2008年1月6日(日)掲載

◎企画 臨海研 進む技術開発(3)…計量魚群探知機を小型化 カイジョーソニック
 超音波利用に特化し、気象観測システムや海象観測システム、風向風速計などの計量・計測機器を開発、製造する。

 戦後、超音波応用製品の開発・製造・販売を展開してきたカイジョー(東京)から2003年10月、超音波技術を継承し独立した。現在は東京本社のほか、全国9カ所に支店、営業所を展開する。

 臨海研究所では主に海洋器機の研究、開発を行っている。入居を決めたのは、国際水産・海洋都市構想を進める函館市とも連携が図られ、漁業を基幹産業とする周辺自治体の漁業者からの情報収集にも効果的、と考えたから。

 経済産業省が進める産学連携のプロジェクトの中で、小型計量魚群探知機の開発を進めている。魚群探知機は超音波を船底から海中に発射し、魚群からの微弱なエコー(音響)を可視化する原理。計量魚群探知機は、魚群の音響散乱強度が魚の大きさと数に比例することを応用、魚群からのエコー強度を積算し、これをターゲットストレングスと呼ばれる魚一匹当たりの散乱強度で割りだす。

 カイジョーソニックがすでに開発、製品化した計量魚群探知機は水産資源調査の活用に効果的で、水産庁にも納入された実績のある機器だが、計器が大きいため、沿岸漁業の用の小型漁船の搭載には不向きだった。

 小型化は漁業者のニーズに応えた開発で、特に船底に取り付ける円形の送受波器や、受信情報を解析する演算部を従来の製品よりも3分の1程度にする考えだ。

 また、海底が泥、砂、岩によって生息する魚をある程度把握することができることから、海底の地質判別のシステム化も目指す。魚種の把握、資源量がおおよそ分れば、魚の乱獲も避けることができ、計量魚群探知機の小型化は漁業者の利益へとつながっていく。

 同社水産機器部の倉都健治機器部長代理(46)は「計量魚群探知機が沿岸漁業者にも活用されれば、より効果的な漁ができ、生産増につながることが期待される。安くて新鮮な魚を食卓にも提供できるはず」と語る。

 今は月に数回、スタッフが漁船に乗り、海中のデータ収集や実証実験を行っている段階で、研究所に常駐する佐藤芽衣さん(25)は「始まったばかりで形は見えてきていないが、今行っている調査や実証実験の成果が実り、製品化されるのが楽しみ」と話す。来年度には試作品を完成させ、実際に漁船に登載して実証実験を進めていく予定で、生産体制の確立へとつなげていく。

 魚を捕るためだけでなく、分布地域や密度などを解析する魚群探知機の開発は、資源を管理し持続可能な水産業を構築していくことにも役割を発揮する。地道な取り組みが花開くことを確信しながら研究、開発に励んでいる。(鈴木 潤)


◎企画 子年に思う(2)頼られる存在に…五稜郭病院管理栄養士、千葉真由子さん(23)
 頼られる栄養士に―。昨年4月、新卒で函館五稜郭病院に採用され、管理栄養士として患者の栄養指導に当たっている。「調理に携わる仕事に就きたい」と考えたのがきっかけで、栄養士の資格が取れる札幌市内の大学に進学。資格を生かせる就職先には医療機関や学校、保健所などもあるが、在学中の実習で「最も自分が働く姿を想像できた」という医療機関を選んだ。

 「病院だと1人の患者さんと継続してかかわれるので、栄養指導の結果が目に見えやすい。やっぱり患者さんの状態が良くなるのが一番の喜び」と話す。同病院では本年度から栄養科の体制が変わり、入院予約の段階から退院まで一貫した形で患者の栄養状態を管理し、食事の相談などに応じている。

 管理栄養士は入院予約で訪れた患者に食事の面で不安に思っていることなどを聞き出し、食欲や嚥(えん)下機能の状態を把握。懸案事項を病棟に伝え、入院後、スムーズにその患者に合った食事を提供できるよう橋渡しする。

 入院中もしばしば病棟を訪ね、患者の経過を見ながら状態が悪化しないよう栄養面でサポートしていく。「何回か患者さんのもとを訪ねると頼りにしてもらえる。栄養士だと言いやすいこともあるようで、そっと胸の内を明かしてくれることもあり、苦情でもうれしい」という。

 1年目を振り返り、「新たな業務に手を広げる積極性がなかった」と自分に厳しい。2年目は日常業務のスピードを上げ、仕事の幅を広げることを目標にしている。「入院前に接した患者さんに『待ってたよ』と言われるよう、名ばかりのサポートではなく、安心して任せてもらえる栄養管理をしていきたい」。向上心は尽きない。(宮木佳奈美)


◎桧山管内 新成人は297人 成人式は夏が主流
 【江差】道教委のまとめによると、桧山管内7町の新成人該当者(1987年1月2日―88年1月1日生まれ、2007年11月現在)は、昨年より183人少ない297人(男性151人、女性146人)となっている。03年の該当者は628人だったため、5年間で半減した格好で、厳しい過疎化や少子高齢化の現状があらためて浮き彫りになった。

 管内で新成人該当者が最も多いのは江差町の64人。最も少ないのは厚沢部町の30人。

 7町で基準が異なる「成人式」の参加対象者は男性172人、女性184人の計356人。最多は江差町の77人、最少は奥尻町の26人となる。

 江差、上ノ国、厚沢部の3町は、学齢期の87年4月2日から88年4月1日までに生まれた人が成人式の参加対象。学齢期の先取りを採用している乙部、奥尻、今金、せたなの4町は88年4月2日から89年4月1日までに生まれた人で、「平成生まれ」も初めて対象になった。

 また、7町のうち1月の「成人の日」に合わせて成人式を行うのは、江差、厚沢部両町だけ。上ノ国、乙部、奥尻、せたな、今金の5町は町主催の成人式を、お盆の帰省シーズンに合わせた8月に開催しており、管内では“真夏の成人式”が主流として定着している。

 江差町の成人式は13日午後1時から、町文化会館大ホールで行われる。(松浦 純)


◎初競り威勢良く
 水産物や青果を扱う函館市内の2つの市場で5日、初競りが行われ、関係者が新たな年の活況を祈願した。夜明け前から場内に新鮮な生産物が運び込まれ、威勢のよい掛け声とともに1年のスタートを切った。

  ○…市中央卸売市場(西桔梗町589)では午前6時45分から「初せり式」が開かれた。関係者約150人が出席し、紅白の垂れ幕や繭玉を飾り、レタスやブロッコリー、リンゴ、ミカンなどが並べられた。開設者を代表し、市の谷沢広副市長が「市場外流通や消費者ニーズの多様化など、市場を取り巻く情勢は厳しいが、安定した供給体制を続けていくことが大切。皆さんとともに市場活性化に尽くしたい」とあいさつした。

  手締めで活況を祈り、場内各所で威勢のよい掛け声が響き、競りがスタート。卸業者の東一函館青果によると、函館近郊産ではトマト、軟白ネギ、ウド、ダイコンなどが並び、本州産のハクサイやキュウリなどとともに次々と競り落とされた。

  入荷量は野菜が87・4トン、果実が30・5トンで、昨年より野菜が1・4トン増え、果物は2・5トン少なかった。各品目はほぼ昨年並みの価格で取引され、ミカンが若干、安めだったという。(高柳 謙)


◎旧ドック跡地岸壁改修 来月9日に着工式
 2008年度の政府予算案が閣議決定され、函館市の要望事業は「継続が中心のため、ほぼ認められた」(西尾正範市長)という。函館港港湾整備事業の旧函館ドック跡地岸壁改修事業が継続で盛り込まれ、市は2月9日に函館開発建設部と合同で着工式を行う。

 旧ドック跡地の岸壁改修は本年度から予算化され、既に設計や測量などを終えており、着工式後に「つち音」が響く。市は旧ドック跡地に国際水産・海洋都市構想の研究拠点となる水産・海洋総合研究センターの整備を計画している。

 事業4年目を迎えた北海道新幹線新函館―新青森間に178億円、東北新幹線八戸―新青森間に700億円が配分されたことについて、西尾市長は「小里貞利さん(前衆院議員)から、新青森まで2010年度まで重点配分され、その後、道新幹線に大幅に配分されると聞いた。2015年度末の開業が遅れることはないといい、さらに開業の前倒しを求めていきたい」と話している。

 市が情報収集をした結果、北海道開発予算でほぼ要望額通り認められた事業は、国施行分で函館空港整備事業(要望額10億円)、幹線臨港道路(湾岸道路)整備や旧ドック跡地岸壁改修など函館港港湾整備事業(同24億9900万円)、物揚場を改良する椴法華港湾整備事業(同1億8000万円)など。

 道施行分では函館湯川漁港や戸井汐首漁港などの漁港基盤整備事業(同13億7000万円)。市などの施行分では箱館奉行所復元や史跡大船遺跡整備といった文化財整備事業(同6億9000万円)などがある。(高柳 謙)