2008年2月19日(火)掲載

◎イカロボットが音楽に合わせ「いか踊り」
 イカロボットが「いか踊り」!―。イカロボットを音楽に連動して踊るように改良していた函館高専(長谷川淳校長)専攻科の学生研究チームが18日、函館市内のホテルで成果報告会を開いた。函館港まつりなどで踊られる「いか踊り」の音楽に合わせたロボットの巧みな動きに、約70人の来場者は大喜びしていた。

 イカロボットは「ロボットフェス・インはこだて」市民の会が企画し、公立はこだて未来大学や函館高専、民間企業などが協力して開発、昨年の同まつりで披露された。

 今回の改良は、退職した技術者を活用して企業の研究課題に取り組むプログラム「退職技術者による総合的ものづくり技術伝承」の中で取り組んだ。ロボットに取り付けたマイクで拾った音をパソコンでデータ化し、解析してロボットの動きに結び付けるシステムだ。

 高さ2メートル余の巨大なロボットの触手や耳、目は「イカイカ―」の声に合わせて動き、発光ダイオード(LED)も点滅。開発した学生のまとめ役、太田衣美さん(1年)は「今後は他の楽曲でも踊れるようになれば。後輩に期待したい」と話していた。(小泉まや)


◎連載企画「再生の糸口」5/公立はこだて未来大学 地元にもっと愛着を
 2000年4月に開学した公立はこだて未来大学(亀田中野町116、中島秀之学長)は、今春5期生の卒業を迎える。これまで大半の卒業生がシステムエンジニア(SE)や開発など、情報系の職種を選び、即戦力となる技術を持つ人材を多く輩出している。しかし、1―4期生の卒業生計622人のうち、函館に就職したのは59人。昨年はわずかに6人で、約6割が首都圏に本社を置く企業へ就職するため函館を離れている。

 大学評価のバロメーターともなる主な就職先をみると、東証一部上場の大手メーカーや情報系企業が目立つ。函館で就職しても事務職などが中心で、SEなど職種の受け皿は少ない。松塚康輔教務課長は「企業からは本学の学生はよく勉強していると高い評価をもらっている。地元ではエスイーシーさんのように毎年、学生を積極採用してくれる企業もあるが、待遇の格差や情報系の求人が多い首都圏にどうしても流れてしまう」と話す。

 今春卒業を迎える情報アーキテクチャ学科の西谷武さん(24)は、いまだに進路を決めかねている。小学校卒業まで7年間をアメリカで過ごし、群馬県内の中学、高校に通った。未来大を選んだのも函館に興味があったわけではなく「たまたまだった」というが、悩む理由のひとつが「函館への愛着」だ。

 2006年4月から続ける「えびす屋」での人力車アルバイトや、西部地区で主催したフリーマーケット「MOCA」などのイベント経験から、卒業研究のテーマを「若者に魅力ある街づくりの提案」を設定した。函館の若者が街を離れてしまう理由を、単に就職先の受け皿の問題だけではなく、人とのつながりや函館らしさに触れる機会が少ないことを指摘した。

 未来大生の多くは、通学に便利な大学周辺や美原、富岡地区に住み、西部地区や駅前などへ足を運ぶ機会は少ない。西谷さんは「未来大生には、もっと函館の魅力の種を植え付けるべき。僕にはきっかけがあったが、地域活性は、街に愛着がなければ成り立たない」と話す。将来、何らかの形で起業することも考えている。「函館の市場に頼らなくても、チャンスをつかむことは可能。仮に函館を離れたとしても、いずれはこの街に戻ってきたい」と、今月中に結論を出すつもりだ。

 未来大は、開学からわずか8年のまだまだ“若い”大学。松塚課長も「就職後もスキルを磨いて、いずれ函館に戻って起業などにつなげてもらえたら」と期待する。企業が求める人材だけではなく、西谷さんのように、函館の将来を考える若い種が着実に育っている。未来大の存在に一筋の光明が見えた。(今井正一)


◎補助犬法改正に函館の盲導犬使用者原さんも期待
 盲導犬や聴導犬、介助犬を使う人の社会参加を進める「身体障害者補助犬法」が昨年11月に改正され、民間企業での受け入れ義務化などが10月からスタートする。函館市で22年間、3頭の盲導犬と暮らしてきた鍼灸(しんきゅう)院経営の原伸夫さん(55)は「今後、補助犬を使う若い人も改正を機にどんどん職場に出てほしい」と話している。(新目七恵)

 補助犬法は2002年に施行され、国や公共施設、公共交通機関などの同伴利用の受け入れ義務化などを定めた。今回の改正では民間企業(従業員数56人以上の事業所)の受け入れを義務づけたほか、都道府県に専用の相談窓口を設けることとした。

 原さんは炭鉱労働者だった30歳の時、夕張での炭鉱事故で失明。1984年から国立函館視力障害センターに鍼灸治療の勉強で通所していた際、知り合いに紹介され、盲導犬との生活を始めた。治療院は87年に開業。盲導犬は初代のルナ号、2代目エリックを経て、現在は3代目ウィングが相棒となり、日常生活を支えている。

 盲導犬を使い始めた1980年代は列車やタクシー乗車を拒否されることもあったが、「最近はテレビなどの影響で周囲も理解してくれる。普段からスーパーを利用する盲導犬使用の主婦も『函館は理解が進み、素晴らしい街』と話していた」という。今回の改正については「自家用車での移動が多く、自宅が職場なのであまり関係はないが、これから利用する若者には社会参加のきっかけになるのでは」と期待を込める。

 盲動犬は道内で55頭、函館市内で4頭が活躍している。道盲導犬協会(札幌)の和田孝文所長も「改正は訓練事業者や使用者が以前から要望していた内容。補助犬と使用者は2人3脚。十分に理解して暖かく見守って欲しい」と話している。

 ウィングを「第二の奥さん」と呼ぶ原さん。「盲導犬に気を遣って静かに歩く人もいるが、逆に信号の色を告げたり、あいさつなどで声を掛けてくれるとありがたい。口笛など犬の集中力を途切れさせることは遠慮してほしい」としている。


◎せたな学校職員殺害/福士容疑者を追送検、出張旅費21万円詐取の疑い
 【せたな】せたな町立島歌小で、同町瀬棚区島歌、同校臨時公務補田村亜衣子さん(24)が殺害された事件で、せたな署は18日、殺人容疑で逮捕、送検した同瀬棚区本町、同僚の臨時事務職員福士昌容疑者(21)を詐欺と有印私文書偽造・同行使の疑いで函館地検に追送致した。

 調べによると、福士容疑者は昨年9月上旬から12月下旬までの間、計5回にわたり、同校の校長が管理する預金通帳と印鑑を不正に持ち出し、払戻請求書を偽造した上、同町内の金融機関で同校教職員の出張旅費の払い戻しを装い、計約21万円をだまし取った疑い。

 福士容疑者は犯行前日、校長らから学校の金の使い込みを指摘されたことから、校長と田村さんの2人の殺害を計画。真っ先に出勤する田村さんを殺害したうえで、校長を自殺に見せかけロープで絞殺するつもりだったという。

 これまでの調べで、福士容疑者には消費者金融や車のローン、自宅の家賃など合わせて約400万円の借金や滞納があったことが判明。調べに対し、福士容疑者は「(詐取した金は)生活費や借金返済の一部に充てた」と容疑を認めているという。


◎東京でお茶の専門店経営のフランス人・ステファンさんが11年ぶりに来函
 22年前に函館でホームステイし、現在は東京に住んで茶の専門店を経営するフランス人のダントン・ステファンさん(44)が11年ぶりに来函している。18日には当時のホームステイ先で、市内で喫茶店を経営する照井恵子さん(68)と再会。20日までの滞在期間中、市内のフランス料理店などで自身のオリジナル茶の提供も行う予定で、「街の活気が減ったのが寂しい。自分のお茶で少しでも函館が元気になれば」と話している。(新目七恵)

 ステファンさんは東京での留学中、財団法人道国際交流センター(函館)が主催する日本語・日本文化講座夏季セミナーの第一期生となり約2カ月間、照井さん宅にホームステイした。以来函館を気に入り、何度も訪れていたが、仕事が忙しくなり、1997年を最後に足を運ぶ機会がなくなっていた。

 ワインのソムリエの資格を持ち、日本の紅茶専門店で働いた経験などを生かし2004年、都内吉祥寺にお茶の製造販売店「おちゃらか」をオープン。日本茶に夏ミカンやユズなどの香りを加えたオリジナル茶「フレーバーティー」は評判を集め、6月にスペインで開かれるサラゴ万博では日本政府館のオリジナルティーとして出品される。今回の来函は、知り合いのシェフ丹崎仁さんが市内で経営する料理店「唐草館」(青柳町21)で、オリジナル茶を扱うことになったのがきっかけ。

 ステファンさんはホームステイの思い出について「日本で初めてコミュニケーションを楽しんだのが函館だった。元町や大沼、海などあちこちに友達と出掛けて面白かった」と振り返り、「照井さんも喫茶店も変わっていない」と再会を喜んだ。照井さんは「日本、世界のことをよく学んでいて見違えた」と笑顔で話していた。

 ステファンさんは19日、唐草館で限定客対象にオリジナル茶を提供するほか、午後3時からは照井さんの喫茶店「サラブレット」(海岸町14)の来店客にお茶の入れ方などを伝授するミニ講習会を行う。


◎自治基本条例策定委/教育、福祉の意見集める
 函館市自治基本条例の策定に向け、市民の意見を集める5回目のワークショップが18日、市役所会議室で開かれた。「人づくり、まちづくり―福祉と教育を考える」をテーマに、それぞれの短所や長所、改善点を挙げ、市民や行政に何が求められているかを探った。

 約20人が参加。教育に関しては、親子の対話不足や道徳教育の欠如、キレる子供、親を含めた公共心の育成などを短所や課題に挙げる意見が多かった。一方で「子供の倫理観や礼節以前に、教育者の心構えが求められる」との声も。

 福祉に関しては「函館の政策や福祉の現状がよく分からない」との声があり、自分の知っている範囲で長所や短所を挙げてもらった。障害者用トイレが普及してきた、とする声もあれば、バリアフリーが進んでいないと反対の見方も。介護など高齢社会問題を改善点に挙げる声が多く、対策として「行政・医療・福祉の連携」「行政と市民が協力する」といった提言があった。

 町会の活動や機能を評価する声も多く、独居老人対策など地域福祉の維持には、町会活動とともに一層の住民連携が欠かせないという意見が各班で見られた。

 市役所でテーマを決めて開くワークショップは今回で終了。25日夜は南茅部公民館(南茅部、椴法華対象)、26日夜は戸井生涯学習センター(戸井、恵山対象)で開く。問い合わせは各支所地域振興課か市行政改革課TEL0138・21・3668。(高柳 謙)