2008年11月8日(土)掲載

◎救助と治療 連携確認…北消防署と函病のチームが初の合同訓練
 函館市北消防署は7日、函館市桔梗町の消防総合訓練センターで、集団災害対応訓練を行った。訓練は函館新道で多重衝突事故があり、多数の負傷者が発生したと想定。同署と市立函館病院の災害医療派遣チーム「DMAT」との初めての合同訓練で、事故現場での救助活動と救急治療との連携を確認した。

 DMATは専門の研修を終了した医師や看護師らで構成し、災害発生時や多数の傷病者が発生した事故現場などで救急治療、広域搬送などの活動を行う医療チーム。訓練には同チームの医師2人と看護師ら計4人が参加、消防隊員約60人体制で実施した。

 暴走車両が複数の人をはね、乗用車との正面衝突事故を起こし、二輪車が1台巻き込まれ、さらにバスとトラックが追突し、多数の負傷者が出たとの想定。通報で駆けつけた消防隊員らは、周囲の安全を確保した上で、負傷者の救助を開始し、負傷程度を現場で判断し搬送の順番を決め、医師が治療の優先順位を決める「トリアージ」を行った。

 その後、現場の応急救護所で応急措置を施し、救急車で搬送。負傷者が閉じ込められている車両は、レスキュー隊がドアや屋根を解体し救助するなど、緊迫した訓練を展開した。

 訓練終了後、向平博吉消防長は「今後はさらなる連携強化のために、より組織的で効果的な出動が行われるような体制を構築することが大事」と述べた。また、DMATの医師窪田生美さん(32)は「今後もこういった訓練にどんどん参加していきたい」と話していた。(山田孝人、今井正一)


◎開発局再編、懸念の声…道南の関係者
 麻生首相が農水省地方農政局と国土交通省地方整備局を原則として廃止する方針を打ち出し、農政局と地整局の機能を持つ北海道開発局の再編も避けられない見通しとなった。開発局の統廃合は過去何度となく浮上しており、道南の関係者の受け止めは比較的冷静だが、道路整備や財源、景気の行方を不安視する声も強い。

 国道278号尾札部道路建設促進地域協議会の加藤詔三会長(64)は「全国的に無駄な道路整備は必要ないという考えがあるが、北海道には必要な道路整備がたくさんある。南茅部の国道278号は幅員が狭く歩道もない。道路整備が終わった東京の尺度で見ないで、地域の実情に合った事業が必要。着実に国道整備を進めるため、開発局は存続してほしい」と願う。

  函館建設業協会の幹部は「麻生首相が今回打ち出した方針には、開発局の名前は挙がっていないので、すぐに廃止になるとは考えていない」とみる。開発局の役割について見直しは必要と冷静に受け止めるが、「一方で景気浮揚対策を打ち出しながら、北海道の景気悪化に直結する開発局廃止につながる方針をこの時期に持ち出すのはマイナス効果にしかならない」と語気を強めた。

 高橋はるみ知事は、道が道州制特区の唯一の適用団体であることから、地方分権は積極的に進めなければならないとした。しかし、財政難の中で行政組織のスリム化を進めている現状から「財源を伴う権限移譲でなければ受け入れられない」とけん制した。

 道南選出のある道議も「二重行政解消の観点から開発局は縮小し、道が受け皿となることが想定されるが、現段階では準備が整っていない。予算や権限のほか、国の補助率をかさ上げしている北海道特例をどうするかなど、議論が必要だ」と指摘する。

 函館市はこれまで、予算の一括計上権のほか、道路、漁港、農業基盤などの整備がまだまだ必要との観点から開発局の存続を求めてきた。市幹部は「ソ連脅威論があった時代の北海道開発は、防衛という意義があった。現在では食糧基地や産業振興に向けた道路整備などの意義や役割がある。食糧基地であれば、国家的な観点から基盤整備をしなければならず、そうした点からも議論が必要」と語る。 (高柳 謙、小川俊之)


◎会社が元専務を告訴へ…3セク問題
 函館市議会経済建設常任委員会(小山直子委員長)が7日開かれ、市が出資する第三セクター「函館国際貿易センター」(社長・谷沢広副市長)の不正経理問題で主導的な役割を果たした元専務(70)について、同センターが告訴の準備を進めていることが明らかになった。

 谷沢副市長が工藤恵美氏(新生クラブ)の質疑に答えた。問題発覚当初は元専務が減給処分を受け、不正受給分の返還を申し出たことから、会社として告訴しないとする意向を市が尊重していた。その後、領収書の改ざんが1件にとどまらなかったことに加え、裏金作りも明るみとなり、「調査報告の内容が変化してきた」(谷沢副市長)ことを踏まえ、告訴に踏み切る方針を決めたという。

 工藤氏や北原善通氏(市民クラブ)などからは、不正を見過ごしてきた同社に派遣されている市職員や監査役の責任を問う声が上がった。谷沢副市長は「経理管理やチェック機能に甘さがあった」と陳謝した上で、組織体制の立て直しを急ぐことを約束した。

 西尾正範市長が市議会で「会社の存続が優先」「(元専務は)なくてはならない存在」と発言したことが対応の遅れに影響した可能性について、谷沢副市長は「会社の取締役会は独立したもので、市長の発言には左右されない」と全面的に否定。全容解明に向けて、これまで調査を行ってきた税理士事務所が同社の監査を担っているとの指摘があり、今後調査機関の見直しも検討していくとした。0ァ40ィ(浜田孝輔)


◎白鳳章3個人1団体に 青麒章は1人…函館市文団協
 函館市文化団体協議会(加納裕之会長)は7日、本年度の白鳳(はくほう)章・青麒(せいき)章の受章者を発表した。白鳳章は水彩画家・音楽家の国井周明(しゅうめい)さん(65)ら3人と1団体、青麒章には函館書藝社会員の教員aオ西広治(雅号・青龍)さん(43)が選ばれた。贈呈式は21日午後6時から函館国際ホテルで開かれる。

 両章とも函館に活動拠点を置く団体または団体に所属する個人に贈られる。白鳳章は長年にわたり函館の文化、芸術の振興に貢献した個人・団体、青麒章は昨年9月1日から今年8月末までの1年間に文化、芸術活動で優れた実績を残した個人・団体が対象。授章は1982年から始まり、昨年までに両章合わせて175団体・個人が受章している。

 授章理由と受章者のコメントは次の通り。

 ◇白鳳章

 ▽はこだて陶芸“土”の会(熊坂実代表)=函館市亀田町

 42年間の歴史があり、仲間の輪を広げ陶芸イベントにも尽力した。「会員一堂初の受章を喜んでいる。来年の50回記念展示会では市民に喜んでもらえる企画を考えたい」(熊坂代表)

 国井周明さん=中島町、ぶんだんフレンズ

 みずみずしい透明感あふれる水彩画、ピアノを弾きながら歌うコンサートで道内外で活躍し、多くのファンを魅了している。「驚きと喜びでいっぱい。楽しみながらやっている活動で人に喜んでもらえてうれしい」

 坂下光雄(雅号・岳隠)さん(89)=栄町、日本詩吟学院岳風会函館支部

 詩吟を始めて44年間一筋に研さんを重ね、後進の指導、詩吟の普及に寄与した。「詩吟を生きがいにこれからも続けていきたい」

 伝福一世(花柳星衛紀)さん(65)=松風町、函館邦楽舞踊協会

 6歳から日本舞踊を習い、1969年に同協会に入会。副理事として同協会事業や数多くの舞台出演などで大きな役割を果たした。「長年の活動が報われてうれしい。これからも門弟の育成に力を入れたい」

 ◇青麒章

 aオ西広治さん(43)=花園町、函館書藝社

 5月の第49回道書道展(近代詩文書部)で準大賞を受賞し、審査会員にも推挙。函館、道南の書道芸術文化の振興に大きく貢献した。「受章は励ましてくれた皆さまのおかげ。さらに表現の幅を広げられるよう研さんを重ねたい」(宮木佳奈美)


◎縄文時代の盛土遺構再現 道路建設アピール…尾札部促進協
 函館市南茅部地区の国道278号尾札部道路(尾札部―大船間14.75キロ)の建設促進を訴えようと、市と地元住民が7日、海岸から大船遺跡に石を運び、縄文時代の盛土遺構を再現する試みに取り組んだ。バイパス整備が物流や防災、交通安全のほか、世界遺産の登録を目指す縄文遺跡群へのアクセスに欠かせないことを強くアピールし、建設運動に弾みを付けた。

 盛土遺構は、縄文人が使用しなくなった土器や石器などを丁重に廃棄して重なった地層。地元の8町内会や漁協、商工会、市で組織する尾札部道路建設促進地域協議会(会長・加藤詔三臼尻町内会長)が主催し約40人が参加した。

 加藤会長が「観光振興や物流などから何としても道路が必要であることをアピールすることで、バイパスの大船までの延伸に結び付けたい」とあいさつ。参加者は大船遺跡から徒歩で海岸まで降り、大小約70個の石を集め、トラックで遺跡入り口に運んだ。大きなもので重さ約50キロあり、2人で担ぐてんびん(モッコ)のほか、直接抱えながら盛土遺構に置いた。

 参加者は「縄文人の苦労が分かる」などと話し、重労働ながらも手際よく作業。市教委生涯学習部の阿部千春参事は「遺跡を地域の財産としてみんなで整備することで、世界遺産やバイパスの建設促進につながる」と語った。

 同協議会事務局の市新外環状道路整備推進室の米谷富幸室長も「地域の安定した発展を遂げるための幹線が尾札部道路であるという、地域の熱意が伝わった」と話していた。

 尾札部道路は尾札部―安浦間6キロが開通済みで、鹿部方面に延伸工事が進められている。 (高柳 謙)


◎道が地域振興条例の素案公表
 【江差】道は7日までに、支庁制度改革と併せて来年4月の施行を目指している「地域振興条例(仮称)」の素案を公表した。公選法改正のめどが立たず、新年度当初の支庁再編の実施は困難な情勢だが、道は来年2月の第1回定例道議会に条例案を提案する方針だ。

 早期の公選法改正に向けて支庁廃止地域の合意取り付けが道の急務となっている。条例制定を通じて廃止地域や道町村会(札幌)の理解を得たい方針だが、江差町などは「支庁再編に伴う影響を軽視している」「支庁廃止の影響の大きさを道自身が認めた」として批判を強めており、道のりは容易ではなさそうだ。

 素案は、道の責務として@地域振興の計画的推進A道民や市町村の自主的取り組みの促進B国や市町村との連携強化―などを掲げた。具体案では道民や市町村の意見聴取体制整備、市町村との職員交流や人材活用の充実のほか、支庁単位の政策提案について道庁全体で事業化を検討する制度も設けるとした。

 支庁廃止地域への支援は明記せず、具体的な支援内容や地域の特定も避けた。条例では「特定地域に対する支援」とし、人口減少や産業衰退などの急激な変化が生じた地域を対象に、地域格差の是正や激変緩和の観点で必要な支援を講じる。支庁廃止地域への財政支援策は要綱で具体的内容を定める。道は5年間程度を期限に、支庁と市町村が策定した産業振興などの事業計画に対して、道が費用を全額負担する方針を示している。

 高橋知事は財政支援について「数年間で数億円規模」との方針を示している。だが、具体的内容をめぐっては「廃止地域の全市町村が対象になるのか」(江差町)との指摘も。予算規模についても「複数年度にまたがり廃止地域でパイを分け合う形になる。実質的な効果は疑問」(関係者)と、懐疑的な見方も根強い。(松浦 純)


◎市に287万「不当支出」…会計検査院
 会計検査院は7日に公表した2007年度の決算検査報告で、05、06年度に函館市に対して支払った児童保護費等負担金(保育所運営費国庫負担金)18億4395万9000円のうち、287万2000円が不当に支出されたとした。厚生労働省は同市に対し返還を求めている。

 同負担金では、自治体が民間保育所に支払う保育の委託料のうち半額を国が支出する。今回報告された同負担金に対する不当支出は、函館市を含めて前年度より10自治体多い48自治体に上る。不当支出の総額は1億2035万8000円だった。

 同市への負担金を不当とした理由は「扶養義務者の所得税額を誤認していた」とされ、多額の保育料を納める必要のある保護者から少額しか徴収しなかったため、公費負担分が多くなったとしている。市福祉部は「厚労省から示されていた算定基準への考え方が違った」とし、世帯の収入算出時の考え方の違いによるものとの認識を示している。9月上旬に厚労省から返還を求める文書が届いていることから、道厚生局と調整して従う考えだ。(小泉まや)