2008年12月8日(月)掲載

◎おぼろ昆布作り最盛期

 函館市内のコンブ加工店で正月用のおぼろ昆布作りが最盛期を迎えている。コンブの表面を薄く削ってできるおぼろはうどんや吸い物などさまざまな料理の食材に使われる。歳暮用のほかに、雑煮におぼろを入れる風習がある長野県からの需要が多いことから市内の各店はこの時期が繁忙期になる。

 同県のスーパーから正月用の注文を受けた「納屋商店」(新川町28、納屋英雄社長)では、今月26日から順次始まる出荷に間に合うよう、4人の職人が急ピッチで作業を進める。函館沿岸で採れたガゴメ(トロロコンブの仲間)の表皮を専用の包丁で削り、ふんわりと透けるような薄さのおぼろを作り出す。1日7、8時間削り続けても1人当たり5キロ前後の量にしかならない。

 職人の1人、鳥山一栄さん(47)は「正月用は10月から削り始めている。コンブは一つ一つ形や粘り具合が異なり、気温や湿度によっても削り方を考えなければならない。長年の経験や勘が物を言う仕事」と話す。

 おぼろ昆布は道外への出荷のほか、店頭でも販売している。納屋社長(60)は「おでんや鍋が食べたくなる寒い季節にコンブの需要が高まる。これからの季節に期待したい」と話していた。(鈴木 潤)



◎笑顔満開 ウシの舞…梅谷さん 干支の連だこ制作進む

 日本凧の会会員で、創作凧研究所「創作凧治工房」を主宰する函館市山の手3の梅谷利治さん(79)は、来年の干支(えと)の丑(うし)の連だこの完成を目指し作業を進めている。干支の創作たこでウシを作るのは“3代目”。顔は笑顔で、獅子舞ならぬ「ウシ舞」をイメージしており、“12頭”を連ね大空を“乱舞”させる。元函館東高校美術教諭で創作たこ暦40年以上の梅谷さんは「教え子たちや市民の皆さんに、80歳を迎える自分はまだ燃えているところを見せたい」と意欲満々だ。

 梅谷さんは、干支の創作たこ作りを1976年の「辰(たつ)」から始めた。2001年から05年まで中断したが、現在も1月のたこ揚げを終えてからすぐに作業にかかる。「どのようにして後ろのたこに向けて風を逃がすか」をテーマに工夫を凝らす。

 今回はウシの顔の後方で、幅65センチ、高さ80センチの前足と後ろ足を作る際、ほとんどは竹ひごで合成紙の形を作ったが、下の部分だけはピアノ線を使った。この部分から後方に風が逃げるという。両足の間に側道と名づけた胴体部分をつけてH型にし、風の流れを整える。1頭の長さは約1メートル。「胴がなくてはかわいそうで、まさに連結立体と呼べるウシになった。7頭の連結は実験済みで、12頭でも空で跳ねてくれる」と話す。

 顔のデザインを考えるとき、24年前に作った「天牛一世」、12年前に作った同二世を見たが、両者は勇ましい顔つきで「孫の代は顔を変えたい」と、8月ごろに笑顔のウシのデッサンが完成。大きく開けた口はハート型。「ウシの笑顔を想像したら不気味で、愛らしくするのに苦労した」と振り返る。シルクスクリーン技法で兄弟分を作り、赤や緑などの色を付けた。だが、何か物足りなさを感じた。

 顔のイメージが完成したころ、北京五輪の開会式を見ていたとき、聖火台に中国伝統の「祥雲」という唐草模様のような絵柄があるのを見て獅子舞を思い付き「ウシ舞」の形作りに取り組んだ。唐草模様の人の足を両足部分に付け、後ろ足部分の裏面には尾をつけた。さらに現在は、顔の部分にビニールで前髪をつけている。「ウシに前髪はあるかどうかは不明だが、世界のどこにもないたこを作りたかった」と遊び心にあふれた創作の楽しさを語る。

 天牛3世は「笑福天牛」として完成する。「腹の底から笑い福を呼び、元気で平和な1年であってほしいと願い、ウシ舞を躍らせたい」。たこ揚げは来年1月5日の午前、同市内の緑の島(大町15)で行なう予定。(山崎純一)



◎「銀幕」に夢中の3日間…イルミナシオン映画祭閉幕

 函館山展望台クレモナホールなどで開催中の「函館港イルミナシオン映画祭2008」(実行委主催)は7日、11本の短編、長編作品などを上映し、閉幕した。映画関係者らが熱い思いを語るシンポジウムや女優の坂井真紀さんらによるトークショーも開かれ、参加者は映画の魅力に浸かる楽しいひとときを過ごした。

 函館市地域交流まちづくりセンター(末広町4)内の十字街シアターで開かれたシンポジウムでは、映画関係者が「映画祭ってなんだ!」のテーマで話し合った。シナリオ大賞審査員の河井信哉映画プロデューサーは「函館のロケーションで映像を撮る意識を再度大事にすべきでは」と課題を提起。篠原哲雄監督は「この街にしかない雰囲気があり、そこに触れると映画が作れる」と魅力を語り、林海象監督は「長く続けば函館の文化的プライドに育つはず」と可能性を述べた。札幌在住の長沼里奈監督の「道内の作家が目指せるような上映ブログラムがあれば」など、参加者からも活発な意見が出た。

 クレモナホールでの「ノン子36才(家事手伝い)」(08年)上映後、熊切和嘉監督と一緒に登場した主演の坂井さんは「自分にとって代表作と思える作品で上映してもらい幸せ。また観てほしい」と語った。会場は大勢の観客でほぼ満席となり、普段聞けない映画制作の裏話などを楽しんでいた。

 閉会式で米田哲平実行委員長は「ささやかに始めた映画祭だが、これまでにさまざまな人の協力があったと感謝したい。次回に向けて頑張りたい」と話し、来年の15周年に向けた決意を語った。(新目七恵)



◎“イカマイスター”目指し78人が認定試験に挑戦

 函館水産物マイスター養成協議会(藤原厚会長)主催の第2回「はこだてイカマイスター認定試験」が7日、北大函館キャンパス(函館市港町3)で開かれた。“イカ名人”を目指し、これまでに座学や解剖実習などを講習会に参加した一般市民や学生、料理人ら業界関係者ら計78人が受験した。

 「函館市の魚」に指定されているイカの生産、流通、調理法などに精通した「はこだてイカマイスター」を養成しようと、昨年に続き企画。前回(1月)に比べ、受験者数は100人余り減ったが、函館市内を中心に、遠くは神奈川県からの受講者もいた。

 問題は公式テキストからの出題だが、函館のイカの漁獲量と水揚げ額の組み合わせを選んだり、スルメイカの学名を問うたりと難問がずらり。札幌から受験した元学校教諭で調理士免許を持つ奥村馨さん(64)は「知識と調理はやっぱり違う。あらためてイカを見つめ直し、食の安全についても考えるいいきっかけになった」と満足げだった。

 合否は12日までに郵送で通知される。認定試験は1月18日にも行われる。(森健太郎)