2008年2月15日(金)掲載

◎西尾市長がロシア全権大使に大統領の訪問要請
 ロシア政府高官のサフォーノフ・オレグ極東連邦管区大統領全権大使の一行6人が14日、函館市の西尾正範市長を表敬訪問した。西尾市長が7月の北海道洞爺湖サミットで、大統領の函館訪問を要請。サフォーノフ全権大使は明言を避けたが、懇談後の記者会見で「西尾市長の要請はプーチン大統領にもちろん伝える。しかし、大統領が受け取るかどうかは彼の判断。(3月2日に行われる大統領選挙で就任する)将来の大統領の判断にもなる」と述べた。

 西尾市長は懇談後、「思いは当然、大統領に伝わるだろう」と期待した。

 全権大使は大統領直轄の高官で、サフォーノフ氏は大統領の命を受け、ロシア極東地域を統括する。今回の訪問目的について「サミットとはあまり関係なく、高等教育に関する視察が目的」と述べた。しかし、全権大使ら一行が本国から函館を訪問するのは異例で、サミットの大統領訪問地としての下見ではないか、との見方もある。

 西尾市長は、函館とロシアの歴史的な友好関係の深さを紹介。開港後のロシア領事館やハリストス正教会の開設、姉妹都市のサハリン・ユジノサハリンスク市との間に定期便があることなどを強調した。

 2000年にはロシア正教会総主教のアレクシー2世が函館を訪問してから東京を訪れたことも伝え、大統領の訪問を重ねて要請。ロシア極東大函館校の市立化の考えも改めて示した。

 サフォーノフ全権大使は、市内船見町にある旧ロシア領事館の保存を高く評価し、両国が協力し、博物館的な活用を図ることを提言した。全権大使は15日、極東大函館校で開かれるロシア弁論大会などを視察する。(高柳 謙)


◎企画【再生の糸口】(1) 人口29万人割れ/減少カーブ どう緩やかに
 1月末現在の函館市の住民基本台帳で、人口はついに29万人台を割り込んだ。合併町村を含めたピーク時の1980年代前半と比べ、約5万人も少ない状態。減少の背景は、全国平均より速いペースで進む少子高齢化と、雇用の場を求めての流出。地域の雇用環境が改善されず、就労機会を求めて首都圏や愛知県などに転出する人が多いのが大きな要因だ。

 住基台帳の人口は、転出入数の差の社会増減、出生死亡数の差の自然増減とその他の増減の合計で算出。各年末の人口をみると、旧市内は1983年までは3要素の合計で増加を続けた。この年も転出者が約1200人ほど転入者より多かったが、出生数が約3900人あり、死亡数を約1750人も上回っていた。

 社会減が多い年をみると、80年代末に青函連絡船廃止の影響などで、87、88年の2年間で約7700人が市外へ流出。90年代からは旧上磯、旧大野町、七飯町の近隣3町への転出も多く、96年には1市3町間で1740人が移動した。バブル崩壊の影響で事業所を縮小するなどの動きが目立った時期でもあり、大台の30万人を割り込んだのもこの年だ。

 95年以降は毎年、出生数を死亡数が上回る自然減の状態が続き、2004年以降の出生数は2000人以下となった。同時に、高齢化も進み、65歳以上の老年人口割合は、昨年9月末で25%を突破した。少子高齢化は全国的な傾向だが、函館は数歩先を進んでいる。

 04年12月の市町村合併で人口は、約1万7400人ほど増え、29万9600人台となった。しかし、人口減少数は翌年の05年に2484人、06年は3559人、07年は3339人ととどまるところを知らない。

 流出の大半は人口が圧倒的に多い旧市内から。この3年間は自然減の幅が1千人台を突破していることも人口減に拍車を掛けている。旧4町村地域は年間400人程度減っているが、減少率は旧市内より高く、少子高齢化の中で地域コミュニティーの維持が急務となっている。

 こうした急速な人口減少は、活力低下や経済活動の低迷など地域そのもの衰退につながりかねない。抜本的な対策は見あたらないが、減少のカーブを少しでも緩やかにするために、雇用や労働、子育て支援対策などが喫緊の課題となっている。

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 急激な人口減少が深刻な問題となっている函館市。日本の総人口が減少に転じていく中、減少を少しでも抑えようと、市の新年度予算でも、子育て支援策をはじめ、雇用や労働対策、企業誘致力強化などの施策に重点が置かれた。函館の官民の動きや取り組みから、再生への糸口を探る。(今井正一)


◎救急出動件数2年連続減少
 函館市内で2007年に救急車が出動した件数は1万3323件で、一昨年に続き前年を下回ったことが、函館市消防本部のまとめで分かった。市内の救急車の要請は05年まで増加の一途をたどっていたが、2年連続の減少は1964年の救急隊発足以降初めて。同本部救急課は人口減少の影響などが要因と分析している。また、搬送者のうち入院を必要としない軽症患者が約6割に上っていることも分かった。(森健太郎)

 救急搬送した人数は前年比163人減の1万2542人で、65歳以上の高齢者は6563人と全体の半数以上を占めた。内訳は新生児(生後1カ月未満)が35人、乳幼児(生後1カ月以上―7歳未満)が485人、少年(7歳以上―18歳未満)が404人、成人(18歳以上―65歳未満)が5055人など。1日平均出動は36・5件で、市民23人に1人が救急車を利用した計算になる。

 一方、函館市の人口は昨年末現在、前年同期比3339人減の29万140人で、減少傾向が顕著になっており、同課はこうした人口減が出動件数の減少にも少なからず影響しているとみている。「ただ、人口の減少割合に比べ出動件数は減っていない」との側面もあり、現に搬送した新生児は前年比9人増、乳幼児については同43人増と、軒並み増えている。

 搬送理由は「急病」が8656件で最も多く、全体の約65%を占めた。ただ、重症患者は全体の1割に満たず、軽症患者が前年比243人増の4806人を数えた。同課では「重篤の患者は一分一秒の遅れが致命的な結果を招くこともある」とし、救急車の適正利用を呼び掛けている。

 同本部は昨年4月、現場に最も近い救急車を衛星利用測位システム(GPS)で把握できる「消防緊急情報システム」を導入。これに伴い、通報から救急車が現場に到着するまでの平均時間も、前年より36秒短い5分18秒となった。同課によると、救急車の出動件数は99年に1万件の大台を突破後、高齢化に伴い右肩上がりに増加。05年には10年前の約1・6倍に上る過去最高の1万3494件を記録していた。


◎道新幹線、周辺ソフト面で提案
 【北斗】2015年度の道新幹線新函館(仮称)駅開業に向け、市は14日、新駅周辺土地区画整理事業にかかわるソフト面の考え方を初めて公表した。「市新幹線まちづくり市民会議」(長野章会長)で示し、地場産品の産直市や情報提供機能を持つ観光案内所など、市民も活発に利用できる形を提案した。

 市は新駅、駅周辺に求められる機能や役割を考えようと昨年夏、庁内の意見を集約。提案では駅前広場にインパクトのあるモニュメントの設置や花壇整備、緑地では魚介や野菜など地場産品を扱う産直市、駅前は新幹線客に対応する施設、サービスなどを挙げた。

 出席した委員9人からは「広域的なイベントを」など、近隣自治体と一体となった取り組みを求める声や、「北斗市の名物を作りあげるべき」「市民も楽しめる駅を」といった指摘、バリアフリーやロードヒーティングなどで「日本一障害者に優しい広場を」とのアドバイスもあった。

 渡島支庁が主催する「道新幹線の開業を活かした新函館(仮称)地域づくり懇談会」駅舎機能検討部会は新駅に求められる機能、役割について、渡島、檜山管内在住者を対象にしたアンケート結果などを踏まえ、3月に市に要望する見通しで、市はこうした要望や意見を基に、さらに事業を検討していく。(笠原郁実)


◎主婦ら2人が色彩検定3級合格
 函館大谷短大が設ける講座「カラーコーディネーター」を受講した社会人2人がこのほど、色彩検定(全国服飾教育者連合会主催)の3級を取得した。福島憲成学長が14日、合格した函館市中道2の会社員亀澤清子さん(49)と同市乃木町の主婦櫻庭牧子さん(41)に合格証書を授与した。2人は「日常生活や趣味に生かしたい」と喜んでいる。(宮木佳奈美)

 同短大は「コミュニティ総合学科」の学生に開講する講座で、「科目等履修生」として社会人を受け入れている。亀澤さんは「インテリアやファッションなどに生かしたい」と申し込み、櫻庭さんは「趣味でトールペインティングをやっているので、配色の勉強になると思って受講した」という。

 講座は全15回で、色の名前や配色、光と色の関係など幅広い知識を習得し、11月の検定に備える。検定は6月と11月の年2回で、昨年11月は全国で2万6208人が受験し、合格率は約68・6%だった。函館では学校単位でしか試験を実施できないため、個人での受験は困難だが、同講座を受講していれば社会人でも同短大で受験できる。

 講師の竹花郁子さんは「とても熱心だったので、学んだことを何かに生かして」と激励。櫻庭さんは「勉強の時間を作るのが大変だったけれど、2級を目指してまた頑張りたい」、亀澤さんは「最近仕事を始めたばかりで余裕ができるまで、知識を生活全般に生かし、いずれ2級に挑戦したい」と話している。


◎「函館地域産業活性化協議会」発足
 企業立地促進法に基づく地域産業活性化計画の策定を目指す「函館地域産業活性化協議会」が14日、発足した。函館市役所で開かれた初会合には、2市1町の経済部局や地域の経済界、大学などから委員9人と道の関係者が出席。会長に桜井健治・函館市商工観光部長、副会長に佐藤克彦・北斗市民生経済部長、監事に小島威・七飯町商工観光課長を選任。桜井部長は「2市1町が一体となり、地域の活性化を図らなくてはならない。短い期間だが、早い時期に国へ計画を申請したい」と述べた。

 同法は、地域の協議会で産業の集積や活性化に向けた取り組みを基本計画として策定し、国が認定。企業誘致や人材育成事業など、国からの支援や優遇措置が受けられる。オブザーバーとして参加した道経済部産業振興課の辻泰弘課長は「道南は人材を育てる高等教育機関や交通網など道内でも発展力がある地域。バックアップしたい」とあいさつした。

 各地域の目指す産業集積の方向性として、函館は国際水産・海洋都市構想に基づく水産海洋関連企業や情報関連産業、機械器具製造業の誘致を図る。北斗は、ものづくり産業や先端技術産業、試験研究機関の立地を推進し、地域活性化につなげる。七飯は農業関連産業を誘致し、農産物の付加価値向上などを目指すほか、既存の金型製造業などの集積を図る。

 このほか、基本計画には集積区域の設定、施設や人材育成などの事業環境整備の概要、計画期間など13項目を記載する。2市1町でそれぞれ幅広い業種を計画に盛り込むことで、支援を受けやすい体制を圏域一体で整えたい考えだ。

 今後、事務レベルで計画内容を検討し、3月下旬の同協議会で承認を求め、年度内に国に対し認定の申請を行う予定。 (今井正一)