2008年2月20日(水)掲載

◎小沼健太郎さん 明治期の新聞まとめ冊子
 函館市内に住む小沼健太郎さん(68)がこのほど、函館に関する記事などが掲載された明治期の新聞をまとめた冊子を作成し、自費出版した。道内を中心に東京、神奈川など各地の新聞を集め、日露戦争時の状況や函館―小樽間をつないだ北海道鉄道の開通式の様子などが当時の紙面から読み取れる。小沼さんは「当時の新聞は函館の歴史の宝庫。文化や教育など各方面で地域のために尽力した人々の存在や知恵を後世に残すことで、現代、将来の参考になれば」と話している。(新目七恵)

 小沼さんは元中学校の社会科教諭で、函館市史の審議委員なども務めていた。現役だった約20年前から明治時代の新聞に興味を持ち、道内や本州の図書館、資料館などに足を運び、コツコツと資料を収集していた。7年ほど前には集めた新聞資料を年代順にまとめた冊子を作成。今回は“第2弾”として創刊号や新年号、軍備戦争、函樽鉄道にテーマを絞って編さんした。

 題は「明治の新聞に見る函館の有様1」。1869(明治2)年から1912(同45)年までに創刊、発行された「江差新報」や「函館公論」など30以上の新聞が登場する。中には、日本最初の日刊新聞「横浜毎日新聞」の1870(明治3)年12月8日付の創刊号に「蒸気コリンガー船、今八日箱館工向ケ仕ダシ(出航する)」との記事があるなど、「当時、横浜と船でつながる函館は北海道の中心的存在だった」ことがうかがえる。日露戦争中の1904(同37)年7月には、津軽海峡をロシアの軍艦が通過した際に函館山にあった大砲を1発も打たなかったことについて、小樽新聞の編者が「ムザムザ海峡通過を許せるは遺憾」とつづるなど、戦時下の報道の様子なども伝わる。同年、船が遭難した際、函館日日新聞が手書きの文面をガリ版で出した号外などもある。

 小沼さんは「大火や水害など何度も災害に見舞われながらも自分たちの手で復興し、繁栄してきた函館の人々の生き方、考え方は魅力的。新聞には当時のありさまが反映され、後世に伝えるべきことが多くある」とし、現在、第3弾の編集作業に取り掛かっている。冊子はA3判265ページ。残部は少ないが、1部7000円で市内末広町13の箱舘高田屋嘉兵衛資料館(TEL0138・27・5226)で取り扱っている。


◎連載企画「再生の糸口」6 函館の可能性 地域の優位性生かす
 人口減少はわが国全体が抱える課題であり、ひとり函館市に限った話ではない。減少は避けられない中で、地域の活力をどう維持していくかが問われている。重厚な産業や経済基盤が整った大都市圏と違い、地方は、その地域の特性や優位性を最大限に生かした発展方向を探ることが求められている。

 函館の基幹産業は観光と水産業。合併で函館は年間の漁業生産額が200億円を超す日本一の沿岸漁業のまちに成長した。観光産業はすそ野が広く、1次産業から3次産業まで経済波及効果があり、日本銀行函館支店の服部誠弘支店長は「主要産業の観光を幅広い視野でとらえ、地の利を生かした事業展開をすべき」と提言する。

 豊富な観光スポットのほか、安くて新鮮な農水産物を提供できることが函館の地の利。団体型から少人数・個人型に変わってきた観光客のニーズをとらえた商品開発やサービス提供は、新たなビジネスチャンスを秘めている。服部支店長はこれに「需要が見込まれている医療福祉や環境関連などのサービス業の成長が、地域に好結果をもたらすのではないか」と説く。

 そして地元・管外からの起業や企業誘致の促進のほか、企業が優先して解決すべき点として「顧客ニーズの的確な把握や、アジアを主眼にしたマーケット開拓が必要」とする。多くの取引先を持つ金融機関については「情報も豊富で、地場企業を支える使命を忘れてはいけない」と提言し、働く側にも自己啓発や専門知識の習得、向上心を期待する。

 市が昨年策定した今後10年間の指標となる新総合計画では、2016年の将来人口は推計で26万5000人まで減少するが、新幹線開業や国際水産・海洋都市構想の推進など各種施策の効果での増加を見込み、28万人と設定。だが、受け身のままでは、予測以上の速度で人口が減ることも考えられる。

 函館市の近江茂樹企画部長は、造船・機械業や水産関連産業をいま一度見直し、地場産業の底辺を拡大することが、安定雇用や活性化につながると考える。「生活する上で不便のないコンパクト感が函館にはあるが、若い人が満足する基盤は残念ながらない。良い面もあるが、函館は歴史がある分、保守的になりがちで、産業には新しい視点が必要」とする。さらに、滞在人口が多いことに着目し、夏場だけ定住する仕掛けづくりや、酪農農産品の高付加価値化など、地域の潜在能力を引き出す余地があるとした。

 行政側のサポートも重要だが、民間企業や業界団体が主導的に動き、新規技術や発想を取り入れる柔軟さ、将来を見据えて若い人材を育てる環境整備など、目先のリスクにとらわれない長期的な展望が必要だ。

 人口減少は地域の衰退を直接意味するものではない。函館には、他都市に劣ることのない歴史が培った資源や強みがある。縮小を続ける街の現状や問題点を市民が共有し、函館の可能性を再認識したとき、新たな出発が始まる。(浜田孝輔、今井正一)(おわり)


◎奥野水試前場長に有罪判決
 道南の噴火湾が舞台となったスケトウダラの漁獲枠をめぐる贈収賄事件で、森漁協に便宜を図った見返りに現金120万円を受け取ったとして収賄の罪に問われた函館市日吉町1、前道立函館水産試験場長奥野英治被告(58)の判決公判が19日、函館地裁で開かれ、岡田龍太郎裁判官は「犯行は大胆かつ悪質で、道行政への信頼を大きく失わせた責任は重い」として、懲役1年、執行猶予3年(求刑・懲役1年)を言い渡した。

 判決理由で、岡田裁判官は「消費者金融からの借り入れが高額になった背景に、パチンコでの浪費があり、動機に酌量すべき余地は乏しい」と指摘。弁護側が主張していたわいろ性の認識不足ついては「被告の職務権限や先行して行われた業務内容などに照らせば安易に信用できず、従前からの不適切な接待が公務員としての倫理観を摩耗させ、利益供与に鈍感になっていた」と指弾した。 一方、被告が反省や後悔の態度を示していることにも触れ、「漁獲枠の再配分という業務自体が不正とまではいえず、酌むべき事情も認められる」とした。

 判決によると、奥野被告は道漁業管理課長だった05年4月27日、道の漁獲可能量(TAC)制度に基づき漁協を指導、監督する立場を利用し、森漁協(森町)のスケトウダラの漁獲枠に便宜を図った見返りなどとして、札幌市内の飲食店で森漁協組合長(59)=贈賄罪で罰金70万円の略式命令=から現金120万円をわいろとして受け取った。

 判決を受け、高橋はるみ知事は「判決を厳粛に受け止め、速やかに厳正な処分を行うとともに、道民の信頼回復のため、公務員倫理の保持など職員の意識改革に全力を傾けていく」とのコメントを発表した。


◎青森の地域紙が青函連絡船特集…函館市でも発売
 青函連絡船の誕生100年、廃止20年を受け、このほど発行された青森市内の出版社「企画集団ぷりずむ」の隔月刊地域誌「あおもり草子」179号で、巻頭20ページにわたる大特集が企画され、函館市に住む元乗務員の金丸大作さんら関係者が当時の思い出や青函航路の歴史を伝えている。発行人の杉山陸子さんは「懐かしさだけでなく、船の魅力を再認識してもらい、船旅の良さを伝えたい」と話している。

 青函連絡船は1908(明治41)年3月に就航し、88(昭和63)年3月の青函トンネル開通と同時にその役目を終えた。誕生と廃止の節目の年を記念し、廃止後では同誌として初となる青函連絡船の特集を組んだ。

 連絡船の無線通信士だった写真家の金丸さんは「連絡船と写真の思い出」と題し、写真とともに当時の様子を紹介。カメラとの出合いから、1954年9月の洞爺丸沈没で同僚を失った悲しみ、事故記録の撮影を命じられたエピソードを寄せた。函館市内のNPO法人(特定非営利活動法人)語りつぐ青函連絡船の会の白井朝子副理事長は、その歴史を後世に残す取り組みに触れている。

 このほか、元通信士の鎌田清衛さん、写真家のサトウユウジさん(ともに青森在住)が撮影した昭和30―60年代の写真を掲載。青森市在住のコラムニスト和田満郎さんは青函交流や連絡船の歴史を解説し、杉山さんは青函航路を受け継ぐフェリー文化発展への期待をつづっている。

 A4判48ページで600円。今号は函館市内の三省堂書店(川原町)、栄文堂書店(末広町)、JR函館駅2階のいるか文庫でも取り扱っている。問い合わせはぷりずむTEL017・773・3477。(宮木佳奈美)


◎国保料 年888円値上げ…函館市
 函館市の新年度の国民健康保険料金(国保料)が19日までに、大筋でまとまった。市国保年金課によると、制度改正に伴い、1人当たりの平均保険料(年額)は本年度と比べ888円増(0・86%増)の10万3890円となる見通し。

 国保料は本年度までは医療給付費分と介護納付金分の2本立ての構成だったが、新年度からの後期高齢者医療制度導入で新たに後期高齢者支援金が創設され、3本立ての構成となる。

 新年度の市の被保険者数見込みは8万965人。1人当たりの医療給付費分の賦課額は、75歳以上が後期高齢者医療制度に移行することなどから、本年度(制度改正後の一般保険者で算定)と比較して17・5%引き下げの6万6806円となるが、後期高齢者支援金として1人当たり1万6601円の負担となり、介護納付金は本年度比6・98%引き下げの2万2021円となる。

 市の新年度の国保事業会計予算案の総額は本年度当初予算と比べ28億8454万減(8・1%減)の329億3953万円。被保険者の医療費などに充てる保険給付費を229億9930万、後期高齢者支援金などに30億6848万、4月から始まる特定健診事業費に9498万円を見積もった。27日開会予定の市議会定例会に提案する。(鈴木 潤)


◎「明るい選挙」推進へ…道南初講演会
 【七飯】「明るい選挙」の実現に向けた推進講演会(道選管、七飯町選管主催)が19日、七飯町文化センター(本町)で開かれた。道南では初めての開催。自治体関係者や市民ら約110人が集まり、選挙に関する基礎知識や先進地の事例などを学んだ。

 投票率の向上を目指し、七飯町を含む渡島管内の1市7町では来年度、市民らが投票参加などを呼び掛ける自治体の「明るい選挙推進協議会」を立ち上げる。こうした背景から、市民や関係者の意識向上などを目的に開催した。

 前半、道選管(札幌)事務局の望月泰彦主幹が「これだけは知っておきたい選挙の基礎知識」と題して講演。選挙運動や政治団体の定義など基本原則を解説し、「『事前運動』は陸上競技のフライングに当たる行為。公職選挙法では『政治活動』と分けられているが、実際の区別は簡単ではない」などと分かりやすく説明した。後半は横浜市青葉区明るい選挙推進協議会の藤本武巨推進員が「明るい選挙推進運動について」と題し、先進的に取り組んできた同協議会の歩みや啓発運動など活動を報告した。(新目七恵)