2008年12月29日(月)掲載

◎「カリヨンの塔」修繕 4年ぶり音色響く…石別中

 【北斗】トラピスト修道院にほど近い北斗石別中学校(北斗市三ツ石270、三觜徳久校長)のカリヨンの塔が修繕を終え、4年ぶりに澄んだ音色を奏でた。塔上方の9つの鐘が美しい旋律を刻み、静かに生徒たちの登下校を見守っている。

 現校舎は1991年、「自然と修道院の調和」を基調に完成した。そのうち、高さ17メートルの「カリヨンの塔」は同校のシンボルとして建設。自動演奏装置で午前8時20分と午後4時の2度「赤とんぼ」や「何てすてきな曲」など4曲から演奏し、地域の音色として親しまれていた。

 だが、海から近く、塩分混じりの強風が直撃する同校では数年前から鐘の腐食が進み、2004年度には演奏が不能に。「ほかの学校にはないシンボル。子どもたちに鐘の音を聞かせたい」という三觜校長(49)の強い願いで、本年度、市内の業者が鐘の修繕を手がけることになった。在校生の多くは鐘の音色をこれまで聞いたことがなく、修繕後、JR渡島当別駅まで届く鐘の音に心を和ませている。

 「赤とんぼ」を作詞した三木露風はトラピスト修道院で講師を務めていたことが知られており、同校では親しみをこめ午後4時の鐘として毎日、演奏される。また、久々に響く鐘の音は地域や来校者からも好評で、同校では来客を迎えたときなどにも鐘の音を披露している。

 三觜校長は「鐘が鳴ると足を止めて、ふと塔を見上げてくれる。この学校のよい部分を知ってもらい、子どもたちに学校に誇りを持ってもらいたいのです」と微笑えむ。

 トラピストの丘にたたずむカリヨンの塔は年末年始も静かに時を知らせる。(笠原郁実)



◎函館市の利殖にも“リーマンショック”

 函館市が、日々の収入と支出の差(歳計現金)で実施している国債の売買契約(現先取引)と銀行預金による運用が、好調な中にも陰りが見え始めている。市会計部によると、12月末で本年度の目標額1300万円を上回る1447万円の運用実績がある。しかし、9月の米証券会社リーマン・ブラザーズの経営破たん以降、日銀が世界金融不安の中で政策金利を2回引き下げたため、債券の利率が大きく低下している。

 同部によると、歳計現金の運用はかつて1カ月単位の大口定期預金だった。現先取引は2、3日間でも運用でき、市は昨年9月から、急な資金需要に対応できる額を普通預金に残し、残った歳計現金で国や政府系の国債や証券の売買契約をしている。  地方交付税や交付金、補助金、市税、国保料、手数料などは収入があって支出されるまでわずかながら日数がある。これに目を付けたのが証券会社の現先取引。市は市内の2社と契約し、本年度は既に81件の取引をしている。

 地方交付税が入った6月には、35億円を利率0・50%で12日間運用し57万4864円、42億円を利率0・54%で25日間運用し155万2374円の利益を上げた。「現先取引の利率は日銀の政策金利と同じか、若干高め」と同部は説明する。

 しかし、世界金融不安から日銀は10月、政策金利を0・5%から0・3%に引き下げ、12月には0・1%にした。連動するように、11月には10億円を22日間運用したが利率は0・30%で、運用益は18万631円しか出なかった。12月は13億円を5日間運用中だが、利率は0・17%で、見込まれる運用益は3万264円という。

 昨年度から本年度途中までは政策金利が0・5%。現在は0・1%なので、金利は5分の1。昨年度の運用益は銀行預金も入れて1558万円で、本年度はそれを上回る見通しだが、仮に0・5%で1500万円の運用益だと、0・1%では300万円程度しか出ない計算。金利の低下は市の借金の金利が下がる要素もあるが、コツコツと励む利殖の面ではマイナス。

 同部の菅原尋美部長は「金融の動きが役所にどう影響を与えるか、行政マンも理解する必要がある。今後は運用益が薄くなりそうだが、世の中の動きを知るためにも、こういう運用はしていくべきだと思う」と話している。(高柳 謙)



◎記者回顧(8)東日本フェリー撤退

 函館港を一望できるウッドデッキ。遠景に函館山を望み、さわやかな潮風がほおをなでる。警察・司法から経済に担当が替わった6月、東日本フェリーの函館ターミナル(函館市港町3)が「恋人の聖地」に選ばれたというハッピーニュースを紙面で取り上げた。夜景や夕日の美しさに加え、函館と青森を“結ぶ”という縁起の良さが認定の決め手だった。

 「禍福はあざなえる縄のごとし」。幸福と不幸は代わる代わる訪れるものだと、以前ある警察幹部が教えてくれた言葉が脳裏をかすめる。

 東日本フェリーは9月、フェリー運航事業からの撤退を表明した。その1年前に導入された最新鋭の高速船「ナッチャンRera(レラ)」。就航からわずか1年余りで“終航”に追い込まれた。函館の観光関係者にはしゃれにならない衝撃が走った。

 船にあこがれ、船の仕事に希望を見たナッチャンの女性キャビンアテンダント(CA)。最後の運航となった10月31日夜、岸壁には非番や終業後のCAがこぞって詰めかけた。「もっと乗っていたかった…」。4月に新卒で入社したばかり。千葉県から移り住んだCAの一人は目に涙をためて言葉を詰まらせた。

 函館発のナッチャン最終便には計409人が乗船。専用ブリッジがあるターミナル3階はそれぞれの「思い」で乗船を待つ家族連れ、老夫婦、愛好家、ツアー客、報道関係者らでごった返した。乗客を見送った社員がぼやいた。「いつもこんなに忙しければ、こんなこと(運休)にはならなかったはずだけど」

 函館は年明けに開港150周年の節目を迎える。北洋漁業、青函連絡船。港と町の盛衰が重なる史実は、今も昔も関係者をやきもきさせる。往時のにぎわいを過去の話で終わらせないため、起死回生の希望を乗せたナッチャンが培った青函圏の交流が途絶えることはない、と信じたい。

 「時計の針が1年前に巻き戻っただけ」。函館市幹部が平然とこう語る危機感では、津軽海峡は冬景色のままだ。2年後の東北新幹線・新青森駅開業や、7年後の北海道新幹線・新函館駅までの延伸を好機に、一層の連携で広域観光振興の新たな可能性を探ってほしい。

 いつしか友達や恋人のように呼んでいた「ナッチャン」。お別れはさみしいが、感傷に浸っている時間はない。100年に一度といわれる経済危機が年の瀬の日本列島を襲う。明るいニュースが少なかったが、禍福に門なし。幸を探し、取材を続けようと思う。こんな時代だからこそ。(森健太郎)


◎函館山でカウントダウン、五稜郭タワーは初日の出イベント

 年越しや正月を特別な場所で過ごしませんか―。函館市内で31日から1日にかけ、函館山山頂でのカウントダウン、五稜郭タワー展望台から初日の出を見る催しが開かれる。函館を代表する眺望スポットで新年の雰囲気を味わってもらおうと、さまざまな演出や催しが企画されている。(宮木佳奈美、山田孝人)

 ○…函館山ロープウェイ(元町19)は昨年度に続く2回目の年越しイベント「函館山カウントダウンスペシャル」を企画。31日午後10時から1日午前1時までロープウェーを特別に運行する。搭乗者全員にクラッカーを手渡し、日付が変わる際に館内放送による掛け声に合わせて皆でカウントダウンをする(参加自由)。

 参加費は往復乗車料金とカウントダウン用クラッカー、記念品が当たる抽選券付きで1人1050円。希望者は当日直接、乗り場へ。最終上り乗車は午前零時半。同社は「装飾やイルミネーションで展望スペースを特別な雰囲気に演出します。多くの市民や観光客に遊びにきてもらいたい」と呼び掛ける。

 このほか31日午後11時から先着150人限定のカウントダウンプレミアムパーティーも同時開催する。函館在住のピアニスト高橋セリカさんの演奏をBGMにオードブルや飲み物、豪華景品が当たる抽選会が楽しめる。前売り券(往復乗車料金込み3500円)を販売中。参加希望者は函館山ロープウェイTEL0138・23・6288に問い合わせを。また31、1日は通常の運行も午後9時まで延長する。

 ○…五稜郭タワー(五稜郭町43)は1日午前零時にタワーをライトアップ。さらに通常より3時間早い午前6時から営業を開始し、地上90bの展望台から初日の出を見ることができる。午前8時までに搭乗券を購入した人にソフトドリンク1杯をサービスする。搭乗料金は大人840円、中・高校生630円、小学生420円。

 1階アトリウムではお正月ならではイベントが盛りだくさん。午前10時半から随時、来場者も参加できる「新春縁起もちつき」を開催。1日から3日まで館内の売店や軽食、喫茶店の利用額(展望台チケット、2階飲食テナントを除く)が合計2009円に達するごとに、タワーオリジナル商品などが当たる抽選会を実施する。

 このほか午前10時から函館を拠点に活動するトラベリングバンド「ひのき屋」が獅子舞を披露し、市内在住の手回しオルガン職人谷目基さんの演奏、市内の玩具店「あさひや」が特別出店してベーゴマなど懐かしいおもちゃの販売もある。同社は「正月らしい雰囲気を楽しんで」と話す。問い合わせは五稜郭タワーTEL0138・51・4785。


◎函館養護学校・眼鏡相談員 上田さん…定年迎え奉仕活動終える

 函館養護学校(松野毅彦校長、児童・生徒74人)の眼鏡相談員として奉仕活動を続けてきた上田貴久さん(64)が、勤務していた眼鏡販売店の定年退職に伴い、活動に終止符を打った。26日、同校が企画した送別式が開かれ、全校児童、生徒が上田さんに手作りのプレゼントを贈り、感謝の気持ちを表した。

 上田さんは1973年、市内で4店舗を構える眼鏡販売店「メガネのワコー」に入社。数年後には眼鏡士の資格も取得した。

 20年ほど前、同校の校医を務めていた眼科医からの依頼を受けて子供たちの眼鏡の調整、修理を行った。「子供たちに眼鏡を正しくかけてほしい。一度きりで終わらせてはもったいない」との思いから学校側に申し出て、毎月1回、眼鏡相談員として来校し、ボランティアで児童、生徒たちの眼鏡の調整をしてきた。

 毎月、昼休みなど空き時間を利用し、相談コーナーを開設。上田さんのもとには20人以上の児童、生徒が訪れた。わずか1時間程度のふれあいだったが、上田さんも眼鏡の調整を通し、子供たちの成長を感じてきた。「長く続けてこれたのは、勉強や学校の活動に一生懸命取り組む子供たちの姿があったから。私も励まされた」と振り返る。

 定年を迎え退職。まだまだ続けたい気持ちもあるが、「道具がなければ調整はできない」と、後輩の社員に後任を託す。

 この日の送別式は2学期の終業式後に行われ、松野校長が「長い間ごくろうさま」とねぎらった。小学部、中学部、高等部の各代表、全校の代表が上田さんに手紙や手作りのリース、花束などを手渡し、上田さんも感謝の言葉を述べた。

 上田さんは「さびしい気持ちだが、子供たちからこんなにお礼の品をいただき感無量。子供たちに何か協力できることがあればしていきたい」と語った。(鈴木 潤)