2008年1月10日(木)掲載

◎企画 映画と私の物語…ガラスのジョニー編(1)運上一也・ゆき子さん夫妻
「皆さん大穴が好きでしょう。今回の穴は3番、3番が堅そうな気がするよ。さあ、思い切って3番から買いなさい…」

 軽妙な語り口が白壁の明るい場内に響く。いすに座り、新聞片手に思い思いにレースを考える常連客は、じっくりとその声に耳を傾ける。

 函館市内の運上一也さん(78)は、妻ゆき子さん(65)とともに今も市営函館競輪場(函館市金堀町)で働く現役の「予想屋」。この道約60年のベテランだ。1962年の函館競輪場での撮影の際、同じ予想屋を演じた宍戸錠さんに役柄のコツを教えた。

 「大きい声出して、ここぞという一本勝負に客を誘うんだよ」

 当時33歳だった運上さんは、せりふを練習する宍戸さんを見て思わずアドバイスした。宍戸さんは「真似はできないなぁ」と気さくに笑って答えながらも、すぐにコツをつかんだという。

 運上さんは29年、臼尻村(現・市内南茅部)で生まれた。戦中は日本海軍の輸送船などで働き、戦後の混乱がまだ尾を引いていた20歳のころ、訪れた本州の競輪場で予想屋の職業に出合う。

 独自に収集した選手の情報などをもとにレース結果を予想する職業。48年に自転車競技法が制定され、新しいプロスポーツとして登場した競輪は、福岡県の小倉競輪場をはじめ瞬く間に全国に広がった。当時は予想1回につき10円。参考にしようと客が大勢集まり、レース前には決まって予想屋の周囲に人だかりができた。

 「当時の通常の日当240円に比べ、1日のCホけは3000円。これはいい商売だと思った」

 早速先輩に弟子入り。ノウハウを学びながら全国各地の競輪場を回る中、地元函館での競輪場オープンを聞き、50年に帰郷して独立した。62年当時の函館競輪場の年間入場者数は12万人超に上り、函館の予想屋も20人いた。ライバルがしのぎを削る中、運上さんはレース解説の面白さで人気を集め、一時は予想待ちの客が100人いたこともあったという。

 「当時の通常の日当240円に比べ、1日のCホけは3000円。これはいい商売だと思った」

 ゆき子さんは、産まれたばかりの長男を抱いて撮影を見学した。「芦川いづみさんは若くてきれいな印象、(ジョーの情婦役の)南田洋子さんもしゃきっとして明るい感じで、どちらもすてきだった」と振り返る。

 今、道内の予想屋は運上さん夫婦のみ。予想料は1回100円。最近は年のせいでゆき子さんに主な仕事を任せているが、最終レースだけはマイク片手に自ら壇上に上る。「なじみ客が減って寂しいけど、今はこれが楽しみ」

 2003年に全面改装された函館競輪場に、撮影当時の面影はない。2人は「最近始めたナイター競輪は若いカップル客や家族連れに人気で、にぎわった昔を思い出す」と目を細める。

                   ■ □ ■

 「ギターを持った渡り鳥」(59年)、「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」(75年)、「居酒屋兆治」(83年)…。異国情緒あふれる街・函館は多くの映画人に愛され、さまざまな作品の舞台になった。街並みは変わっても、フィルムに刻まれた当時の風景や人の様子はそのまま残る。「三度の飯より映画が好き」という記者が、函館でロケした映画をめぐり、撮影にかかわった地元住民や当時を知る人を訪ねた。第1弾は「硝子のジョニー」。(新目七恵)


 「宍戸錠さんは気さくで、たいしたいい男だと感じた」と振り返る運上さん(左)。最終レースでは妻ゆき子さんとともにボードの前に立ち、結果を予想する

 
  ◎あらすじ
 「硝子のジョニー 野獣のように見えて」(1962年、モノクロ107分、日活。蔵原惟繕監督、南田洋子、平田大三郎など共演)

 昆布採りをしながら家族と暮らす娘・深沢みふね(aウ川いづみ)は、貧困から人買いの秋本孝二(アイ・ジョージ)に売られるが逃亡。競輪の予想屋をしながら流浪するジョー(宍戸錠)と出会い、ほかに頼る人のないままついて行く。みふねを追う秋本とジョーの間で奪い合いが始まる中、ジョーは育てている若い競輪選手に金を用立てるためみふねを売り飛ばしてしまう。1人になったみふねは自分の故郷の浜にたどり着くが、廃屋ばかりで家族の姿もない。そこへ、競輪選手に裏切られたジョーと、昔の女性に裏切られた秋本がみふねを探しにくるが…。

 ほぼ全編、函館市内でロケされ、地元の競輪客や住民も多数エキストラ出演した。昨年12月、函館市内で開催された「第14回函館港イルミナシオン映画祭」(実行委主催)に上映ゲストとして招かれた宍戸さんは、予想屋のジョーが「外れ車券じゃあ鼻もかめねぇよ!」と客集めに口上するセリフを自ら考案したエピソードを明かし、「皆協力してくれた」などと思い出を語った。


◎92.6 昨年比0.6ポイントダウン…渡島11市町の07年ラスパイレス指数
 道が公表した2007年4月1日現在の道内市町村職員(一般行政職)給与の実態調査結果によると、地方公務員の給与水準を示すラスパイレス指数の渡島管内11市町の平均値は92・6で、前年(93・2)より0・6ポイントダウンした。また、札幌市を除く道内市町村平均(95・1)を2・5ポイント下回った。渡島支庁によると、管内では財政難から独自の給与削減策に取り組む自治体もあり、給与抑制傾向は今後も続くとみられる。

 数値が最も高かったのは森町の99・3で前年比0・1ポイント減で、函館市の97・2(前年比0・1増)、七飯町の95・6(同0・6増)と続く。北斗市は94・7(同1・0ポイント減)だった。一方、数値が低かったのは松前町の86・3(同0・2ポイント増)。

 管内11市町中、函館市を含む5市町は前年を上回り、北斗市など6市町は下回った。増加幅が最も大きかったのは鹿部町で1・4ポイント(ラスパイレス指数90・7)、次いで七飯町だった。2005年の合併後、独自の給与削減に取り組んでいるため、国に準じる給与構造改革を管内で唯一導入していない八雲町は、前年比の減少幅が4・3ポイントと最も大きく、同指数は92・7だった。

 管内では八雲のほか松前、福島、木古内、長万部の5町が一般職対象の独自給与削減策を実施している。同支庁では「地方の自治体では職員の階層変動が指数の増減に影響することも多いため単純比較はできないが、厳しい財政状況から職員の給与抑制に取り組む自治体は全道的に多い」(地域振興部地域政策課)と話している。

 一方、道は前年比0・1ポイント減の90・5。札幌市は99・5(昨年度比0・9ポイント増)、財政再建団体の夕張市は68・0(同21・1ポイント減)だった。(新目七恵)


◎水揚げ額は前年並みに…桧山スケトウダラ漁
 【江差】桧山支庁水産課のまとめによると、昨年11月の解禁以降、深刻な不漁が続いていた檜山沿岸海域のスケトウダラ漁は、同12月後半から漁模様がやや回復し、12月末現在の累計漁獲量は4799トン(前年同期比2・8%減)、水揚げ額は10億7149万円(同0・3%増)と、過去20年間で最低だった前年度とほぼ同水準になった。

 11月末までの漁獲量は、最低水準だった前年度を3割程度下回る深刻な不漁だった。漁業関係者は「12月後半から年末にかけて漁獲が伸びた。漁期終了までには前年度をやや上回る程度の水揚げを確保できるのではないか」と話している。

 ひやま漁協(乙部町)の支所別にみると、管内最多の水揚げがある乙部は2349トン(同1・6%減)、熊石は1138トン(同3・9%減)とほぼ前年並みの漁獲。上ノ国は394トン(同49・7%増)と大きく伸ばしたが、江差は767トン(同24・7%減)と振るわなかった。

 水揚げ額は、12月下旬の高値に支えられ、乙部5億4214万円(同1・1%増)、熊石2億5322万円(同0・9%増)と微増。上ノ国は1億2101万円(同56・4%増)だった。江差は1億5512万円(同23・9%減)と明暗が分かれた。

 12月下旬の平均単価は1キロ当たり320円(同24・7増)で高値の状態が続いた。(松浦 純)


◎110番 いたずら電話増加「やめて」…道警函本
 道警函館方面本部が昨年1年間に受理した110番通報の件数は3万3583件で、一昨年より1734件減少した。ただ、電話番号の照会など、急を要しない110番通報が依然として多く、同本部地域課通信指令室は適正利用を強く呼び掛けている。きょう10日は「110番の日」。(水沼幸三)

 通報内容の内訳は、交通事故など交通関係が最多の6908件(前年比710件減)で、全体の約2割を占めた。窃盗被害などの刑法犯関係は前年比60件増の2447件。けんかや口論の通報は1599件だった。

 110番の「いたずら電話」は5594件に上り、前年よりも1889件増加した。同室によると、酔っぱらいによる意味不明な苦情、子どもとみられる無言電話などが多いという。同室では「緊急を要する事件への対処が遅くなりかねない。絶対にやめて欲しい」としている。

 一昨年前まで増加傾向にあった暴走族の騒音や路上駐車に関する苦情、交通事故などによるトラブルの問い合わせは、前年に比べ2007件減少した。同室はこの要因として▽「警察相談専用電話『〓黷X110』が浸透した▽暴走族取り締まりの強化で暴走行為が減少した▽駐車監視員制度の施行で、市民の駐車モラルが向上した―などを挙げている。

 同室で110番を受理する同課指令第2係の石川能宏係長は「適正な利用を心掛け、事件、事故を見た時は戸惑わずに通報して欲しい」と呼び掛けている。警察電話相談は、TEL#9110。午前8時半―午後5時半は専門の警察官2人が相談に応じており、夜間は同本部の当直が対応している。


◎函館真冬日 市民ぶるっ…ことし初
 9日の本道は気圧の谷が通過し、道南では午後3時までの最低気温が函館市で氷点下9度、北斗市同13・1度、厚沢部町鶉同15・2と冷え込んだ。雪も断続的に降り、路面は雪で覆われ滑りやすい状態となった。

 函館市の日中の最高気温は氷点下1・3度。ことしに入って真冬日はなかったため、市民にとっては厳しい寒さとなった。同市東川町の主婦(55)は「いよいよ冬も本格化。ことしは暖房代節約のため、家中でいつもより2枚服を多く着ている」と話していた。

 函館海洋気象台によると、10日は冬型の気圧配置が強まり、道南の天気は曇り時々雪で吹雪になる所もある。渡島地方の最低気温は氷点下10度となる見込み。(山崎純一)


◎ふっくりんこ弁当コンテスト参加者募集
 道南産米「ふっくりんこ」の生産者団体「函館育ち ふっくりんこ蔵部」(斉藤秀樹部会長)は、ふっくりんこを使ったオリジナル弁当を募集する「函館育ち ふっくりんこ弁当コンテスト」を行っている。応募締め切りは3月31日。

 地元の食材を使った弁当作りを楽しみ、食育の向上や「食」を通じた家庭でのコミュニケーション促進を図るのが狙い。

 対象は道南在住者。応募条件は、ふっくりんこ、道産食材のおかず1品以上を使用すること。弁当の全体がわかる写真に使用食材の説明、弁当へのこだわりなどを書き添え、事務局(新函館農協米穀課 北斗市村内545ノ1)に郵送するか電子メール(info@fukkurinko.jp)で申し込む。携帯電話での応募も可。

 抽選で3人にふっくりんこ5キロ、50人にふっくりんこのオリジナルグッズをプレゼント。当選者はふっくりんこ蔵部のホームページ上で発表する。事務局は「ふっくりんこを使ったご飯を楽しみ、気軽に応募して欲しい」と話している。

 問い合わせは事務局TEL0138・84・8737。