2008年2月26日(火)掲載

◎北斗、市渡小でヒグマ出前教室
 【北斗】子供向けのヒグマ出前教室(渡島支庁主催)が26日、北斗市立市渡小(中津和雄校長、児童114人)で行われた。1―3年、6年の計約70人はクイズやゲームを通じ、ヒグマの生態や上手な付き合い方などを学んだ。

 渡島半島にも生息するヒグマ対策の一環として、毎年管内の小中学校などで行っている。今回はNPO(非営利活動)法人EnVision環境保全事務所(札幌)の早稲田宏一さん(厚沢部町在住)や同支庁の担当者が講師を務めた。

 1―3年生を対象にした前半の授業では、早稲田さんがクイズ形式で道内の野生動物について紹介。生後間もないヒグマの写真を見せ、「母クマは冬に穴の中で産み、1、2年で一人立ちする」などと説明したほか、本物の毛皮や頭の骨を出して「ヒグマはにおいをかぐのが得意。フキやドングリなどを食べて生きている」などと生態を解説した。

 最後に「山にはごみを捨てず、生息地では手をたたいたり、鈴をつけて音を出して」などと安全対策を話した。子供たちは大きな声で質問するなど熱心に授業を受けていた。

 菅野祐也君(3年)は「クマの毛が柔らかくて耳は大きかった」、工藤未来さん(同)は「森の中ではごみを捨てないようにしようと思った」などと感想を話していた。(新目七恵)


◎企画(4)産業振興・企業誘致や観光に力、問われる商観部の再編
 4月から商工観光部は2部に再編される。商工業の振興や労働政策の充実を図る経済部と、基幹産業の観光をさらに成長させる観光コンベンション部に分かれ、連携しながら市の産業振興の主翼を担う。施策はもちろん、2部に再編した成果が問われる。

 再編は西尾正範市長の重点公約。予算案の発表では「教育・子育て・人づくりと並び、産業振興策に重点配分した。限られた予算ではあるが、産業振興で考えられるソフトメニューは付けさせてもらった」と語った。

 予算案には雇用環境の向上や季節労働者の就労対策、起業化促進、企業誘致、観光ブランドのPR、観光客誘致宣伝の強化など、一通りの事業が並ぶ。中でも西尾市長が意欲を見せているのが企業誘致で、東京に企業誘致の推進員を配置し、首都圏での企業誘致活動を強化する考え。

 企業誘致と言っても、大工場から小規模な事業所まで多彩。西尾市長が描く誘致企業は(1)水産関係を中心とした食品産業や、未来大や函館高専の学生たちが就職するIT関連産業、機械製造業(2)地域で足りない分野の企業や、地元企業をけん引しながら取引先を増やしていく企業―の2点。

 IT産業や機械製造などは、市長が指摘した通り、函館にも未来大や高専などに人材がいる。問題は、卒業生の9割以上が首都圏などへ流出していることだ。受け皿となる企業が必要で、市商工振興室は「企業は進出先の人材を求めてくる。技術力を持った人材が進出先に必要で、そうした意味で企業誘致と人材育成は大きくリンクしている」と語る。

 観光振興も、大きな課題だ。市が2006年度にまとめた観光客の年間消費額は1142億円。他産業への波及効果を含めると1610億円になり、市観光振興室は「市のGDP(国内総生産)に当たる市内産出総額の10%に相当する。全国平均は5%程度なので、函館の観光業がいかに地域経済の中で大きなウエートを占めているかが分かる」と説明する。

 産業の集積や観光振興のほか、雇用確保や労働環境の向上も、西尾市長の大きな公約。新たな事業で、季節労働者の冬季就労対策や、地元企業が求めている人材を首都圏から確保する「人材スカウト事業」なども盛り込んだ。市労働政策室は「雇用の安定や定住にもつながる事業。人材を求めている多くの地元企業に参加してもらいたい」と期待する。

 他のソフト事業と同様に、産業振興施策も継続した取り組みが必要。限られた予算の中で事業を継続し、各産業を上向きにしていくことができるのか、そして商工観光部を2部に再編し大きな成果が得られるのか―。市政刷新を訴え、当選後は「市政を組み立て直す」と所信表明をした西尾市長の本格事業が始まる。(高柳 謙)


◎知内新年度予算案、一般会計36億6700万円
 【知内】知内町(脇本哲也町長)は25日、2008年度予算案を発表した。一般会計は本年度当初比8・5%減の36億6700万円。国保など6特別会計と上水道事業の企業会計を含めた総額は同16・2%減の52億5839万円。3月3日開会予定の町議会第1回定例会に提案する。

 予算編成は、地方債発行の目安となる実質公債費比率が2006年度27・1%、07年度25・2%と、起債(借金)を制限される可能性のある25%を2年連続で上回ったことから、同比率を下げるために公共事業を減らし、起債額の抑制と償却額の増加に努めた。これにより、同比率は08年度24・9%、09年度23・3%と減少傾向となる見通し。

 一般会計の歳入の51・8%を占める地方交付税は本年度実績比1・3%増の19億2200万円を見込み、町税は北電知内発電所の償却資産を含む固定資産税の減額に伴い、本年度当初比4・0%減の7億9597万円。財源不足は同45・1%減の1億9828万円を減債基金などから繰り入れる。

 歳出の23・3%を占める公債費は同15・0%減の8億5537万円。主な事業は新・知内小のグラウンド造成に7455万円、同小通学路歩道整備に4800万円、町道あけぼの線道路改良舗装に1535万円などを盛り込んだほか、食材料の原価高騰の中で給食費を据え置くために、860万円を計上して給食センターに米飯厨房機器を設ける。(田中陽介)


◎28日からNPO養成講座やフォーラム
 NPO(民間非営利団体)やNGO(非政府組織)の活動実践者らを対象にした養成講座やフォーラムが、28日から3月中旬にかけて函館市内で相次いで行われる。「NPO塾in函館」(NPO法人NPO事業サポートセンターなど主催)や「NPO・NGOスタッフ養成講座」=財団法人道国際交流センター(HIF)主催=など、道南の関係者の育成を目的に、道内外の講師陣が先進的な取り組みや現状を語る多彩な内容で、いずれも初めての企画。関係者は「この機会に多くの参加を」と呼び掛けている。(新目七恵)

 NPO塾は28日午後3時から2時間程度、市地域交流まちづくりセンター(末広町4)で開かれる。主催の同サポートセンター(東京)が来年度から本格展開する育成事業の事前企画として、本年度は函館を含む全国11カ所で開催する。

 道NPOサポートセンター(札幌)の小林董信事務局長らがNPOを取り巻く状況や資金提供の仕組みなどを語る。小林事務局長は「各地域の人材育成に向けたきっかけづくりにしたい」と話している。定員20人。問い合わせ、申し込みは同まちづくりセンターTEL0138・22・9700。

 NPO・NGOスタッフ養成講座は3月中に全5回、HIF(元町14)で開催。各回定員は30人。道南の関連団体のネットワーク化に向けた取り組みの一環としてHIFが企画。東京、札幌、大阪など、各地で活動するさまざまな団体の代表者5人が講師となり、多彩な講座を展開する。

 また、HIFは全講座終了後、国際的な視点に立った地域づくりなどについて話し合う「NPO・NGOフォーラム」を同20日午後1時半から函館国際ホテル(大手町5)で行う。HIFの池田誠事務局長は「市民活動から国際交流まで幅広い視点で函館に必要なものを考えたい」と話している。養成講座、フォーラムの問い合わせ、申し込みはHIFTEL0138・22・0770。


◎函館港セミナー、呉さんが上海市場の魅力など語る
 函館港と中国や韓国を結ぶ定期コンテナ航路を利用した貿易促進を考える「函館港セミナー」(函館市、函館開発建設部、函館国際貿易センター主催)が25日、ホテル函館ロイヤルで開かれた。中国・上海で北海道産品の販売を手がける石狩水産品有限公司の呉奇代表取締役が上海市場の魅力や、貿易を利用した商品の売り込み方法について基調講演し、「今日やったことを今すぐの利益ではなく、何年か先につなげようと貿易を行えば明るいと思う」とした。

 呉さんは2002年に同社を設立し、上海市内のデパートに卸す水産品などの輸入を行っている。経済成長を続けている上海の現状として▽ライフスタイルの変化による飲食業の急成長▽中心部から郊外へ富裕層の生活圏拡大▽海外旅行が増加―などを挙げた。

 上海では日本製品が「安心、おいしいイメージがある」とし、飲料水や牛乳など、高い値段でも外国製品が売れていると紹介。輸出の留意点として消費期限を挙げ、90日間の期限がある商品でも輸送期間や物産展などの催事期間を考慮する必要があるとした。また、検査を通るため、中国語のラベル表記に間違いがないよう、商品についての知識を高めたり、パッケージや商品名にイメージを想起しやすい漢字を交えた表記を考えるべきとした。

 呉さんは貿易成功のこつとして「一生懸命売る姿が重要で、宣伝して売り続けることが大切。函館の素晴らしい街のイメージを一緒に売れば商品も売れる」と述べ、函館産品の売り上げが観光の振興にもつながることを期待した。

 セミナーでは、函館商工会議所青年部の須田新崇国際事業委員長がこのほど、上海市内で行った物産展について事例報告した。(今井正一)


◎地域の課題考える、道内初のフォーラム
 地域が抱える問題を話し合う「地域づくりフォーラムin函館」が25日、函館市末広町の五島軒本店で開かれ、150人が講演会や分科会に参加し、課題解決の方策を探った。

 財団法人あしたの日本を創る協会(東京)、函館市生活学校連絡協議会、市ボランティア連絡協議会でつくる実行委の主催。同財団の呼び掛けで全国20カ所、道内では函館で初めて開催された。「高齢者支援」「環境・資源」「子育て支援」「住みよいまちづくり」の4つの課題ごとに分科会を設け、参加者は関心のある分野で議論した。

 高齢者支援では「地域で防災マップを作りたいが、個人情報を出してもらえず難しい」などの意見があり、情報の一元化、支援団体・機関のネットワークづくりやコーディネーターの発掘の必要性が指摘された。「子育て支援」では「家庭での子育て力がなくなっている」との声があり、親に寄り添った支援、行政による支援の周知が大切だとの意見で一致した。

 このほか、五島軒の若山直社長が「歴史の中から地域を探ろう」と題して講演。フランス留学の体験から外国と日本の違いを挙げ、「発想を変えれば日本もまだ中国のように発展の余地がある」などと語った。(宮木佳奈美)