2008年1月9日(水)掲載

◎企画 臨海研 進む技術開発(6)…複数の海洋情報を地図展開 環境シミュレーション研究所
 インターネットなどで入手できる海洋に関するデータ全般を独自に解析し、地図上に展開するソフト「マリンエクスプローラー」を開発し、研究機関向けに提供している。漁業者向けのソフト「大漁案内人」は、過去にどの場所で漁獲があったか、その場所の海水温や海底の深さ、海流の強さなどの情報をパソコン画面の地図上に重ねていくことで、精度のある漁場情報が導き出される。

 「扱うデータは海面の状況をとらえる衛星画像から、海中の環境や魚群をとらえる音響解析、そしてサイドスキャンソナーを使った海底写真の解析など多彩。つまり海面から海底までの水産や海洋に関するあらゆるデータが対象です」と伊藤喜代志社長(52)は説明する。

 1991年1月、東京に有限会社を設立し、93年12月に埼玉県川越市に移転。96年12月に株式会社に組織変更した。「水産海洋分野における情報システム化の推進」が会社の使命だ。北大水産学部や函館の民間企業と共同研究を進める中、いつかは函館に支店を持ちたいと考えてきた。

 そうした中で臨海研究所開設の話を聞き、「これまで進めてきた研究やプロジェクトをスムーズに行う上で絶好の機会」(伊藤社長)と思い、入居を希望した。

 マリンエクスプローラーは、地球全体の地理情報システム「GIS」の海洋版。陸上のGISは、身近な例で車のナビゲーションなどがある。しかし「海洋に特化したGISの開発は、恐らく当社が初めて」と伊藤社長は言う。開発したソフトは北大や東大をはじめとする国内外の大学や水産試験場、研究機関に利用されている。

 その海洋版GISは改良を重ね、バージョンアップしている。同社函館研究センターの岩崎和治センター長(31)は「読めないデータがあれば、ソフトを改良することで読むことができるように改良するなど、お客さんのニーズと一緒に成長してきた会社」と語る。

 開発したシステムは、いつ、どこで魚が捕れるかという「漁海況予報」、どれだけの魚がいるかという「水産資源管理」、そして「明日はどこで魚が捕れるか」という漁業者向けの情報提供に威力を発揮する。

 漁場の予測は漁業者の長年の勘が頼り。魚群探知機もあるが、最新技術を駆使した効率的な漁、乱獲で枯渇させない資源管理型漁業が求められている。同社のシステムは、持続可能な水産業の構築にも大きな役割を果たしている。

 伊藤社長は「函館発の独自システムの開発、販売を通じ、将来的には水産海洋分野でのIT企業の地位を確立し、世界標準となるような水産海洋分野専用のデータ解析システムを提供したい」と意欲を語る。IT産業は陸上だけでなく、海洋分野にも間違いなくマーケットがある。(高柳 謙)


◎豪華客船 ことしも続々入港
 ことしもラグジュアリークラスの豪華客船が続々と函館港に寄港する。4月27日の「スタテンダム」(5万5451トン、オランダ船籍)を皮切りに、9月末には、函館入港の客船では過去最大規模の「アムステルダム」(6万1000トン、同)が初寄港を予定。このほかにも国内最大の「飛鳥II」(郵船クルーズ、5万142トン)など、“麗しい乙女たち”が函館港を華やかに彩る。

 アムステルダムは、ホーランド・アメリカ・ライン社(米国、HAL)所有。函館では初めて総トン数が6万トンを超える大型船となる。同社の特徴である白と濃紺のツートンカラーの船体で、全長は237・7メートル、全幅は32・3メートル、乗客定員1380人、乗員647人。9月中旬に、米国・シアトルを出港し、函館にはロシア・ペトロパブロフスク経由で同30日午前9時に入港。同日午後5時に出港後、岩手県宮古市に向かう。同船と同じくHAL所有のスタテンダムは、昨年5月に続いて2年連続の寄港となる。

 また、函館ではおなじみのリージェント・セブンシーズ・クルーズ(米国)の「セブンシーズマリナー」(4万8075トン)は、9月28日に5年連続の寄港を果たす。市港湾空港部は「海外の客船運航会社は、3―4年周期で寄港地を変えることが多く、5年連続の寄港は珍しい。寄港地として高い評価をしてもらっている」とする。このほか、国内の客船では、飛鳥Uが7月26日、8月21日、9月18日の3回の寄港を予定している。

 同部では、外国船入港時には、市内高校生による英語通訳を兼ねた観光案内や、日本文化体験コーナー設置を昨年に引き続き実施する方針。また、飛鳥Uの乗客向けには、オプショナルツアーとして、東日本フェリーの高速フェリー「ナッチャンRera(レラ)」を利用した青函ツアーなどを検討している。

 函館の魅力について同部では、観光地としての資源や基盤、受け入れ体制の取り組みなど挙げ、「接岸場所として不便といわれるが、港町ふ頭から市内へ送迎するための観光バスの台数を確保できることなど、観光地としての基盤が整っている。今後も乗客向けのイベントなど、アイデアを絞っていきたい」と話している。(今井正一)


◎親子見学会で「お金」学ぶ
 函館市内・近郊の小学1、2年生とその保護者を対象にした「冬休み親子見学会」が8日、日本銀行函館支店(函館市東雲町14、服部誠弘支店長)で始まった。10日までの3日間、午前と午後の計6回に約130組の親子が参加し、館内の見学やゲームなどを通じて、お金に関する知識を深める。

 見学会は、同行の業務内容や日常生活と密接にかかわる「お金」について学ぶ場にしようと、3回目の開催。小学1、2年生を対象にするのは初めてで、事前の応募者が多数だったことから、日数を1日から3日間に拡大した。

 参加者は、お金の価値や流れなどを解説するアニメ映像を鑑賞した後、同店内に設けられている展示ルームに移動。1億円分の重さと同じ紙の束(約10キロ)を持ち上げたり、使用できなくなった1万円札1万枚分の裁断屑で作った「1億円のイス」の座り心地を確かめた。

 また、ゲームでは、カレーやサラダ、デザートを作るのに必要な材料をお金に見立てたおはじきで買い物するという内容。児童は、同店内に設けられた八百屋や肉屋、ケーキ屋の店先で、食べたいメニューを想像しながら、決められた予算内に収めようと頭を悩ませていた。

 矢代未来さん(函館中の沢小2年)は「いろいろと勉強になったことを自由研究や絵日記に残したい」と話していた。(浜田孝輔)


◎江差町議会 水道会計経営健全化へ特別委設置、あす初会合
 【江差】多額の累積欠損を抱える水道事業の経営改善に向けて、江差町議会は「水道会計の経営健全化に関する調査特別委員会」(小野寺眞委員長)を設置、10日に初めての会議を開く。同町ではダム建設などの設備投資に伴う起債償還が水道事業の経営を圧迫しているほか、人口減少に伴う料金収入の落ち込みが深刻化。同委では、水道料金の値上げの是非を含めた経営改善策の在り方について議論を深める方針だ。

 町上下水道課によると、水道事業会計は2006年度決算で、9億2457万円の累積欠損を計上。同年度の経常損失も9773万円に上った。同課は「約3億円ある料金収入の大半をダム建設など設備投資の借金返済に充てている厳しい状態。人口減少に伴い料金収入が減り続ければ、将来的に経営が立ちゆかなくなる事態も予測される」と説明する。

 市街地周辺に大きな水源を持たない同町は、渇水対策の一環として、1989年からの水道設備の第5次拡張計画に基づき、上ノ国町とともに「上ノ国ダム」を建設。江差町の負担は約70億円に上った。また、市街地が高台と海岸沿いに分かれているため、地形的制約から複数の配水系統が必要となり、施設整備や維持に要する経費が割高になる一方、町内の給水人口は過疎化に伴い減少を続け、料金収入も大きく落ち込んでいる。

 こうした背景から、同町の水道料金は、給水管の直径が13ミリの一般家庭を例にとると、10立方メートルで2646円(全道14位)、20立方メートルでは5531円(同5位)と、全道的にも高水準にある。議長を除く全議員で構成する委員会では、慎重論も根強い料金値上げの是非を含めて、水道事業の経営改善に向けた方策について議論を進める方針だ。(松浦 純)


◎渡島管内新成人4303人
 渡島管内2市9町の2008年の新成人は、昨年より212人少ない4303人(男性2142人、女性2161人)であることが道教委のまとめで分かった。前年より4・7%減で、減少率は道内全体の4・0%を上回った。管内別の新成人数は、石狩、上川、胆振に次いで道内4番目だった。

 該当者は、1987年1月2日から88年1月1日生まれ。渡島は5年前の03年(5305人)比では18・9%減った。

 渡島管内の自治体別新成人は、函館市が3割以上を占める2876人で、北斗市が402人。町で最も多い七飯は249人、逆に最も少ない鹿部は47人となった。

 渡島管内の成人式は、八雲町(旧熊石町地区)と木古内町がすでに実施。ことし道内のほとんどの自治体が行う13日には、北斗と知内、七飯、森、八雲(旧八雲町地区)の1市4町が予定している。14日の「成人の日」に行うのは函館市と長万部町のみ。松前と福島、鹿部の3町は学生の夏休み帰省に合わせ8月に実施する。

 渡島管内全体の成人式にかかる経費は513万円。新成人1人当たりの費用は約1183円で、管内別では石狩、胆振に次いで3番目に少い。(小泉まや)


◎企画 子年に思う(5) 不正な支出許さない…海上自衛隊函館基地隊、佐藤健さん(47)
 装備品の購入をめぐる汚職、護衛艦イージス艦の情報流失、ファイル交換ソフトによる内部情報の漏えい…。昨年は防衛省と自衛隊の信頼を失墜させる不祥事が相次いだ。「今こそ信頼を回復したい。国民を裏切る不正な支出は絶対にさせない」と決意は固い。

 岩手県東磐井郡大東町(現一関市)出身。海のない内陸育ちで、こどものころ、アニメーション漫画「宇宙戦艦ヤマト」にあこがれた。「そんなヤマトのような船があるのでは」と思い海上自衛隊を志し、1979年、地元の高校を卒業後に海自に入隊した。

 隊の中で特に希望する職種はなかったという。最初の配属は神奈川県横須賀。物品を購入し、配分などを行う「補給」と呼ばれる仕事を命じられ、「規則にのっとった仕事を」を胸に日々精勤した。以降、長崎県佐世保、青森県大湊、函館で勤務。それぞれの赴任地で初心を貫き、職務をまっとうし、「責任」を果たしてきた。

 昨年6月、約30年培った経理マンの実績が認められ、函館基地隊の経理科長に就任、函館基地で使用する事務用品、燃料などの購入を行う。16年ぶり2度目となった函館勤務が始まってからは不祥事が相次ぎ、自衛隊、自身の職種に対する世間の視線が厳しくなった。「ごく一部の人の行いが…」という思いでニュースを見た。「改めて襟を正したい。基地を陰で支える仕事で、責任は重いがやりがいがある」ときっぱり。

 さらに身を粉にして働き続ける覚悟ではあるが、「転勤のたびに家族を連れ回してきたので、そろそろ家族が落ち着いて暮らせる家を持ちたいですね」と穏やかな表情を見せた。(水沼幸三)