2008年11月18日(火)掲載

◎新聞紙 薪に変身…専用機器で圧縮 燃料代に一役
 【松前】燃油高の影響で暖房費の節約に努める家庭も多い中、灯油や薪(まき)に代わる“新燃料”が全国的に注目を浴びている。新聞紙などの燃やしても無害なリサイクル用紙を、専用機器で圧縮して固形燃料にする「紙薪(かみまき)」だ。環境保護にも一役買うアイデアで、松前町社会福祉協議会(町社協、塚俊一会長)ではシュレッダーで生まれた紙くずなどを活用し、いち早く紙薪づくりに取り組んでいる。塚田会長(82)は「大量に用意し、早ければ年末には地域の希望者に無償提供したい。少しでも燃料代を浮かすことができれば」としている。

 紙薪はちぎった紙を水に浸し、専用機器に入れてブロック状に圧縮したもの。薪ストーブの利用が多い欧米では古くから活用されていたという。

 松前町社協では、リサイクル紙の有効活用を図ろうと、佐々木正己事務局長ら職員が仕事の合間に紙薪づくりをしている。専用機器で圧縮して1週間ほど自然乾燥すると、重さ約4キロの燃料が完成する。松前町内では漁業作業場の小屋などにまきストーブが多く置かれており、佐々木事務局長は「まきの補助材として少しでも燃料節約になればと思って作っている」と話す。

 専用機器の中で最も普及しているのは「紙薪つくり器―紙与作(かみよさく)」(希望小売価格4500円)。今年4月から全国主要ホームセンターに並び始めた。製造特許権を持つ台湾企業から国内の代理販売を請け負うT&T(東京都、萩原輝久社長)が仕入れなどに当たっている。

 8月下旬に千葉県で開催された国内最大級のホームセンター商品展示会では環境保護部門で金賞、新商品ヒット部門では銀賞を受賞。各地のバイヤーの目に留まったほか、燃料高騰の影響も追い風となり、「北海道から沖縄まで全国から注文が入っている」(萩原社長)という。紙薪のサイズは長さ20センチ×厚さ10センチ×高さ5センチ。圧縮加減によって大きさは前後するが、新聞紙約20枚で1個できる。一般のレンガと形状はほぼ同じだ。

 自宅のストーブで紙薪を利用している塚田会長は「火持ちが良くなったことは確かで、古新聞の活用にもなっている」とし、「町社協としても地域福祉向上のため、紙薪の普及に努めたい」としている。(田中陽介)


◎調理師専門学校 大妻高と連携協定
 調理師や製菓衛生師育成に向けた専門的な研究の推進を目指そうと、函館大妻高校(外山茂樹校長、生徒475人)と函館短大付設調理師専門学校(下野茂校長、学生183人)が連携教育協定を結ぶことになり、17日に同市柳町の大妻高で調印式が行われた。両校によると、市内の高校と専門学校間での協定締結は初めて。

 協定は生徒の学習の選択肢を広げ、地域社会に貢献する人材の養成を図るのが目的。具体的には調理師専門学校の講師が年に3回、大妻高食物健康科の生徒を対象にスイーツを中心とした調理実習を行うほか、効果的な連携教育の在り方に関する研究を促進する。

 調印式には外山校長や下野校長ら5人が出席。下野校長(56)は「函館の食文化を盛り上げる一つのきっかけになれば」とあいさつ。外山校長(59)は「スイーツ分野の実習を行うことで生徒の視野も広がる。両校にとって良い方向に進むよう頑張りたい」と話していた。

 調印式の後、調理師専門学校の吉田徹教頭が講師を務め、同食物健康科の生徒40人が調理実習で「パイナップルのソテー」を仕上げた。(長内 健)


◎写真で訴える 松前線の今昔
 国鉄松前線廃止、JR津軽海峡線開通20周年記念の写真展「『乗って残そう松前線』から20年」が22日まで、JR函館駅2階「イカすホール」で開かれている。福島町の福島フォトサークル(FPC、川村明雄会長)と北斗市の「こぶし」(中村和雄会長)の合同展。松前線存続運動の一環で行われた写真コンテストの出展作品のほか、廃線後の様子をとらえた現在の写真などが並んでいる。

 両団体は「こぶし」の初代会長が福島町出身でFPCのメンバーだった縁などで親交があり、廃線から20年を機に合同展を企画。川村代表は「住民の怒りの気持ちを思いながら、当時の国の施策を写真で見てほしい」と話す。

 写真コンテストは1983、84年に松前、福島、知内、木古内の4町でつくる松前線存続期成会が主催。今展には出展作品の一部の約140枚が展示され、「廃止反対!」のたすきや鉢巻きを付け、子どもからお年寄りまでが参加した存続運動を振り返る。現在JR津軽海峡線を走る特急「白鳥」、道新幹線開業に向け搬入されたレール、JR函館駅行きのバスを待つ住民などをとらえた廃線後の写真で現在の情景も伝えている。

 会場を訪れた函館市深堀町の元教員、杉渕正洋さん(67)は「教員時代は福島、松前町にお世話になり、昭和40年代前半の松前線は満員だったのを覚えている。写真を見て失われた懐かしい風景が思い出される」と見入っていた。午前10時―午後5時(最終日は同3時まで)。(宮木佳奈美)


◎大野さん フリースペース「小春日和」開設
 函館市内に住む大野友莉さん(26)がこのほど、同市八幡町18にフリースペース「むげん空間 小春日和」を開設した。展示や上映会、講演など幅広い活動の拠点地として活用してもらうのが目的で、大野さんは「いろいろな人と出会い、交流の輪を広げたい」と意気込んでいる。

 自営業の両親を持つ大野さんは、学生の時から「自分もいつかは店を持ちたい」との夢を温めていた。函館工業高校卒業後、看護や飲食業などさまざまな仕事をしながら、各種資格を取得して方向性を模索したり、音楽活動やイベント企画に携わるなどして人脈を広げてきた。今年になって「何か1つ形にしよう」と出店を決意し、7月に市内の一軒家を借り、改装などの準備を進めてきた。

 現在貸し出しているのは1階の約43平方メートルの部屋。ショーウインドーや押入を改造したスペースがあり、展示用のピクチャーレール、スポットライト、テーブルなども用意した。100インチのスクリーンやプロジェクター(貸し出し有料)もある。この空間のほか、屋根裏部屋や和室など4室があり、使用や見学も受け付けている。駐車場は15台分ある。

 「何かやりたい人と一緒になって地域を盛り上げる空間になれば。展示に限らず、カフェの企画や映像上映など新しい表現法に挑戦してほしい」と大野さん。

 現在は大野さんの父文丸さん(58)の写真展「富良野・美瑛の空」を開催中で、12月10日からは道教大大学院生らのグループ展を予定。今後は地元のインディーズ映画上映なども計画している。

 営業時間は午前11時―午後6時。水曜日定休。使用料は7日間1万8000円、1日4000円など。問い合わせは小春日和TEL0138・83・7721。(新目七恵)


◎待望の新メンバー 福島小4年・山田、石岡さん…福島町松前神楽保存会
 【福島】郷土芸能の継承・普及で地域を盛り上げる「福島町松前神楽保存会」に新メンバーが加わった。福島小学校4年松組の山田歩菜(あゆな)さん(9)と同級生の石岡芽衣さん(9)で、2人は「きれいなみこさんの姿に憧れた。優雅な舞を踊ってみたい」と意欲的だ。待望の後継者登場に、メンバーの福島大神宮の常磐井武典宮司(34)らは「大歓迎!。これから一緒にけいこを積んで古里の伝統を守っていきたい」と喜んでいる。

 松前神楽は300年以上続く伝統神事で、祝い事や節目に花を添える演出として、古くから住民に親しまれてきた。神職のみが神楽を奏上する地域が多い中、福島では「地域一丸で継承に努めることに意義がある」と、今年5月に急逝した同神宮先代宮司の常磐井武宮氏が町民に呼び掛け、伝統継承に努めてきた経緯がある。

 現在は小学生から年配者まで12人が活動に汗を流している。毎年秋のソバ畑で行われる収穫を祝う舞は風情ある光景として人気だ。

 山田さんと石岡さんも松前神楽を目にする機会が多く、女性が優雅に舞うみこの姿に憧れを抱くようになったという。保護者を通じて常磐井宮司に入会を申し入れ、10月上旬にけいこの様子を見学。16日夜には山田さんが代表で訪れ、「これからお世話になります。よろしくお願いします」とメンバーにあいさつをした。

 小学6年からみこ役を担当する福島中3年の田中真実さん(14)と笹井奈保さん(15)から扇子の持ち方などを教わると、山田さんは笑顔を見せていた。

 2人と同級生の中塚隆太朗君(10)は「仲間が増えてうれしい。僕もけいこを頑張りたい」と声を弾ませ、馬躰一広さん(63)は「孫のようでめんこい(かわいい)。若いから振り付けの覚えも早いし、本当にうれしい」と目を細めていた。

 新人2人の初舞台は、来年5月の連休時期に行われる殿様街道ウオーキングになる予定。(田中陽介)


◎人材育成や国際連携必要…水産・海洋シンポ
 函館国際水産・海洋都市構想シンポジウム(同構想推進協議会、函館市主催)が17日、同市若松町のロワジールホテル函館で開かれた。約180人が参加し、水産・海洋に関する世界有数の学術研究都市を目指す同構想について、函館が持つ可能性や魅力、優位性を確認した。

 海洋政策研究財団の寺島紘士常務理事が「海洋基本法と水産・海洋都市構想の果たす役割について」と題して基調講演。日本の国土面積は38万平方キロメートルで世界60位だが、1994年に国連海洋法条約が発効したことで、領海と排他的経済水域面積は世界6位の447万平方キロメートルとなったことを紹介した。

 寺島氏は「世界6位の海域には食料やエネルギー、鉱物資源などが豊富で、その海域の開発や利用、総合的管理を図るのが海洋基本法。わが国の今後の発展を担っており、函館は北の水産・海洋都市としての可能性を持つ。人材の育成や国際的な連携、協力が求められる」と述べた。

 続いて各界代表の5人が発言者となり、パネルディスカッションを開催。水産総合研究センター水産工学研究所の和田時夫所長は函館が国際航路である津軽海峡に面し、亜寒帯水域の玄関口である地理的優位性、高い産業基盤、北洋漁業の歴史、北大水産学部をはじめとする研究機関の集積などを挙げ、函館が持つ魅力や可能性を指摘した。

 北大大学院水産科学研究院の三浦汀介副院長は、同研究院が目的としている「地球の持続可能性の維持に貢献する水産科学の構築」を紹介するとともに、海洋構想が地域の産業振興やまちづくりの中で日常的に議論されることを期待した。(高柳 謙)


◎道南の道路網 早期整備を…リレーシンポ 地元代表5人が議論
 北海道のみちづくりを考えるリレーシンポジウム「道南の『道づくり』2008」が17日、ホテル函館ロイヤル(函館市大森町16)で開かれた。約350人が参加し、2015年度までの北海道新幹線開業を契機とした地域振興を目指し、基調講演やパネルディスカッションを通じて、渡島・桧山管内を取り巻く交通ネットワークの早期整備に向けて士気を高めた。

 北海道高速道路建設促進期成会(会長・高橋はるみ道知事)、北海道縦貫自動車道建設促進道南地方期成会、高規格幹線道路函館・江差自動車道早期建設促進期成会、函館広域幹線道路整備促進期成会(以上会長・西尾正範函館市長)の主催。

 西尾市長は「国土交通省で進める道路整備に関する中期計画の見直しに対し、地域住民の意見を反映させていけるよう鋭意取り組んでいかなければならない。先行きは不透明だが、地域にとっての道路の重要さを訴えていく決起集会と位置付けたい」とあいさつした。

 基調講演では室蘭工大の田村亨教授が「道南を活性化する地域戦略と道路の役割について」をテーマに、「国は費用便益基準のみで道路整備の必要性を評価しているが、地域として一枚岩になることが重要」と指摘した。

 地元の経済や観光業界などの代表者5人によるパネルディスカッションで、大沼観光協会の渡辺邦浩副会長は「通過点とならないように、きめの細かい情報発信が必要」、木古内消防署の大坂満署長は「経済効率だけでなく、人間の命の尊さを優先した安全・安心な道路づくりを求めたい」などと訴えた。(浜田孝輔)