2008年12月19日(金)掲載

◎企画・活路を拓く 道南建設業(上)八晃建設(七飯町)…子どもの笑顔のために

 「純粋に子どもが好き。理由なんてない。子どもにかかわる何かを手掛けたかった」。主に公共工事や新築住宅工事を請け負う八晃建設(七飯町本町3)の秋田広樹常務(32)は、未知の保育事業に乗り出した理由をこう振り返る。幼い子を持つ親として、岐路に立つ建設業者として、在るべき姿を模索していた。

 共働きの家族にとって、子どもを安心して預けられる施設の確保は深刻な悩みだ。秋田常務は2004年春、当時託児所だった認定こども園「どんぐり」(同町大川7)に長男を預けた。そこで戸巻聖園長(35)と出会ったことが、同社を新規事業参入へと突き動かした。

 当時のどんぐりは、園長の自宅の一部で約30人の園児を預かり、「酸素が足りないと思うくらい手狭だった」という。それでも子どもの入園を望む保護者は後を絶たない。保育のニーズに手応えをつかむ半面、子どもたちが伸び伸び遊べるよう施設を広くしたいとの思いは募った。

 同社も公共事業の減少に加え、不況のあおりで主力の住宅受注が伸び悩み始めたころだった。当初は資金面の壁や畑違いの業種への進出に偏見もあり、06年4月の新園舎完成まで2年間悩み続けた。「05年12月に道の『経営革新計画』の承認を得たことで銀行からの融資の道が開けた」。こうして異業種参入の第一歩が刻まれた。

 秋田常務の兄雅樹社長(36)は「当初は経営者として『もちはもち屋』という保守的な考えだったが、情熱に根負けした」と打ち明ける。現在は同社が保育士の約半数を抱えながら施設を経営し、保育の実務を「どんぐり」に委託する形だ。

 同園のコンセプトの一つ「木育」には建築の匠(たくみ)の技がいぶく。滑り台やロフト、木馬などはすべて大工の手作り。園内にある8割以上の遊具が木製だ。戸巻園長は「木のおもちゃは自分で考えないと遊べない。壊れたら捨てるのではなく、大工さんに直してもらうことで物を大切にする心も養われる」と胸を張る。

 本業へのプラス効果も現れ始めた。今月中旬には同園に通う関係者を通じて受注した新築住宅が完成。雅樹社長は「建設も保育も相手の笑顔がモチベーションになる。互いの持ち味を出し合って共に成長していきたい」と語る。創業者の亡き父の後を継ぐ子育て世代の兄弟の挑戦は始まったばかりだ。

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 長引く不況で道内の公共事業は先細り、建設業界を取り巻く環境は厳しさを増している。その中で生き残りを懸けて積極的に新分野や異業種へ進出する動きが加速している。事業を軌道に乗せるのは容易ではないが、福祉や環境、食品分野などに活路を求める道南の建設業者の姿を追った。(森健太郎)



◎最低制限価格を導入…函館市、1月から

 函館市は来年1月から、学校給食調理や庁舎の清掃などの業務委託契約で、入札時に最低制限価格を導入する。給食調理業務などで予定価格を大幅に下回る落札が相次ぎ、契約の履行や労働者の雇用環境の悪化が懸念されるため。最低制限価格は予定価格の75%を予定し、これを下回る入札は無効となる。

 市の業務委託は電算処理や設備の保守などさまざまあるが、今回、最低制限価格を設けるのは人件費の割合が高い業務。市調度課によると、建物の清掃や警備、給食調理業務で、予定価格50万円以上が対象。

 このほど開かれた市議会総務常任委員会でも取り上げられ、委員が「学校給食調理業務では予定価格の53%で落札された事例があった。これだけ安い価格で労働者の雇用環境を守れるのか」と質問。市財務部も、過度の競争により低価格で落札者が決まる事例が増加していることを認め、「人的要素が高い委託業務に最低制限価格を導入し、契約内容の適正な履行や従業員の適正な労働環境の確保を図るとともに、ダンピング行為を排除したい」と答えた。

 一般的な業務委託の契約は3年間。入札参加業者には労働関係法令の順守などを確約させ、落札者には積算の内訳書の提出を求める。最低制限価格の基準となる予定価格は公表していないため、業者は業務内容や人員配置などを基に独自に積算することが必要となる。

 函館市では本年度、指名競争入札を廃止し一般競争入札に切り替えたところ、小規模工事を中心に多くの業者が最低制限価格で入札し、くじで落札者を決める事例が頻発。工事の品質や労働者の雇用環境悪化が懸念されたため、9月から最低制限価格の事前公表を廃止した。同価格の算定方法も改めたところ、落札価格は従前より1割ほど上昇したという。 (高柳 謙)



◎ペットもきれいに新年迎えたい…年の瀬 専用美容室大忙し

 今年も残り2週間を切り、函館市内のペットショップや専用美容室は、ペットにも新年をきれいな姿で迎えさせようと、シャンプーやカットで動物の毛並みをそろえる「トリミング」の申し込みの対応で大忙しだ。年末年始は旅行や帰省などで飼い主がペットを預けるケースも多く、ペットホテルの予約も好調。人間だけでなく、ペットにとっても慌ただしい年の瀬となっている。

 函館市内で富岡店(富岡町1)と桔梗店(桔梗町)を展開する「ペットハウス ジャスパー」では、2店舗で一日平均30匹前後を受け入れている。富岡店(安田晃店長)は12月に入り、年末までトリミングの予約はびっしりで、キャンセル待ちの状態。近年はブームの影響からプードルが多く、店内では大小さまざまな犬がトリマーに毛を刈ってもらい、気持ちよさそうにしていた。

 安田祐子オーナーは「できるだけ年末に、きれいにしてほしいという要望が多い」と話す。小・中型は2000―5000円、大型は6000―1万円。併設するペットホテルも年始年末はほぼ満室。販売するペットグッズはコートやダウンが売れ筋という。

 同市五稜郭町の「トリミングショップ ティーカップ」(山崎かおり店長)でも、トリミングの予約は年末近くがピーク。常連客が多く、「1匹1匹の個性に合わせたカットを心掛けている」と山崎店長。価格は小型犬で5000円前後だ。

 同市亀田本町の「ワンダードッグ函館店」(森内潔社長)では今年、ホテルのスペースを20匹分程度拡大した。多くて60匹が利用でき、30日から来年1月2日に掛けてはほぼ満室の予定。利用犬専用のドッグランも整備し、スタッフの森内英代さんは「ストレス軽減につながり、リピーターに人気」と説明する。同店では猫のトリミングも受け付けており、今月は10匹余りの予約があるという。 (新目七恵)


◎高橋さん最高賞…青函ツインシティ押し花絵画展Z

 七飯町大川の高橋裕子さん(67)が、青森市内で開かれた「青函ツインシティ押し花絵画展Z」(実行委主催)で最高賞の「青森・函館ツインシティ推進協議会賞」に輝いた。同展で過去2回の入賞に続く快挙で、高橋さんは「青函をテーマにした作品制作は初めてだったのでとてもうれしい」と喜んでいる。

 同展は11月21―24日に青森市民美術展示館で開催され、両市の押し花愛好者(函館19人、青森42人)の作品87点が展示された。高橋さんの作品は「夕映えの津軽海峡」。自宅庭に咲くズイセンの花で夕焼けを表現する発想が先に浮かび、函館と青森に関連が深い「津軽海峡」を題材にした。函館市入船町の海水浴場から見た夕暮れ、松前町の白神岬の海の風景を融合させた景色を絵画のように描写している。

 オレンジ色などのパステルで色を塗った画用紙に赤茶色のズイセンの花を散りばめ、細長い葉のカレックスをあしらって風が吹いているような躍動感ある夕焼けの空を演出。海の部分は和紙に銀ポプラの葉を置いて岩に見立て、手前にふわふわとした煙のようなスモークツリーの花で草木を表した。

 高橋さんが押し花に出合ったのは10年前。旅先から記念に持ち帰った草花の保存方法を知りたいと思ったのがきっかけ。現在は町内会などで講師も務める。押し花を始める前に習っていた水彩画の感性を生かし、同展のほかにも押し花界では最高峰の公募展とされる「創造展」などでも入賞経験を持つ。

 高橋さんは「花を主役にするため、試行錯誤して構図を考えるのが楽しい。苦に思うことはない」ときっぱり。来年6月に函館市本町のいしい画廊で開く初の個展に向け、さらに制作意欲を燃やしている。(宮木佳奈美)



◎商売繁盛 間違いなし…門松作りピーク

 函館市内の造園会社で正月用の門松作りがピークを迎えている。同市石川町243の桔梗造園(山本久明社長)でも5人の職人が作業に追われている。。

 道南産のクロマツと道外から仕入れた孟宗(もうそう)竹を使い、玄関用の高さ180センチの「4斗だる」と150センチの「2斗だる」の2種類を仕上げる。高さが異なる3本のタケを入れたたるにわらや縄を巻き付け、30センチほどに切ったクロマツの枝、紅白のウメの造花で装飾する。2個1組で、2斗だるは4万円程度、4斗だるは6万円前後で販売されるという。。

 正月に欠かせない縁起物だが、不景気の影響で需要は減少傾向。出荷先は函館、北斗市内の飲食店や企業が中心で、25日ごろまでに作業を終える。佐々木信彦部長(40)は「商売繁盛への願いを込めて作っている」と話していた。(長内 健)



◎調査委設置に合意…貿易センター問題

 函館市議会議会運営委員会(能川邦夫委員長)が18日開かれ、市が出資する第三セクター「函館国際貿易センター」で起きた不祥事などを解明する調査特別委員会の設置について、全5会派が合意した。22日の市議会本議会で正式に設置が決まる。

 特別委は、同センター(社長・谷沢広副市長)で起きた不正経理問題など不祥事の解明と今後の課題に関する調査が目的。不祥事については▽市とのかかわり▽職員派遣について▽プール金の管理▽派遣職員の告発内容―を調査する。今後の課題としては同社と市との関係の在り方、市職員のモラル向上策などを審議する。

 委員の定数は11人で、民主・市民ネットと新生クラブが各3人、市民クラブと公明党が各2人、共産党が1人。本会議の開始前までに各会派が委員を推薦する。

 同社以外への市職員派遣の在り方に関する調査については総務、経済建設の両常任委員会で今後検討する。

 この日の委員会では22日の第4回定例会最終日の議事日程を確認。人権擁護委員候補者の推薦に関する議案3件を追加し、意見書では「インターネットを利用した選挙活動の解禁を求める」「大倒産・企業再編の危険から中小企業を守る緊急対策などを求める」など8件を議会が提出し裁決する。 (浜田孝輔)


◎あすから「ひのき屋」がイベント

 函館を拠点に活動する音楽バンド「ひのき屋」(ソガ直人代表)のメンバーが20日から27日まで、ライブやミニステージを繰り広げる「さんきゅうウィーク2008」(実行委主催)を函館市内で行う。

 年末の市民感謝イベントは今年で8回目。活動10周年を記念し、今回は初めて1週間の長期イベントとして企画した。

 メーンは、21、27日の2回に分けて行う「さんきゅうライブ8」。テーマは「たいこと10年」で、21日にはウクライナ出身の民族楽器奏者カテリーナさんも出演する。20―27日には函館市万代町14のやきとりBAR蔵2階で、04年のブラジルツアーの様子を紹介する写真展を開催。同会場ではメンバーによるミニステージやフォーラムも行う。

 メンバーのふくだたくまさんは「ひのき屋が海外公演やここまで続けられたのも函館市民のおかげ。知っている人は成長した姿を見に、初めての人はこの機会にぜひ足を運んで」とPRしている。

 チケットはすべてのイベントに2人で入場可能なペア共通券が1万円。各イベントの1日券も発売中。問い合わせはヒトココチTEL0138・51・5727。

 詳細は次の通り。(カッコ内は会場と一般前売り料金)

 ◇ライブ▽20日午後8時「土曜の夜の音楽会36 クリスマススペシャル」(cafeハルジョオン・ヒメジョオン、2000円)▽21日午後2時「ひのき屋さんきゅうライブ8in函館市公民館『たいこと10年』第1部」(函館市公民館、同)▽27日同6時半「ひのき屋さんきゅうライブ8in蔵『たいこと10年』第2部」(やきとりBAR蔵、2500円)

 ◇写真展▽20―27日午前11時―午後零時「エモトヒデユキ・写真展『ひのき屋・トラベリングバンド』」(蔵2階ギャラリー、無料)

 ◇関連イベント▽22日午後7時「ワタナベヒロシ・ミニステージ『出歩きたくない月曜日』」(蔵2階ギャラリー、1000円)▽23日午後6時半「ソガ&ヒロシ・ミニステージ『星と舟』」(同、同)▽26日午後7時「ふくだたくま・フォーラム『ナンバー2の仕事術』」(同、同) (新目七恵)