2008年12月20日(土)掲載

◎企画・活路を拓く 道南建設業(中)加藤組土建(函館)…市場拡大 好機つかむ

 「ここ5年で建設業を取り巻く環境は急激に変わった。時代に合ったニーズを見越して事業展開しなければ、会社が生き残る道はない」。道南でも建設会社の経営破たんが相次ぐ中、加藤組土建(函館市千歳町)の加藤健太郎社長(51)も淘汰(とうた)の波に危機感を募らせる。

 同社は1990年に市内の建設業者として初めて企業イメージ確立戦略(CI)を導入。いち早く環境重視の独自色を打ち出した。2004年には道内の中堅建設業者7社で汚染土壌の調査や浄化を行う事業協同組合「とりりおん北海道」を設立、環境分野へ軸足を移し始めた。

 「会社のウイークポイントを差別化への持ち札に変えていくところから始まった。土木はほとんどが自然相手。ついて回る環境問題を見て見ぬふりはできない」と加藤社長。環境事業の売り上げは初年度2000万円程度だったが、昨年度は1億円の大台を突破するまでに成長した。

 03年の土壌汚染対策防止法施行で市場は急速に拡大。今年のサミット開催も追い風となり、環境事業はようやく軌道に乗り始めた。「当初は費用対効果が上がらず、社内の反発も強かった。本業で培ったノウハウが土木と環境、海外の各事業を補完し合っている」という。

 同社が取り扱う環境関連の商品はここ数年で10点前後に増えた。東京のベンチャー企業が開発したLEDダウンライトは消費電力4・5ワットを実現。東京・霞が関の中央合同庁舎や洞爺湖町役場にも設置され、ビジネスマッチングにより道内では唯一、同社が販売権を取得している。

 子会社で製造を始めた汚水処理のための凝集剤「カドクリーン」は、工場廃水などの排出規制が強まる中国・天津市の関係者の目に留まった。折しも天津は函館の友好交流都市。今年11月には天津の企業と共同で汚水処理装置の製造、販売の新会社が稼働し、中国での環境ビジネスにも本腰を入れる。

 社長就任は1988年秋、前社長の父憲氏の急逝を受け、31歳の若さで降ってわいた。当時はバブル景気で建設市況も右肩上がり。あれから20年―。環境の変化に「環境」で立ち向かう。「環境分野はまだ未知数の部分が多いが、将来性がある有望な市場。時代の潮流を確実に読み取りながら、今後は『建設サービス業』としてビジネスモデルを確立したい」と言い切る。(森健太郎)



◎タクシー強殺あすで2年 依然 有力手掛かりなし

 2006年12月、北斗市のタクシー会社「しんわ交通」運転手、八木橋朋弘さん(当時42)が殺害され、売上金などが奪われた強盗殺人、死体遺棄事件は、21日で発生から丸2年を迎える。道警函館方面本部と函館西署、函館中央署でつくる合同捜査本部はこれまでに延べ約3万人の捜査員を動員し、現在も専従35人体制で捜査を継続している。事件は6月に警察庁の「捜査特別報奨金制度」の対象事件に指定されたが、依然として事件解決の鍵を握る「最後の乗客」に結び付く有力な手掛かりは得られていない。捜査本部では引き続き、事件当日の目撃情報などの提供を呼び掛けている。

 この事件は06年12月21日未明に発生。タクシーに搭載されている衛星利用測位システム(GPS)の解析結果などから、八木橋さんは同日午前3時50分ごろ、北斗市七重浜1付近で客を乗せ、国道227号を七飯町方向に走行。同4時ごろから七飯町峠下周辺を走行し、停車したことが分かっている。同町峠下102では八木橋さんの大量の血痕や携帯電話が見つかっている。

 犯人は八木橋さんを殺害後、タクシーのトランクに遺体を入れ、国道227、228号を経由し、遺体発見現場の函館市港町3の函館港に移動。同4時55分ごろにタクシーを放置し逃走したと見られる。八木橋さんの遺体には心臓まで達する深い傷のほか、顔や腹など数カ所に刃物で刺された傷があり、売上金2万数千円が奪われていた。

 捜査本部に今月15日までに寄せられた情報は120件。逮捕に結び付く有力情報提供者に最高300万円が支払われる報奨金制度指定後の6月27日以降は計12件で、今月に入っても1件の情報があった。新たな情報を基に捜査を進めているが、いずれも関連はなかったという。

 函館西署の清水博明署長は「被害者の無念を胸に刻み込み、鋭意捜査を進める」と話す。捜査本部は21日午前10時から、JR函館駅前など市内2カ所でチラシを配布する街頭啓発活動を行うほか、函館、北斗両市内の街頭電光掲示板を利用して情報提供を呼び掛ける。

 情報は捜査本部フリーダイヤル0120・004・179、函館西署TEL0138・42・0110(24時間対応)。(今井正一)



◎住宅全焼 2人死亡…昭和

 19日午後7時ごろ、函館市昭和4、柴田賢一さん(43)方から出火、木造一部2階建ての住宅内部を全焼した。焼け跡から男性2人の遺体が見つかった。柴田さんと父賢吾さん(67)の行方が分からなくなっていて、函館中央署は身元の確認を急ぐとともに出火原因を調べている。

 同署などの調べによると、付近を通り掛かった男性が「家の中に火が見える」と119番通報し、同日午後11時半現在、鎮火に向かっている。

 現場には消防車20台以上が出動し、発生から3時間以上にわたり放水を続けた。軒下から白煙が立ち込め、消火活動中も断続的に屋根から炎が上がるなど、一時は隣家にも延焼の恐れがあった。現場の消防隊員によると、建物はサイディング張りの外壁や屋根などを2重にした状態でリフォームされていて、消火活動に時間が掛かったという。

 現場は国道5号そばの閑静な住宅街で、長引く消火活動を見守る近所の人たちが大勢集まり、一時騒然となった。近くに住む女性(53)は「近所の人に教えてもらい外に出ると黒い煙がすごかった。柴田さんは足が悪いので心配」と不安げに話した。また、柴田さんと面識のある男性(73)は「息子さんと2人で暮らしていたようだ」と話していた。


◎正副議長の不信任案可決…森町議会

 【森】森町発注の町消防防災センター建設工事をめぐる官製談合事件を受け、町議会は19日、長岡輝仁議長(71)の一連の発言について「議会や町民に迷惑をかけた」とし、長岡議長と中村良実副議長(70)の不信任決議案を賛成多数で可決した。長岡議長と中村副議長は辞職願を提出、受理された。これに伴う正副議長選挙で、新議長に野村洋氏(68)、副議長に青山忠氏(60)が選ばれた。

 この日の町議会第4回定例会で青山忠氏が「『入札指名選考委の議事録偽装は慣例してたのか』と問う報道関係者に、長岡議長が『他の町でもやっているように聞いており、重大な問題ではない』と答え、町民に迷惑をかけた」と指摘、長岡議長の不信任決議案を提出した。「発言時点で追求すべき。選んだ議会の責任もある」とする反対討論もあったが、賛成12、反対7で可決された。中村副議長の同決議案も「議長と同義」として同様に可決された。

 長岡議長と中村副議長の辞職後に行われた選挙では、22人中13票を獲得した野村氏が新議長に選出された。野村新議長は「森町も大変な情勢の中だが、町が明るくなるよう皆さんと頑張りたい」、副議長に選出された青山氏は「議長と議員のパイプ役として、森町発展のため努力したい」と述べた。

 両氏の就任期間は長岡、中村両氏の残任期間で2011年4月22日まで。(笠原郁実)



◎「中島れんばい横丁」始まる

 函館市中島町の中島廉売で19日、空き店舗を活用したイベント「中島れんばい横丁」(実行委主催)が始まった。屋台5店が並び、訪れた市民がおでんや豚汁など体の温まるメニューを味わった。

 地域社会の形成や廉売の活性化を目指し、廉売内に事務局を移転したNPO法人全国精神障がい者地域生活支援センターの能登正勝理事長(31)が実行委を立ち上げて企画。今後も毎月第4金・土曜日に実施する。

 広さ約83平方メートルの空き店舗(中島町26)を借り、店舗内に実行委が手作りした屋台を設置。熱かんや生ビール、ワインなどのアルコール類、多彩なジャンルのメニューをそろえた。函館育ちの「函館男爵黒豚」を100%使用したメンチカツなどを販売する「函館黒福多(くろぶた)屋」(富岡町1)、から揚げなどを提供する「ホルモン研究所」(松風町)も新たに実行委に加盟して出店し、揚げ立てのメニューを提供して人気を集めた。

 飲食スペースも設けられ、家族連れで訪れた桔梗町の会社社長旦尾雅樹さん(40)は「函館にあまり屋台がないので来たかいがあった。もっと開催日を増やしてほしい」と楽しんでいた。

 共催する中島町商店街振興組合の二本柳秀樹理事長(57)は「とてもいい雰囲気。空き店舗のいい活用方法にもなる」とし、能登理事長も「コミュニティーづくりや廉売の活性化につながるよう定着させたい」と話していた。20日も午後5時から同10時半まで開かれる。(宮木佳奈美)

 



◎助産施設の移転求める…市へ本町の飲食店団体

 函館市本町地区で、助産施設があるため半径100メートル以内でクラブやカラオケスナックなどの風俗営業が認められない問題で、同地区の飲食店220店でつくる「五稜郭飲食店親紅会」(渡辺滋代表)が19日、助産施設の移転などを求める陳情書を西尾正範市長と阿部善一市議会議長あてに提出した。渡辺代表は「風俗店の許可証が得られないため、国が打ち出している融資制度も利用できず、業者の死活問題となっている」と強調している。

 対象となっている飲食店は実際には営業している。

 問題となっているのは函館中央病院の周辺。近隣商業地域で認められない風俗営業が続けられていたことから、同会が用途地域の変更を求める運動を始め、市も07年3月、風俗営業ができる商業地域に変更した。ところが市立函館病院の産科休診に伴い、中央病院が06年3月に助産施設の指定を受けていたため、道条例に基づき半径100メートル以内は風俗営業ができないことが判明した。

 渡辺代表ら3人が19日、市役所を訪れ、用途地域変更を所管する都市建設部の山本真也部長らが応対した。渡辺代表は「用途地域変更に伴い、会員は高い費用を負担した。市はこれで風俗店が許可されると説明したにもかかわらず、後になって問題が発覚した。われわれの責任ではなく、市の責任で早急な対応を願う」と求めた。

 問題が表面化して1年半以上を経過。市も重要な課題として早期の解決を目指しているが難しい状況。方法として条例の規制緩和か助産施設の移転が選択肢にあり、市と市議会はこれまで、道警本部長へ規制緩和の要望書を送っている。山本部長は児童福祉法などの問題もあることを説明し、「他部局と連携しながら現状と見通しを含め、市で整理させていただきたい」と答えた。(高柳 謙)


◎金子さん今年も「安心・安全」野菜セット発売

 函館市赤坂町で金子農場を営む金子周治さん(68)が、野菜を詰め合わせた「周ちゃんセット」の販売を今年も始めた。昨年からの取り組みで、歳暮用の注文が増える12月に発送。土付きのまま箱に詰め、畑の恵みを丸ごと届ける。

 セットの中身は同農場で収穫されたナガイモ、ジャガイモ(キタアカリ)、ニンジン、ゴボウ。このほか、当初はミニカボチャも入れる予定だったが、エゾシカの食害を受けたため急きょ十勝産のタマネギになった。

 有機入り肥料を使い、低農薬で丹精込めて育てた自慢の野菜で、金子さんは「安心・安全は当たり前のことで味が勝負。いろいろな野菜を味わってもらいたくて」とセットで販売することにした。タマネギも同じ肥料を使って栽培されものだ。今年は天候にも恵まれ、ナガイモは強い粘り、ゴボウは軟らかさが特徴で、どの野菜も本来の味が引き立ち、甘みも十分という。

 2000円セット(ナガイモ2キロ、ジャガイモ5キロ、ほか各1キロずつ)と、3000円セット(ナガイモ5キロ、ジャガイモ2キロ、ほか各1キロずつ)の2種類を用意。送料別。問い合わせは金子さんTEL0138・58・4469、ファクス同58・4100。(宮木佳奈美)