2008年10月9日(木)掲載

◎五稜郭「設計図」と「平面図」2点 市の文化財に
 函館市教育委員会は8日に開いた会議で、「五稜郭初度設計図」(市立函館博物館蔵)と「五稜郭平面図」(函館市中央図書館蔵)の2点を、歴史資料として函館市の文化財に指定した。市の文化財としては85、86件目で、五稜郭関係の図面としては初めての指定となる。市文化財課の田原良信課長は「両方とも五稜郭の成り立ちや遺跡発掘などの観点から重要な資料で、これをもとに作られたことは間違いない」と説明する。

 どちらも紙に描き彩色し、軸装の状態で保管されている。作成された年代は測量を開始した1857年以前と考えられているが、定かではない。五稜郭初度設計図は、伝えられたいきさつなどから、五稜郭を設計した蘭学者の武田斐三郎の直筆と考えられる。武田が残した記録では、フランス軍艦の将官から直接学び、設計したとされる。

 図面には、実際に作られた五稜郭の外側には1つしかない半月堡塁(ほうるい)が5つあることなどから、計画初期の段階の草稿図面だった可能性が高い。指定理由として「五稜郭が築造された歴史的経緯を示すものとして極めて価値が高く、国内に現存する数少ない西洋式土塁の築造変遷を物語る第一級資料」と位置付けた。

 五稜郭平面図は、発掘や復元作業を進める箱館奉行所庁舎や、そのほかの郭内遺構の場所を特定する手掛かりとして活用されている。土塁など全体の形状や規模は、現代の実測図面と重ねても差異が少なく、奉行所など建築物の長さなど規模のデータも入っている。こちらに描かれた半月堡塁は1つ。指定理由として「得られる情報量が圧倒的に多く内容の精度が高い」ことが評価され、「五稜郭跡の復元整備を進める上で欠くことのできない第一級の根拠資料」とされた。(小泉まや)


◎3氏、町政持論交わす…森町長選で公開討論会
 【森】競売入札妨害(談合)罪で逮捕、起訴された前町長辞職に伴う森町長選挙(14日告示、19日投開票)を前に、立候補予定者による公開討論会が8日夜、町公民館で開かれた。元副町長・阿部真次氏(66)、会社経営・佐藤克男氏(58)、元町議・松田兼宗氏(52)=五十音順、いずれも新人=の3人が町政の方針や展望を述べた。

 討論会は森青年会議所(阿部剛士理事長)の主催。NPO法人リンカーンフォーラム北海道山下浩代表理事がコーディネーターを務め、約2時間にわたり、各氏の主張、ディスカッションを展開した。

 収入役や副町長などを歴任した阿部氏は41年間の行政経験をアピールし、緊急課題に国保病院運営の健全化をはじめ、保健、医療、福祉の充実を挙げ「町民とともに考え、限られた財政の中で新しい道を切り開いていきたい」とした。

 高校卒業まで、森町で過ごした佐藤氏は「さびれていく森町を元気にしたい」と経営者、ビジネスマンとしての経験を生かした独自の理論を展開。「Made in 森」を全国にアピールし、産業の活性化を図り、若い人に夢と希望を与えたいと力を込めた。

 松田氏は一連の疑惑を受け、「37年間のしがらみを断ち切るとき」とし「失われた信頼と名誉を取り戻すため、まずは役場と町政の改革を行う」と強調。財政再建や農業・漁業と商業間の交流、連携、官民一体となった取り組み、道の駅の活用などを訴えた。

 討論会では一連の事件ついても話題に上り、阿部氏は「裁判結果を冷静に見るべき」とする一方、佐藤氏と松田氏は「原因は長期政権の弊害」と指摘し、共に2期または3期での町長交代を主張。旧砂原町との合併成果や上水道のインフラ整備など、町民生活に根ざした政策についても各氏が持論を交わした。

 会場には予想を300人近く上回る約1000人が来場。約130人の立ち見など町民の関心の高さをうかがわせた。(笠原郁実)


◎基金3500万円を目標…海洋構想推進機構
 函館市議会総務常任委員会(井田範行委員長)の委員協議会が8日開かれ、市企画部が来年4月の設立を予定している国際水産・海洋都市構想推進機構について報告した。法改正により少額で公益法人を設立することができるようになり、形態を一般財団法人とし、基金の目標額を3500万円とする考えを伝えた。市が2000万円、経済界が1500万円を負担する予定。

 推進機構は、現在の同構想推進協議会(高野洋蔵会長)に代わる組織。水産・海洋に関する学術研究都市を築き、開発した技術で新産業創出などを目指す海洋構想を総合的に進める。関係施設の維持管理や共同研究受託の仲介、特許申請などのコーディネート機能を持たせる。

 当初は運用益を生み出す基金を3―5億円積むことを予定していたが、財政難や低金利もあり、変更。7月に推進機構の設立準備委員会(沼崎弥太郎委員長)を立ち上げ、基金3500万円の一般財団法人とする方針を決めた。函館商工会議所と協議し、経済界の負担は1500万円を目指す。

 常勤の推進機構長を同機構が雇用し、市の派遣職員3人と産学からの派遣職員2人で総務・経理部門と調査・研究部門の職務を担当する。黒島宇吉郎氏(新生クラブ)が、市の財政負担などを質問。同部の高日出人参事は「現在、推進協議会で分担している市400万円、経済界200万円の年間負担を持続し、受託研究や自主事業などで財源を生み出し、それでも足りない部分は市が負担せざるを得ないと思う」と答えた。

 志賀谷隆氏(公明党)は、海洋構想推進に賛同する立場を示した上で、「西尾正範市長と経済界が緊密に連携を取り、協力が得られるようにすべきだ」と注文を付けた。(高柳 謙)


◎マックスバリュ堀川店がプレオープン
 イオングループのマックスバリュ北海道(札幌)の食品スーパー「マックスバリュ堀川店」(函館市堀川町4、田村誠店長)が8日、プレオープンした。主に近隣住民を対象に、従業員の訓練や設備点検を兼ねて9日まで営業した後、10日にグランドオープンする。

 マックスバリュ北海道としては「石川店」に次ぐ道南2号店。道道函館南茅部線(電車通)沿いの函館協会病院跡地に位置し、店舗面積は石川店と同規模の2246平方メートル。品ぞろえの特徴としては近隣に多いお年寄りなど単身者向けに、少量で小分けの商品を充実させた。

 初日はオープン記念の特売品などを求め、午前9時の開店前から約200人が並ぶ盛況ぶり。夫婦で買い物に来た市内高盛町に住む男性(70)は「この近くにはスーパーがなかったので便利。店内も明るく種類も豊富なのでまた来たい」と満足げだった。

 マックスバリュ北海道経営管理本部広報の安達千絵さんは「地域の人に毎日通ってもらえるような店づくりを目指し、道南産の生鮮食品を全道にも発信していきたい」と話している。営業時間は午前9時―午後11時(9日までは午後9時閉店)。年中無休。(森健太郎)


◎北方民族資料館が入館者50万人達成
 函館市北方民族資料館(末広町21、沼崎孝男館長)の入館者数が8日、単独館として開館して以来、50万人を達成した。節目の入館者となった神奈川県の会社員中路淳子さん(34)に、同館を管理運営する市文化・スポーツ振興財団の金山正智理事長から認定証とアイヌ民族の伝統文様が彫り込まれた丸盆「イタ」などの記念品が贈られた。

 この日は午後2時半ごろ、姉と一緒に観光で函館を訪れていた中路さんが1人で来館。中路さんは「初めて来たのに50万人目とはびっくり。別行動している姉に後で報告したい」と驚きつつ、「アイヌ伝統の文様や飾りに興味がある。本州にはない独特の文化を見て帰りたい」と話していた。

 同館は「市北方民族資料・石川啄木資料館」として1989年11月に開館し、93年4月に分離して単独館となった。函館出身の人類・考古・民族学の権威の馬場脩氏や児玉作左衛門氏が収集した資料など、アイヌ民族を中心とする300点以上の北方民族資料を展示している。単独館としての年間入館者数は94年度の4万人台がピーク。2001年9月に30万人を突破し、近年は年間2万5000―7000人台で推移している。(宮木佳奈美)


◎【企画・シネマアイリスと私】ボランティアスタッフ・東みつ依さん(59)
 映画へのあこがれは幼いころにさかのぼる。家族と時代劇を観ていた映画館で、スクリーンに主役が登場した瞬間、観客の大人たちが拍手して興奮する様子に驚いた。「あの時感じた熱気が幼心にうれしく、面白かった」と振り返る。

 エルヴィス・プレスリーに熱狂し、マルチェロ・マストロヤンニにため息をつく少女だった。スクリーンの中に広がる異国の世界、映画スターが身にまとう華やかな衣装に魅せられた。特に、ミュージカル映画「ウエスト・サイド物語」は何度も映画館に通い、友達と観た回数を競い合った思い出がある。

 高校卒業後は東京の短大で洋裁技術を勉強。就職して仕事が忙しくなり、一時は映画と離れた生活を送った。31歳で結婚して函館に移住。子育てなどが一段落した40代後半にアイリスが開館し、客として足を運ぶようになった。51歳のころ、友人に誘われてボランティアスタッフになり、今年で9年目になる。

 上映作品で一押しは、1998年に上映されたアイリス183本目の邦画「萌の朱雀」(97年、河瀬直美監督)。奈良県のある山村を舞台に、過疎化の現実と住民のかかわりなどを描いている。「とにかく静かな作品。せりふも音楽も風景に溶け込んでいて、風で揺れる木の葉や雨など自然の音を大事にしている」と魅力を語る。

 今でも札幌に行くと、1日に3、4本をはしごして観る。「とにかく観たい。映画とは離れられない」ときっぱり。そんな“根っからの映画好き”にアイリスの存在を問うと、「必要不可欠なもの」との言葉が返ってきた。(新目七恵)