2008年12月5日(金)掲載

◎おせちに欠かせぬ味 カズノコ出荷最盛期

 師走に入り、函館市内のカズノコの加工場は出荷作業のピークを迎えている。市水産加工業協同組合(竹田英夫組合長、宝来町)の加工場でも、パート従業員ら約30人が手作業でカズノコの選別、箱詰め作業に追われている。

 カズノコは縁起物の伝統食品で、おせち料理や惣菜に使われる。原料のニシンはカナダ、アメリカなどからの輸入魚。取り出した卵は血抜きや殺菌などを経て塩水に漬けられ、その後、産地や大きさ別に分けられ、箱詰めして全国の市場に送られる。

 同組合では年間約100トンの生産量のうち、約95%が年末商材として出荷される。輸入量の減少や燃油高などで例年より価格は上昇傾向にあり、店頭価格は最高級品のカナダ産で500グラム6000円、ヨーロッパ産で同2500円程度という。業務用のオランダ産塩カズノコの製造で試験的に熊石の海洋深層水を使い、まろやかな味に仕上げる工夫も重ねている。

 竹田英二参事補は「景気低迷などから市場の動きは遅め。量を減らして対応するスーパーも多い」と話している。(新目七恵)



◎「函館の生活、撮影 充実」…映画「わたし出すわ」撮影 森田監督、小雪さんインタビュー

  最新作「わたし出すわ」の撮影で函館市内に滞在中の森田芳光映画監督と主演の女優小雪さんが4日、函館市元町のカフェやまじょうで、報道関係者の共同インタビューに応じた。灰色のワンピース姿で現れた小雪さんは「函館を好きになった」などと終始笑顔で街の印象を語った。「お金の使い方」という難しい映画のテーマとは打って変わり、小雪さんの華やかな雰囲気とも相まって、会場は和やかなムードに包まれた。

 映画は、突然帰郷した女性(小雪さん)が再会する同級生の「夢」や「希望」の実現のために大金を渡す…という内容。函館ロケは11月16日に始まり、12月10日までの予定。撮影は市民エキストラも加わり市内各地で行われている。

 今回、函館ロケ4作目となる森田監督は「好きな函館で映画がまた撮れるのがうれしい。自分の作品の“空気感”に合っているのが街の魅力。フィルムコミッションなど映画への協力態勢や理解がすごく、良い作品を作れる環境がある」とした。12年ぶりのオリジナル脚本について「時代をどう感じ、予見するかを出したい。5年前から経済的な問題が気になり、自分なら大金をどう使うかと考えたことも含めて書いた」と意気込みを語った。

 一方、函館は初めてという小雪さんは「街の人は優しく親切で、おいしい食べ物も、すてきなカフェも多い。もう少し身を置きたいと思うほど、函館での生活や撮影を楽しんでいる」と話した。撮影の合間にはさまざまな店やスポットに足を運ぶ「グルメツアー」を行っているとし、特に気に入った場所を「七飯町大沼は自然豊かで印象的。休みの日には乗馬やカヌーもした」と声を弾ませた。

 森田監督については「独自の世界観を持つ監督で、言葉やせりふひとつをどう捉えるか撮影前にはよく考えた。今は自由にやれる範囲の表現ができ、撮影は充実している」と楽しそうに語った。

 森田監督は「函館ロケの成果が出る映画にしたい。映画で函館の観光客が増えれば」とし、小雪さんは「作品を通して函館を知ってもらいたい。テーマのお金の在り方を考えるきっかけになればと思う」と話した。

 映画は2009年に全国公開の予定。(新目七恵)



◎企画【映画の街に】下/「ファン」が支える 発見、触れ合いが魅力

「映画祭は“びっくり箱”を開ける気分で来てほしい。知らない映画にはきっと、新しい発見があるはず」?。現実行委メンバーの寺澤陽子さん(39)は力強く語る。  函館出身で根っからの映画好き。1995年の第1回映画祭は、市内元町のギャラリー村岡の展示会などで開催を知り、客として足を運んだ。

 映画祭自体が初めての経験だった。「映画は新しい作風で独特。監督も間近に見ることができて新鮮だった」と思い返す。新しい映画の発見、映画人との触れ合い?。その魅力に引かれ、その後も毎年通うようになった。

 99年の第6回映画祭から広報誌を作るスタッフに加わり、運営を陰で支える。近年は映画俳優や監督らゲストの対応が中心で、「(昨年のゲストの)宍戸錠さんは控え室でも気さくで気配りしてくれた」と喜ぶ。銀幕のスターのスクリーンとは違う一面に触れられるのも、映画祭の醍醐味(だいごみ)だ。

 あがた森魚監督の「オートバイ少女」の撮影にエキストラとしてかかわった市内の主婦河村佳世子さん(46)は、この映画や矢口史靖監督の「裸足のピクニック」などが上映された第1回映画祭に夫と一緒に出掛けた。「会場にはエキストラ関係の顔見知りも多く、親近感の沸く雰囲気だった」と振り返る。残念ながら出演シーンはカットされていたが、思い出に残るイベントとなった。

 その後10年以上、夫の仕事の都合で函館を離れていたが、ニュースなどで映画祭のことを聞く度に思いをはせていた。昨春、函館に戻ったのを機に、市民応援団のサポーターズに登録。今年はもちろん、足を運ぶつもりだ。

 寺澤さんにとって最も思い出深い出来事は、02年の「オー・ド・ヴィ」(篠原哲雄監督)の撮影協力だ。「毎日仕事の後に夜明けまで手伝い、炊き出ししたり掃除したり…。よく体を壊さなかったなと思う」と笑い、「映画祭に出合ったからいろいろな経験ができた。映画をただ観る立場から、ほんの一端でも映画制作に携われて良かった」という。映画祭準備も撮影協力もボランティア。「映画が好きだから苦にならない。楽しいから」とさらり。

 映画祭を支えるのは、市民やスタッフら多くの“映画ファン”の存在だ。(新目七恵)



◎科学の楽しさ 知る喜び発信…「サイエンス・サポート函館」発足

 公立はこだて未来大など函館市内の大学や団体、市などの連携組織「サイエンス・サポート函館」(代表・美馬のゆり未来大教授)が発足した。来年8月に市内で開催する祭典「はこだて国際科学祭2009」を中心に各種活動を展開し、科学の楽しさを伝え、ネットワークを広げようという試みだ。13日午前10時からは函館市中央図書館(五稜郭町26)で、活動をPRするキックオフフォーラムを開く。

 この取り組みは函館市が独立行政法人・科学技術振興機構(本部・東京、JST)の支援事業として提案、採択された。具体的には(1)はこだて国際科学祭(2)はこだて科学網(3)はこだて科学寺子屋?の3つのプロジェクトを展開する。

 メーンとなる国際科学祭は市内3会場で開く計画で、アメリカのアーティストが制作した地球儀作品の展示や天文学、スポーツ分野の最先端研究者を招いた講演会、一般参加型の「科学屋台」など、盛りだくさんの内容で企画している。

 このほか一般、学生向けの集中講座を開いて人材育成を図ったり、関連講座の情報をまとめてインターネット上で専用サイトを運営するなど、さまざまな角度から科学の魅力を広く発信する。

 事務局となるコーディネーター役を務めるのは、未来大特別研究員の金森晶作さん(29)。北大環境科学院で博士号を取得し、雪氷学などが専門の研究者だ。「科学技術は医療や食品、防災など身の回りに関係する。もっと身近なこととしてとらえるきっかけになれば」と説明。「科学の本質は、知らないことが分かったり、気付いたりする楽しさにある。まずは科学嫌いの人も楽しめるようにし、関心を高めていきい」と意気込みを語る。

 13日のフォーラムではスタッフが活動趣旨を紹介した後、市地域交流まちづくりセンターの丸藤競センター長や市立函館高校の渡辺儀輝教諭らがパネリストとなり、パネルディスカッションを行う。同会場では函館高専の体験型発電機械なども展示される。

 入場無料。問い合わせは金森さんTEL0138・34・6527。専用サイトはhttp://www.sciencefestival.jp。(新目七恵)



◎来月13日から「みそぎ祭り」…ポスターも完成

【木古内】木古内町出身の若者4人が行修者として2日間、水ごりを繰り返して身を清め、3日目に御神体を抱えながら津軽海峡へ飛び込んで地域安全や豊作、豊漁を願う「木古内寒中みそぎ祭り《の日程が来年1月13―15日と決まった。木古内町木古内の佐女川(さめがわ)神社を拠点に開催され、期間中はみそぎ行列や和太鼓のステージ、もちまき、特産品販売会などのみそぎフェスティバル(実行委主催)も行われる。行修者が海へ入る瞬間の写真を使ったポスター(A1判)も完成した。

 寒中みそぎは同神社で1831(天保2)年から続く神事で、今度が179回目。伝統神事と各種イベントを連携させる真冬の祭典は、見る者に熱気を伝える。

 伝説によると、1831年の1月15日早朝、同神社の神社守の夢枕に「御神体を清めよ《とお告げがあり、近くの佐女川の氷を砕き、その冷水を浴び心身の汚れをはらい、4つの御神体を抱いて海に飛び込んだとされる。その時に白い着物姿の女性が現れ、以来豊漁豊作が続き、地域が栄えたとの言い伝えが残る。

 毎年、高校生から20代前半の男性が行修者を務め、神事を継承。13日夕の参篭(さんろう)祭で幕を開け、4人が鍛錬に入ることを神殿に報告し、境内で水ごりを繰り返す。みそぎ行列は14日午後5時45分からで、町国保病院横の「みそぎ広場《からJR木古内駅、同神社までの雪道を幻想的なちょうちんの明かりで歩く。同6時には境内特設ステージで、町民有志がみそぎ太鼓などの郷土芸能を披露する。

 15日は午前11時から同広場に木古内の特産を並べるグルメコーナーを開設。和牛やナガイモ、長ネギなどを入れた郷土鍋料理の提供やもちまき大会、福引抽選会を行う。正午には国道228号沿いの鳥居がある「みそぎ浜《で、御神体を抱えた行修者が海へ飛び込む海中みそぎが行われ、全日程を終える。行修者は12月10日の同神社氏子会議で決まる。

 問い合わせは木古内観光協会рO1392・2・2046。(田中陽介)



◎函館市議会定例会が開会

 函館市議会の第4回定例会が4日開会し、会期を22日までの19日間と決めた。西尾正範市長は緊急福祉灯油購入助成事業費を含む本年度の一般会計補正予算案や、市営住宅条例の一部改正案、公的施設の指定管理者関連などの議案96件を提出し、各部局長が提案理由を説明した。

 福祉灯油は昨年度に続いての実施で、低所得者などを対象に1世帯当たり5000円を支給する。対象世帯数は1万3000世帯を見込む。市の仕事始めとなる来年1月6日にも支給を始め、2月末まで期間を設ける考え。一般会計全体では7166万円を追加し、総額1234億6091万円とする。

 市営住宅条例は入居者とその周辺住民の生活の安全を確保するため、暴力団員の市営住宅への入居などを制限。来年1月1日の施行を目指す。指定管理者の指定は市産学官交流プラザなど96カ所の施設で、いずれも指定期間は来年4月1日から3年間。

 質疑は9日に1人、一般質問は9、10、11、12、15日の5日間で24人が予定。各常任委員会は16、17日に付託議案を審議し、22日の本会議で各委員長が結果を報告して採決する。 (浜田孝輔)



◎シネマアイリス 1000本目は「おくりびと」 あすから上映

 函館市本町22の市民映画館「シネマアイリス」(菅原和博代表)の1000本目の上映作品は、6日から同館で上映される邦画「おくりびと」(2008年、滝田洋二郎監督)となった。同館は1000本上映記念として、12日の入場料を1000円とする。

 同館では1996年の開館から数え、1000本目の上映日を当てる予想クイズを9?10月に掛けて実施。応募総数209通のうち、正解者は23人だった。このうち当選した10人にアイリス招待券、11人に映画グッズお楽しみ袋をプレゼント。応募多数のため、外れた人から抽選で18人にもミニお楽しみ袋を贈呈することにした。

 節目となる1000本目の「おくりびと」は、遺体を棺に納める「納棺」の仕事をすることになった男性の物語。本木雅弘さん、広末涼子さんらが出演し、第32回モントリオール世界映画祭でグランプリを受賞した話題作だ。入場料1000円となる12日は「おくりびと」のほか、「宿命」「コドモのコドモ」「闇の子供たち」「イキガミ」が上映される。

 菅原代表は「1日だけだが、感謝の気持ちを込めて企画した。ぜひこの機会にご来館を」とPRしている。

 上映時間などの問い合わせは同館?0138・31・6761。(新目七恵)