2008年12月30日(火)掲載

◎生産者の「顔」発信しやすく…未来大生が農水産業者向けソフト

 公立はこだて未来大(中島秀之学長)の学生グループが、農水産業者が活用できるウェブサイトのソフトウェアを開発した。既に実用化されている産品の安全性を消費者に伝える携帯電話のトレーサビリティ(生産履歴)システムと連動し、生産者自身が情報を編集しやすく、手軽に運営できるのが特徴だ。関係者は「ぜひ多くの生産者に使ってほしい」と話している。

 ソフトウェアの開発は、2003年から同大が始めた水産物の携帯電話を活用したトレーサビリティシステムの研究がきっかけ。実用化した05年、青森県十三漁協が十三湖産大和シジミの販売に導入。しかし、利用率が低かったため、消費者の関心を高めようと、生産者が編集・運営できるソフトウェア開発に07年から着手した。  完成後の9月、この取り組みを聞きつけた宗谷管内遠別、手塩、幌延3町の産業関係者らでつくる「てんぽく活性化協議会」のトレーサビリティ検討部会が、特産品のブランド化を目的にソフトウェアの提供とサイト構築を依頼。「プロジェクト学習」の一環として、3年生14人が約3カ月掛けてソフトウェアの内容を充実させるなどし、専用サイトを提供した。

 サイトは、漁業者が日々の様子をつづるブログ(日記風のサイト)や人物紹介コーナー、旬カレンダーなど多彩。学生が描いた漁業に関するユニークな漫画もある。

 情報を更新する際は、登録者だけが入れる編集ページでいくつかの質問事項に答えるだけで済む。リーダーの東川弘樹君(22)は「使いやすさを心掛けたので頻繁に更新してほしい。漫画やレシピもあるので、学生や主婦にも見てほしい」と話す。

 担当の三上貞芳教授は「汎用化がテーマ。多くの生産者に使ってほしい」と語る。木村健一准教授も「1次産業従事者の生の声はどれも新鮮。多様な内容が一括して使え、トレーサビリティと連動するので信頼性が高まる」と利点を説明する。

 同大ではほかの希望者にもソフトウェアを提供し、普及を図る考え。問い合わせは三上教授の研究室TEL0138・34・6561。てんぽく活性化協議会のホームページアドレスはhttp://www.trace−info.jp/teshio/(新目七恵)



◎帰省ラッシュ始まる

 正月を古里で過ごす人たちの帰省ラッシュが29日、函館でも始まった。JR函館駅や函館空港では午前中から大きなかばんを手にした親子連れらが到着し、迎えに来た家族との再会を喜ぶ姿が見られた。。

 この日は、JR東日本の東北新幹線などで運行管理システムのトラブルがあり、始発から午前9時ごろまで運転を見合わせた影響で、JR函館駅では八戸からの乗り継ぎの特急で午後に到着する列車が混雑した。札幌発の特急も午後から込み合った。。

 昼ごろに旭川から子ども2人を連れて七飯町に帰ってきたという菅井正輝さん(39)は「雪で列車の遅れがあるかと心配していたが、トラブルはなく良かった」と話し、孫らを迎えに来た緒田有子さん(68)は「メールで孫の写真を見ているが、会ってみると成長が分かりうれしい」と笑顔を見せていた。。

 同駅によると帰省のピークは30日まで。航空各社によると、30日の本州からの便はほとんど満席という。同駅では「帰省のUターンは1月4日が日曜のため、2、3日ごろに集中する」としている。(山崎純一)



◎正月準備で市場に活気…中島廉売

 今年も残りあと2日。函館市中島町の中島廉売は29日、年末年始に食べるごちそうやおせち料理の食材を求める客でごった返した。鮮魚店が並ぶ魚屋通りでは「いらっしゃい」「安いよっ!」など活気のある声が飛び交った。

 函館カネニ中島店(棟方斉店長)では、おせち用の塩カズノコ(1パック600グラム、1000円)や刺身用のエビ(500グラム、1300円)などが売れ筋。棟方店長は「今日は朝から大勢の人でにぎわっている」と話す。紺地鮮魚(紺地慶一社長)ではカニやタイなど豪華な食材が好調で、地方発送の注文も多い。中島廉売大通りの蝦夷屋(二本柳秀樹社長)では函館の正月には欠かせないクジラ汁に使う「塩クジラ」などがよく売れるという。

 七飯町大沼の本田元清さん(62)は「毎年ここに来るが、このにぎわいを見ると年の瀬だなと感じる」と話し、各店を巡っていた。中島町商店街振興組合の理事長も務める二本柳さんは「今年も変わらず大勢の人がきてくれてうれしい」と声を弾ませていた。人出のピークは29、30日という。 (山田孝人)


◎記者回顧(9)…支庁再編 苦悩の桧山

 後出しジャンケン―。この言葉が紙面に初登場したのは5月16日。支庁再編に反対する日高管内浦河町の谷川弘一郎町長が言い放った。この1年、檜山管内を揺るがした支庁再編問題を象徴するキーワードの一つだ。

 今年は江差支局でも支庁再編の取材に明け暮れた。町職員や住民とともに江差と札幌を往復する日々が続いた。職員は減る、機能も削る、地方への説明は常に事後承諾で上意下達―。これでは影響を被る市町村が納得するはずはない。道庁前には抗議のむしろ旗が乱立した。取材メモに刻まれた言葉からこの1年を振り返ってみた。

 再編をめぐる議論は道庁の限られたセクションで進められた。内部ですら強引な手法を疑問視する声がある。「うちの部は何も知らされない」(5月22日)。道幹部がぼやいた。檜山で勤務経験がある中堅職員は複雑だった。「他にやるべき仕事があるだろ…」(6月9日)。不況、過疎化、海洋環境の激変による漁業不振…。檜山の苦境を知り抜いているからこそ、道と市町村が泥沼の争いに転げ落ちていく姿に歯がゆさを感じていたに違いない。

 道庁の徹底した行革を求める急先ぽう、道町村会町の寺島光一郎乙部町長が再編反対にかじを大きく切ったのは3月中旬。「どう考えても市町村のためにならない。町村の仲間が困ることになる」(3月13日)。表情には苦悩が刻まれていた。6支庁案が9支庁案になった経緯など支庁再編をめぐる闇は深い。「大義なき改革だ」(6月13日)と言い切った。

 再編条例の可決後も、再編の足かせとなっている公選法問題で攻勢をかける寺島町長の動きを封じようと、道は逆襲を仕掛けた。たびたび苦境に立たされながらも、寺島町長は「やるべきことをやる。正義はわれにありだ」(9月4日)ときっぱり。政府与党が公選法改正の先送りを決めたのは10月下旬。ようやく攻守が入れ替わった。「知事とは町村の生き方を話し合いたい。死に方(?道の再編案)じゃ駄目だ」(12月25日)という。

 だが、支庁問題は袋小路に陥ったまま越年を余儀なくされた。年明けにかけて事態の打開に向けた動きも予想されるが、この1年で失ったモノを取り戻すため、多くの時間と労力を費やすことになる。“後出しジャンケン”の代償は余りにも大きい。支局でも目を離せない日々が続きそうだ。(松浦 純)


◎各町会 力合わせ歳末警戒

 歳末特別警戒に合わせて、函館市内の各町会は自主的に地域内の防犯、防火活動に励んでいる。青色回転灯を装備した車両を活用したほか、昔ながらの拍子木を使った巡回活動などにそれぞれの町会が取り組んできた。メンバーは厳しい寒さの中、力を合わせて、住民に不審者の警戒や防火を促し、地域の安全を地道に支えている。

 2003年から4―12月の間、毎月1回、地域内の夜間パトロール活動を実施している深駒町会(佐藤実会長)は、12月だけ活動を2回に増やし、防火などを訴えている。今年最後のパトロールとなった18日は役員約20人が参加。ちょうちんや拍子木を手にし、4組に分れて徒歩で約1時間、「火の用心」などと声を上げながら地域内を見った。

 三上秀夫防犯防災部長(77)は「最近は住民からねぎらいの言葉を掛けていただく」と、活動が地域に根付きつつあるのを感じながら、新年度の活動にも意欲を見せる。

 今年初めて大掛かりな歳末警戒を行った美原町会(若松均会長)は役員、町会員約40人で「美原町会防犯パトロール隊」を立ち上げ、26日夜に見回りを実施した。町会館での出発式では、若松会長(73)が「今年も残りわずか。安全な新年を迎えられるよう励もう」とあいさつ。青色回転灯装備車1台が出動し、参加者も3組に分かれて町内をパトロールした。

 平澤鐡美総務部長(65)は「火事も犯罪も起こらなければ」と穏やかな1年を迎えられるよう願っていた。

 高盛町会(佐藤福明会長)は12月に導入したばかりの3台の青色回転灯装備車を活用。佐藤会長(70)ら3人の役員が主に小・中学校の下校時間帯を中心に町内を走行している。活動の初日となった15日には役員15人が2組に分れ、郵便局やコンビニエンスストアなどを訪問し、犯罪や火災への注意を呼び掛けた。佐藤会長は「青色回転灯装備車の活用で地域の防犯意識を高め、犯罪抑止につなげたい」と力を込める。

 旧南茅部地域の川汲町内会(酒井鉄雄会長)は函館中央署などと連携した巡回活動を展開。市川汲会館(川汲町)で19日に行った出動式には、南茅部地域の防犯、交通ボランティアら計約20人が集まった。役員の佐々木忠勝さん(64)は「継続して巡回を続けたい」と話していた。 (鈴木 潤、山田孝人)


◎手づくりおせち料理 独居老人に届ける…知内赤十字奉仕団

 【知内】地域の社会福祉貢献に努める「知内町婦人赤十字奉仕団」(敦沢良子委員長)は29日、町内の独居老人30人に届けるおせち料理を作った。団員20人が料理の腕を振るい、栄養満点でおいしいメニューを用意。30日に各世帯を回って手渡す。

 心温まる手料理で良い新年を迎えてもらおうと、20年ほど前から毎年実施。「今年もお年寄りに喜んでもらいたい」と、中央公民館調理室で午前9時から正午ごろまで調理に取り組んだ。

 メニューは、サケの塩焼きや野菜のうま煮、昆布巻き、煮豆、くりきんとん、きんぴらごぼうなど約20品。ゆでたニンジンをくずした豆腐で甘く和える郷土料理の「白和え」も付けた。「あっという間の一年だった」「今年もいろいろあったね」などと団員は世間話に花を咲かせながら、彩り良くおかずを並べた。料理とともに手紙も用意し、「風邪などひかないように注意し、良いお年をお迎えください」と記した。

 敦沢委員長は「長年、地域を支えてくれたお年寄りに敬意と感謝を伝えようと考え、団員が協力してくれた。地域で支えあう温かな精神を感じてうれしい」と話していた。(田中陽介)


◎函館関連「ほぼ確保」 新幹線や道路、港湾など…来年度政府予算案

 このほど決まった政府の来年度予算案で、函館市の西尾正範市長は「地元関連分の予算配分が決まるのは年明けだが、情報収集した範囲ではほぼ要望通りの額を確保した」と受け止めている。北海道新幹線新函館―新青森間のほか、地域高規格幹線道路、港湾整備などの継続事業が予算化されるとみている。

 北海道開発予算は5855億円で決着。国道整備事業では1812億円が内定し、函館新環状道路(函館IC―函館空港間10キロ)は一部で用地買収に着手する。このほか道縦貫自動車道や函館江差自動車道などの整備が継続して進められる。

 函館港港湾整備事業は24億5600万円を要望し、ほぼ確保。旧函館ドック跡地の岸壁整備や幹線臨港道路(湾岸道路)の整備を進める。来年度で終了する函館公園整備も予定通りで、2010年度に供用を開始する箱館奉行所の復元整備や、来年度で終える史跡大船遺跡整備なども認められる見通し。

 開発予算とは別枠で、新幹線整備事業は国費ベースで本年度と同額の706億円が内定した。地方負担分などを合わせた総額は3539億円で、うち道新幹線新函館―新青森間は337億円を確保した。

 西尾市長は「地域高規格道路の整備がさらに促進され、新外環状道路は来年度、着工する。縦貫道や函館江差道など15年度の新幹線開業に向け、高速交通ネットワークの構築に取り組みたい」と話している。(高柳 謙)