2008年1月12日(土)掲載

◎【映画企画(3)・硝子のジョニー】八雲町黒岩住民
 「おれ映った!」「あ、あの子だ!」

 1962年、八雲町黒岩の映画館は、日活映画「硝子のジョニー 野獣のように見えて」の上映に詰め掛けた200人余の地域住民で超満員になった。そこは、スクリーンを食い入るように見詰める子供や大人たちの熱気に包まれていた。

 同町に住む高橋清さん(73)ら黒岩町内会(佐々木忠義会長)の会員4人は、町内での撮影風景や封切りの時の様子を今でも鮮明に覚えている。

 宮川秀雄さん(83)は「(撮影のため)海に入ってずぶ濡れになったaウ川いづみさんが、トイレを借りに商店を訪れたことが町の話題になった」と話し、「黒岩駅での撮影は人だかりができ、子供たちはカメラに映らないように、隠れて見ていた」と振り返る。福田伸一さん(61)は「撮影時は風が冷たくて寒かったはず。休憩中、車の中で震えながらトウキビを食べる宍戸錠さんを見掛けたよ」とし、「弟が宍戸さんの腕にしがみついたんだ」と笑う。思い出は尽きない。

 高橋さんと宮川さん、福田さん、さらに大堀貞雄さん(73)の4人は生まれも育ちも黒岩で、撮影当時は黒岩郵便局に勤務していた同僚。それぞれ、郵便配達の仕事中に見掛けたり、自宅から撮影現場を眺めたりした記憶が、色あせずに残っている。

 昭和30年代の黒岩地域は、国内有数の砂鉄採掘業やスケトウダラ、イワシなどの漁業で盛況をきわめた。他地域から出稼ぎに来る砂鉄の採取人や漁業者にとっても、映画は唯一の娯楽だった。そして、仕事帰りにデートや仲間と立ち寄る息抜きの場所だった。黒岩にも2つの劇場があり、連日にぎわったという。

 そんな時代、映画の撮影は黒岩地域の住民にとって「一生に1度あるかないか」の“大事件”だった。撮影は数日にわたり、Gサ(うわさ)が広まって見物人も増えた。

 「『硝子のジョニー』の封切りは人で人ですごかった。なにせ近所の子が参加したり、黒岩がスクリーンに登場したんだからね」と高橋さん。映画が始まると、ござやむしろに座った観客から「ワー」という歓声が上がった。

 高橋さんは当時の黒岩中学校卒業後、同郵便局に就職。配達中に吹雪で山中の道に迷ったり、訪問先で犬に足をかまれたり、さまざまな出来事があったが、他の仲間と同様に約40年間勤め上げた。

 現在、黒岩に当時のような人のにぎわいはない。海外からの鉄鉱石輸入の影響で52年を最後に砂鉄採取事業は廃止。時代の流れで劇場はなくなり、一時、1クラス40人を超えた黒岩小学校の全校生徒数は今、わずか11人に。

 「昔は大人も子供も多く、若い人も自然と集まる地域だった…」。4人の表情が少し寂しげに見えた。 (新目七恵)


◎来月、大沼に湖上カフェ開設
 【七飯】湖上のカフェにようこそ―。七飯町の大沼の湖面が凍結する2月、湖上に季節限定のカフェ「青空のカフェ*星空のカフェ」がお目見えすることになった。冬の大沼の魅力を存分に味わってもらおうという初の試み。設置期間(1―17日)中は、共通チケットで湖畔のカフェレストラン「ターブル・ドゥ・リバージュ」(大沼町141)の軽食を味わい、メニューに並ぶワカサギ釣りや氷上そりツアーなどの各種体験事業を楽しむことができる。

 オリオン座をはじめ大沼に瞬く満天の星と、澄んだ青い空を楽しんでもらおうと、大沼体験観光づくり実行委員会(渡辺邦浩委員長)の青年会員3人が中心となって昨年10月から企画した。

 湖上には半透明のプラスチック素材を円筒状に変形させた空間「シェル」3基と、氷で作ったシェル2基を製作。内部には氷で作ったテーブルといすを配置し、夜間はろうそくの明かりが幻想的にゆらめく。

 また、このカフェは既存の体験事業の実施個所へと移動する際、“拠点”としての役目も担う。利用者は湖上を歩いたり、そりに乗ったりして移動。近隣の飲食店やホテルなどで販売される共通チケットでワカサギ釣りやそりツアー、スノーシューの散策などを楽しむことができる。

 リバージュを経営している源五郎の社長で、今回の取り組みを中心となって進める林賢三さん(37)は「大沼にあるアクティビティ(体験活動)を知るきっかけづくりとなれば。気軽に利用し、楽しんでほしい」とPR。同イベントに合わせ近くの湖月橋もライトアップし、冬の大沼の魅力づくりを後押しする。

 問い合わせは実行委事務局(大沼国際交流プラザ内)TEL0138・67・2170。 (笠原郁実)


◎洞爺湖サミットに向け道南から温暖化防止をアピール
 7月に開かれる北海道洞爺湖サミット(G8サミット)に向け、環境問題に取り組むNPO法人(特定非営利活動法人)「南北海道自然エネルギープロジェクト」(ピーター・ハウレット代表)が、2月に砂文字によるサンドメッセージの制作や講演会を企画している。多くの市民の参加を募り、道南からも地球温暖化防止をアピールする考えだ。(宮木佳奈美)

 温暖化の原因とみられる二酸化炭素など温室効果ガスの削減を目指す「京都議定書」の発効(2005年2月16日)を機に、ハウレット代表が顧問を務める函館ラ・サール高校環境問題研究会の生徒が、発効記念日に合わせて市内湯川町の砂浜でサンドメッセージを制作している。

 ことしはG8を意識したサンドメッセージとし、一般市民にも参加を呼び掛けて実施する。11日に函館市内で開かれた同NPOの運営委員会で、砂文字でつくるメッセージを「G8 2020」に決めた。2020年に国内全電力の20%を太陽光など自然エネルギーに転換することを目標にした「自然エネルギー20/20キャンペーン」(委員会主催)を、G8関係者にPRするのが狙い。

 講演会は2月27日に開催し、テーマは「G8環境サミットに向けてわたしたちにできること」に決定。同キャンペーン事務局(東京)の飯田哲也さんの基調講演、函館の市民団体の活動紹介を通じて、個々にできる温暖化防止の取り組みを考える。会場で市内在住の木版画家、佐藤国男さんデザインの同NPOオリジナルTシャツやマイバッグを販売することも検討中だ。

 同NPOは「多くの市民に参加してもらい、一緒に温暖化防止を訴えたい」と話している。


◎水道凍結に気を付けて
 強い寒気の影響で連日厳しい冷え込みが続いている中、函館市水道局は水道凍結防止のため、水抜きの習慣化を呼び掛けている。水道の凍結や破損は、最高気温が氷点下となる真冬日が数日続き、地中の温度が上がりにくい状態になると発生しやすい。例年1―2月に集中する傾向があり、同局水道課は「就寝前や長期間留守にする場合は水抜きをしてほしい」と話している。(今井正一)

 同課によると、水道凍結に関する問い合わせ件数は、暖冬だった2006年度(06年12月―翌07年3月)は4件しかなかったが、最低気温が氷点下10度以下となり、今季一番の冷え込みを記録した10日には、戸井支所の2件を含めて計20件が寄せられた。まだ問い合わせが殺到している状況にはないものの、2000年度には2300件を超えたという記録もある。

 水抜きの方法は、水を出した状態で、電動式の栓は電源を入れ、スイッチを閉じ、手動式の場合はハンドルを右に止まるまで十分に回す。水道が凍結する前に、水抜き栓が作動するか確認しておくことも大切だ。

 万が一、凍結させてしまった場合は(1)蛇口を開放する(2)蛇口や給水管をタオルなどで巻く(3)全体が暖まるようにお湯を少しずつかけて解氷する―の手順で解氷できる場合もある。ただ、「熱湯をかけると破裂する恐れがある」(同課)としている。

 自分で解氷できない場合は、市の指定事業者が有料で作業に当たる。料金の目安は8000円程度だが、凍結の状況や作業内容により料金が変わるため、依頼前に確認する必要があるという。
 同課は「最近の住宅は断熱技術の向上で、以前よりは凍結しにくくはなっているが、地面に雪が少ない状態で冷え込みが続くと水道は凍結しやすくなる。日々の気温変化にも注意をしてほしい」としている。

 最寄りの指定業者に関する問い合わせは、同課水道維持係TEL0138・27・8753。夜間、休日は水道修繕センターTEL同・62・5511(24時間対応)。旧4町村は各支所へ。


◎函館商工会議所、新副会頭に松本栄一氏
 函館商工会議所(高野洋蔵会頭)は11日、函館国際ホテル(函館市大手町5)で第3回臨時議員総会を開き、新たな副会頭として、ホンダカーズ南北海道社長の松本栄一氏(67)を選任した。

 松本氏は恵山町(現函館市)出身で、1962年に函館商科短大(現函館短大)を卒業後、北海道ホンダモータース(札幌)に入社。65年10月にホンダメイト函館、95年7月にホンダベルノ新函館を設立、2007年1月には2社を合併し、社長に就いた。同会議所では、82年10月に1号議員、常議員、97年10月に2号議員に就任した。

 松本氏は「年を追うごとに地域経済が厳しさを増す中、高野会頭の手足になって現状を打開していきたい」と抱負を述べた。

 同会議所の副会頭は、昨年11月に4人から3人となり、同月下旬には魚長食品社長だった柳沢勝氏が死去し、エスイーシー社長の沼崎弥太郎氏(78)、森川組社長の森川基嗣氏(61)の2人体制になっていた。 (浜田孝輔)


◎揺れる銭湯(下)存亡かけ知恵絞る
 時代の流れと施設の多様化などで苦境に立たされている中小銭湯業界。さらに原油高騰で経営状況は悪化の一途をたどっている。これまでは余り活発な動きを取ってこなかった函館浴場協同組合(長南武次理事長)も、この危機を一致団結して乗り切ろうと、さまざまなアイデアを絞っている。

 まず燃料となる重油の協同購入を開始した。全国的に見ても組合として協同購入を実施しているところは珍しく、1?「当たりわずか1円前後だが、着実な効果を上げている。

 また、数年前から偶数月の第2土曜日を「子供無料入浴デー」として小学6年生以下の子どもと、1歳未満の乳児を連れた保護者1人を無料にするイベントを始めた。長南理事長は「銭湯を利用した経験がない子どもたちに、大浴場でのマナーを知ってほしい」と話す。偶数月の26日(ふろの日)では4月に「レモン湯」、6月に「菩提樹湯」、8月に「ラベンダー湯」、10月に「桂皮湯」、2月に「檜(ひのき)湯」を実施し好評を得ている。

 長南理事長は「経費高騰の中、入浴料を値上げしたい気持ちはあるが、逆にお客さんが離れてしまう心配がある。今は知恵を絞って、中小の銭湯が力を合わせて頑張っていかなければならない時期」と話す。

 もちろん、各銭湯でも独自の取り組みで客足確保に取り組んでいる。花園温泉(函館市花園町40)は、大型浴槽と湯量豊富なかけ流しの天然温泉が特徴だ。笠井トキ代表(72)は「とにかく清潔で気持ちのいいお湯につかってもらうことを第一に考えている。毎日必要な湯量を確保し、温度管理を徹底するため、午前3時ごろまで作業を行っている」という。

 以前は市内近郊からも多くの常連が来てにぎわったが、スーパー銭湯や周辺自治体の公営施設が増えたことで客足はかなり遠のいた。それでも「花園温泉を愛してくれる人が一人でもいる限り営業を続けていきたい」と意気込んでいる。

 また、長南理事長が経営する桐の湯(同市松陰町10)は、サウナ、ラジウム、打たせ湯などスーパー銭湯にも引けを取らない7種類の浴槽を用意している。今月から試験的にスタンプカードもスタートさせた。15回の入浴で1回分を無料にする予定で、長南理事長は「評判がよければ組合全体にも広めていきたい。人々の憩いの場としての銭湯文化の灯を消さないように、今後も知恵を出し合って新しい挑戦を続けていきたい」と力を込める。 (小川俊之)