2008年2月16日(土)掲載

◎ロシア極東大で伝統行事「マースレニツァ」
 「さぁ、春よ来い!」寒い冬を追い払い、暖かな春を迎えるロシアの伝統行事「マースレニッツァ」が15日、函館市元町14のロシア極東大函館校の駐車場で行われた。冬を象徴する「モレーナ」(わら人形)を燃やし、太陽のシンボル「ブリヌイ」(ロシア風クレープ)を食べて“春の訪れ”を祝った。

 「マースレニッツァ」は謝肉祭に当たる農民の祭りで、ロシアではわら人形を担いで陽気に練り歩き、ブリヌイを食べて歌や演劇を楽しみ、わら人形を燃やして灰を畑にまくという。

 この日は学生や職員ら70人が参加。来函中のロシア政府高官、サフォーノフ・オレグ極東連邦管区大統領全権代表らが同校の視察に訪れた中、学生や教員たちが仮装し、モレーナを囲んで冬を楽しむ「クマ」や「ウシ」を、春を呼ぶ「太陽」が追い払うという寸劇を披露。モレーナに火を付け、冬の終えんを見届けた。


◎連載企画「再生の糸口」2 産業構造 医療・福祉やITが堅調 道内外へアピール必要
 三方を海に囲まれた函館市は、合併で日本一の沿岸漁業都市に成長。イカやマグロ、コンブなど資源は豊富だ。また、基幹産業の観光は、新鮮な魚介類だけでなく、宝石を散りばめたような夜景や、西部地区の歴史的な町並みといったロケーションにも恵まれている。人口減少の道をたどる中、地元経済を支える産業構造はどのように変化してきたのか。

 市が実施している「事業所企業統計調査」によると、1981年と2006年を比較した場合、事業所数が21・8%、従業者数が12・6%それぞれ減少している。産業別では、医療・福祉で数字を伸ばしている以外は、農林水産業や建設業、製造業を中心に大幅な落ち込みを見せている。05年3月末のJT函館工場閉鎖の影響も大きい。従業者規模別で見ると、20人以上の事業者が増え、19人以下の事業者が減るという傾向が見られる。

 国内でIT業界が好調な中、道南でも高い業績を挙げ、地域経済をけん引している企業も少なからずある。数字上では発展途上だが、函館へのUターンの呼び水にもなっている。

 半導体製造装置メーカーのメデック(同市鈴蘭丘町)に入社して間もない福岡伸之さん(31)は、いわゆる“転職組”。都内のIT関連会社に就職し、さらなるステップアップを目指していたところ、生まれ故郷にたどり着いた。

 「函館にIT関連の製造業があるとは思っていなかった。自社での製造販売を手がける業務内容に、すぐに興味が沸いた」と語り、「地の利を生かした仕事に励み、地元の工場のために役立っていければ」と地域貢献に意欲を燃やす。

 函館高専で先日開かれた同校地域連携協力会主催の企業説明会でも、参加した生徒から「函館にこんなにITや電気関係の企業があるとは思わなかった。将来、Uターンを考える際に大きな参考となった」との声が聞かれた。

 浮上のカギはあるのか。民間調査機関、帝国データバンク函館支店の三角謙二支店長によると、渡島・檜山管内の倒産状況は、最近10年の負債総額こそ大型案件の発生によって変動が見られるが、件数は減少傾向。「北洋漁業の衰退やバブル崩壊などの節目に連動して、事業者数が減っていく中、会社の看板を守り抜こうと努力している経営者が多い」と話す。

 また、企業が講じるべきことに、M&A(企業の合併・買収)も視野に入れた事業承継や、道外での顧客開拓などを挙げた上で、「函館の知名度は高く、立地条件も決して悪くない。商売の対象を地元にばかり頼ることなく、道内外に函館ならではの良さを積極的にアピールしていくべき」と、巻き返しに期待を寄せている。(浜田孝輔)

 急激な人口減少が深刻な問題となっている函館市。日本の総人口が減少に転じていく中、減少を少しでも抑えようと、市の新年度予算でも、子育て支援策をはじめ、雇用や労働対策、企業誘致力強化などの施策に重点が置かれた。函館の官民の動きや取り組みから、再生への糸口を探る。(今井正一)


◎支庁再編 条例提案先送りを表明 高橋知事
 【札幌】高橋はるみ知事は15日、札幌の道庁内で開いた定例記者会見で、26日開会予定の第1回定例道議会への提案を目指していた、支庁制度改革関連の条例提案を見送る方針を正式表明した。今後の提案時期は明言を避けたが、道は具体的な地域振興策や支庁統廃合後に設置する「振興局(仮称)」の役割や機能について議論を深め、檜山支庁統廃合に反対する江差町など、廃止対象の支庁所在地の理解を得た上で、6月の第2回定例会をめどに提案のタイミングを探る考えだ。

 会見で高橋知事は「支庁再編は最重要課題。不退転の決意を大前提に、議会や諸方面の理解を求める」と述べた。その上で「改革に伴う(江差町など支庁廃止対象の)4市町の不安などに対して振興策を提示して理解を求めていく」との考えを示した。

 昨年11月末に公表した支庁再編の具体案「新しい支庁の姿(原案)」については、4日の道州制・地方分権改革等推進調査特別委員会での集中審議や地域意見交換会の結果をもとに論点を整理して成案化を図り、第1回定例会に提示する方針を明らかにした。

 支庁再編をめぐっては14日、道議会最大会派で知事与党の自民党・道民会議が、会派内に設けた支庁制度改革検討協議会(神戸典臣会長)で、道の条例提案を容認しない方針を決定。道側が提案に踏み切っても条例の成立は困難な状況になっていた。 (松浦 純)


◎地域の意見反映を…条例提案先送り
 【江差】地域と議論して再編案を作り直すべきだ―。支庁再編に進む道の動きを「拙速」と批判する濱谷一治江差町長が主張する。道は26日開会予定の定例道議会への提案を目指していた支庁再編関連の条例提案を見送ることを決めた。だが、支庁存続を求める地方と、地方分権時代の組織再構築を目指す道の主張はかみ合わず、解決の糸口を見いだせないままだ。

 堀達也前知事時代を含む、10年近い議論の経過を強調する道側。だが、濱谷町長は「道が地域住民とひざを交えて議論したことなど1度もない。交渉相手をはき違えている」と憤る。

 支庁再編を道財政再建の一環とみなす地方と、道州制や地方分権に向けた広域行政の体制構築を目指す道の議論は一方通行のままだ。「道の財政再建への努力は否定しない。そのための支庁再編なら一定の痛みは引き受ける。だが、道から協力を求める言葉はない」と江差町の住民は言う。

 道の内部でも、2006年6月公表の当初案で掲げた“6支庁案”が、昨年11月に示された具体案で“9支庁案”に後退したことを疑問視する声が強い。「札幌に近い後志支庁の存続は道民に根拠が示されていない。道内を6圏域に区分する総合計画との整合性も説明できない。道議会も地方も納得しないのは当然」と、ある道幹部は語る。

 また、提案先送りを決めた道は、2009年度の新体制発足を目指す構えを崩していないが「職員の異動、機構改正、公選法などの法律や道条例の整理など、膨大な再編準備を条例審議と並行できるのか。見切り発車に伴う道や地域の混乱も懸念される」と懸念する道職員もいる。

 こうした情勢を見据えて、第1回定例会への提案阻止を目標に掲げてきた江差町は「当面の目標は達成した。道が示す地域振興策を見極めた上で存続運動の在り方を練り直す」(総務政策課)としており、濱谷町長も「第2回定例会が次のターゲット。提案先送りを手放しで喜べる状況にはない」として、道との対決姿勢を崩さない構えだ。

 姿勢を変えない道と、生き残りのために譲歩できない地方の議論は袋小路。別の道幹部は「ボタンの掛け違いを正して地方との対話を積み上げることが解決の糸口」と指摘する。(松浦 純)


◎17日から台湾、広州へトップセールス
 函館市は17日から6日間の日程で、台湾や中国広東省方面からの観光客誘致を図る官民一体の訪問団を台北市と広州市に派遣する。国内観光の需要が落ち込み、東アジア地域からの観光客が函館の観光入り込みを下支えしている。台湾では、日本へのチャーター便参入を計画中の遠東航空を初めて訪問するほか、ほかの航空会社や旅行会社、関係機関などで函館をPRする。

 訪問団派遣は、台湾へは2000年度、広州は05年度から継続。近年は国内各地の自治体が同地域で誘致競争を繰り広げている背景もあり、現地を直接訪問し、更なる誘致を図る。

 今回の訪問団は、森川基嗣函館商工会議所副会頭を団長に、谷沢広副市長、斉藤明男市議会副議長、木村孝男函館国際観光コンベンション協会副会長(函館空港ビルデング社長)ら、市や経済界の11人で構成。各機関の課長級職員も同行し、実務レベルでの話し合いも進める。

 台湾からのチャーター便は、新千歳空港に台湾との直行便が結ばれている影響もあり、07年は前年比で9・3%落ち込んだものの約8万6000人が利用。現地では、依然として北海道人気が高く、広域周遊型が主流となっている。

 例えば、函館空港イン、旭川や女満別アウトの形態や、岩手県花巻イン、函館アウトなど、旅行プランも多様化。市観光課によると、台湾人観光客は増加傾向にあると感触を持つ市内観光施設もあるという。また、広東省方面から、本道への定期路線はないため、実数把握は難しいが、東京や大阪経由で、道内まで足を伸ばすプランが現地で売られており、特に冬場の人気があり、今後も需要が増加すると見込まれている。

 市観光課は「国内各地域の売り込みも必死。トップセールスの成果は実績にも現れており、より充実した関係が築けるようにしたい」と話している。(今井正一)


◎函館女性会社員殺害 中原容疑者を起訴 責任能力ある
 昨年11月下旬、函館市内の会社員無量林智子さん(23)が、大学時代の同級生に刺殺された事件で、函館地検は15日、殺人容疑で逮捕された兵庫県姫路市飾磨(しかま)区、無職中原哲也容疑者(23)=当時函館市在住=を殺人や傷害などの罪で函館地裁に起訴した。同地検は昨年12月から2カ月間、中原容疑者を鑑定留置していたが、精神鑑定の結果、責任能力が問えると判断した。

 起訴状などによると、中原容疑者は昨年11月26日午前7時35分ごろ、函館市北美原の無量林さん方の駐車場付近で、出勤しようとした無量林さんの胸などを折りたたみナイフで数十回突き刺し、失血死させた。さらに、その場にいた無量林さんの母(57)の顔などもナイフで切り付けるなどし、全治3カ月の重傷を負わせた。

 同地検は「事前にレンタカーを借り、犯行現場を複数回下見するなど、合理的な計画性があった」と指摘。中原容疑者は動機について「無量林さんに好意を持っていたが、相手にされなくなり裏切られたと思った」と供述しているといい、背景に一方的な恋愛感情があったことが明らかになった。

 逮捕後に報道機関などに届いた手紙については「在学中にいじめを受けていたことをみんなに知らしめたかった」とし、犯行直後に関係先100カ所以上に投かんしていたことも判明。一方で「被害者の将来を奪って申し訳ない」と反省の弁も述べているという。