2008年12月31日(水)掲載

◎冬の大沼をエンジョイ

 【七飯】函館市からほど近く、ヒット曲「千の風になって」誕生の地として知られる観光地・七飯町大沼は、年の瀬も大勢の観光客でにぎわっている。地元観光案内所や体験型観光業者は年末年始も無休で観光客の受け入れに忙しい。(笠原郁実、山崎純一)

 ◆ハクチョウと触れ合う

 観光情報を提供する大沼国際交流プラザ(大沼町85、小島威館長)は、ハクチョウ用のえさを入り口に設置した。町給食センターで廃棄されたパンを角切りにし、紙の容器に入れたものを無料配布しており、同館は「ハクチョウとのふれ合いを楽しんでほしい」と話している。

 大沼国定公園には11月下旬からハクチョウが羽を休める姿が見られ、大沼と小沼を結ぶ「白鳥台セバット」にも12月10日ごろからハクチョウが飛来。同セバットはハクチョウと間近に触れ合えるとあって毎年、大勢の観光客らが訪れている。

 同プラザでは2001年からハクチョウが飛来するこの時期に合わせて毎年、エサを提供。ことしから館入り口での設置へと切り替えた。エサ配布所にはプラザからセバットへ向かう手書きの地図も張り出した。観光客の中には早速、エサを片手にセバットに向かう姿も見られた。

 同館の営業時間は午前8時半から午後5時半。問い合わせは同プラザTEL0138・67・2170。

 ◆五右衛門風呂がリニューアル

 季節に合わせた体験事業を提供する「イクサンダー大沼カヌーハウス」(大沼町22、渡辺邦浩代表)の高台五右衛門風呂が、リニューアルした。2階の風呂場には雪よけの屋根と簡易な壁を設け、1階部分にサウナを設置。同ハウス利用者専用で、湯に浸かりながら小沼に沈む夕陽や夜空に瞬く星空を楽しむことができる。

 同ハウスは昨シーズン、高台の同五右衛門風呂を完成。今シーズンは簡易な壁と屋根を設け、周囲の目を気にすることなく入浴を楽しめるよう工夫を凝らしたほか、釜を焚くドラム缶のかまどを利用し、1階部分に壁で囲まれたサウナを新設した。

 渡辺代表は「現在、サウナ部分は脱衣所として利用している。さらに改良を加えていきたい」と話している。同ハウスではスノーシューやテレマークのツアー、結氷後は氷上ワカサギ釣りも行っている。問い合わせ、ツアーの予約は同ハウスTEL0138・67・3419。

 ◆ワカサギ釣って食べる

 大沼の冬の風物詩ワカサギの穴釣りが年末年始も楽しめる。夏はコイやヘラブナの釣り堀を経営している藤原黄門さん(72)が、今年から冬期間、ワカサギ釣りを来場者に楽しんでもらっている。

 今年の大沼は湖面の凍結が遅れており、この釣り堀でもまだ氷の上で釣ることはできないが、通路などから楽しむことができる。現在、体長8センチ程度がよく釣れており、釣った魚はから揚げにして食べることもできる。

 料金は竿、えさ付き2時間で大人1000円、小学生以下の子ども750円で2時間。から揚げはグループで500円。このほか竿とえさのほか、使いきりカイロ、防寒具、から揚げのサービス付きで一人4000円の「手ぶらセット」がある(要予約)。

 時間は午前8時半から午後4時まで。場所は、大沼公園広場にあるステージの右側から入る。駐車場は大沼公園の一般の有料駐車場を利用する。JR利用の場合は大沼公園駅から送迎もある。問い合わせは藤原さんTEL090・8271・7584。



◎1年の労ねぎらう、道南の自治体で仕事納め

 道南のほとんどの市町は30日、一斉に仕事納めとなった。市役所や役場では、窓口で住民が各種証明の交付や申請を済ませ、来庁者と職員が年末のあいさつを交わす姿などが見られた。市長、町長が職員を前にあいさつし、1年間の労をねぎらった。  函館市役所では午後3時半から8階大会議室で、特別職と管理職合わせて約250人が整列し、西尾正範市長があいさつした。西尾市長は「国内外とも激動の1年だった」と振り返り、暗い世相の中でも市政では駅前地区への専門学校の進出計画やロシアのラブロフ外相の訪問など、明るい話題もあったと述べた。

 今年1年を表す漢字が「変」であることから「来年は将来に希望が持てる良い意味での変化を期待したい。厳しい時代を乗り切っていくためには市役所がまずしっかりしないといけない。1年間の疲れを癒やし、再び元気な顔を見せてください」と訓示した。

 北斗市は海老沢順三市長が市役所本庁と総合分庁舎でそれぞれ職員を前に訓示。本庁舎では午後4時45分から職員140人を前に「政治も経済も社会も暁闇(ぎょうあん)の1年」と語った。

 一方で市の事業については、最重要課題の道新幹線新駅周辺整備の道認可と事業着手、大野地区の街路整備、トマトの共同選別施設など一連の明るい事業成果を挙げ、「皆さんの日ごろの取り組みが評価された1年」とたたえた。雇用問題については「地方で対応できるものは地方で対応したい」とし、「1年間、ありがとうございました」と締めくくった。

 通常の年末年始休暇に週末が重なった国、道の仕事始めは1月5日、函館などの市町は同6日。(高柳 謙、笠原郁実)



◎北斗市が緊急雇用対策、臨時職員を採用へ

 【北斗】経済・雇用情勢の悪化を受け、北斗市(海老沢順三市長)は30日までに、1月から総額500万円規模の緊急雇用対策実施を決めた。臨時職員10人程度を採用するほか、冬季就労対策の雇用枠を拡大、事業主都合による失職者を対象に市営住宅3戸を確保する。

 北斗市内の企業倒産件数は11月末現在で建設業や食料品小売業など昨年より2件増の5件。近隣市町の大手企業の派遣従業員削減など地域の雇用情勢悪化を受けて、緊急措置をとることにした。

 臨時職員の採用で313万円、冬季就労対策事業の拡大で140万円、市営住宅の入居で25万円をそれぞれ、予備費で対応する。

 臨時職員は1月19日から3月末までの任用。市役所内で総務事務や税務事務など一般事務補助に従事する。冬季就労対策は2月下旬から3月初旬にかけての10日間で、文月川の浚渫(しゅんせつ)業務にあたる。当初予定していた40人枠にさらに緊急雇用対策枠として20人を確保する。

 いずれも1月30日までの受け付け。履歴書持参で面接し随時採用する。臨時職員についてはハローワークで求職手続きを行った上、紹介状が必要となる。  市は1月の広報やホームページなどで広く周知し、希望者が多い場合は、対策事業拡大なども検討している。(笠原郁実)


◎記者回顧(10)函館活性化めぐる議論

 函館の経済や観光の活性化にはどんな取り組みが必要だろうか。そんなテーマで民間と行政機関が意見交換する場を取材する機会が増えて、どこかマンネリになっていないかと感じることがある。北海道新幹線開業というビッグチャンスを控えながら、従来の受け入れ体勢では観光客の増加も一過性に終わってしまうという危機感を持って真剣に議論しているのは分かる。だが新鮮味に欠ける提案や、スケールが大きすぎて実現不可能な夢物語も少なくない。最終的に「官民連携して函館観光を盛り上げていきましょう」と平凡に締めくくられてしまうことも多い。

 そんな中、函館開発建設部を会場に11月から行われている「道南の近未来ビジョンと戦略を考える異業種フォーラム」では、目からうろこが落ちる大胆で斬新な提言が多く飛び出し、今後に向けて大きな期待を抱かせてくれた。

 ここでは毎回冒頭に「発表者は自分の発言に対して、一切の責任を負わない」と宣言する。社会的立場にとらわれることなく、一個人として函館活性化への思いを自由に語ってもらおうとの配慮からだ。これが功を奏しているのか赤裸々な本音が次々と飛び出す。また、函館出身者以外の発表者が多いのも特徴で、内側からは見えにくい函館のほころびが明かされていくのも刺激的だ。

 例えば関西出身の大学教授は、函館が誇れるものとして「歴史と文化の重みやコンパクトな港町であること」と示す一方、「駅前が寂しい」「町並みが不統一」「観光スポットの案内板が分かりにくい」などの不満点を列挙し「観光都市でありながら観光客を受け入れる身だしなみが整っていない」と厳しく指摘。また全国各地を転勤している民間企業の営業部長は「空港からの交通手段が分かりにくい」「観光地の民間駐車場の客引きが強引」「温泉地のホテルの料理がバイキング形式のところが多く魅力が乏しい」などと、他都市との比較を交えながら、観光都市としての欠陥を挙げていく。

 在函13年目を迎える私自身も、当初は彼らの指摘する点に強い不満を感じていながら、知らない間に感覚がまひしていた。函館が本当の国際観光都市に生まれ変わるためには、厳しい指摘に正面から向き合い、本物の”おもてなし”を磨いていく必要を痛感している。(小川俊之)