2008年1月8日(火)掲載

◎企画 臨海研 進む技術開発(5)…ガゴメを核に地域活性化 海藻増養殖技術研究会
 ガゴメ(トロロコンブの仲間)やマコンブの漁場拡大を目指し、函館沖の藻場づくりの方法や増養殖殖技術の研究開発に取り組む。2003年、函館市内外の海洋土木会社や研究機関など産学が連携し、海藻増養殖技術研究会(森川基嗣会長)を立ち上げた。現在、11の企業、団体が研究会に加入する。

 参加企業それぞれが持つ技術を集積し、増殖用藻場礁の実用化を推進中だ。定期的に集まって会議などを開くことはあるが、臨海研究所に入居することによって会員の交流がいっそう深まった。会の事務局長を務める須田新輔さん(63)は「同じ志、目的を持つ人たちの交流の拠点となれば」と話す。

 函館沖は砂地が多いため、海藻が育ちにくく漁場も限られている。そのためガゴメやマコンブの増殖を図るには、砂地の開発が必要となる。水深がおおむね10メートル前後の砂浜域砕波帯は増殖場に適した場として技術開発を進めている。

 特にガゴメは近年、体に良い粘性多糖類のフコイダンが多量に含まれることから利用価値が高まり、函館の新たな特産にもなりつつある。しかし、資源量は十数年前の10分の1にまで減少していると言われ、資源の増量化は必須の課題だ。

 04年から具体的な試験や調査を開始し、砂地に対応した増殖施設、コンブの胞子が着生する基質の開発を進めた。廃棄プラスチックを再利用して網状素材に改良した基質を考案。実際に戸井や恵山沖にある複数の海底ブロックに取り付けて海藻増殖試験を行い、一定の成果を挙げた。

 さらには、3方向に放射状の構造を持つコンクリート製の増殖礁「マリンスパイダー」の実用化を目指し、試験を推進中。砂に埋没しないよう研究を重ねてきたが、砂地での活用に十分耐用できるめどが立った。

 「ゆくゆくは海中にガゴメ畑を作っていきたい」と須田さん。ガゴメが安定的に生産される藻場礁を増えれば、農作業のように葉体を間引きし、収穫する資源管理型漁業も可能だ。安定した需給バランスが取れれば、漁業者の経営安定にもつながる。

 同研究会の志は藻場礁の開発、設置だけにはとどまらない。将来的にはガゴメ生産者の担い手育成を進め、ガゴメだけの生産組合設立の構想もある。若手に潜水指導をして、海中での作業を行えるようにし、年配者は収穫されたガゴメを陸上で処理するシステムを確立しようと考えている。漁業者の高齢化が進む中で、年配者も無理なく仕事に従事できる新しい形の漁業を模索する。

 市内では、産学官の連携でガゴメの保護、育成、製品化を進め、ブランド化を推進している。「研究会が行っている取り組みが、ガゴメに携わる人たちの喜びにつながれば」と須田さん。ガゴメを核とした地域の活性化に向けてまい進する。(鈴木 潤)


◎企画 子年に思う(4)古布で新たな個性…着物リメイク屋佐藤商店経営、西尾美栄子さん(59)
 店内に並ぶ洋服や小物の多くは、古い着物などの布を使ったリメーク品。55歳で商売を始めた。不安だったが、手作りの温もりと、誰にもまねができない個性あふれる品を紹介し、新しい客や同じ趣味を持とうとする仲間が増えた。「失敗を恐れず、人の輪を大切に頑張り続けたい」。客に喜ばれる商品づくりを続ける決意だ。

 帯広市出身。函館の高校を卒業後、洋裁学校に2年間通い、洋服店に勤務した。約30年間接客を続ける中で、「自分が着てみたいと思う洋服とめぐり合う機会は少ない。それなら自分で作ってみよう」と独立を決意。2005年11月に母佐藤ヒサエさん(89)が経営する日用雑貨店「佐藤商店」の名を譲り受け、「着物リメイク屋佐藤商店」を立ち上げた。

 最初は集めた古着の量り売りの傍ら、リメーク品を手掛けた。知り合いや固定客が多く、「このままでは新しい客は来ない」とオリジナル性のあるリメーク品に力を傾注。仕入れた着物はほどいて洗い、アイロンをかけて四角の布にする。「これまで着てきた人の温かさも感じる。古布を使った品はデザインや機能性を超えた個性が出てくる」と魅力を語る。

 ミシンなどを使う地道で細かい作業。年齢から目の疲労も激しい。「今では毎晩8時に寝ないと、次の朝まで体力が回復しなくなった」と笑う。好きなことをやり続けているおかげで苦労は感じない。

 自分を信じて突き進んできた商品で、新しい人の輪を築いた。現在、店はヒサエさんとアジア雑貨や洋服を販売する三女の桜谷高美さん(32)も盛り上げる。「手作り品で人の輪を広げたいと願う2人のおかげで、また新しい物に取り組もうという元気が出る。三世代仲良く頑張っていきたい」。意欲は尽きない。(小橋優子)


◎灯油また値上がり…1月の石油価格
 函館消費者協会(米田イツ会長)は7日、函館、北斗両市内のガソリンスタンド25店を対象に行った1月の石油製品価格調査結果を発表した。フルサービス式給油所におけるホームタンク用灯油(1リットル当たり)の平均価格が100円を突破したが、値上げ幅は前月より縮小している。

 灯油の平均価格は、前月比1円高の100・20円で、高値は同0・20円高の105円、安値が前月と同じ95円。レギュラーガソリンの平均価格(同)は同0・08円高の155円で、高値は同1円高の158円、安値が前月と同じ152円だった。前年同月との比較では、灯油が23・24円高、ガソリンが23円高と相変わらず高水準で推移している。

 一方、セルフ式給油所のレギュラーガソリンの高値は同3円安の150円、安値は同4円安の146円。平均価格は同2・25円安の148・50円と、いずれも3カ月ぶりに値下げに転じた。

 米田会長は「消費者の買い控えによる抵抗が、上げ止まりを呼んだものと前向きにとらえたい。ただ、先行きは不透明なため、厳しい状況に変わりはない」と話している。(浜田孝輔)


◎1年の飛躍と発展願う…函館市年賀会に1200人
 新年恒例の函館市年賀会(市、市議会、函館商工会議所主催)が7日、同市若松町の函館ハーバービューホテルで開かれた。各界から約1200人が出席し、今年1年の飛躍と発展を願った。

  西尾正範市長が、厳しい時代の中で市が発展を遂げるためには、市民との信頼構築や連帯が大切であることを強調。「市民の自治を広げ、市民の手による市民のための市政を実現するため先頭に立って汗を流す。市民の皆さんが安心して暮らせ、幸せを感じることができるまち、将来に夢と希望を持てるまちの実現に向け、一層の協力を願います」とあいさつした。

  続いて阿部善一市議会議長が「この厳しい時代を函館ぐるみで乗り越えていくため、議会としても全力を挙げたい」と述べ、祝杯を挙げた。

  参加者は立食形式でテーブルを囲み、西尾市長をはじめ各界の代表とあいさつを交わすなど和やかに懇談した。ステージでは新春らしく獅子舞や琴の演奏、日本舞踊などが行われ、祝宴に花を添えた。

  最後に函館商工会議所の高野洋蔵会頭が「函館経済の発展に向け、経済界としても産学官連携などを進めていきたい」とあいさつし、万歳三唱で締めくくった。(高柳 謙)


◎どんど焼き 無病息災祈る
 道南各地の寺社では7日、古いお札や、正月のしめ飾りなどを焚(た)き上げ、無病息災を祈る「どんど焼き」(焼納祭)が開かれた。訪れた人は燃え上がる炎に手を合わせたり、煙を体にかけるなどしていた。

 どんど焼きは一般的に小正月の15日だが、道南では「松の内」の最終日となる7日に行われる。函館市谷地頭の函館八幡宮(中島敏幸宮司)では、境内に網で囲った「忌床(いみどこ)」と呼ばれる場所を設け、市民から持ち込まれたお守りやだるま、正月の松飾りなどからプラスチックや金属を外して山積みし、祭礼を行った。

 神職が祝詞をあげ、氏子や市民代表が玉串をささげた後、拝殿で採られた忌火(いみび)を破魔矢(はまや)に移し、火が付けられた。函館市大森町の主婦(77)は「国が平和で、安心した生活が送れるように祈りました」と話していた。(山崎純一)


◎理事長に中島氏任命へ…未来大
 函館市の西尾正範市長は7日の記者会見で、4月から独立行政法人化を予定している公立はこだて未来大学の初代理事長と学長に中島秀之・現学長(55)を任命すると発表した。理事長と学長を分離しない「一体型」での大学運営に当たる。

 法人化で大学の裁量権や自由度が増し、企業会計方式の導入で民間的な経営ができる。教員は公務員の身分を離れるため、兼業も可能だ。

 2月に道や文部科学省に公立大学法人の設置認可を申請、3月ごろ認可される見通し。4月1日付で法人登記し、正式に公立大学法人となる。初代理事長は、大学設置者の函館圏公立大学広域連合長(西尾市長)が任命する。理事長と学長の任期は4年。

 西尾市長は「優れた学識や運営能力から新しい法人の経営、教学の最高責任者として最も適切」と説明。中島学長は「法人化の最大のメリットは自由度の増加だと考える。地域の知の核となり、大学の国際化やまちの活性化、新しい都市像を探っていきたい」とのコメントを発表した。

 中島学長は通産省工業技術院電子技術総合研究所の情報科学部長、企画室長などを歴任し、退職後の2004年4月から学長を務めている。(鈴木 潤)