2008年2月10日(日)掲載

◎企画 映画と私の物語【居酒屋兆治編】(4)照井さん・梶原さん 健さん見たくて現場通い
 「昼でも夜でも、高倉健さんを見たくて撮影現場に通ったわ」。函館市海岸町で喫茶店「サラブレット」を経営する照井恵子さん(68)は、市内各所で行われた1983年の映画「居酒屋兆治」の撮影の熱心な?見学者?だった。高倉健さんらが写る当時の撮影現場の写真は、宝物として大事にしまってある。

 夜中に見たのは、金森倉庫の一角で撮影した高倉健さん演じる英治と店の客河原(伊丹十三)の乱闘シーン。英治に殴られた河原が、弾みで壁に背中ごと倒れる場面を撮るため、滑車に座った伊丹さんが壁にぶつかるところを何度も映していた様子を覚えている。「殴られた勢いを表現するため、動く早さを調整するのが大変そうだった」

 英治が元の恋人さよ(大原麗子)を探して七財橋を走る場面の撮影も見学。消防の散布車が海水を放水して雨を再現する様子に、「びしょ濡れになった俳優さんが気の毒に思えた」という。

 高校生の時、新人の高倉健さんが東映ニューフェイスとして市内の劇場で舞台挨拶したのを見た時からファンになった。「それ以来、出演作は全部映画館で見てます」。

 喫茶店は1968年、28歳の時に開業した。店名は祖父の故一郎さんは馬主、父の故正さんは装蹄師と代々馬にまつわることから名付けた。「ヨーロッパのカフェの雰囲気を味わってほしい」と内装や食器にこだわり、ことしで40年目になる。

 照井さんの知り合いで、当時函館市役所商工観光部の宣伝係長だった梶原公平さん(現在水戸市在住、62)は、地元ロケに深く携わった1人。撮影場所の紹介やエキストラ、弁当の手配などに奔走した。

 とりわけ思い出深いのは、撮影中に出演者の1人が機嫌を損ねて現場に現れなかった?事件?。「高倉健さんは顔色一つ変えずに『ラーメンのおいしい店案内してくれる?』と私に声を掛け、2人で塩ラーメンを食べた。度量の大きさを実感しました」

 映像制作に魅せられた梶原さんはその後、テレビの世界に転身する。番組プロデューサーなど約10年間活動し、さまざまな映画やテレビ番組の制作に携わった。「居酒屋兆治」の撮影で使った台本や当時の写真は今も記念に持っている。

 照井さんは撮影期間中、英治の妻役を演じた加藤登紀子さんが市内で開いた「ほろ酔いコンサート」にも足を運んだ。一升瓶をピアノの上に置き、主題歌「時代おくれの酒場」を歌い上げる様子は「すごくすてきだった」。演奏中、会場一杯の観客に向かって加藤さんは「皆さん、高倉健さんは今日は居ませんよ」と冗談交じりにぴしゃり。しかし、後で友人から「実は、こっそり高倉健さんも2階の隅っこにいたんだよ」と聞き、同じ場所で演奏を聴いていたことに感激した。

 「人が心に想うことは、誰にも止められないもの…」。映画のラストで英治(高倉健)に対し、妻を演じた加藤さんが言うセリフ。「この言葉も大好きなの」。そう笑顔で話す彼女がすごくすてきに見えた。(新目七恵)


◎赤とんぼの会、凌雲中で認知症劇を初上演
「函館認知症の人を支える会『赤とんぼの会』」(佐藤悠子会長、会員190人)はこのほど、函館凌雲中学校で認知症サポーター養成講座を実施した。同会が中学生以下を対象に講座を開いたのは初めて。この日のために制作した認知症の症状や対処法を知ってもらう劇を上演し、生徒たちが認知症への理解を深め、接し方などを学んだ。

 同校2年生が、認知症に対応した市内の高齢者施設を職場訪問したことをきっかけに実現した。講座は2年生77人が、総合的な学習の時間を利用して受講した。

 赤とんぼの会はこれまで、主婦層や民生委員、高校生に対して講座を開いてきたが、中学生に対しては初めて。認知症の患者の多くは会話ができ、情緒や感情もあるが、記憶することが難しく、まだまだ理解されていないことも多いという。理解を得やすいようにと劇を組み込み、台本は佐藤会長が大まかなあらすじを設定した。

 出演者は認知症の女性やその家族、友人ら7人。友人とカラオケに出かけた認知症の女性が行方不明となり、みんなが必死で探すなかを孫に伴われて帰宅する。そこで地域包括支援センターの職員に相談し、デイサービスに通うようになるという内容。

 各場面での細かなせりふはすべて出演者のアドリブ。しかし実体験を踏まえたやりとりはごく自然で、随所に表れる方言は家族の会話そのもの。行方不明になった女性を必死に探す場面では、舞台を飛び降りて客席の生徒に「○○さんを見ませんでしたか?」と必死の形相で聞き回った。

 認知症についての講演では、脳出血やアルツハイマーなどが原因となることや、新しいことを覚えられない、人や物の名前が思い出せないといった症状を紹介。自分が若かった時の気持ちになってしまうことがあり、周囲の人はそれに対して寄り添うことなどを提案した。

 受講した辻村駿君(13)は「自分の祖母も物忘れなどがあるので、予防をするなど手伝えることは力になりたい」。佐藤会長は「今の若い人は核家族化などで高齢者に接する機会が少なく、認知症への理解もされていない。若者にもサポーターを増やすため、今後は他の学校でも開催したい」と話していた。(小泉まや)


◎冬フェス/赤ふんダービー、雪上を熱く疾走
 冬の函館を彩る「2008はこだて冬フェスティバル」(実行委主催)の関連イベントが9日開幕し、五稜郭公園では子供から大人までが参加型ゲームや雪像滑り台を楽しみ、歓声がこだましていた。

 午前11時、市消防音楽隊の演奏で開幕。地元の名産品などが当たる抽選会には、券を求め長い列ができ、賞品の当選番号が読みあげられるたびに大きな声が沸き起こった。正午からは雪像滑り台が開放され、子供たちは早速、高さ約4メートル、長さ約33メートルを滑り降り、笑顔をはじかせていた。

 午後からは、恒例の「赤ふんダービー」が行われた。北大水産学部の応援団、寮生の約20人の“赤ふん隊”が登場。タイヤチューブに人を乗せて、雪上の約100メートルのコースを走って速さを競った。中には全身ペインティングをする若者も居て会場を沸かせた。

 参加した応援団長の山東龍(さんどう・りゅう)さん(3年)は「2回目の参加だが今年も寒かった。レースの鍵はスタート。学生は勝つことより、市民に楽しんでもらうことがうれしい」と話していた。

 10日は午前9時から午後2時まで雪像滑り台を開放。抽選会の抽選券は午後1時から配布。そのほか午後1時から「ウルトラクイズ」など、会場全体を使ったイベントが行われる。(山崎純一)


◎59年の歴史に幕、大成高校で閉校式
 【せたな】本年度で59年の歴史に幕を閉じる、せたな町立大成高校(鈴木隆一校長、生徒4人)の閉校式が9日、同校で開かれた。最後の卒業生となる3年生4人と教職員、卒業生、住民ら約300人が地域に親しまれた学びやに別れを告げた。

 鈴木校長は「1258人の卒業生は全国で活躍している。これまで本校の発展に尽力いただいた地域の皆さまに感謝します」と式辞を述べた。高橋貞光町長は「これまで教育への支援をたまわった多くの先達に深甚なる敬意を表します。大成地区のますますの発展を祈ります」とあいさつした。 

 同校最後の卒業生となる杉村茉有子さん、手塚拓君、佐藤祐太君、金子猛君は、卒業を前に練習を重ねた、郷土芸能の浮島竜神太鼓を演奏。59年の長い歴史を締めくくる式典に花を添えた。 

 生徒会長を務めた杉村さんは「学校は地域の皆さんに愛されてきた。先輩の思いを受け継ぎ、歴史を締めくくることを誇りに思います。最後の卒業生として胸を張り、今後の人生を歩みたい。ありがとう大成高校」と惜別の言葉を述べた。  

 式典の最後には、参加者全員で「北斗輝く久遠(くどう)の道に」の歌詞で始まる校歌を万感の思いで合唱。思い出深い校舎と別れを惜しんだ。

 同校は1949年に道立今金高校久遠分校として開校。52年には独立して久遠村立久遠高校となり、55年に町村合併に伴い大成高校と改称した。当時は水産科の定時制高校だったが、63年に普通科に転換、81年には全日制に課程変換した。過疎化の進行で入学者の減少が長年続き、2005年には旧大成町教委が06年度以降の募集停止を決定。05年度に入学した生徒4人が卒業する本年度末で閉校を迎えることになった。(松浦 純)


◎ドック跡地、岸壁改修工事スタート
 函館港・弁天地区(旧函館ドック跡地)の岸壁改修と周辺整備が9日、着工した。函館開発建設部と函館市による事業。旧ドック跡地には市が水産・海洋関連の研究機関を集積した「函館国際水産・海洋総合研究センター」の建設を予定している。函館国際ホテル(函館市大手町5)で同日、関係者ら約150人が出席して記念式典を開き、くす玉を割るなど着工を盛大に祝い、工事の成功を祈った。

 海洋総合研究センターは、市が進める国際水産・海洋都市構想の研究拠点施設。官民の研究機関や研究者を集め、世界的な水産・海洋の学術研究都市を目指す。

 記念式典で大寺伸幸函館開建部長は「科学技術の高度化、新産業の創出など地域産業に大きく寄与する拠点整備に全力で取り組みたい」、西尾正範函館市長も「地域の振興発展に重要な国際水産・海洋都市構想実現に向け、研究機関の集積などを積極的に進めていきたい」と式辞を述べた。松島みどり国土交通副大臣が「函館が水産・海洋都市として輝き、観光面でも北海道の玄関口としてますます発展するよう期待したい」とあいさつした後、中川義雄参院議員が祝辞を述べた。

 各担当者が港湾計画と岸壁整備の事業概要を説明。着工セレモニーでは、松島副大臣の合図で重機が現地でくわ入れする様子がスクリーンに映され、関係者らがくす玉を割って着工を祝った。

 岸壁整備は同センターや函館港に寄港する国内外の調査・練習船を集約し、係留するのが目的。場所は同地区の旧ドック跡地の東側で延長250メートル(水深6・5メートル)、同210メートル(同5・0メートル)。2011年度の完成を目指す。これに併せ、函館市が緑地帯や道路整備を行う予定でこれらを含めた事業費は約30億円。(新目七恵)