2008年1月5日(土)掲載

◎企画 臨海研 進む技術開発(2)…衛生情報から漁場予測 スペースフィッシュ
 アメリカの地球環境観測衛星2基のデータを北大が入手し、スペースフィッシュのコンピューターでデータ処理した情報を漁業者や研究機関に提供している。提供情報は魚種別、海域別の海面水温や植物プランクトン濃度、海流、過去の漁獲データなどで、ずばり「漁場」を予測する。

 2006年6月に有限責任事業組合(LLP)として設立。株式会社などと比べ設立が簡単で、個人と団体が出資してつくる。北大大学院水産科学研究院の斉藤誠一教授(54)=水産海洋学=と大手電機メーカー富士通など3社が出資した。北大の研究室に机を借り、専用の研究室はなかったため、臨海研究所は「賃料も安く、ぜひ入居したかった」(斉藤教授)という。

 昨年6月から水産海洋情報提供サービス「トレダス」を開始。衛星データを使った科学的分析と、漁業者の長年の勘をミックスし、利用者は漁場を予測し、目的地へ直行する。「漁場を探しながら漁をする従来のスタイルがなくなり、漁船の燃料費を節減し効率的な漁ができる」と斉藤教授は説明する。

 専用の情報受信端末を使用した「オンボードトレダス」と、インターネットで提供を受ける「ウェブトレダス」の2種類がある。情報を提供する海域と魚種は、日本海・東シナ海スルメイカ、黒潮・親潮海域サンマ、黒潮続流域ビンナガマグロ、黒潮・親潮海域カツオなど。これまでに道内のサンマ漁船や三重のカツオ漁船、長崎のまき網漁船、研究機関の調査船が契約した。

 利用者からは「5トンだったサンマの漁獲が15トンに増えた」「サンマ棒受け網漁は朝に出港し夜に漁をしていたが、昼食を取ってから出港し、燃料代が2割削減できた」などの声があるという。

 オンボードトレダスの利用料金は月額2万1000円。初期投資としてソフトを含めた機器類の購入に80万円ほどかかるが、斉藤教授は「情報量には自信がある。効率的で精度の高い漁をすることで採算が取れるのではないか」と語る。

 また、現在のサービスは比較的船が大きい沖合漁業向けで、1キロ四方単位で情報分析をしている。これを250メートル四方まで解析することで小型船舶の沿岸漁業にも対応できるよう、研究を進めている。

 斉藤教授は、教え子の高橋文宏さん(33)とともに技術開発に当たる。高橋さんは「大学が考えたシステムと現場の漁師さんが求める内容にミスマッチが多少あり、研究開発を通してその溝を埋めていきたい」と意欲を語る。

 「今後は漁場予測の精度を上げるとともに、赤潮などを防ぎ海洋環境を守るサービスにも取り組んでいきたい」と語る斉藤教授。持続可能な水産業の実現を目指す企業の理念が根底にある。 (高柳 謙)


◎12月平年並み 1年間は7番目に高い気温…昨年の気象情報
 函館海洋気象台は4日までに、管内の昨年12月と昨年1年間の気象状況をまとめた。昨年12月の函館は冬型の気圧配置が強まる日と低気圧が通過する日があったため寒暖の差が激しく、平均気温は0・2度で平年並みとなった。1年間の平均気温は9・8度で、これまでで7番目に高い記録となった。

 12月は5日、17日、31日ごろに冬型の気圧配置が強まった影響で雪が降り、気温も最低気温が氷点下5度を下回る冷え込みとなった。13、14日と29日は低気圧の影響で温かい空気が入り、29日は最高気温が9度になるなど、1カ月を通じた気温は平年並みとなった。

 日照時間は84・5時間で平年の93・0時間より少なかった。降水量は、29日に一日の降水量としては12月で最も多い60・5ミリを記録するなど、1カ月合計では127・0ミリとなり、平年の79・6ミリを大きく上回った。12月のそのほかの管内では、北斗で降水量が65ミリとなり、12月としては最も多かった。

 一方、年間日照時間は、函館は1760・2時間で平年並み。江差は1519・7時間で平年を上回った。年間降水量は、函館が1184・5?で平年より多く、江差は958?でこれまでで4番目に少なかった。(山崎純一)


◎本場売り上げ減続く…市営函館競輪
 市営函館競輪の函館本場(金堀町10)の売り上げ減少に、歯止めが掛からない。市競輪事業部のまとめでは、1998年度に43億1600万円あったが、本年度は8億3600万円。本年度の1日平均の売上額は1248万円で10年前の約5分の1、1人1日当たりの車券購買単価も1万717円で同3分の1近くまで落ち込んだ。地元の新規ファン開拓が課題となっている。

 市営競輪全体の売り上げは、必ずしも落ちていない。人気の高い「ふるさとダービー」(G2)が好調だった2001年度は318億7800万円を記録したが、この10年間はおおむね130―150億円台で推移。06年度に201億5700万円まで戻し、本年度は速報値で190億3400万円となっている。

 ただ、函館本場では年々減り続けている。1日平均の売り上げで見ると、全国で初めてナイター競輪を導入した1998年度は5994万円。2000年度は4251万円、04年度は2066万円、本年度は1248万円となった。

 また車券購買単価は、1998年度は3万5793円だったが同様に減少の一途。年度途中から3連単が導入された2002年度は2万6699円で3万円台を割り、04年度は1万7908円で2万円台割れ。本年度はかろうじて1万円台を維持した。

 売り上げや購買単価減少の背景には、景気の低迷やレジャーの多様化、当たれば大きい3連単の導入による小口買いの増加、ファンの高齢化による“投資額”の縮小など、さまざまな要因が指摘されている。全国的にも同じ傾向にあるが、函館も景気低迷が長引き、年金生活者のファンも多くなった。

 市営競輪の売り上げは電話投票と臨時場外が全体の9割以上を占め、本年度は売り上げ190億3400万円のうち、電話投票は54億4400万円、臨時場外が121億1700万円となっている。

 同部は「ファンの多い首都圏などに依存している形だが、地元ファンの新規開拓は長年の課題。魅力あるレースや効果的なPRなどを包括委託業者とともに取り組んでいきたい」と話している。 (高柳 謙)


◎企画 子年に思う(1) そばに魅せられて…函館八幡小校長 野呂 克己さん(59)
 練りばちに入れたそば粉に水を回し入れてから打ち上がるまでにかかる時間は20分弱。風味を逃さないようにと手早く打ち、そば切り包丁で太さ1・2ミリに均等に切り分ける。さっと湯がいて冷水でしめると、こしがありながらもみずみずしいそばの出来上がり。「今は趣味だが、退職後はそばサロンを開きたい」という目標を持つ。

 1948年、旧尻岸内村(函館市の恵山町)に生まれた。生徒思いだった中学校の担任にあこがれ、函館北高校を卒業後は教師を志して北海道教育大学函館校に進学。教員として道南各地の小学校に赴任し、現在は函館八幡小学校の校長を務める。少年野球の監督経験もあり、3人の教え子が甲子園に行ったことが自慢。「子どもを愛する教師として、全力投球したという自信はある」。

 そば打ちとの出会いは1997年、函館蛾眉野小(廃校)で。それまで好んで食べることはなかったが、「自分で作ったそばを食べて初めておいしいと感じた」。翌年赴任した函館北美原小時代は本やビデオなどで猛勉強。そばで有名な幌加内町(空知管内)や札幌などのそばイベントに何度も足を運び、実演でプロの技を見て学んだ。

 自宅にはそば打ち専用の部屋を整備。仲間の輪も広がり、2002年には勉強会「函館蕎麦(そば)打ち同好会『ふれあい』」を立ち上げ、週3回の活動を続ける。

 退職を意識した06年、「そばを食べながら語り合える『そばサロンを作りたい」と考えるようになった。店舗用地は07年に自宅近くに確保し、教員生活最後の年となる08年は、退職金の半分ほどをつぎ込んで店舗を建てる計画だ。「わたしのそば打ちの原点の『蛾眉野』を店名に入れたい」と張り切る。(小泉まや)

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 今年の干支(えと)「子」(ネズミ)年生まれの人は、明るく、几帳面で、順応性に優れているといわれる。全国で1069万人いる子年生まれの中で、道南で活躍する年男、年女を5人紹介します。