2008年12月21日(日)掲載

◎企画・活路を拓く 道南建設業(下)新設工業(北斗)…薫製卵 研究重ね商品化  

 赤褐色にいぶされて光り輝く卵の殻をむくと、香ばしい風味が鼻をくすぐる。黄身はとろりとした半熟だ。抗酸化作用のあるアスタキサンチンの混合飼料を与えた鶏卵を桜チップでいぶした薫製卵「北斗物語」。製造から販売まで建設会社の新設工業(北斗市中野通3)が手掛ける。

 「自治体発注の公共事業にしがみつくだけではもう生き残れない。自分たちの仕事は自分たちでつくり出さなければ」。縮小するパイの奪い合い、競合による利幅の縮小……。新山正儀社長(61)は閉塞(へいそく)感が広がり始めた2004年春、業種の“殻”を破り、攻めの一手に打って出た。

 水産資源の活用技術を研究する「マリンケミカル研究所」(函館市桔梗町)からカニやエビの甲羅から抽出される赤色色素「アスタキサンチン」を紹介されたことが転機だった。本業が落ち込み、新規事業に活路を見いだそうとしていた時期とうまく重なった。2年余りの共同研究期間を経て、商品化にこぎ着けた。

 添加物は一切使わず、冷蔵庫で数カ月間寝かせて熟成してから初めて市場に出す。約3000羽を収容する北斗市三好の鶏舎には健康な赤鶏「ボリスブラウン種」が1日約2700個の卵を産む。これを常温でじっくり薫煙加工し、一個一個を真空パック化して、日持ちする高付加価値商品として販売する。

 新事業に乗り出した背景には「業績が悪化したからといって社員を削減したくはない。人材は宝」という新山社長の経営哲学が息づく。長引く不況で先細りする建設業だが、「雇用も含めた地域の発展がなければ、会社の発展はない」と強調する。商品名の「北斗」にもそんな思いが詰まっている。

 現在は函館空港やJR函館駅、道南のコンビニの一部などに販路を広げている。新山社長が「食事業はリピーターの獲得が鍵」と語るように、芽が出るまでには一定の時間を要する。「新分野への参入は体力があるうちに始めないと手遅れになる。事業の成否も5年、10年のサイクルで考えなければ」

 新山社長は「長年にわたり官主導の受け身でやってきた建設業者には守りの精神がはびこる」と指摘する。今後は鶏ふんを利用した農作物の有機栽培といった循環型ビジネスも視野に入れる。苦境にあえぐ建設業界で「脱・公共事業依存」の新時代は地方で胎動を始めている。(森健太郎)



◎福島の鳴海さん地元のコンブとスルメ使い正月飾り

 【福島】福島町日向460の鉄工所社長、鳴海健児さん(69)は、福島特産の養殖マコンブとスルメを器用に組み合わせた正月のしめ飾りを今年も作っている。初めて取り組んだ昨年は約400個を手掛けた。親せきや近所、全国各地の同級生らに送り、「福島の名物を並べて縁起がいい」「古里の魅力がいっぱい。懐かしい」などと多くの感謝の言葉が寄せられた。鳴海さんは「生まれ故郷の素晴らしさをPRしたいと思って作っている。下準備は時間がかかって大変だが、みんなの喜ぶ顔を思い浮かべながら作業を楽しんでいる」と張り切っている。

 鳴海さんは“コンブ細工職人”の愛称を持ち、コンブとスルメを材料に宝船や新幹線の模型を作っては公共施設や小学校などに寄贈している。

 町内の有志とともに進めてきた一連の地域活性化活動が評価され、今年5月には高橋はるみ知事と道庁で対談。「道民の希望を乗せて走るコンブ新幹線です。道内活性化のために活用して下さい」と高橋知事と握手を交わす姿が新聞やテレビで報じられ、一躍ときの人となった。

 最近ではまちを歩くと、「今度は何を作るの?」「期待しているよ」と声を掛けられることもある。鳴海さんは「自分だけじゃなく、福島を大事に思う人たちの支えがあるからこうやって物づくりができる」と語る。

 今年は12月4日から製作に入った。午前8時から午後10時ごろまで作業し、「夜中に目が覚めたら30分でも1時間でもやっている。急がなければ正月までに間に合わない」と笑い、「学校の子どもたちにもウシ(来年のえと)のコンブを届けるんだ」と意気込む。

 18日までに縦40センチ、横20センチのものを120個仕上げた。町内の福島大神宮と、同神宮先代宮司が宮司代務者を務めた函館市の湯倉神社に届けた。  今は、仕事先でお世話になった水産加工場や漁師らに贈る正月飾り作りに懸命。妻のテツ子さん(66)も「近所の人たちも遊びにきたときに手伝ってくれるからうれしい」と笑顔を見せる。

 クリスマス前までにはすべて完成する予定で、鳴海さんは「今年一年、いろいろな人に助けられた。みんなに良くしてもらったこの恩を忘れずに、感謝の気持ちで届けたい」と作業に夢中だ。 (田中陽介)



◎鍛神小PTAベルマーク部、便りコンクールで入選

 函館鍛神小学校(長谷恵校長、児童471人)のPTAベルマーク部(能城ひろみ部長、部員93人)がこのほど、「第23回ベルマーク便りコンクール」(ベルマーク財団主催)の上位10校に初入選した。能城部長は「地道な取り組みが評価されてうれしい」と受賞を喜んでいる。

 同コンクールは、各校のPTAが取り組むベルマーク運動の活動内容のほか、児童・生徒らに配布する資料のレイアウトなどを競うもの。今回、全国から105小学校・園が応募した。同財団のメンバーが審査し、上位入選校10校、佳作10校、特別賞1校が選ばれた。同校はこれまでもベルマーク運動を続けてきたが、今回初めて応募した。

 同部は昨年4月、能城さんが部長に就任し、「学校支援や社会貢献の活動に理解を深めてもらいたい」とベルマーク収集運動を本格化。これまでの活動に加え、校内や近隣のスーパーなどに回収箱4箱を設置し、児童や教職員、地域住民にベルマーク集めの協力を呼び掛けた。能城部長を中心に部員がB4判の「ベルマーク便り」も発行。ベルマークがどんな商品に付いているかや、集めたベルマークで社会福祉ができる仕組みを、イラストや写真、文字の大きさを工夫するなどして作成し、全児童らに配布した。

 こうした呼び掛けの結果、約1万9千枚が集まり、今年6月には大型冷蔵庫と交換し、同校家庭科室に設置。能城部長は「活動を通じて教職員や地域との交流も深まった」とも話している。

 コンクールには、ベルマーク収集を呼び掛けるチラシや便りなど4枚をまとめて応募し、11月中旬、入選の吉報が届いた。

 同財団によると、コンクールでは、活字の大きさやカラーのイラスト、分かりやすい説明などが評価された。

 能城部長は「子どもがベルマークに興味を持つなど効果が出てきている。これからも頑張りたい」と笑顔。PTA会計の表みどりさんは「もっと地域住民と連携して活動できれば」と話していた。(長内 健)


◎菜の花キャンドル&アロマナイト

 菜の花の菜種油でともした明かりと天然アロマの香りを楽しむイベント「菜の花キャンドル&アロマナイト」(はこだて菜の花プロジェクトなどが主催)が20日夜、箱館高田屋嘉兵衛資料館(函館市末広町)で開かれた。市民や観光客らがほのかにともる「菜の花キャンドル」の明かりに心を癒やされていた。

 同プロジェクトは、函館ゆかりの豪商・高田屋嘉兵衛が好んだといわれる菜の花を料理やエネルギーに活用していこうと、毎年中野町の畑で菜の花を栽培している。  イベントではろうそくの代わりに、収穫した菜種から搾った菜種油をホタテの貝殻に注ぎ、点火して明かりをともした。

 来場者は貝殻にメッセージやイラストを書き込んだ後、搾油機から注がれた油を貝殻で受け取り、同資料館の入り口付近にそっと置いて火をつけていた。

 北斗市向野から来た武安和子さん(64)は「高田屋嘉兵衛をしのんで体験してみた。昔の人は油を取ることをよく考えたものですね」と話していた。

 このほか、天然アロマ精油やハーブティーのコーナーも開かれ、5人組バンド「武央アンドフレンズ」のライブも行われた。 (鈴木 潤)



◎永全寺でもちつき

 函館市昭和2の永全寺(齊藤隆明住職)の子供座禅塾に通う小学生が20日、同寺でもちつきを体験し、つき立てのもちを汁粉などで味わった。

 年内最後の開講日となったこの日は、小学2―6年生の11人が参加。子供たちは本堂でお経を読み、座禅を終えた後、もちつきに挑戦した。

 檀家のボランティアや齊藤住職に教わりながら、子供たちは振り上げたきねを臼の中にあるもちを目がけて力いっぱい振り落とし、交代で5回ずつついた。参加した函館神山小5年の佐藤烈君は「自分でついたもちをすぐに食べられるのでもちつきは楽しい」と笑顔を見せていた。

 同寺では寺の生活を通して真っすぐな子供を育てようと、小中学生を対象に昨年9月から毎月第3土曜に子供座禅塾を開講。遊びや昼食の時間を設けつつ座禅、法話で豊かな心をはぐくみ、生活のマナーなども教える。1期は半年間で現在通う子供たちは3期生。次回の4期生は3月に募集する。午前10時―正午。無料(昼食付き)。問い合わせは同寺TEL0138・42・8058。(宮木佳奈美)



◎JU函館が函本と防犯ステーション協定

 函館地方中古自動車販売事業協同組合(JU函館、矢代善彦理事長)は19日、道警函館方面本部と防犯ステーションに関する協定を結んだ。同組合加盟の渡島、桧山管内81店舗が「子ども110番の店」として、不審者から子どもを守る役割を担うほか、振り込め詐欺被害を防止するため各種啓発活動に取り組む。道警函本で開かれた調印式で矢代理事長と大江宜信本部長が調印書を交わした。

 道内に7支部ある中古自動車販売事業協同組合で、道警と協定を結ぶのは今回が初めて。対応マニュアルを各店舗に配布したほか、「こども110番の店」「振り込め詐欺被害防止協力店」と大きく書かれたのぼりを掲示、営業車両に「子どもの安全を見守る運動」と書かれたステッカーを張り付け、地域防犯活動の一翼を担う。

 調印式で、大江本部長は「12月に入り、強盗やひったくり、女性対象の傷害事件が相次ぎ憂慮している。警察としても、関係機関や団体と一体となった安全を守る取り組みが重要」とし、地域の防犯意識が向上するよう期待した。矢代理事長は「組合ができて30年たったのは地域のおかげ。加盟社に認識を徹底して、貢献できればと思う」と述べた。(今井正一)