2008年11月30日(日)掲載

◎準備着々 ムード高まる クリファンツリーあす開幕
 函館の冬を盛り上げる「2008はこだてクリスマスファンタジー」(実行委主催)のメーンツリーが29日、主会場の金森赤レンガ倉庫(函館市末広町)岸壁にお目見えした。12月1日の開幕に向け準備作業も仕上げの段階に入り、道南スギを使ったツリー作りも行われるなどムードが高まっている。

 今年で11回目の開催で、25日までさまざまな催しが繰り広げられる。開幕日の1日は午後5時半から、メーンツリー前でオープニングセレモニーが開かれる。

 ツリーの点灯式は2日以降、点灯者が日替わりで登場し、期間中、午後5時から同8時まで市内の飲食店のオリジナルスープ12種類を1杯500円で販売する「スープバー」が設けられる。関連イベントとして、廃油で作ったろうそくに明かりをともす「クリスマスキャンドルナイト」(3日、10日、17日いずれも午後6時)や市内の幼稚園児によるクリスマスソングの発表会「クリスマス・キッズ合唱コンサート」(12日午後6時半、金森ホール)などが行われる。

 メーンツリーはこの日の午前10時ごろ、浅野町の作業場から船で海上をけん引され会場に到着した。岸壁に係留後、ツリー周辺にライトアップ用の照明を取り付けるなどの作業が行われ、通り掛かった観光客らが早速、記念写真を撮る光景が見られた。

 ツリーは姉妹都市のカナダ・ハリファクス市から届けられた約20メートルのモミの木。21日に作業場に到着し、実行委のメンバーが約5万個の電球の飾り付けを行ってきた。

 30日に最終点灯リハーサルを行い、本番を迎える。実行委の企画・運営を担当する佐藤賢治さん(44)は「期間中、天気に恵まれ、たくさんの人に楽しんでもらえれば」と話している。(鈴木 潤)


◎市民ツリー ことしはクジラ型 森林の再生と活用を考える会
 函館の森林の再生と活用を考える会(木村マサ子代表)では、クリスマスファンタジーの期間中、道南スギを使ったツリーを主会場から約150メートル離れた「はこだて明治館」横に設置する。観光客や市民が、使用済みの牛乳パックを使ったメッセージカードに思いを書いて取り付けるため「市民ツリー」として親しまれており、6年目の今年は、函館が来年開港150年を迎えることを記念し、約10メートルのクジラをデザインしたツリーがお目見えする。

 同会は森林の再生を考え、森からさまざまなことを学ぼうと活動を展開。ツリーの設置はその一環で、29日から会員が作業を始めた。昨年から市教委などの許可を得て、函館山にある学校林の枯損木(こそんぼく)を使っており、今年も12月3日に間伐し、クジラの最後の仕上げに使う。潮を吹く様子は電飾で、体の下には漁業用の網の浮きを置いて波を表現している。

 木村さんは「ぺリー来航は、米国を中心に欧米の捕鯨産業の拡大を図る目的があり、函館の開港にクジラのかかわりがあったと思う」と話す。“クジラツリー”の横には、ペリー提督と、来年開園130年を迎える函館公園の建設に関わった英国のユースデン夫人を連想させる服を描いたボードを置き、顔を出して記念写真を楽しんでもらう。そのほか木馬なども用意している。

 昨年、ツリーにつるされたメッセージカードは約1800枚あり、そのうち外国語で書かれたものが約150枚あったという。カードは集計後、函館八幡宮のどんど焼きに持っていく。今年は3000枚のメッセージカードを用意する。木村さんは「参加を呼び掛けるため、中国語などの看板を用意したいが、世界経済の影響で客足が心配」とし、「家族でファンタジーを楽しんだ後に寄ってもらい、来年の夢を語り、書いてほしいですね」と呼び掛けている。(山崎純一)


◎同年代の熱演にくぎ付け 函館子ども歌舞伎鑑賞教室 小中学生招待
 函館子ども歌舞伎(市川団四郎さん主宰)の創立20周年記念特別事業で、30日の本公演を前に函館市内の小中学生を対象した「函館子ども歌舞伎鑑賞教室」が29日、市民会館大ホールで開かれた。定番の「白浪五人男」、コミカルな物語の「釣女」の2演目を上演。市川さん(68)が歌舞伎に親しんでもらおうと、その特徴などを分かりやすく解説し、来場した約380人が日本の伝統文化に理解を深めた。

 歌舞伎の物語に盛り込まれた人情やいたわり合いなど、“日本の美しい心”を学んでもらおうと、函館巴ライオンズクラブなどの協力で、小学4年生以上の児童生徒を招待した。本公演には園児から高校生、OB・OGの大学生や社会人まで42人が出演するが、この日は来場者と同じぐらいの年代の子どもたちがこれまでの練習成果を披露した。

 市川さんは「今日来てくれた子は偉い。歌舞伎を見てみたいという好奇心があり、素晴らしい」と会場の子どもたちに語りかけ、せりふの言い回しの特徴や化粧、効果音などについて解説した。

 「白浪五人男」に出演した園児や小学校低学年の団員を舞台に登場させ、市川さんは「お芝居の化粧は役によって顔の色が違い、どんな役か一目瞭然で分かる」などと説明。さらに「歌舞伎には侍の世界をテーマにした時代物、町人や男女の恋を描いた世話物がある」とし、市川さんが同じせりふで侍や町人、娘、二枚目役などをそれぞれ演じ分け、役柄で話し方や表現方法が異なることを子どもたちに教えた。

 学童保育所の指導員の引率で訪れた函館八幡小3年の円山芙那さん(8)は「いろんな言葉遣いや役柄があって見てて楽しかった」と笑顔。家族と訪れた函館桔梗小3年の高橋有里さん(9)は「『釣女』が面白かった。いろんな声の出し方があってすごい」、母親の智恵美さん(38)は「函館の子どもたちが演じていると知って興味を持ったが、皆上手で驚いた」と話してた。

 本公演は市民会館大ホールで30日午後1時から。「白浪五人男」「釣女」「加賀見山旧錦絵」を上演。観覧料は2500円(高校生以下1000円)。同館や市内各プレイガイドで販売。問い合わせは事務局(広瀬さん)TEL0138・42・2327。(宮木佳奈美)


◎函館出身作家・佐藤泰志の世界語る
 芥川賞に5回ノミネートされた函館出身の作家、故佐藤泰志(1949―90年)の作品集刊行1周年を記念したイベント「佐藤泰志とその世界」が29日、函館市大森町のサン・リフレ函館で開かれた。東京の出版社「クレイン」の文弘樹代表(46)が作品集出版までの経緯やその後の反響を述べ、「愛憎入り交じる故郷・函館への思いなどに引かれた」などと佐藤文学の魅力を語った。

 佐藤は青春の苦悩や市井の人の生きざまを描き、三島由紀夫賞候補にもなった。代表作は「海炭市叙景」など。没後、同級生らが追想集発行などの活動を進めていた。今回は佐藤作品に光を当てようと「はこだてルネサンスの会」(近堂俊行会長)が主催し、市民ら約60人が参加した。

 在日韓国人3世の文代表は、ほれ込んだ戦後の在日朝鮮人作家金鶴永の作品集出版後に熱心な読者の反響を受け、「復刊を望まれる作家が他にもいるはずと考えた」と説明。同業者らから名前をよく聞き、古書愛好者間でも話題だった佐藤の追想集を手に入れ、「地元に熱心な読者がいたことに感銘を受けた」と作品集刊行を決意した経緯を振り返った。

 佐藤の創作姿勢について「金鶴永と共通し、共に定職に就かず、書くことに人生を懸けた。1冊に込める力も並大抵でなかった」とした。さらに、作品の魅力を「生の与件を受け入れる覚悟があり、今あるここの場で生きるとの強い気持ちがある『核』の部分に打たれた」と語った。

 後半、文代表のほか、中学、高校の同級生の陳有崎さん(59)=函館=と浅野元広さん(58)=札幌=、熱心な読者で同世代の番場早苗さん(58)=函館=らがパネリストとなり、佐藤泰志の思い出や作品世界への思いなどをそれぞれ語った。(新目七恵)


◎箱館奉行所の役割や復元の意義語る
 函館文化発見企画講演会「箱館奉行所復元の意義」(五稜郭タワー、函館市中央図書館主催)が29日、同館で開かれた。国の特別史跡「五稜郭跡」で函館市が進めている同奉行所庁舎復元工事について、市文化財課の田原良信課長と、設計を管理する文化財保存計画協会北海道支部の木下寿之支部長が講演。同奉行所の歴史的意義や復元手法などを説明した。

 1864年しゅん工の同奉行所は五稜郭跡の中心にあった建物で、全体の3分の1に当たる約1000平方メートル(平屋)を復元中。2006年7月に着工し、10年6月の完成、同年秋の一般公開を目指す。講演会は五稜郭タワーのオープン2周年と函館市中央図書館開館3周年を記念して開催し、約80人が訪れた。

 同奉行所の役割について田原課長は「函館が開港され、奉行は外国との交渉役として派遣された」と説明。場所は当初元町公園にあったが、狭いうえに寒く、防御上の条件が悪かったことから五稜郭を造成して移転したいきさつなど示し、同様の星形土塁が世界各地にあることを写真で紹介した。

 木下支部長は、復元を史跡活用の一環として行っていることを強調。「正しい理解ができるように学術的根拠を持って実施している」とし、発掘成果や図面、古写真、建設した大工による資料などを総合的に活用して進めている状況を詳しく伝えた。(小泉まや)


◎優美な音色 観客魅了/伊藤亜希子さん後援会創立10周年記念ピアノリサイタル
 函館在往のピアニスト伊藤亜希子さんのリサイタルが29日、函館市芸術ホールで開かれた。後援会が主催して10周年記念の公演で、ハイドンのピアノソナタなどのソロや、函館地区一般バンド連絡協議会の会員らとともにガーシュウィンの協奏曲を演奏。多彩で優美な音色で満員のファンを魅了した。

 「10年間も続けられたのはお客さま、後援会のおかげ。ゲストを招いてのコンチェルトもできることは幸せで、最後まで楽しんでもらえるように演奏します」とあいさつ。ソロは5曲で、ショパンやスケルツォなど。悲しみや情熱的な愛のロマンをシリアスに速い展開で響かせた。

 ガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」は宍戸雄一さんが指揮を務めた。伊藤さんの強いピアノと、大きな音量の吹奏楽が響きあったり、お互いが悠長な流れを奏でたりして来場者を楽しませた。来場した函館市湯川町の主婦利田晶子さん(55)は「楽しめて元気をもらえるので伊藤さんのピアノは大好き。これからも頑張ってほしい」と話していた。(山崎純一)