2008年12月13日(土)掲載

◎丑の置物作りピーク

 函館市山の手2の「函館バウハウス工房」(佐藤留利子さん主宰)では、来年のえと「丑(うし)」の置物の制作がピークを迎えている。陶芸作家石川久美子さん(34)が1個ずつ手作りする作品はどれも愛らしく、人気を集めている。

 えとにちなんだ陶芸作品は年中需要があり、遊び心を加味できるモチーフとして、2004年のえと「申(さる)」から作り出した。今年も10月から作業を始め、現在は来年店頭に並べる作品を制作中。年内に約50個を作る予定だ。

 粘土でパーツを組み合わせて形を作り、乾燥させてから素焼きする。焼き上がったら陶芸用のクレヨンや釉薬(ゆうやく)などを使い筆で色付けし、本焼きして出来上がり。特徴はどっしりした四角い胴体に描かれるカラフルな模様。最も時間が掛かるという顔は、のんびりした表情が個性的だ。石川さんは「小さい目が案外かわいく、描くのが楽しい」と話す。

 メーンの置物は横6センチ、幅4センチ、高さ5センチ。ボクサー姿や牛乳を飲んでいるユニークな1点ものの作品もある。はこだて工芸舎(元町32)などで取り扱っているほか、インターネットでも販売中。価格は2100―4200円。問い合わせは同工芸舎TEL0138・22・7706。(新目七恵)



◎歩道拡幅が好機、露店を核に活性化…市民の台所「中島廉売」

 「市民の台所」として親しまれている函館市内の中島廉売が、戦前から続く歴史ある「露店」を核にした活性化を目指し、本格的に動き始める。市が計画する大通り(市道)の歩道拡幅工事が好機となり、露店の新規出店が可能となる見通しが立ったためだ。中島町商店街振興組合の二本柳秀樹理事長(57)は「露店は廉売のルーツ。新たな出店を募り、にぎやかさを取り戻したい」と説明。対面販売による人との触れ合いを重視した地域密着型で、商店街の魅力を打ち出していく考えだ。

 1934年から商店街が形成され、70年以上の歴史を持つ中島廉売は、全国的にも珍しい通年営業の露店が軒を連ねる。ただ、最盛期に100軒あった露店も店主の高齢化に伴い現在は13軒にまで減少した。

 さらに、同じ商業圏に大型スーパーの出店が相次ぐなど、客離れへの危機感も強まっている。こうした現状を打破しようと、同組合は高齢化社会に適応したサービス向上に向け、露店の文化を次代に残し、歩道整備で買い物客がゆっくりと行き交うことができる商店街を構想し、数年前から活性化計画を練ってきた。

 市や同組合によると、商店街の真ん中を通る大通りは都市計画決定で車道を広げる予定だったが、周辺住民や商店街の反対で30年以上事業が凍結していた。昨年2月の計画変更で正式に都市計画から外れ、同組合の要望を取り入れた形で市が本年度から3年計画で歩道整備に着手することを決めた。

 現在は露店スペースとその前の通路の幅計4・5メートルが歩道になっているが、拡幅工事に伴い露店スペースとその前の通路を市有地とし、露店の後ろに別途歩道1・5メートルを設けて計6メートルに広げる。市有地に露店が設置されるため、新規出店の規制が緩和される。同組合では新規で20店程度の出店を目標にしている。

 向かい側の歩道の幅は3メートルから3・5メートルに拡張し、車道幅は10・5メートルから8・5メートルに縮小。歩道をカラー舗装にし、照明も付け替える。初年度は1月末から3月末まで、総延長340メートルのうち廉売入り口から約95メートルの区間を整備する。

 二本柳理事長は「露店が廉売の目玉になるのでは。アクセサリーショップなど若い人たちにも出店してもらいたい」と期待する。市商業振興課は「中島廉売は歴史的にも函館の大切な財産。全国でも珍しい露店を生かした商店街づくりを進めてほしい」と話している。(宮木佳奈美)



◎全国精神障がい者地域生活支援センター事務局が中島廉売に移転

 函館市内のNPO法人全国精神障がい者地域生活支援センター(能登正勝理事長)の事務局がこのほど、石川町から中島町に移転した。中島町商店街振興組合(二本柳秀樹理事長)の協力で中島廉売に事務所を構え、能登理事長(31)は「高齢者や障害者に優しい商店街づくりのきっかけにしたい」と話している。

 能登さんは障害者や健常者の隔てなく支え合うコミュニティーづくりを目指し、念願かなって商店街に活動拠点を移した。中島廉売の催しや組合事務局の業務の手伝い、イベントの共催など、商店街の活性化を進める同組合との提携を提案。障害者の就労支援につながる機会も模索している。

 具体的な提携・委託事業はまだ決まっていないが、二本柳理事長(57)も「高齢者や障害者へのサービスを向上させなくてはいけない。能登さんと協力していろいろなことができると思う」と歓迎。能登さんは「地域とともに助け合って活動していきたい」と意欲を見せる。

 また、障害者と高齢者、子どもたちが集える事務局内のフリースペース、本通にあるグループホームなど同法人の運営に協力できるボランティアを募集している。問い合わせは同法人TEL0138・51・0026。(宮木佳奈美)



◎函館エヌ・デー・ケーに「派遣切り」撤回を要請…函労会議

 電子部品製造大手の函館エヌ・デー・ケー(函館市鈴蘭丘町、土谷雅宏社長)が11月末で派遣従業員約150人の契約を打ち切った問題で、全労連・函館地方労働組合会議(函労会議、佐々木正美議長)のメンバーらが12日、同社を訪れ、全国で社会問題化する“派遣切り”の撤回や、雇用維持などを求める申し入れを行った。

 この日は函労会議の渡辺忠副議長や岩瀬英雄事務局長ら4人が、同社の三浦久仁夫総務課長に要請書を手渡した。要請書は今回の派遣従業員の契約解除を撤回し、希望者に直接雇用や正社員雇用への切り替え、再就職先のあっせんなどを求めている。

 函労会議などによると、同社は受注減による生産ラインの縮小に伴い、勤務シフトの組み替えなどで雇用を維持してきたことや、年間10人前後の派遣従業員を正規雇用に切り替えていることを強調。現在、宮城県内のグループ工場での受け入れを打診し、契約期間中の派遣従業員について派遣会社3社に1人当たり30日分以上の違約金を支払ったことも明らかにしたという。

 岩瀬事務局長は「厳しい雇用環境の中、年の瀬に突然の契約解除で仕事を奪い、派遣労働者を路頭に迷わせることは許されない」と訴える。同社は「社会的責任は感じているが、世界的な景気後退からやむを得ず今回の事態となった。要請内容を精査した上で、回答するかどうかを含め今後検討する」としている(森健太郎)


◎貿易センターへの職員派遣 市が早期に廃止へ

 函館市の第4回定例市議会は12日、一般質問を継続し5人が立った。西尾正範市長は、市出資の第三セクター「函館国際貿易センター」への職員派遣を廃止する意向を明らかにした。現在は派遣研修の目的で次長職2人を送り出している。人的支援を目的としていないが、2人の職員が研修吊目で会社の業務を行い、実態として支援につながっている部分があるため。

 12日の市議会一般質問で福島恭二氏(民主・市民ネット)の質問に答えた。

 福島氏は市の職員派遣の実態を質問。民間では日本政策投資銀行や学校法人函館国際学園(ロシア極東大函館校)、函館朝市協同組合連合会、貿易センターなど6団体に7人を派遣している。人件費は市が負担し、平均給与で積算すると年間5600万円。民間派遣は職員が民間の手法や発想を学び、人材育成とともに復帰後の職場への成果波及などを目的としている。

 民間派遣は若手職員で実施しているが、貿易センターには現在、ベテラン職員2人が送られている。福島氏は貿易センターに限らず、多くは派遣研修の吊目で人的支援をしているのではないか、とただした。西尾市長は「貿易センターについては会社の業務を経験する研修という当初の目的と乖離(かいり)してきた。派遣先とも協議し、できるだけ早期に見直したい」と述べた。

 市はこのほか、法律に基づき市住宅都市施設公社や市文化・スポーツ振興財団、市社会福祉協議会などの公益法人5団体に職員を派遣している。

 同日はこのほか、工藤恵美氏(新生クラブ)、能登谷公氏(市民クラブ)、松宮健治氏(公明党)、石井満氏(民主・市民ネット)が質問した。(高柳 謙)



◎レイモンさんの生涯 一冊に…20日に出版

 函館市元町でハム・ソーセージ製造販売「函館カールレイモン」を創設したドイツ人職人、カール・レイモンさん(1894―1987年)の生涯を追ったノンフィクション「大きな手大きな愛―“胃袋の宣教師”函館カール・レイモン物語―」が20日、農山漁村文化協会(農文協、東京都港区)から出版される。著者のノンフィクションライター、川嶋康男さん(58)=札幌市清田区在住=は「手作りハム・ソーセジの普及に捧げたレイモンさんの誠実な生き方を子供たちに知ってほしい」と話している。

 川嶋さんは2年前、函館市内の居酒屋で同社の「レイモン・サラミ」を食べて感激。「こんなうまいサラミを作る人の生き方を知りたい」と、レイモンさんに興味を抱き取材を始めた。レイモンさんの弟子だったという同社の島倉情憲社長(60)をはじめ十数人から話を聞き、レイモンさんの実像に迫った。

 著書では駆け落ちして結ばれた函館生まれの妻、コウさん(1901―97年)への愛情や、戦時中に迫害を受ながらもハム・ソーセジを作り続けた前向きな姿、食料自給率を高めるプラン、道内での畜産業振興を道庁に提案したことなどを紹介している。

 小学高学年の児童にも分るように平易な文章でまとめられている。川嶋さんは「取材をして、生き方にぶれがなく、侍のような潔さを持った人と感じた」とし、レイモンさんが生きていれば「職人としての夢や哲学を聞きたかった」と話している。

 島倉社長は「私自身もレイモンさんからよく言われた『手抜きをするな』という教えが、子供たちにも伝わるのでは」と期待している。

 全国の主要書店で販売する。定価1418円。A5判145ページ。問い合わせは農文協道支部TEL011・271・1471。(鈴木 潤)



◎函館タクシーが車内に子どもたちのクリスマス絵画展示

 函館タクシー(函館市日乃出町、岩塚晃一社長)はタクシーの車内に、市内の小学生がクリスマスにちなんで描いた絵画作品を展示している。「タクシーギャラリー」と銘打ち、発想豊かな子どもたちの一足早いクリスマスプレゼントが、車窓からの冬景色に彩りを添えている。

 観光客らに異国情緒あふれる函館の街並みをPRしようと、同社が8月から車内サービスの一環で始めた企画。今回は第2弾として、金森赤レンガ倉庫主催の「第13回ぼくのわたしのクリスマス絵画展」の入選作品61点が飾られている。

 作品は乗客の目を引く助手席後部に縦13センチ、横18センチに縮小して1台1枚ずつ展示。夜空を駆けるトナカイとサンタクロースや、光り輝く大きなツリーなど色彩豊かな力作ばかり。同社は「全国的にも珍しい取り組みで、特に観光客からの評判が良い。子どもたちの伸び伸びとした絵を通じて少しでも和んでもらえたら」と話している。

 タクシーへの作品展示は来年2月末まで。同絵画展の入選作品は、金森洋物館内赤レンガギャラリー函館ヒストリープラザ展示ホールでも25日まで展示されている。(森健太郎)