2008年11月24日(月)掲載

◎「杉の子」50年の節目祝う
 函館市若松町の老舗バー「舶来居酒屋 杉の子」の50周年を祝う会(実行委主催、猪股●治会長)が23日、ホテル国際ロイヤル(大森町)で開かれた。昨年10月に亡くなった名物マスター杉目泰郎さん(享年84)をしのびながら、市内外から出席した約240人が節目を祝った。

 杉目さんが1958年にオープンした杉の子は、マスターの飾らない人柄などで人気を集め、地元客や旅行者でにぎわった。現在は杉目さんの長女、青井元子さん(55)が後を継ぎ、店を切り盛りしている。この日は青井さんのほか、杉目さんの妻千鶴子さん(82)、次女佐々木真子さん(52)、長男の杉目小太郎さん(50)ら家族が顔を揃え、参加者を迎えた。

 冒頭、猪股会長(70)は「これだけ多くの方が集まってくれて(亡くなった)マスターも喜んでいると思う。記念すべき50年を祝おう」とあいさつ。続いて出席者を代表し、かつて函館に在住し、杉の子の常連だった谷口正紀さんが福岡市から駆けつけ祝杯の音頭をとった。会場には杉の子オリジナルのカクテルや料理が並び、参加者が思い思いに談笑していた。

 25年前から杉の子に通っているという北斗市在住の会社員男性(47)は「マスターが亡くなったのは残念だが、これからも店が続いてくれるとうれしい」と話していた。

 千鶴子さんは「皆さんのご支援がなければ50年も店を続けることはできなかった」と感謝した。(長内 健)

※●は「ネ」へんに「豊」


◎企画・函館子ども歌舞伎20年(4)…「本物」追求 才能を磨く
 「子どもたちは無限の可能性を秘めている。だからこそ磨いてあげたいと思う」。函館子ども歌舞伎を主宰する市川団四郎さん(68)は「子ども歌舞伎の指導者は天職だ」と言い切る。

 歌舞伎が好き、教えることが好き、何よりも子どもが好き―。市川さんは「子どもたちとの巡り会わせを大切にし、どんな風に入って来て伸びていくのか見るのが楽しみだ」と目を細める。そんな市川さんの人柄、指導力について「子どもの心を上手につかみながらその子の感性を引き出す」と、後援会をはじめとする多くの関係者が評価する。

 一方、「子どもだからといって手加減はしない」。それが市川さんの信条だ。「歌舞伎はせりふがしっかりしていないとだめだ。基本に忠実にしっかりと教えることで客が歌舞伎の醍醐味まで感じることができる」と市川さんは言う。

 歌舞伎は役柄や時代、関西と関東でせりふの言い回しが異なり、独特のアクセントが特徴だ。市川さんは徹底して“本物”にこだわり、子どもたちを一人の役者として育てる。演技指導はもちろん、衣装やかつら、舞台装置などの道具もプロと同じ物を使用。どの役にも見せ場を作ることで子どもたちが出演することに面白みを感じているという。「小学校低学年はかわいらしさが前面に出るが、高学年になると生きたせりふと本格的な演技で観客を本当に感動させる」と胸を張る。

 3月のオーディションで新たに入団してきた初出演の23人を含む現役の団員42人は現在、30日に開かれる創立20周年記念特別公演に向け、ラストスパートをかけ練習に励んでいる。20年間、函館子ども歌舞伎を見守ってきた後援会顧問で、函館文化会長を長く務めた関輝夫さん(83)は「短い期間でこれだけの力をつけ、皆から喜ばれる文化団体は珍しい」とたたえ、「子どもたちの一生懸命な姿を見て、これぞ生涯教育の一つだと思う。同じ年代の小中学生にも見に来てもらい、自分たちもできるといった気持ちを持ってもらえたら」と期待している。(宮木佳奈美)


◎企画・函館子ども歌舞伎20年(5)…記念公演成功させるぞ
 創立20周年記念特別公演に向け、函館子ども歌舞伎のメンバーは約10カ月間におよぶ練習を重ね、演技を磨いてきた。本番には3月のオーディションで入ってきたばかりの園児から上は大学生、社会人のOB・OGまで総勢42人が出演する。指導に当たる市川団四郎さん(68)は「小さい子も頑張っているので手ごたえは十分。お客さんに喜んでもらえると確信を持っている」と話す。

 上演するのは「白浪五人男」「釣女(つりおんな)」「加賀見山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)」の3演目。今公演で初舞台を飾る函館日吉が丘小4年の森英志君(10)は「ドキドキするけど絶対に成功させようと思う。歌舞伎がこういうものだって皆にちゃんと見せてあげたい」、函館鍛神小2年の佐々木風音さん(8)は「歌舞伎は話が面白い。緊張してせりふを間違えないよう頑張る」とそれぞれ気合いを見せる。

 5人の盗賊の物語「白浪五人男」は新人の小さな子どもたちが挑戦する。子どもたちのかわいらしさだけでも客に喜ばれる函館子ども歌舞伎の“十八番”だ。中堅どころの小学生が出演する「釣女」は今公演で初めて上演する。恵比寿様のお告げによって釣りざおで美しい姫を釣り上げた独身大名とは対照的に、太郎冠者はフグに似た女性を釣り上げその女性に「嫁になる」と迫られる話で笑って楽しめる演目。

 一方、「加賀見山旧錦絵」は芸歴の長いベテランが出演し、“大人の芝居”を見せる。俗に「女忠臣蔵」といわれる痛快なあだ討ちもの。「お家騒動」をテーマにした女の争いで、乗っ取りを企む「岩藤」が姫の信頼が厚い中老「尾上」をいじめ、召使いの「お初」がその敵を討つ物語で函館子ども歌舞伎が演じるのは1998年の公演以来。

 「お初」を演じる団長の函館大2年、古川亜美さん(20)は歌舞伎を始めて最初に見た芝居が「加賀見山旧錦絵」で「当時、先輩たちの演技を見て憧れていた思い入れのある演目。30日はわたしたちの『加賀見山旧錦絵』でいい芝居をお見せできるよう頑張りたい」と話す。「岩藤」を演じる市立函館高1年の今井あかりさん(16)は「歌舞伎はお年寄りが見るものという先入観があるが、子どもが演じるということで歌舞伎の面白さを伝えていきたい」と語る。

 今回が最後の出演となる函館大2年の黒滝達也さん(21)は「尾上」役で「物語の深い部分や歴史的背景などいろんな視点から楽しめる公演にしたい」と話し、「10歳から歌舞伎を始め、積み上げてきたものを全部出し切りたい」と意気込んでいる。(宮木佳奈美)(終わり)

 創立二十周年記念特別公演第八回函館子ども歌舞伎
 日時/30日午後1時
 場所/函館市民会館
 観覧料/一般2500円、高校生以下1000円
 チケットは市民会館、市内の各プレイガイドで発売中。問い合わせは事務局(広瀬さん)TEL0138・42・2327。


◎災害時要援護者「個人情報」が課題…函館市
 函館市は、高齢者や障害者など災害時に援護が必要な市民(要援護者)の避難支援計画の策定作業を進めている。係長職でつくるワーキンググループが要援護者の範囲や個人情報の取り扱いなどについて課題を整理している。災害弱者の命を守る計画だが、一方で個人情報をどう確保し運用していくかが課題となっている。

 2004年7月の新潟・福島豪雨災害で、犠牲者のほとんどが高齢者だったことを受け、国が要援護者避難の全体計画と個人計画の策定を求めている。市は総務部、福祉部、市民部、保健所、消防、各支所の関係部局の課長職で検討委員会を発足させ、来年度をめどに全体計画の策定を目指している。市総務部によると、中核市の半数以上が同様の検討委員会を設置済みという。

 全体計画で課題となっているのは▽要援護者の範囲▽個人情報の収集と運用―の大きく2点。要援護者の対象は、年齢層や介護度別、障害者、独居の高齢者など、さまざまな観点から検討している。

 対象範囲を決めた場合、次に出てくるのが個人情報の問題。しかし、福祉部が持つ介護や支援、障害の有無、市民部が担当している住民基本台帳などの情報は、法律により他に転用できない。

 一方で町会や地区の民生委員の中には、独自に収集した情報で「要援護者マップ」などを作っているところもある。こうした団体と連携し、情報を共有していくことが方策の一つとなっている。その場合は、情報を防災関係に役立てることの了解を一人一人から得なければならない。

 西尾正範市長はこのほど開かれた住民組織代表との意見交換会で「法律の問題もあるが、防災や救命などの面で町会などと個人情報を共有することが必要ではないか」と述べた。出席した市町会連合会の敦賀敬之会長も賛意を示した上で「町会で把握している個人情報は何かあった時のための最小限の情報だが、過剰反応する方もおり、どう理解を求めていくかが問題。町会加入率が年々落ち込み、どのような形でカバーしていくかも課題」と語った。

 災害弱者の避難支援計画は市議会でもたびたび必要性が指摘されているが、策定作業がスムーズに進まない側面がある。(高柳 謙)


◎産物備え 神楽奉納…函館八幡宮 新嘗祭
 勤労感謝の日の23日、函館市谷地頭町の函館八幡宮(中島敏幸宮司)では、五穀豊穣(ほうじょう)を感謝する「新嘗(にいなめ)祭」が開かれた。今年収穫された産物などが神殿に供えられ、祝詞をささげて実りの秋に感謝したほか、神楽が奉納された。

 奉賛会や敬神婦人会の氏子など、約25人が参加。始めに中島宮司が御神体をまつっている本殿奥の扉を開け、出席した氏子らが幣帛(へいはく)などを供えた。中島宮司が祝詞奏上をしたのに続き、石崎地主海神社雅楽会による神楽「浦安の舞」(うらやすのまい)が奉納された。最後に参加者が玉ぐしをささげ、一年の豊作に感謝を表していた。(山崎純一)