2008年2月18日(月)掲載

◎人情芝居に観客沸く…初春巴港賑
 道南各界の名士が歌舞伎を演じる「初春巴港賑(はつはるともえのにぎわい)」第30回記念公演(実行委、函館市文化・スポーツ振興財団主催)が17日、市民会館大ホールで開かれた。節目を祝う名作「勧進帳〜安宅新関の場〜」では男のロマンを、「番町皿屋敷」は男女の純愛、悲哀といった、それぞれ人情の奥深さが演じられ、満員の来場者から大きな声援や拍手が送られた。

 函館の風物詩として親しまれている「初春―」は、行政、経済、文化、医療などで活躍する市民が出演する。始めに口上が行われ、西尾正範市長ら5人が出演。西尾市長は「さまざまな事件がある中、函館は本物の良さをまっとうしていきたい」などと述べ、場内から「頼むぞ」と声援が飛んだ。

 続いて「番長皿屋敷」が演じられた。旗本青山播磨と相思相愛だった腰元お菊が、播磨の愛情を試そうと家宝の皿をわざと割ってしまい、自分を信じてもらえなかった播磨がお菊を手打ちにしてしまう物語。播磨がお菊を切り殺してしまう場面に観客はかたずをのんで見入っていた。

 続いて行われた恒例の「白浪五人男」では初代実行委員長の田中修市さんらが出演。田中さんは終演後「80歳を超え、歩くのが大変でした」と話した。

 最後に歌舞伎十八番の一つ「勧進帳」が演じられた。武蔵坊弁慶役の本間哲さんは、にせの勧進帳を長々と読みあげたり、酒に酔って舞う「延年の舞」で観客を沸かせた。関守の富樫左衛門を演じた今均さんが源義経一行に見せた情けも観客の心を打ち、迫真の演技に盛大な拍手が送られた。(山崎純一)


◎連載企画「再生の糸口」4 新幹線や移住促進 ともに大きな経済効果
 函館市新総合計画(2007―16年度)で設定した16年度末の人口は28万人。実際の推計は約26万5000人だが、人口増に向けた施策の推進で約1万4000人の定住効果を見込んだ。

 北海道新幹線の開業や観光振興、国際水産・海洋都市構想の推進など産業振興による効果で約1万2000人、団塊世代の定住化促進で1000人、子育て支援などで1000人の効果を生み出す。

 函館の浮沈を握るのはやはり、15年度に予定されている新幹線開業だ。道新幹線建設促進道南地方期成会によると、開業により交流人口や観光客が大幅に増加。開業による年間の経済効果は道内だけで120億円、本州を含めると361億円で、宿泊や飲食、交通など観光産業への波及効果が大きい。全体の雇用誘発数は年間4000人が見込まれている。

 市は新幹線開業を見据えたまちづくりを、函館商工会議所や近隣市町と連携しながら進めている。一方で開業により、会社や支店が大都会へ集約される「ストロー現象」が懸念されており、函館に事業所をとどまらせる対策も欠かせない。

 新幹線に比べて地味ではあるが、市の定住促進事業も軌道に乗り始めた。市定住化サポートセンターが把握した3年間の移住実績は27組54人。実際にはその何倍も移住者がいるとみられ、移住者同士のネットワークや移住希望者を支援する移住アドバイザー制度なども進んできた。

 団塊世代という、リタイア層が主なターゲットだが、メリットは大きいと市は説明する。道の試算では、団塊世代1組が移住すると、20年間に住宅購入や日々の消費などで経済効果は1億9000万円に上る。この中には医療費や介護保険など行政にも負担がかかる社会保障費約5000万円が入っているが、それを引いても約1億4000万円の効果額がある。

 市企画部は「団塊世代は大きな人材。民間企業が新たな分野に進出する際、移住者が持つ技術や知識、人脈を活用できればスムーズな事業展開に結び付く。民間企業のニーズと技術を持つ移住者がうまくマッチングできるような施策や体制が今後、必要となるだろう」と説明する。

 事実、そうした人材はいる。昨年6月に神戸から妻と2人で移住した森満さん(66)は貿易関係会社などに勤務した経験から英語が堪能。「移住アドバイザーのほか、第2のボランティアとして外国人観光客の案内役をしたい。今はその勉強中」と話す。

 移住希望者に選ばれる街は、市民にとっても過ごしやすい街。住み良いまちづくり施策を総合的に進め、積み上げていくことで、人が訪れ、人がとどまる函館となる。(高柳 謙)


◎ゴッコ汁「おいしい」…恵山でまつり
 恵山地域の名産ゴッコ(ホテイウオ)を楽しむ「第18回えさんごっこまつり」(実行委主催)が17日、市内日ノ浜町の道の駅なとわ・えさんで開かれた。晴天に恵まれ、開会前から大勢の市民が訪れ、ぶつ切りにしたゴッコを、ネギやジャガイモなどと一緒にしょう油で煮込んだ熱々の「ごっこ汁」に舌鼓を打った。

 毎年、旬の2月に開催しているイベントで、会場にはゴッコのキャラクター「ほていドン」の巨大な雪像や、水槽を泳ぐゴッコ、輪投げ大会など、子どもたちの人気を集めていた。

 また、400食分を用意したごっこ汁には、市民らが長蛇の列をつくった。このほか、生ゴッコや生干しゴッコをはじめとする近海で取れた旬の海産物も格安で売られていた。恵山支所は「恵山のごっこは間違いなくおいしい。今年も天気に恵まれて、楽しんでもらいました」と話していた。

 今回、ごっこ汁を楽しみに初めて来場したという、市内中道の星川賢三さん(66)は「甘からず塩辛ずでごっこ汁はおいしかった。夏はパークゴルフなどでよく来るけれど、恵山は空気もきれいでいいですね」と話していた。(今井正一)