持った素晴らしい書家。字を読むだけでなく筆の動きも見ると楽しさが広がる」と来場を呼び掛けている。午前9時から午後6時(最終日は午後5時。13日、11月9日は休み)

 天満さん以外の出品者は次の通り。(敬称略)

 磯波水鈴、小嶋沙應、佐藤石蘭、鈴木青蘋、高村欄月、吉川海夏(以上北海道書道展会友)笠谷純子(奎星会正会員)船木康子(一先会会員)茂呂小袖(北海道書道展会員) (鈴木 潤)


◎10日に「カルチャーナイト」17施設を夜間無料開放
 函館市内の文化施設などを夜間に無料開放する「はこだてカルチャーナイト」(実行委主催)が、10日午後5時半から開かれる。前回まで12月の開催だったが、今回は出歩きやすい10月に初企画。普段は立ち入れない場所を見学できるツアーや体験、展示コーナーなど、家族連れで楽しめる催しが盛りだくさんだ。(森健太郎)

 カルチャーナイトは市民が地域の文化に触れるイベントとしてデンマークで発祥。函館では2005年から函館商工会議所青年部(河村祥史会長)が主体となって取り組んでいる。4回目となる今年は新たに函館地裁と旧函館区公会堂、金森イベントホールの3カ所を加え、計17会場で22企業・団体が参加する。

 初企画としては函館港の豊川埠頭(ふとう)に函館海上保安部の巡視船、西埠頭に海自函館基地隊の掃海艇がそれぞれ停泊し、船内を見学できるほか、同地裁の裁判員法廷の開放、同公会堂での無料コンサート、金森赤レンガ倉庫でのキャンドル作り体験などが盛り込まれた。

 各ツアーやプログラムには事前予約が必要なものもあり、実施会場などに要確認。開放時間は会場によって異なり、最も遅い施設で午後9時まで。午後5時から各施設を回る無料のシャトルバスも運行する。青函連絡船記念館(若松町12)前に約250台分の臨時無料駐車場も設ける。問い合わせは実行委事務局(函館商工会議所内)TEL0138・23・1181。

 各会場の主なイベントや開放時間は次の通り。

 ◇JR函館駅周辺▽JR函館駅(若松町12、午後9時まで)=新・旧特急気動車の展示(同6―8時)、ほくでんエネルギー体験、北ガスサイエンスショー▽函館市役所(東雲町4、同8時まで)=市電らっくる号運転シミュレーター(同6時15分―7時半)、市役所見学ツアー(同6、7時からの計2回)は定員各10組で電話予約が必要(TEL23・1181)▽日銀函館支店(東雲町14、同8時20分まで)=見学・体験コーナー、クイズ「にちぎん検定」(同5時半から7時半まで30分ごとに計5回)は定員各30人で電話予約が必要(TEL27・1174)▽豊川埠頭(大手町5、同8時半まで)=巡視船びほろ見学、機動救難士(海猿)の訓練公開、子供用制服の写真撮影▽函館地裁(上新川町1、同9時まで)=探検クイズラリー、法服試着・記念撮影 ◇西部地区▽旧函館区公会堂(元町11、同8時半まで)=カルチャーナイトコンサート(同6時半―7時半)、はいから衣裳館営業時間延長(同7時まで)▽市臨海研究所(大町13、同9時まで)=イカの一夜干し体験(同5時45分―6時半)は小学4年―中学3年が対象で定員10人。電話予約が必要(TEL27・7301)▽西埠頭(弁天町31、同9時まで)=陸自車両展示、海軍ミニカレー試食(1食200円、先着100人)▽金森イベントホール(豊川町11、同9時まで)=道警函館方面本部の白バイ・パトカー展示、金森赤レンガ倉庫でキャンドル作り体験(参加費600円)▽市文学館(末広町22、同8時まで)=クイズ「石川啄木と函館」▽北方民族資料館(末広町21、同8時半まで)=北方民族文様の切り紙細工無料体験(同6時、7時、7時50分からの計3回)