2008年2月5日(火)掲載

◎全盲の大平さん、写真撮影活動
 2005年10月から国立函館視力障害センター(函館市湯川町1)に通う全盲の大平啓朗(ひろあき)さん(28)は、大好きなカメラを構え、「光、音、におい、温度」を感じながら撮影を続けている。4月からは障害のある人への偏見をなくそうと、筑波大学(茨城県つくば市)の研究生として「心身障害学」を学ぶことになった。新たな生活を目前に、函館での3年間の思い出と、これまで関わった人たちへの感謝を込めて「写真入りカレンダー」の制作に取り組んでいる。(小橋優子)

 大平さんが全盲になったのは2004年11月。山形大学理学部卒業後、大学院に進んで日々研究室に通っているときだった。友人から酒席の誘いを受け、金が無かった大平さんは酒の代わりにしようと研究室内のエタノール500ミリリットルを持参した。しかし、それはエタノールではなく、毒性が強いメタノールだった。2日後、吐き気や目のかすみなどの症状で倒れ、意識が回復した1週間後に弱視になり、4カ月後には全盲となった。

 「自分の悲しみよりも、五体満足に産んでくれた両親に申し訳なかった。障害を抱えたからとはいえ、自宅にばかり引きこもるような『暗い自分』を親に見せたくはなかった」と大平さん。小学生のころから大好きなカメラが「今、自分にできること」と思い、カメラと“愛棒(白杖)”を手に、全国各地へ撮影に出掛けた。

 「不安もあるが、やってみなきゃ分からない」。波や人の声、太陽の暑さや雪の冷たさ、自身に近寄る圧迫感など、さまざまな感覚を頼りにシャッターを切る。もちろん失敗も多い。ただ、それ以上に得るものは大きく、「撮影の旅を通じて写真の魅力だけでなく、人々や地域の温かさに感動する」と言い切る。

 カレンダーはカラー印刷で、全8ページ(B4判)。満開の桃花が咲く湯布院(大分県)の「梅」(3、4月)は「梅ガムの香りが印象的」と話す。透き通る沖縄の海を写した「波照(ハテル)島」(7、8月)、3年間過ごした函館(湯川町)から旅立つ意味を込めた「市電」など、計25枚の写真を使用。自分の目で見ることは出来ないが、その一枚一枚に対する自身のメッセーも添えている。

 大平さんは「障害者も健常者も同じ人間。偏見のない社会を築くためにできることに挑戦し、写真を通じて同じ考えを持つ仲間を増やしていきたい」と夢を膨らませる。カレンダーは100部製作。今月下旬に完成するカレンダーは、函館市鍛治2の飲食店「ネハナ」と、隣接する「ウチナンチュ」で販売する(1部1000―1200円の予定)。


◎道方針、統廃合対象の5支庁 職員900人削減
 【札幌】道の佐藤俊夫企画振興部長は4日、道議会道州制・地方分権改革等推進調査特別委員会の支庁制度改革をめぐる集中審議の中で、廃止対象の桧山支庁など5支庁について、現行の職員定数の4割に当たる計900人を削減する方針を明らかにした。道が職員の削減数に言及するのは初めて。

 支庁再編で「振興局」に格下げされる桧山支庁のほか、日高(日高管内浦河町)、根室(根室市)、留萌(留萌市)、石狩(札幌市)の5支庁には計2300人の道職員が在籍。削減職員は渡島支庁など9支庁を再編・新設する「総合振興局」に集約される。檜山支庁では100人から150人規模の削減になる見通し。

 佐藤部長は「総合振興局では現庁舎を活用して勤務スペースを確保する。振興局からは段階的な事務の移行を検討する」とした。

 集中審議では、支庁廃止地域で、道職員や家族の人口流出に伴う経済的打撃が懸念されていることについて、道が影響調査を実施するよう迫る議員もいたが、佐藤部長は「職員数は必要性や業務量に応じて配置している。経済的効果について調査することはない」とした。

 廃止対象の支庁所在地のほか、道町村会(会長・寺島光一郎乙部町長)も、道に拙速な改革をやめるよう求める意見書を提出したことを受け、「再編案を白紙撤回すべき」との意見も出るなど、質問に立った7人の議員全員が与野党を問わず再編案に反対した。

 道側は「今後も理解を得られるよう努力する」などの答弁に終始し、6時間余に及んだ長時間の審議はたびたび紛糾。江差町などから傍聴に訪れた100人を超える住民代表や市町議会議員からも怒号が飛んだ。

 審議を傍聴した濱谷一治江差町長は道の強硬姿勢に「地域の声を聞こうとしない道の姿勢が一層明らかになった」と反発を強めていた。(松浦 純)


◎混迷深める支庁再編 4市町、徹底抗戦アピール
 【札幌】江差町をはじめ、支庁再編に反対する日高管内浦河町、根室市、留萌市の各市町は4日、道議会道州制・地方分権改革等推進調査特別委員会の集中審議に、予定を上回る100人規模の議員団や住民代表を派遣し、再編案の白紙撤回と支庁存続を求めて徹底抗戦の姿勢をアピールした。江差町からは濱谷一治町長と12人の町議全員、支庁存続を求める住民組織の辻正勝会長が傍聴席に陣取り、審議の様子を見守った。(松浦 純)

 濱谷町長らは同日午前、道の佐藤俊夫企画振興部長、道議会の正副議長や与野党会派を訪ねて、支庁存続を求める意見書を提出した。

 審議終了後に道庁内で開かれた記者会見で、江差町の打越東亜夫町議会議長は「道側の発言は理解に苦しむ。弱者に痛みを押し付ける改革は許せない」と強調。根室市の嶋津隆之市議会議長も「道の考えばかりが先行して住民に大きな不安を与えている」とした。留萌市の道重之市議会副議長は「支庁廃止の痛みを一部の地域に押し付けず、全道民で分かち合う方法を考えるべき。100年に1度の改革だからこそ禍根を残すべきでない」と訴えた。

 浦河町の上田正則日高建設協会長は「行政効率だけを追求した支庁再編には断固反対。格差是正や道民の安全、安心を考える姿勢が抜け落ちている」と批判した。4市町は今後、道が支庁再編の関連条例案の提案を目指す今月末の第1回定例道議会に向けた統一行動を検討。道や道議会に対して、再編案の白紙撤回を迫っていく方針。

 道政与党会派の自民党・道民会議は、支庁再編の条例提案への賛否が分かれており、第1回定例会での対応は未定。民主党・道民連合など野党会派も反対姿勢を強めており、4日の集中審議でも与野党の委員全員が再編案に反対の意向を示した。議会側のハードルが高まる中、ある道幹部は「6月の第2回定例会に先送りすれば、7月のサミット終了後に予想される衆院選に向けて選挙態勢に入る自民党が態度を硬化することが確実。提案のタイミングは今定例会しかない」とみる。

 ただ、徹底抗戦の構えを強める地域と道側の溝は広がるばかりで、「軟着陸を模索する環境にもない」(道幹部)との指摘もあり、混迷の度合いは深まるばかりだ。


◎道保健医療福祉計画の意見交換会
 道の保健医療分野の在り方や施策方針などを定めた「新しい北海道保健医療福祉計画(素案)」と「北海道医療計画(素案)」に関する道南地域の意見交換会が4日、渡島合同庁舎(函館市美原)で開かれた。参加した医療、福祉関係者ら約40人からは、基準病床数の削減などが盛り込まれた内容について、へき地の医療過疎への不安や各種疾病対策の充実を求める声が相次いだ。

 同福祉計画は総合的な各分野の施策の方向性などを示す。同医療計画はがんや糖尿病などの4疾病と災害、救急など5事業の医療体制を見直す内容で、療養・一般を合わせた基準病床数の各圏域ごとの見直し内容、4疾病の医療充実の目標値などが盛り込まれている。いずれも2008年度から10年間を期間とし、本年度中の策定を目指している。地域意見交換会は函館を含む道内6カ所で開催される。

 各計画概要の説明後に行われた意見交換では、病床数の見直し基準数(216)が既存(397)に比べて約半減となる南檜山圏域について「医療過疎に拍車が掛かるのでは」「算定した経緯を説明してほしい」など不安や見直しを求める意見が出た。また、医療圏域の設定について「救急時における搬送時間の配慮はあったのか」などの質問が出たほか、「難病医療の助成制度の充実を」「現場の負担が増えており、医療介護の適正化を進めてほしい」などの要望や、自殺対策の必要性を訴える意見などもあった。

 道の担当者は「基準病床数は国の算定基準で計算し、道内全圏域で削減している。策定後は道が地域といかに連携し、計画をどう生かすかが大事」などと話した。(新目七恵)


◎JR北海道・函館市人見町に複合商業施設 核店舗にコープさっぽろ
 JR北海道(本社・札幌)は4日、函館市人見町8の社有地に複合商業施設を建設する計画を発表した。核店舗として、近隣のコープさっぽろ人見店(人見町25)が店舗規模を拡大して移転するほか、眼鏡販売店「メガネサロンルック」が出店する。早ければ6月に着工し、今秋の開業を目指す。(浜田孝輔)

 用地はJR北海道が国営時代の1948年に取得した一角で、敷地面積は7903平方メートル。4―5階建ての6棟、計150戸の社宅として活用していたが、昨春までに3棟を取り壊し、残りの棟は社外に寮として貸借してきた。

 計画によると、店舗は2棟でいずれも平屋の鉄骨造り。店舗面積はコープさっぽろが2109平方メートルで、84年9月に開店した現店舗の約3・7倍に相当する。メガネサロンルックの広さは74平方メートルで、両店で共用する駐車場は103台分となる。

 コープさっぽろは、他店との競争が激化する中で店舗の再編を進めており、道南では2005年10月にほくと店(北斗市久根別2)、06年6月にかじ店(函館市鍛治2)を新装。今回の移転について「ライバル店の攻勢が続いており、既存店舗では戦い抜けないため」と説明し、新店舗では取り扱い商品を2万点に充実し、月商2億円を目指す。

 なお、建設予定地の既存棟は、貸与先との契約が切れる3月末で解体工事に入る。


◎11日に縄文フォーラム開催
 縄文の文化遺産を活用したまちづくりを考える「2008縄文フォーラム―国宝と世界遺産から今後の観光を考える」(函館市教委主催)が11日午後2時から、市民会館(湯川1)で開かれる。講演やパネルディスカッションが行われる予定で、市教委文化財課は「市が取り組もうとするこれからのまちづくりについて知ってもらいたい」としている。

 北大観光高等研究センターの石森秀三センター長が「文化遺産を活用した地域づくりと観光振興」と題して講演。パネルディスカッションでは、北大大学院工学研究科の小林英嗣教授とNPO法人函館市埋蔵文化財事業団の佐藤一夫理事長、函館開発建設部の和泉晶裕次長、市教委生涯学習部の阿部千春参事3級が、2010年オープン予定の市縄文文化交流センターの役割や期待について意見交換する。

 道と青森、秋田、岩手3県は共同で、道内や北東北にある縄文遺跡群の世界文化遺産登録を目指しており、既に暫定リスト登載に向けての提案書を文化庁に提出している。遺跡群に含まれる大船遺跡がある函館市としても、遺産登録に向けた遺跡の整備や研究を推進中。昨年6月には著保内野遺跡から出土した中空土偶が道内初の国宝に指定され、縄文文化を生かした地域振興が期待されている。

 入場無料。定員300人。問い合わせは市教委文化財課TEL0138・21・3472(鈴木 潤)