2008年1月13日(日)掲載

◎【映画企画(4)・硝子のジョニー】高橋さん
 「撮影現場はけっこうな人だかり。物珍しさもあって、野次馬が大勢集まっていた」

 函館市内で競輪専門新聞「オール競輪」を発行するオール競輪新聞社社長の高橋信彦さん(66)は、1962年の日活映画「硝子のジョニー 野獣のように見えて」の撮影当時は20歳だった。初代経営者で父の故・忍さんを手伝い、ガリ版で刷った新聞を場内で販売している最中に、市営函館競輪場(函館市金堀町)での撮影を見学した。

 小林旭主演の「渡り鳥シリーズ」など日活映画のファンだった高橋さん。人混みをかき分け、宍戸錠さんに思い切って声を掛けた。

 すると、宍戸さんは答えた。「(東京都の)調布の撮影所から競輪場は近いからね」

 「話せただけでうれしかった」。高橋さんは当時の興奮ぶりを語る。

 封切り後は早速、友人を連れて市内の函館日活劇場で鑑賞。普段働く競輪場や市内の各所がスクリーンに映し出されるたび、わくわくしたことを覚えている。

 撮影の翌年、高橋さんは都内の競輪学校に入学。プロの競輪選手としての道を歩み始める。新聞販売の手伝いの傍ら、当時現役選手だった吉村昭次郎さんを師と仰ぎ、函館から長万部町までの片道約100キロ以上を自転車で往復するなど、長距離訓練を重ねていた。

 「大学進学よりも自分の力で稼ぐ選手に魅力を感じた」と当時の心境を振り返る。

 3カ月の学校生活を経て、高橋さんは引退する40歳までの19年間、北海道所属の競輪選手として全国各地をめぐり、約500レースを走り抜けた。東京では、小林旭や赤木圭一郎などの日活スターを見ようと、仕事の合間を縫って撮影所を訪れたという。

 最も思い出に残る試合は30歳のころ、都内後楽園競輪場でのあるレース。通常、1レースにつき出場選手は9人だが、後楽園は12人。その分駆け引きは難しいのだが、この日は作戦がうまくいき見事に優勝した。観客の歓声に身が震えた。

 「選手には勝てば歓声、負けたら罵声(ばせい)が掛けられた。当時は今より観覧席が接近していて客との距離も近かった」。観客の熱狂ぶりと同じように、レースも激烈を極めた。激しいぶつかり合いから落車も多く、高橋さんも鎖骨骨折などのけがを負った。今でも体には5カ所の傷跡が残っている。

 現在は、同じく元競輪選手で、同新聞社専務の弟・満さん(58)とともに新聞発行を通じ、また、選手OBとしても函館の競輪事業を支えている。「(硝子のジョニーは)すごく懐かしい。今の競輪場で上映すれば良いファンサービスになるはず」と笑顔を見せた。 (新目七恵)


◎市埋文事業団がドイツ考古学研究所と学術提携
 縄文遺跡群の集中する函館市南茅部地区で発掘調査を手掛けるNPO法人(特定非営利活動法人)函館市埋蔵文化財事業団(佐藤一夫理事長)が、ドイツ考古学研究所(本部・ベルリン)と学術提携することが決まった。15日に同研究所本部で協定を締結し、職員らの相互派遣や情報交換などを通じて、世界に縄文文化の情報を発信していく。(宮木佳奈美)

 日本の考古学を学ぶため、2005年に南茅部地区で発掘作業を体験したドイツ人女子留学生モニカ・クノフさんの報告を受け、関心を持った同研究所が同NPOに対し、06年12月に文書で学術交流を提案してきた。協定には人的交流のほか、文献や報告書の交換、シンポジウムの共催などが盛り込まれ、今夏には同研究所が大学生を派遣してくる計画もあるという。

 同研究所は1829年に設立された伝統ある研究機関で、国内外に支部を持ち世界各地の遺跡発掘に携わる。一方、道内初の国宝「中空土偶」が出土し、国指定史跡「大船遺跡」などがある南茅部地区、青森県の三内丸山遺跡など北海道・北東北にまたがる縄文遺跡群は世界遺産への登録を目指している。

 縄文文化の研究を目的とする同研究所と縄文文化の認知度を高めたい同NPOの認識が一致し、提携に至った。佐藤理事長は「世界遺産の登録に向け、ドイツをはじめ世界に縄文遺跡を紹介できるいい機会になる」と期待している。

 協定締結のため、13日から佐藤理事長と阿部千春理事がドイツ入りし、今後の具体的な事業計画を協議するほか、阿部理事が現地の考古学者らに南茅部の縄文遺跡を紹介する。


◎第十八方面民生・児童委協 3年計画で支援学校など訪問
 社会福祉の増進を目指して活動する函館市第十八方面民生委員児童委員協議会(糸谷崇夫会長)の障害者部会(鈴木正克部会長)は、身体障害や知的障害を持つ児童、生徒らへの理解を深め、地域活動をさらに充実させようと、本年度から3年計画で、養護学校や支援学校などを訪問することを決めた。これまで老人福祉施設などは訪れているが、支援学校などを対象にするのは初の試み。鈴木部会長は「実態を知ることで、思いやりの心を持ちながら、地域相互の連携意識を高めていきたい」と話している。(小橋優子)

 同方面は美原、桔梗、石川町と近郊地区で、同部会には町会役員や元教職員、主婦ら8人が所属している。普段は各委員が担当する地域の児童や親、高齢者などの相談を受け、「地域で地域を守る」という意識で活動を展開している。

 今回の取り組みについて、鈴木部会長は「深刻な悩みを抱える住民も多くなり、委員の対応能力を向上することが必要になってきた。委員自らが学び、実感しながら知識を身に付けることが大切と考えた。同時に、そうした活動が障害児らの実態を把握することにもなる」と説明。地域ぐるみで障害児らを支える足掛かりにしたい考えだ。

 第1弾の活動として3月3日、道教大附属特別支援学校(松木貴司校長、児童57人)を訪問する。

 同校ではこれまで、同年代の児童との交流の機会はあったものの、異世代の地域住民が訪れ、施設を見学したり、校内生活の様子を視察するのは初めて。松木校長は「学校外では地域の手助けが必要。障害を持つ子を十分に理解し、地域で子どもを育むことの重要性を認識してもらえれば、卒業後に社会へ出ていく子どもたちにとっても心強い」とし、同部会の新たな試みに理解を示す。

 当日は施設見学のほか、例年ゲームや歌、ダンスを行っている「全校お楽しみ会」の様子も見てもらう予定。松木校長は「本校は知的障害と自閉症を併せ持つ児童がほとんど。環境の変化に弱い児童が多いので、(見学時には)十分な配慮が必要だが、あくまで日常のスタイルを見てほしい」と話す。事前に教職員と部会会員による障害児教育の研修会も計画しているという。

 鈴木部会長は「こうした訪問活動を生かし、今後の地域福祉活動に全力で貢献し、委員をはじめ地域住民一人一人が思いやりの心を持てるようにしていきたい」と話している。


◎きょうから「寒中みそぎ祭り」伊藤、新井田さん「みそぎばやしの舞」披露
 【木古内】13日から3日間、木古内町の佐女川(さめがわ)神社を拠点に開催される「寒中みそぎ祭り」はことしで178回を数え、冬の木古内を代表する一大イベントとなっている。町社会教育委員や着物着付けサークル講師などを務める伊藤明宰(あさ)さん(72)は、新井田記子さん(50)とともに、まちの歴史に誇りを持ちながら、今年も「みそぎばやしの舞」を披露する。

 伊藤さんは一度途絶えた「みそぎばやしの舞」を約20年前に復活させ、以後毎年、1月のみそぎ祭りと成人式、秋の町民文化祭のステージで演舞を披露してきた。「178年間続く歴史ある神事が生んだこの舞を後世に伝える責任が、いま木古内に住むわたしたちにはある」とし、「先人が築いた素晴らしい文化を絶やしてはいけない」と語る。

 舞の振り付けは、復活当時に函館市内の踊りの専門家から教わりビデオに録画。別当、稲荷、山の神、弁財天と各ご神体の舞があり、町内で活動するみそぎ太鼓のメンバーが打つ和太鼓の音色に合わせ、鈴や扇子を手に優雅に踊る。

 このほど中央公民館で行われた成人式で、伊藤さんと新井田さんは6人のみそぎ太鼓メンバーとステージに立ち、新成人の門出を祝福した。2人は「これからこの地域を支えていく若者に、古里の魅力を少しでも知ってもらえればうれしい。興味をもってもらいたい」と語り、後継者の登場を心待ちにしている。

 「みそぎばやしの舞」は寒中みそぎ祭り2日目の14日午後6時10分から、町木古内157の同神社境内で披露される。雨や雪が降ろうと、屋外のステージで舞うのが習わしだ。伊藤さんは「趣きあるこの舞を多くの来場者に見てもらいたい」としている。

 問い合わせは伊藤さんTEL01392・2・2369。 (田中陽介)


◎渡島管内の自主防災組織率平均44%
 地域防災の取り組みの1つ「自主防災組織」の渡島管内の組織率平均は44・0%で、全道平均(47・5%)より3・5低いことが、道のまとめで分かった。組織率は自治体間でも大きな差があり、渡島支庁は「『自分たちの地域は自分たちで守る』という連帯感を高めるためにも組織結成に協力を」と呼び掛けている。

 阪神・淡路大震災から17日で丸13年。国は同日を「防災とボランティアの日」、15―21日を「防災とボランティア週間」と定め、防災活動の啓発などを実施。自主防災組織(地域住民らの自主的な防災組織)は、災害対策基本法で市町村にその充実に努める責務があると定められている。組織率は、自治体の全世帯数における組織の加入世帯数の割合を示す。

 渡島支庁によると、2007年度の組織率は北斗市と松前町が100%、木古内町が99・5%と高かった一方、長万部町(2・5%)など5町は10%未満にとどまった。近年の傾向を見ると、函館市は05年度34・4%、06年度36・7%、07年度38・9%と年々増加。八雲町、福島町なども微増傾向にはあるが、自治体間の開きに大きな変化はない。

 同支庁では「自治体主催のまちづくり講座や町内会単位で防災活動に取り組んでいる場合もあり、組織率の低さが地域防災力の低さに直結はしない」としながらも、「実際の震災では、周辺住民が救助に当たるケースも多い。組織を設置することで日ごろから顔の見える関係ができ、防災意識向上につながる」(地域振興部地域政策課)と話している。 (新目七恵)


◎カール・レイモン工場見学&料理体験ツアー
 函館市鈴蘭丘町3の函館カール・レイモン(島倉情憲社長)で12日、小学生とその保護者を対象にした工場見学・料理体験会が開かれた。参加者は、レイモン氏が函館に伝えた功績を学んだほか、ソーセージ作りにも励み、その歴史の重みを肌で感じ取っていた。

 同市内や近郊でスーパーマーケット25店舗を展開する魚長(同市西桔梗町、柳沢一弥社長)が、昨年から取り組む児童向けの食育活動の一環として、函館カール・レイモンに呼び掛けて初めて開催。事前に公募した親子10組が参加した。

 参加者は、レイモン氏が大正時代に本場ドイツの味を持ち込み、函館を代表する土産物・贈答品に定着させるまでの半生を振り返ったビデオを鑑賞。工場では、従業員の手によって順序良く進められていく作業風景に目を奪われていた。

 また、ソーセージ作りの体験では、専用の道具を用いて子羊の腸にミンチした道内産豚肉を注入。慣れない作業に悪戦苦闘しながらも、親子で力を合わせて形作り、ゆで上げたソーセージを早速試食した。

 山田佳奈さん(函館神山小6年)は「カール・レイモンさんの取り組んできたことが、とても勉強になった。ソーセージ作りには苦労したけど、とてもおいしい」と満足した表情を浮かべていた。 (浜田孝輔)